一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

背に腹は代えられるか

2009-12-10 | 法律・裁判・弁護士

この前週刊ダイヤモンドの特集で、街金が融資のできない多重債務者に対し債務整理の弁護士を紹介して、過払利息返還の報酬の一部のキックバックを受けるという話がありました。  

弁護士の人数が増えてきて、司法修習を終えても就職ができなかったり、「軒弁」としていきなり独立する(余儀なくされる)人もいる中で、どのようにして顧客や案件を獲得するかはけっこう切実な問題なんだと思います。 

ローファーム系では、このクライアントは誰のアカウントなどと厳密にやっているところが多いようですし、個人経営の事務所は定年制もないし若い弁護士が独立する際にも「のれん分け」をせずクライアントを自分の事務所に囲い込んでしまうこともできるわけです。  

営業も仕事のうち、といえばそれまでですし、「資格を取れば当然に仕事が来るわけではない」というのはどの資格にも共通で、考えようによっては弁護士は今まで恵まれていたということかもしれませんが、アメリカのAmbulance Chaserのような弁護士が増えるのも困ったものではあります。  


さらに最近、不動産業者が弁護士や税理士などに対し、不動産の売買の情報提供を依頼し成約した場合には報酬を支払うというような営業をかけていて、これに対して弁護士会(東京?)から報酬をもらう行為が弁護士職務基本規定に反する恐れがあるので自粛するようにという告知が出たそうです。  

弁護士職務基本規定では  

第13条2項
弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。

第23条 
弁護士は、正当な理由なく、依頼者について職務上知り得た秘密を他に漏らし、又は利用してはならない。  

第28条 
弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。

4 依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件  

というあたりに該当するのでしょう。


確かに相続争いなどの処理の一環として不動産を売却するような局面があるでしょうから、そこで依頼者の事情如何を問わず売却のほうにインセンティブが働くというのはよろしくないですね。   


これを聞いたとき、最初は弁護士過剰時代の問題かと思ったのですが、仕事に困った弁護士はそもそも紹介する案件がないので、実際に報酬をもらっているのは顧客を抱えている中堅・ベテランの弁護士が多いのではないでしょうか。
そうなると弁護士過剰の問題ではなく、純粋に職業倫理の問題ですね。 

この構図は不動産売買に限らず、M&Aなどでもおこりそうです。
となると、ますます大きな案件を扱う事務所の問題なのかもしれません。  


以前案件を紹介した弁護士から、M&A案件の紹介を受けると同時に、デューディリジェンスなどの法律相談業務を委託することを内容にした「業務委託契約書」を手回し良く提示されたことがありました。
そういうビジネスモデルの事務所も確かにあるんだとは思います。

ただ、クライアント側からすると、過去に仕事を依頼したことがない事務所だと、そもそも当社の利益を考えてくれるのか(コンフリクトの問題)、成約にインセンティブが働く(かデューディリジェンスの段階でぼったくる)んじゃないか、さらに案件としては歓迎すべきものだったとしても、デューディリジェンスとかM&Aの契約などの品質が大丈夫かというあたりが不安なので、「お話はありがたいけど、ご紹介いただいた分は別途お支払いするとして・・・」としたいときがあるのも正直なところです。  


結局忠実義務や守秘義務との兼ね合いなので、今までは各弁護士が職業倫理に照らしながらケースバイケースで対応していたのでしょうが、上の不動産業者の例のような手っ取り早い報酬欲しさに顧客の信用を切り売りする弁護士が増えると弁護士全体の信用を損なうことになりかねないので今回の告知になったのだと思います。


それだけ弁護士会の中でも、信用できない人が増えているという表れなのかもしれませんし、実はそのほうが心配。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする