一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

会社法の会計監査人と金商法の監査人

2009-12-04 | 法律・裁判・弁護士

企業法務の人向けにタイムリーでわかりやすい記事をいろいろな弁護士が書いていて、昔の「週間住宅情報」のビジネスモデルを拝借した弁護士紹介雑誌というのが裏の顔ではないかと思われる雑誌「ビジネス法務」の2010年1月号「新年号特別座談会 会社法と金商法の交錯(前)」  

大御所稲葉先生を持ち上げながら、という配慮がうかがえる座談会ではありますが、おもしろかったのが、会社法の会計監査人と金商法の監査人の関係の話。



尾崎安央氏 
何となく、プロの監査人の方々は、自分たちは金商法の監査を行っているというイメージは持っておられるが、会社法上の会計監査人の仕事を行っているというイメージはあまり持たれていないように思うのです。


稲葉威雄氏 
会計監査人と金商法上の監査人とは、制度の趣旨ひいてはその対象が異なっているため昭和49年の段階では独立の制度にするほかなかった。  

それに加えて、会計監査人監査は、上場というような実利と直接結び付いていないため、それ自体を推進・拡充することに困難があって、証取法監査を後追いせざるを得なかったということがあって、主流の制度になりえませんでした。  

会計監査人についての公認会計士の意識については、その沿革つまり会計監査人監査が後追いで導入され、公認会計士という業界の所管官庁が金商法の所管官庁だということが要因だろうと思いますが、金商法の方を向いていることは否定できません。

大体、監査報告書が、会計監査人ではなくて独立監査人という表示で書かれているのです。これはおかしな話であって、会社法上の会計監査報告については、会計監査人の表示、肩書を使うべきであるというのが私の意見なのですが、なかなか公認会計士の人は聞いてくれません。


言われてみればそんな感じはあるかも。 

「上場というような実利と結びついていないため」とぶっちゃけておっしゃってますが、ここがけっこうポイントで、監査対象企業からの報酬を収益にしているという公認会計士の規律をどうするのかというのが問題になるわけです。

ところが実はこの規律が・・・というのが  



松尾直彦弁護士 
金商法上の監査人の選任、解任、不再任、報酬についてのガバナンスが金商法上はないのです。  
会社法上の会計監査人と金商法上の監査人を同じものが行っているということですが、株主総会で選任されているのはあくまでも会計監査人であり、金商法上の監査人については、法的には株主総会で選任されていないのです。  
ここのガバナンスが実は欠けたままであるというのは以前から悩みの種でした。なぜかというと、アメリカの2002年企業改革法(サーベンス・オクスリー法)に対応する際に、米国で上場している日本企業の財務諸表を監査する会計事務所の選任・解任・報酬の規律について、米国SECに対して日本の制度の同等性をどう説明するか、という問題があったからです。結局会社法を援用し、アメリカ側がそれで了解したので同等性が認められたのです。私はその頃から問題意識を持っているのですが、いまだに解決されていません。  


って、松尾氏は立法担当者だったんだろ?というつっこみはさておき、結局ここのガバナンスの部分を金融庁が監督官庁として肩代わりしているというのが現状なのでしょう。 

ただそのスタイルは当世風ではないですよね。

 

コメント
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