ウォールストリート日記「前代未聞のボーナス課税」経由
12月9日にWSJ、FT、Bloombergなどが一斉に報じたところによると、イギリスのDarling財務大臣は、英国内で経営される銀行が来年4月までに2万5千ポンド(約360万円)以上のボーナス支払いを行う場合には、「銀行が」その50%の税金を納めることを定めて、即日導入したそうです。従業員は通常の40%の所得税を課税され、その税率も4月から50%に上がることが予定されているそうです。
Bloombergによれば
Darling Forces U.K. Banks to Swallow ‘Poison Pill’ of Bonus Tax
Darling yesterday imposed the tax, to be paid by all banks operating in the U.K., on bonuses they pay employees until April 5. The measure, which the Treasury says will raise more than 550 million pounds ($890 million), will affect about 20,000 people.
ただこちらの記事(Darling Raises Taxes on Income to Curb Deficit )によると、来年4月からは年収15万ポンド(約2100万円)超の所得税が50%に引き上げられるようで、これは一回限りの時限立法なのかもしれません。
一方で
“It’s something that the banks are probably going to have to pay up on this year and hope it doesn’t happen again,” said Daniel Naftalin, a partner at Mishcon de Reya in London. “This is not really a tax on individual bankers, so the government is a lot less open to legal challenges than it could have been.”
銀行はこの措置は一回限りと期待しながら払うんじゃないか、新課税は銀行に対してなので個々のボーナス受給者に課税するのと比べて集団訴訟を起こされるようなリスクも少ないし、という冷めた見方も出ています。
確かにこのボーナスを金融危機からのリバウンドという千載一遇(まではいかなくても100年に一度)のチャンスととらえて大もうけしたトレーダーやこれで"F☆ck You Money"がたまって引退というような連中は会社のことなんか考えないでしょうね。
とはいうものの、この前、中国が「あがり」がないという話を書きましたが、(参照)日本人の投資銀行勤務の人も、リタイヤして悠々自適という人は少なくて、けっこうまじめに働いてますね。
このへんは国民性でしょうか。
ちなみに参照例としてはモルガン・スタンレーのMDまでつとめた民主党の大久保議員が思い浮かんだので 資産公開を見ると(覗き見趣味で恐縮です)、不動産、預金等の合計が14,562万円株式が25種類248千株となっていてまあざっと3~5億円くらい(モルスタのストックオプションが100千株あると約3億円なので)というところでしょうか。
確かに僕などと比べると相当なものですが、巷間噂されている投資銀行のボーナスに比べると比較的地味なのかもしれません。
話が横道にそれました。
この課税に対しては「ロンドンの世界金融センターとしての地位を危うくする暴挙」という意見が多く出されたようですが、実際にそうなるのかどうかは(他人事なので)一つの実験としては面白いと思います。
ボーナス原資のハードルは高くなるけど儲かった以上に払うわけではないし、優秀な人材の獲得に障害が出るのか「優秀な人材」の選別が厳しくなるのか(実は「優秀な人材」の明確な定義ができないことが問題とか、タレブ氏に言わせれば金融機関に優秀な(正確には賢明な)人材はいないとかいう話もありますが)注目ではあります。
また、金融機関も一回限りの措置にするように巻き返しを図るでしょうから、「公的資金で破綻を救った金融セクターは(公的資金の信用力を担保に博打を打って稼いだ、という見方もある)好業績を身内だけで分配するのでなく国にも還元しろ」という趣旨で今年だけ、というあたりは落とし所としてはあるのかもしれません。