今年の定時株主総会でひとつのトレンドになるかもしれません。
当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の非継続について
(株式会社資生堂 2008年4月30日)
当社は、平成18 年6 月29 日開催の第106 回定時株主総会の決議により承認を得て、当社株式の大量取得行為に関する対応策(いわゆる事前警告型買収防衛策、以下「本プラン」といいます。)を導入しており、本プランの有効期間は平成20 年6 月25 日開催予定の第108 回定時株主総会(以下「本定時株主総会」といいます。)終結の時までとなっております。
当社は、本日開催の取締役会において、本定時株主総会終結の時をもって本プランを継続しないことを決議し、これに伴い、定款一部変更に関する議案を本定時株主総会に提案することを決議いたしましたので、下記のとおりお知らせいたします。
非継続の理由としては
その結果、大量買付に関する法制度の整備状況も勘案し、当社としては、本定時株主総会において、本プランの継続をお諮りするよりも、新3 ヵ年計画を着実に実行していくことこそが、グローバル市場における当社の競争力と持続的成長性を高め、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に繋がるものと判断し、本日開催の取締役会において、本定時株主総会終結の時をもって本基本方針を廃止し、以降、本プランを継続しないことを決議いたしました。
とさらっと書いてあります。
2006年に導入された買収防衛策は当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の導入についてによると
(5) 本プランの導入手続
本プランの導入については、以下のとおり、本定時株主総会において株主の皆様のご承認をいただきました。
① 会社法第278 条第3 項但書の規定に基づき、別紙4 記載のとおり、当社定款第12 条に「新株予約権無償割当てに関する事項については、取締役会の決議によるほか、株主総会の決議、または株主総会の決議による委任に基づく取締役会の決議により決定する。」との規定を新設するとの内容を含む定款変更議案が、本定時株主総会において決議されました。(中略)
② ①による変更後の当社定款第12 条の規定に基づき、本定時株主総会における決議により、本プランに記載した条件に従い本新株予約権の無償割当てに関する事項を決定する権限が、当社取締役会に委任されました。
(6) 本プランの有効期間
上記(5)②の株主総会決議による、本プランにおける本新株予約権の無償割当ての実施に関する事項の決定権限の委任期間(以下「有効期間」といいます。)は、現3ヵ年計画の継続期間と同一の期間とするため、現計画の最終事業年度である2008 年3 月期に関する定時株主総会の終結の時までとします。
とあって、今回変更(削除)される定款自体は
第15 条
新株予約権無償割当てに関する事項については、取締役会の決議によるほか、株主総会の決議、または株主総会の決議による委任に基づく取締役会の決議により決定する。
としか書いておらず、別途買収防衛策導入の決議と発動の取締役会への委任について株主総会の決議をする、というタイプのようです。
なので厳密に言えば定款で授権されているといえるのかどうか、という論点はあるかと思います。
逆に、株主総会による買収防衛策継続の決議をしなければこの定款の条項自体は毒にも薬にもならないのでほうっておいてもいいのではないかと思うのですが、この際正々堂々と廃止しよう、ということなのでしょうか(買収防衛策継続の決議は議案として上程しなければそれまでですが、一方で定款変更議案が可決できなかったらどうなるんだろう、などというのは余計なお世話ですねw)。
ただ、深読みをすると「廃止」でなく「本プランを継続しない」と言っているので、将来他のプランを導入する可能性は否定していません。
そうだとすると、今回定款の規程も削除するのは、現在敵対的買収の恐れは少ない反面、2年前に導入した防衛策をそのまま継続すると、かえって足かせになる可能性がある、という判断があるのかもしれません。
万が一敵対的買収者が登場してきた場合には、TOBルールの質問権の行使や臨時総会を開いてなりふり構わず導入する、という選択肢はあるわけですし。
理由もさらっと書いてあるのはこのへんのこともあるのでしょうか。
ブルドックソース事件の判例の射程も不透明であり、買収防衛策に対する市場の評価も厳しくなっているという流動的な状況のなかで、しばらく様子見(というかちょっと「いい子」になってみる)、ということなのかもしれません。
また、『株主に勝つ・株主が勝つ』でも言われていた「次に判例を取る第1号にはならない」という意味合いもあるかと。
********(追記)********
<東証>資生堂が大幅に続伸――「買収防衛策廃止を好感」の声
(2008年5月1日 Nikkei Net)
という向きもあるようで、市場には好感されているようです。
2年前に拡大した授権資本は今回もそのままなのですが、いっそのことこれも元に戻したらもっと潔いと評価されたんでしょうか。
***********************