一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

災害規模の比較

2008-05-17 | 天災・人災

四川大地震、死者5万人超と推計・中国政府発表
(2008年5月16日 15:16 日本経済新聞)

中国・四川大地震で、中国政府の災害対策本部は15日、死者数が四川省だけで1万9509人に上り、今後5万人以上に達するとの見通しを示した。

阪神・淡路大震災の犠牲者は Wikipediaによれば以下の通り。

死者:         6,434名
行方不明者:     3名
負傷者:     43,792名 

中国の人口が13億人と日本の約10倍ですから、この見込みが正しいとすれば、奇しくも国の規模に対して同じくらいの被害ということになります。


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パイこね変換

2008-05-16 | 乱読日記
といっても下ネタではありません(笑)


先日紹介した『渋滞学』でへぇ、と思った話(数学に詳しい方には当たり前のことかもしれませんが)。


「パイこね変換」というのはカオス理論の用語。
これはパイ生地をこねるときの伸ばして折りたたんで、という操作のことで、これを繰り行うことで生地の中の含有物を最も効率よく混ぜることが出来るということがカオス理論で証明されているんだそうです。
その証明はそれですごいことだと思うのですが、本題は、この操作はコンピューターにはできないということ。


パイこねの操作を単純化します。
まず0から1までの範囲でX(パイ生地の中の成分の位置)を決める。
そしてこの0から1までをパイ生地とする。パイ生地は2倍に伸ばして折りたたむことを繰り返す。
そして
Xが0.5より小さければ2倍して2Xとする
(=伸ばしても1より小さい場所にあるので成分は折り返されずに2Xのところにあ移動しただけ)
Xが0.5より大きければ2-2Xとする
(=伸ばしたときに1より大きくなるので折りかえされてしまい、伸ばしたとき(全体で2)の向こう端からの距離分の場所に戻ってくる)

たとえば0.1を最初に選ぶと
1回目 0.2
2回目 0.4
3回目 0.8
4回目 0.4
5回目 0.8
以後0.4と0.8の繰り返しになります。

伸ばして折りたたむのですから、行ったりきたりになる、ということですね。


ところがコンピュータに計算させるとこのようになります(excelで実際にやってみたものです。左上から順番になってます。)



途中から数字がズレだして、最後は0になってしまいます。

これはコンピュータが10進数を2進数に変換して格納しているためで、本来10進数を2進数に変換すると一般に無限のケタが必要になりますが、コンピュータ内の数字の格納場所が有限なために一般に小さな誤差が生じてしまいます。
そしてパイこね変換はコンピュータにとってはとても意地悪な操作になっていて、2倍するなどという操作のたびにこの誤差も2倍に拡大し、これを繰り返すと目に見える誤差になってしまいます。

普段wordなどでマイクロソフトの差し出がましい設定にイラついたりしている身にはちょっとした意趣返しにもなりました(別にマイクロソフトに仕返しができたわけじゃないんですけどね(^^;)


本の中では、これは単なるトリビアではなく、現象を理解するのに微積分的な対象を連続の世界でとらえるアプローチと、デジタル的、離散的なアプローチがあって、それぞれはその対象とスケールによって有効性が違ってくる。
離散的なアプローチにはコンピューターは有効だがそれは離散量しか扱えない、という文脈で語られています。
そして、実は微積分の発明される400年以上前、物理現象を離散的に捉えていたときの手法が、微積分を使って計算してきたものをコンピュータを使って計算しようとする際の連続量を離散量に変換する手法として再び注目されてきたのだそうです。


昨日のエントリにもあるように上澄みだけを「クイズ王」として使わせていただいている身(正確にはとても「王」のレベルではないですが)としては、学問の歴史の厚みを改めて感じる話であります。


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ベルリッツのCM

2008-05-15 | よしなしごと

電車の新型車両の液晶ディスプレイでやっているベルリッツのCM



CMの趣旨とは関係なく、途中でパスをしないでリフティングをする奴にウケてしまいました。
会議でもこういう自己満足的な発言をする人って結構いますよね。

で、最後

「彼は英語が話せないのではありません。スキルが足りないのです。」

となるのですが、実は本当に足りないのは、会議の他の参加者に有用なコンテンツ(意見とか知識とか)なのではないかと。
聞くに値する意見であれば、多少言葉が変であろうと聞いてもらえると思います。


確かにCM中の「鈴木さん」は、物怖じしないためにも実戦経験を積むことは重要かもしれませんが、まずは英語のスキルを磨くよりもしっかりした内容の発言をすることを優先した方がいいんじゃないかと思います。

 

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とりあえず5パンダ

2008-05-14 | 天災・人災





北京に駐在している友人に見舞いのメールをしたところ、彼は低層の事務所ビルにいたせいか、会議が白熱していたためか、そもそも地震に気がつかなかったそうです。
ただ高層マンションにいた家族はかなり揺れて怖かったらしいです。

一方で四川省の成都付近の被害までは報じられていますが、より震源地の近くに中国最大のパンダ保護研究センターが観光名所になっている臥竜という街があるのですが(こちらの旅行ガイド参照)、そことは電話もつながらない状態だそうです。標高は2000m近くある山岳部で交通も途絶しているのではと心配されています。

幸い今回は日本人のツアー客はいなかったようですが、外国人観光客は被害にあった方もいるようです。

英国人ツアー客15人と連絡取れず=観光バスの37人死亡-中国四川省 (2008/05/13-12:44 時事通信)

大地震が起きた中国四川省の災害対策当局者は13日、同省内を旅行中の英国人のツアー客15人前後と連絡が取れていないことを明らかにした。一行は震源地の◆(サンズイに文)川県内のパンダ自然保護区にいた可能性が高いという。新華社通信が伝えた。 
同当局者は、◆川県に隣接する茂県で観光バスが土砂崩れにのみ込まれ、37人が死亡したと語ったが、英国人旅行客が含まれているかは不明。パンダ保護区を除き、世界遺産の九寨溝や黄竜など省内各地からは外国人が死傷したとの報告は受けていないという。 
北京の日本大使館によれば、13日午前までに四川省在住や旅行中の日本人が死傷したとの情報は寄せられていない。

やはり観光地だけあって日本人以外でもツアー客はけっこういたのかもしれません。
一方でこんなニュースも。

飼育パンダ144頭は無事=中国
(2008/05/14-00:25 時事通信)

新華社電は13日、中国四川省で起きた大規模な地震で生存が心配されていたパンダについて、同省や陝西省の研究施設3カ所で飼育されている144頭は無事だったと伝えた。 
震源地の四川省アバ・チベット族チャン族自治州※川県はパンダのふるさとで、臥竜パンダ自然保護区研究センターでは86頭が飼育されている。地震後30時間にわたり、同保護区担当者と連絡が途絶えていたが、子供のパンダも含めて無事が確認された。※=サンズイに文。

パンダは屋外にいるので地震の被害はないでしょうが、街中の被害が心配です。なにはともあれとりあえず連絡がとれたのはよかったです。
震源地近くの情報まで入ってくれば、被害の全貌がそろそろ明らかになるのではないでしょうか。


ところで日本政府の支援については今のところ
 5億円相当の資金・物資を供与=中国大地震で追加支援も-高村外相
 (2008年5月13日(火)18:30 時事通信)
一方でミャンマーのサイクロン被害には
 日本、ミャンマーに追加支援へ 上限1千万ドル
 (2008年5月9日(金)12:09 朝日新聞)

被害の程度と相手先の国力などを考えての倍半分というところかもしれませんが、こういうところは出し惜しみせずに、初動が大事だと思います。
つがいで1億円とも言われるパンダのレンタル料に比べたら安いものではないでしょうか。

 

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中国四川省の地震

2008-05-13 | 天災・人災

2つの化学工場で数百人生き埋めか 中国・四川省地震
(2008年5月12日(月)23:21 朝日新聞)

中国国営新華社通信によると、中国中西部の四川省で12日午後2時28分(日本時間午後3時28分)、大規模な地震があった。震源は同省の省都・成都の北西約90キロにあるアバ・チベット族チャン族自治州ブン(ブンはさんずいに文)川県付近で、地震の規模はマグニチュード(M)7.8。
(中略)
震源に近い同省北川チャン族自治県の当局者は同県だけで約3千~5千人が死亡、1万人が負傷したと推計しており、死傷者はさらに拡大する可能性がある。震源地周辺では多数の家屋が倒壊するなど大きな被害が出ている模様だ。



悪い時期に悪い場所で起こってしまった、という感じです。



震源地はチベット自治区の中で四川省に併合された部分で、下の地図だと右端のあたりのところのようです。

(ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のHPの「チベットを知るために」から)

Google Mapで付近を見ると、震源地の成都の北西90kmは山岳地帯に入ったあたりのようで(参照)土砂災害や救援の困難さも予想されます。


中国政府としてはオリンピック同様国の威信をかけての救援・復興支援を行うと思いますし、しかもチベット独立問題もからんでいるので(参考:チベット騒乱が周辺省に拡大!四川省のチベット自治州では、警官隊の発砲で7人死亡)、国際的な支援を受け入れるかどうかは微妙だと思います。
インド政府が、スマトラ沖地震の津波の被災後に外国からの緊急救援はいらないと宣言して自力での救援活動を行ったことも意識するかもしれません。


オリンピック、チベット問題、に加え三つの課題が同時進行していて、これらの処理がトラブると、(多分中国政府にとっても一番大事な)金融引き締めによる景気の軟着陸のシナリオも狂う可能性があるかと。


ちょっといやな流れのように思います。
 

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『渋滞学』

2008-05-12 | 乱読日記

だまされたと思って読んでみてください。


頭のいい人が難しいことをわかりやすく書いた本です。

基礎研究と応用研究が上手に連携するとこういうことができるんだ、ということが面白くわかる本です。
またそれが筆者の問題意識でもあります。

・・・最も言いたかったのが分野横断的な人材の必要性である。この渋滞学を研究してきて、私はその大切さをしみじみと実感した。各分野の専門家を育成することも大事だが、この専門家をつないでゆくのも同じ重みで大事である。
 私ももちろん専門家のはしくれなので、たとえば非線形現象について細かいことをいろいろと知っている。クイズ王と専門家のちがいは、例外まで含めてある分野の原理原則を知り尽くしているのが専門家で、専門知識の一部を例外抜きで満遍なく知っているのがクイズ王である。例外を知ることは、知識の適用限界を知ることにつながり、実際に知識を実生活に応用する際にはとても大切なのだ。その意味では、ものごとがうまくいっている場合には実は専門家はほとんど必要ない。しかしうまくいかないことが出てきたときに、それを解決できるのが専門家で、大変重要である。
 しかしこれだけではまだ不十分で、新しいタイプの専門家がこれからの高度技術化社会には必要だ。もちろん全分野で専門家になるのは不可能なので、自分はひとつの分野で専門家であればよい。しかし自分の専門分野以外に、クイズ王よりは深く工学と理学のいろいろな分野を知っていることも必要なのである。その上で専門家の友人を多く持ち、その内容を理解してお互いの精神を共有できる人材こそ、これからの社会を担う人材である。異分野の知識が有機的に結びつくのは、結局一人の人間の頭の中にそれらが入り込んで混ざったときのみである。

 
クイズ王側の私が言うのも失礼な話ではあるのですが、こういう人をみると、日本の基礎体力も捨てたものではないな、と思えます。


 

 

 

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『ブレイブ ワン』

2008-05-11 | キネマ
婚約者と散歩中に暴漢に襲われ、婚約者は殺され自らも重傷を負った被害者が、護身用に買った銃で強盗を射殺したのをきっかけにギャング狩りを始める、という話です。

主演はジョディー・フォスター。
映画の設定自体は昔からあるものですが、銃規制問題などとからみ、作品を選んで出ている彼女が今回どんな作品を選んだかも興味ありました。

主人公の心情、退院した後のPTSDとか悪人を殺すことの葛藤などはきめ細かく描かれていますし、登場人物のセリフ回しも緻密です。
そしてストーリーも単なる銃保持の正当化や報復賛美にもなってはいません。
その意味ではよく出来た映画です。
ただ、よく出来た脚本だけあって、最後も丸くおさめてしまっているので(どこかであったような・・・という結末です)鮮烈な問題提起、という色合いはありません。
それは"Brave"と言ってしまっているあたりから既にある限界だったのかも。

銃規制だけでなく、大きな構造としては911の報復として加害者ではないが悪人と言われていたフセイン政権下のイラクに侵攻するのと同じなんですよね。
もっとも映画にそこまでの批評性を求めるのも酷だと思いますが・・・


私はジョディー・フォスターは好きなので十分楽しめました。
演技力だけでなく、40代半ばで顔と体型を維持しているのは立派です(もともと太らない体質なのかもしれませんが)。



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(当ブログ初の?)「セクスィー」ネタ

2008-05-10 | よしなしごと

といってもサラリーマンneoの「セクスィー部長」の話ではありません。

最近の秋葉原の路上パフォーマンス取締りのきっかけになったこの話。

“永遠の22歳”沢本あすか、前代未聞の大バッシング
(ZAKZAK 2008/05/03)

東京・秋葉原でTバック下着を露出させて逮捕された「30歳のセクシーアイドル」が、自身の年齢をあくまで「22歳」と主張し、抵抗を続けている。だが、22歳の証拠としてブログにアップした大学の卒業証書は偽造の疑いが強いうえ、デタラメなプロフィルや、恥ずかしい過去も一気にネット上に流出。前代未聞の大バッシングにさらされる事態となっている。  

26日のブログには「30歳という記載は間違いです。22歳」などと記載。29日午後、“証拠品”として、明治大法学部の卒業証書をアップした。  

だが、この卒業証書が何ともお粗末。生年月日が「1985年9月7日」、証書発行日は「2007年3月26日」。これでは21歳で大学を卒業したことになる(飛び級制度の早期卒業は05年度以降の入学者のみ適用)。さらに、学長として記載された山田雄一氏は、04年3月で退いていた。証書自体も明らかにコピーで、朱印の学校印はなぜか黒色。画像はすぐに削除されたが、明大も確認に乗り出す騒ぎとなった。

たまたまYouTubeでご本人の動画がありました。
こういう方のようです。




 

私にとっては22歳も30歳も誤差のうちなのでその点についての論評は避けますが、この動画を撮ったのがどこなのかというのは興味をそそられますね。
出入り口のユニットバス的な安っぽい扉とか、入り口脇のシャワー水栓とコントロールパネルの生活感とか、立てかけてあるモップなどのほうに注意が行ってしまいますw
逆に言えば個人の努力でもここまでのプロモーションはできるといういい例かも知れません。
 
この沢本あすかさんにはHPがあって、プロフィール

資格:英検準1級、法学検定2級
マイブーム:ダイエット

とあります。
また ブログでも

卒業証明ださなかった理由は、あすかは明治大学卒業を最終学歴にするつもりはないのだ(予定)。早稲田大学大学院法務研究科か慶應義塾大学法科大学院に進学するつもりなの(希望)。いわゆるロースクールね。明治の学力では難しいから1,2年勉強しようかと。

と、非常に向学心旺盛のようです。


まあ、言っていること(特に明治の学力と早慶のロースクール云々)の当否はさておき、この「特技:法律」「趣味:ダイエット」を見て私は思わずろじゃあさんのことを思いうかべてしまいました。


そしてその瞬間、頭から「セクスィー」が完全に飛んでしまいました・・・


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「手つかず」と「食べ残し」

2008-05-09 | 余計なひとこと
「手つかずと食べ残し、違う」船場吉兆の湯木社長
(2008年5月8日(木)02:35 朝日新聞)



「未婚」と「バツイチ」の違いか・・・




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『キングダム』

2008-05-09 | キネマ
ここでいうキングダムはサウジアラビア王国のこと。

サウジアラビアの首都リヤドでのFBI捜査官を巻き込んだ自爆テロの計画者を探すためにFBI捜査官が現地に向かう・・・以下はドンパチ・・・という予告編を見て、まあ息抜きにドンパチ映画(結構好きだったりします)を観てアメリカ人の悪口でも言おうかと思って借りてきましたが、本編は意外としっかりしていました。

FBI捜査官が海外に出向くという多少無理のある設定も強引にですがつじつまを合わせてます(そのためにけっこう時間を割いている)し、テロや戦闘のシーンはかなりリアル(=凄惨)に描かれていています(こういうのはPG-12にしたほうがいいのではと思います。)。
そして、敵意の連鎖がどうやって生まれるか、そこへの希望はないのかについての問題提起もあります。

考えさせられる、とまではいきませんが、単純に楽しんじゃうのはどうかな、と思わせるくらいのまじめぶりをハリウッド映画も求められるということでしょうか。



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『それでもボクはやってない』

2008-05-08 | キネマ
これも公開当初から話題だったのですが観る機会がありませんでした。


痴漢冤罪を告発する、というような映画かと思っていたのですが、現実の取調べや刑事裁判の実態を丹念に取材して、冷静で完成度の高いシナリオになっています。

痴漢は、日常的には良く起きる(らしい)比較的微罪であること、被害者が加害者を特定しにくいこと、一方で性的犯罪であり被害者への影響が大きく加害者に同情の余地が少ないことなどから、被害者・加害者だけでなく警察・検察・弁護士・裁判所や周囲の関係者の独自なスタンス(「早く認めて罰金刑で済ませたほうが楽だぞ」「冤罪を主張しているけどホントはやってるんじゃないか」「正直言えばこんな小さい事件にかかずらわりたくはないんだ」)が形成されていることが描かれています。
「日本の裁判制度の問題点」を云々という解説がありましたが、問題はもうちょっと複雑だと思います。

シナリオ上は「冤罪」という切り口からなので検察官や裁判官は悪者風に描かれていますが、たとえばこれを検察官や裁判官の視点から見た別バージョンがあっても面白いのではないかと思いました。




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『今宵、フィッツジェラルド劇場で』

2008-05-07 | キネマ
ミネソタ州セントポールのフィッツジェラルド劇場で長年親しまれてきた公開生放送のラジオショウ「プレイリー・ホーム・コンパニオン」も放送局の身売りに伴い最終回を迎えることになる、その舞台裏をめぐる人間模様を描いた映画です。

※以下、ネタバレはありませんが、途中から映画のレビューでなくなってます(汗)

Wikipediaによればこの「プレイリー・ホーム・コンパニオン」というラジオショウは、1974年以来現在も放送中の実在する番組(それもフィッツジェラルド劇場を本拠にしている)だそうで、司会はこの作品の原案・脚本を担当し司会役も演じているギャリソン・キーラーが務めているそうです。
実は日本でもAFN(昔のFENですね)東京局のAMラジオ放送 (810kHz) で日曜午後4時から聴くことができるとのこと。

コメディタッチの人物造形とともに、ラジオショウの楽しさ、そして消えゆくものを慈しむトーンをたたえる脚本を、芸達者(多少曲者風)の俳優たちが好演で盛り上げています。

ギャリソン・キーラーはさすがに本職だけあって司会も歌も見事です。
そして、実際のラジオでは放送できないようなきわどいネタをここぞとばかりに繰り出しています。
さらにメリル・ストリープとリリー・トムリン(こちらに次いで二度目の登場)の姉妹は演技だけでなく歌も見事、狂言回し役の保安係のケヴィン・クラインも歌を聞かせます。
また、新しいオーナー役のトミー・リー・ジョーンズは劇中で「学生の頃バンドをやって才能がないことに気がついた」というセリフがあるのですが、これは本音なのか、実は本人も歌う役をやりたかったのか興味があります。
(キャストにRobin Williamsとあったのであれ、と思ったのですが、"Robin and Linda Williams"(参照)というカントリーのデュオがいるんですね。)


実際のラジオショウを知っていたらもっと楽しめたかもしれませんが、十分面白い作品でおすすめです。


ところで劇中、カウボーイのデュエットが「ろくでなし男の歌」というのを歌っています。
そのろくでなしは言うことがすべてウソ(「ほらふき」のほうが正確ですね)で荒唐無稽なホラをふきます。
そしてサビの最後がこんな歌詞です

  ♪
  でもたった一つの真実は
  そいつのウソは全部自分のついたウソ

考えてみれば自分のオリジナルのウソをつくというのはかなりの努力が必要です。
たいがいのウソは世の中にあるフレーズを借りてきて自分を飾ることに使われます。
『問題は、躁なんです』でも、躁の特徴のひとつとして世俗的で見栄っ張りなウソをつく、というのがありました。)
あまりにオリジナルなウソは現実味がなく誰もが信じないからかもしれません。

逆に考えてみれば、私たちは普段の仕事で、聞く人がなんとなくわかったような気持ちにさせる説明、プレゼンテーション、キーワード、概念整理を日々作っています。
「多くの人が信じやすい方便」は「厳密な真実」よりも世の中に受け入れられやすいからかもしれません。
また、企業活動の意思決定においては100%正しい選択などというものはありませんし、もしあったとしてもそんなものがわかるはずがありません。
でも「わからない」と判断放棄をするわけにもいかないので、その手前のところで判断基準を作ったり新たな概念整理をしたりするわけです。
「企業価値」などはその最たるものですね。

つまり私たちは日々そうやって、ウソを生産しているともいえます。
明らかなウソや無責任なウソは「偽装表示」とか「詐欺」として非難されますが、真偽が明らかにならずに皆が信じたがるウソは「夢」とか「ビジョン」とか「わかりやすい説明」などと言われたりします。


まあ、呑気にそんなことを言っていられるGWも終わってしまいました。

さあ、今日からまたウソツキの世界に戻ることとしましょうか。
(まあ、それも嫌いではなかったりするけど・・・)



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『フィクサー』

2008-05-06 | キネマ

GWは「安近短」を決め込んで、久しぶりに劇場で映画など。
ERⅠの頃は単なるあやしげな二枚目役者とおもっていたらみるみる出世して最近はプロデューサーとしても問題提起型の作品で話題のジョージ・クルーニーの『フィクサー』

※以下ネタバレあり


所属する弁護士事務所の扱う30億ドルにものぼる集団訴訟をめぐるトラブルの解決に乗り出した「フィクサー=もみ消し屋」ジョージ・クルーニーが事件に巻き込まれていく、という話です。
120分の長尺作品ですが、本線のストーリーが面白く、助演のトム・ウィルキンソン(事件の主任弁護士役)、ティルダ・スウィントン(被告企業の法務部長役)、シドニー・ポラック(弁護士事務所のトップ役)の好演もあり、長さを感じさせません。
(ラストシーン近くになると先が読めちゃいますが)


ただ問題は、予告編などをみると「フィクサー」は「裏のエース」風な法律事務所のキーマンのような先入観を持ってしまいかえってわかりにくくなってしまうのではないかということ。

実際にやっていることは雑務っぽいことが多く、本人も「『フィクサー』でなく『掃除屋』だ」という自虐的に言っています。
それに水際立った事故処理のエピソードなどもありません。
上司や同僚などは「この件を処理できるのは君を置いてはいない」などとおだててますが、雑用をやらせるために体よくおだてている風です。

劇中で明らかになる経歴も(少なくとも僕の知らない)あまり有名でない大学・ロースクールを卒業し、ブロンクスの検察官補を経て法律事務所に入り在籍17年でパートナー(共同経営者)になれず"special councel"のまま。ちらっと出てくる仕事の電話も(大金持ちでなさそうなクライアントの)離婚がらみの財産分与とぱっとしない感じです。
また、給料もそれほど高給というわけではなさそうです。

ポータルサイトの映画解説でもYahoo!映画は「弁護士事務所に所属し、裏で暗躍するもみ消し屋“フィクサー”の苦悩と焦燥を描きながら・・・」と書いてますが「暗躍」というほどかっこよくはありません。
goo映画の「NYの大手弁護士事務所に勤めるマイケル・クレイトンの専門は不始末をもみ消すこと。そんな仕事に嫌気が差していた時・・・」というほうが正確です。

処遇に不満を持ち、私生活にもトラブルを抱えながらも「ダメな大人になるな」と息子に諭すなど主人公も奥行きのある人物として描かれているのですが、ジョージ・クルーニが演じるとちょっとかっこよくなりすぎてしまうのかもしれません。


ところで映画の舞台になった法律事務所は弁護士が600人いるという設定です。
そうなると年功序列で全員がいつかは共同経営者になれるというわけにもいきません。
また、普通の会社で言う総務とか人事をやるのも共同経営者かその下請けの弁護士ということになるのでしょう。コンサルタントを雇うことはあるかもしれませんが専任のスタッフはいないので、どうしても面倒な雑務やサポート業務をする人が必要になってきますし、エース級の高い報酬を稼げる弁護士には仕事に集中出来る環境を作ることが合理的なわけです。(このへん全部教授会で物事を決めて経営から雑務まで分担する大学と似ていますね)

普通の会社なら人事ローテーションがあったり、勤めているうちに「○○畑」風になったり、そのうち先が見えてきたりで不満の大小はあるにしてもそれぞれのポジションで仕事をしています。
一方弁護士はスペシャリストというプライドがあったりするのでなかなか自分が雑務に回ることは潔しとしないのかもしれません。
なら逆に資格があるので転職するなり独立すればいいと思うのですが、アメリカでは特に競争が激しいので、主人公のような40台半ば(多分)のさほど目立った実績もない人には難しいのかもしれません。
その反面、給料は高くないにしても(レストランの共同経営に失敗し、そもそもその資金も街金から借りているし返済の7万ドルの資金繰りが出来ない)、大手事務所に勤務しているというステータスや、事務所からメルセデス・ベンツのSクラスを貸与されたりしていると、なかなか辞めづらいのかもしれません。

映画の中でも主人公が経営トップに「俺もいい仕事が出来るのだから訴訟チームに戻せ」と言うと「この事務所には600人も弁護士がいて、その全員が優秀だ(だからお前しかできない今の仕事をちゃんとやれ)」と切りかえされる場面があります。


あれ、これって日本の大企業のサラリーマンが今の処遇に不満でも福利厚生が充実してるから辞める踏ん切りがつかないのと同じような・・・

平たく言ってしまうと、この映画は「うだつがあがらず大きな事件を持たず雑用専門のロートル弁護士が集団訴訟をめぐる陰謀に立ち向かう」という話だということに気づきました。

そういうよくある話ながらきっちりと作られていて楽しめる映画なのですが、アメリカの法律事務所における「フィクサー」の仕事が明らかになると期待していると期待はずれになります。

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『ゆれる』

2008-05-05 | キネマ
前から気になっていた映画を連休中にまとめて観たのでしばらく映画のレビューが続きます。

最初は『ゆれる』

監督の西川美和が脚本も書いているため、練られた科白、効果的なカメラワークと演出が統一感がとれた作品になっています。
演出はちょっと過剰に象徴的なシーンを強調するような部分もありますが、全体的には微妙な納得のいかなさ・消化不良感が考えさせる効果を生むような脚本なのでその思わせぶりな演出も魅力になっています。

内容に言及するとネタバレになってしまうので、あらすじはゆれる - goo 映画などをご覧ください。

主役のオダギリジョー(弟)と香川照之(兄)の関係を中心に、兄弟の関係が通低するテーマになっています。
キャストでは兄役の香川照之の演技が出色です。
特にラストシーンで見せる表情は圧巻です。

消化不良感を一気にカタルシスに持っていくかのように、兄が何を考えていたかをこの一瞬で見せてしまいます。
でも、しばらく後に、その解釈は受け取る人によってやはり違うんだろうな、と思わせてしまうような、余韻というよりはいい意味での後味の悪さが残る作品です。


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エコ?

2008-05-02 | よしなしごと


スターバックスでカモミールティーを頼んだら、マグカップにティーバッグを入れて出てきました。

ここまでは予想通りだったのですが、あわせて小さなプラスティックのカップ(写真右側)を渡され、「ティーバッグ入れにどうぞ」と言われました。

せっかく陶器のマグカップでエコをやっているのに、わざわざティーバッグを捨てるためだけに使い捨てのプラスティックのカップを渡すのではエコにならないように思えます。

僕はコーヒーをほとんど飲まないのでスターバックスも利用しないながらも環境にも配慮した企業という印象を持っていたのですが、そもそもがディスポーザブルな容器がベースにあるアメリカ企業の中でのエコということだったのかもしれません。


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