先日、NHKBSのアジア・フィルム・フェスティバルで、グエン・ギエム・ダン・トゥアン監督のベトナム映画<1735km (2005年・ベトナム ・1735KM JACKFRUIT THORN KISS)>を見た。
ベトナムといえばわたしたちの世代にはどうしてもベトナム戦争の頃の棘(とげ)が抜けきらないでどこかに残っている気がしてしまう。米国生活中、車椅子でサンタモニカの海を見る多くのベトナム帰還傷痍軍人を見るのは辛かった。またわたしが弾き語りしていたクラブによく来た、米国国籍を取るために軍隊に入りベトナムに送られた日本人客は精神的に大きなショックを受けたようで人とのコミュニケーションがうまくとれなかった。
しかるにそんなわたしの心の揺れをよそにこの映画は現代のベトナムを描いて実に爽やかだった。ベトナムは見事に復興していた。ハノイからホーチミン(旧サイゴン)までの距離1735kmの間に出会った、主演ズーン・イエン・ゴック(チャムアン)、ホー・カイン・チン(キエン)の弥次喜多恋愛道中ロード・ムービーだった。 結末をお伽噺「君の名は」風と自立現実路線とを描いてひとつに決めつけないのも現代的だった。ベトナムもこんな映画を作れるほどの近代国家に様変わりしたことを知って心の棘(とげ)が抜けきったようでうれしくなった。国家の盛衰は文化によってわかるのである。
fumio
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