monologue
夜明けに向けて
 




 「敗戦直後の世相を見るに言語道断、何も彼も悪いことは皆敗戦国が負ふのか? 何故堂々と世界環視の内に国家の正義を説き、国際情勢、民衆の要求、さては戦勝国の圧迫も、亦重大なる戦因なりし事を明らかにしようとしないのか? 要人にして徒に勇気を欠きて死を急ぎ、或いは建軍の本義を忘れて徒に責任の存在を弁明するに汲々として、武人の嗜みを棄て生に執着する等、真に暗然たらしめらるるものがある。」

              (岡田資 遺稿より)

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先日、2008年公開の小泉堯史監督作品、 明日への遺言をBSジャパンで放映していた。大岡昇平の「ながい旅」が原作らしいが、より多く殺戮した側があまり殺戮できなかった側を正義をふりかざし裁くという奇妙なことが罷り通った戦争裁判物の映画の中では出色の作品だった。

 太平洋戦争末期に、名古屋市街を無差別爆撃してパラシュートで降りてきた米軍機の搭乗員を処刑したことで、B級戦犯として横浜で戦争裁判にかけられた岡田資(たすく)中将の法廷闘争の姿を描いていた。全責任を負い部下を守りひとり絞首刑になって桜の如く散っていった主人公岡田資(たすく)を演じる藤田まことの抑えた演技が素晴らしかった。かれがわたしの中学の先輩ということが誇りに思える作品であった。
fumio



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