褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 ロベレ将軍(1959) 詐欺師から英雄へ

2021年12月02日 | 映画(ら行)
 俺の知っている地方議員の中にはピンハネをしたり、騙しの手口もどきでカネを出させて返さなかったり、大物議員に媚びを売ったり、または人を裏切ったりするような政治家の悪いところばかりを身に付けてしまったような奴がいる。そいつの口癖が『市民の財産と命を守る』。お前は詐欺師か。そしてやたら愛国心を持っていることを強調するのも特徴としてあるのだが、なぜか多くの人が美辞麗句の言葉にだまされてしまうのだが、俺は騙されない。まあ、こいつに限らず自分がピンチになると自らが助かるために仲間を背後から撃つような奴が多い。
 さて、今回紹介する映画ロベレ将軍だが、ちんけな詐欺師が主人公のドラマ。俺の知っている詐欺師まがいの地方議員は言っていることとは大違いで臆病者なのだが、本作の主人公の詐欺師のクズっぷりもなかなか凄い。映画の前半はこの主人公の人の弱みに付け込んでの詐欺師っぷりに時間がかけられているのだが・・・。

 それでは第二次世界大戦末期のナチスドイツに蹂躙されたイタリアを舞台にしたストーリーの紹介を。
 イタリアのジェノヴァを支配するナチスのミュラー大佐(ハンネス・メッセマー)はナチスに対抗するパルチザンのリーダーであるファブリッツィオの存在に悩まされていた。そこへイタリアの英雄ロベレ将軍が更なる連携を図るためにファブリッツィオに密会するとの情報をミュラー大佐は得るのだが、部下が上陸したロベレ将軍を射殺してしまう。
 その頃エマニュエーレ(ヴィットリオ・デ・シーカー)は相手の弱みに付け込んでいたいけな人からカネを巻き上げ、そしてギャンブルで更にカネを増やそうと目論むがいつも賭博で全財産がパー。今日もせっせと詐欺をしているエマニュエルだったが、ついに警察に逮捕される。
 少し前にエマニュエルと知り合ったミュラー大佐はある案を思いつく。一生刑務所暮らしをしなければいけないぐらいの詐欺をやらかしていたエマニュエルに自由と引き換えに、彼にロベレ将軍を演じさせてスパイの役割をさせること。イタリアの政治犯ばかりいる刑務所にエマニュエルをロベレ将軍として送り込むのだが・・・

 前半はエマニュエルが敵方のドイツの将校と手を組んで、イカサマを仕掛けるのだが、これがなかなかのクズっぷりを発揮する。戦争中を上手く渡り歩くために祖国の人間を利用するなど愛国者から見れば非常に腹の立つ奴だ。そして、この詐欺師が英雄ロベレ将軍を演じるも自分とは真逆のタイプの人間を演じるには荷が重い場面が多々出てくる。しかし、日頃は庶民を騙すことに忙しい男も、次第に戦争の現実を否が応でも感じさせられることになる。その結果、愛国心に目覚め、拷問にも耐え抜き、仲間を売るような卑怯なことはせずに、英雄ロベレ将軍として最後まで振る舞うのだ。詐欺師から英雄へ変わっていく過程は非常に上手くできており、これが感動させる。
 前述したモラルの欠けた地方議員だが詐欺師から英雄になろうとしても、口先だけの愛国心では自らを命を祖国のために投げ出すことはできない。だいたい先日、衆議院議員選挙が終わったばかりだが、果たし本当に我が国の同胞のために自らの命を捨てれる覚悟の議員は何人いる?国会議員ならば自らの命、家族を犠牲にしてでも日本人を助ける覚悟が必要だ。それでなきゃ国民の命も財産も守れない。
 しかし、ストーリーも見事だが、もっと興味深いのが監督がロベルト・ロッセリーニ、主演がヴィットリオ・デ・シーカという組み合わせ。ちなみにヴィットリオ・デ・シーカだが、この人は本業は映画監督であり多くの名作を世に遺している。このイタリアのネオリアリズモを代表する2人の大監督がタッグを組んでいることに、大きな驚きを感じるし、ヴィットリオ・デ・シーカってなかなか格好良いオジサンであることに少しばかり驚いた。
 英雄であることが如何に大変かわかるし、自分の地位が転げ落ちることを恐れて愛国心を持っているように見せかける詐欺師みたいな奴の見抜き方もちょっとだけ理解できる。そして戦時中に限らず何を信じたら良いのかわからない時にでも良心を持ち続けることの大切さを感じることが出来る映画として今回はロベレ将軍をお勧めに挙げておこう。

 監督はロベルト・ロッセリーニ。世界の映画に影響を与えたイタリアのネオリアリズモの先駆け作品として無防備都市、戦争の悲しさをオムニバス形式で撮った戦火のかなたがお勧め。

 

 

 
 

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