一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

ひきつづき投資に関する本

2007-09-23 | 乱読日記

これも『ヘッジホッグ―アブない金融錬金術師たち』という副題の割にはまともな本です。
著者のバートン・ビッグスは1930年代の生まれで、モルガンスタンレーのリサーチ部門を立ち上げた人物です。 前のエントリで紹介した『ウォール街アナリスト物語』の中でもこのように紹介されています。

バートン=ビッグスという男がモルガン・スタンレーで最初のオールスター・アナリスト・チームを作ったのは、1970年代の終わりのほうだ。ボブ=コーネルと一緒に働いていたこともあるベン=ローゼンという切れ者のテクノロジー業界アナリストは、後にコンパックコンピュータを創業するのだが、彼もこのチームにいた。大型メインフレームをフォローしていたウルリッチ=ウェイルもこのチームにいた。さまざまな業界についてのトップアナリストがそこに集まっていた。

ビッグスはその後モルガン・スタンレーの経営メンバー、モルガンスタンレー・アセットマネジメントの会長を経て 70歳近くになって(周りからあきれられながらも)自分のヘッジファンドを立ち上げました。
もっとも著者は父親自体が有名な銀行家だったため元々資産家の一族のうえ、モルガン・スタンレーの経営メンバーだったので、生活を賭けてという感じではないようです。
なにしろファンドの立ち上げ時に資金集めに苦労しつつも自分と家族で1億ドル(円ではないですので、為念)投資しているくらいですから。
もっとも本書によると、成功したファンドマネジャーかどうかは資産5億ドルというのが基準らしいですが・・・

さて、本書はヘッジファンドの立ち上げの苦労、ヘッジファンドのファンドマネジャーや投資家などの実態、それに投資をめぐる逸話や経験談が豊富に書いてあります。

著者のキャリアを反映して、前の本より高い視点から投資というものを俯瞰していて、なぜ個人投資家はピークで買ってボトムで売る(これについては前の本も同じことを言っていますが)のか、また、投資判断を誤る原因は何か、ヘッジファンドの投資スタイルの違い、ヘッジファンド(やファンド・オブ・ファンズ)に高い手数料を払っても自分で運用するよりメリットがあるのか。、逆にファンドの選択を誤るとどんな目にあい、そならないためにファンドマネジャーを選ぶコツは、などを面白く語っています。

ここでいうヘッジファンドやファンド・オブ・ファンズ(日本で売られている「ファンド・オブ・ファンズ」と称する投資信託とはまったく別の富裕層からの大口資金を預かってヘッジファンドに投資するファンドのことです)に投資ができる顧客自体が限られているので、自分の資産運用にどこまで参考になるかは読者の資産規模によって相当違うと思いますが、真剣に自分で投資をしようとする人には参考になることも多く、また、一時の気分で投資をしようとする人(僕だw)には投資の世界はそんなに甘くない、とわからせてくれる本です。


面白かった話をひとつだけ紹介すると、ヘッジファンドを運用しているナッシム・ニコラス・タレブという人の著書の紹介で、ある優れた投資家が短期国債を年率で15%上回るリターンを稼げるとし、一方リターンの標準偏差は年率10%としてときに、この投資家は毎年93%の確率で国債を上回るリターンを稼げるが、時間の単位を短くしていくと(標準偏差によるぶれが原因で)国債を上回るリターンを得る確率は以下のように急速に低下します。

<超過リターンを得る確率>

  時間の長さ  確率
  1年             93.00%
  1四半期       77.00%
  1ヶ月           67.00%
  1日             54.00%
  1時間          51.30%
  1分             50.17%

・・・投資家が、毎日あるいは毎分での成績に焦点を当てるなら、(上の表)が示すとおり、気づかないうちに、苦痛を感じる時間を長く、喜びを感じる時間を短くしてしまっていることになる。・・・問題は(タレブはそう言ってはいないけれど)投資で苦痛を感じると不安になり、そのせいで投資家はよくない判断を下してしまうことがあるという点である。つまり、四六時中成績を監視しているというのは精神衛生上よくないうえに、ポートフォリオの将来にも悪影響を及ぼすのである。

実際、最近の新しい大きなビルだとエレベーターにディスプレイがあってbloombergなどの株や為替の情報が流れていますが、確かにあれを見ているだけでも変動が大きいときなどはちょっとどきどきします。

どうも私はデイトレーダーには向かないようです。






コメント (4)
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