「リ~ン、リ~ン・・・」
火曜日の朝、電話がなった。
この日、私は長~い連続出勤のあと、ついに獲得した正真正銘の休日。
朝方、夜明け近くまで物書き(原稿の再校中)をしていた私は、二度寝した。
電話の呼び出しで、うとうとしていた私は仕方なく、受話器を取ろうと、電話まで這って行った。
「どうせ、勧誘だろう」
と、思いながら・・・。
最近,命運社(仮名)という名の葬儀屋さんからの電話が多い。
しつこいくらい、毎日かかってくる。
積み立てを・・・ということらしいが、毎回、お断りしている。
最初の頃は、私も、
「両親が今、出かけておりますので・・・」
「今のところ、間に合ってます」
などと、丁寧に断っていた。
しかし、時間帯など関係なく、毎日のように、電話があると、嫌気がさしてきた。
段々、私の応対も雑になってっくる。
「両親共に、ピンピンしてますので」
「私も病気知らずでして・・・」
「今のところ、結構です!」
遂には、
「あなたは私が死ぬのを待っているのですか」
という気分になった、その時である。
再び、電話がなったのは。
きっと命運社だ!
休日くらい、ゆっくり休ませてくれたまえ!
そんな気分で、電話に答えた。
「はい、鈴木です!」
声のトーンがいつもより、怖かったし、寝ぼけていたと思う。
受話器の向こう側で、聞きなれた声がした。
「とあるスーパーの、とある です」
と・あ・る・スーパーの・・・?
と・あ・る・さんって誰だっけ?
えっ・・・もしかして、とある店長
私の ゆっくりとした思考回路が突然、フル回転で、始動し始めた。
「わっ・・・私、鈴木です」
「おはようございます」
と、店長。
「おっ、おはようございます・・・」
私、もしかして、今日、出勤だったっけ
今日は、絶対に休日だ!!という自信すら、一瞬、揺らいだ。
「四万十川の海苔・・・」
店長は、そういったきり、黙った。
しまんとって、四国の?
これだけ言えば、私には何のことか、分かると店長は思っているようだったが、正直、私には四国がどうしたのか、さっぱり分からない。
海苔は海でとれるんじゃなかったっけ?
何故、川なんじゃ?
寝ぼけている私には、その程度しか、思い浮かばない。
「えーっと・・・」
店長は、そういうと、ちょっと間をあけてから言った。
「実は、この海苔の発注が110上がっているのですが、お客様からの特注ですか?」
発注と聞いて、やっと我に返った。
四万十川の海苔って、粉末の海苔ふりかけのような商品・・・だわ。
「いいえ、110も発注したつもりはありません。10の間違いです」
「そうですか、10ですね」
プライスカードの発注を1、そして商品の入荷数を10と入力した筈だが・・・?
ハンデイの画面では、確かに110に見える。
私がプライスカードあり、に設定し忘れていたとしたら・・・? 商品が110という事になるが・・・。
でも、ちゃんと、プライスカードあり!にしたと思うのだが・・・。
休日なのに、頭の中は、このことで、延々と悩むことになるのであった。
翌日、ちゃんと、プライスカードが発注した通りに一枚来ていた。
ほっ 岸辺さん曰く、
「私、30発注したはずの500円の缶詰めが130届いたことがあるよ!南副店長が、送り返したけどね。 130よ!いいのよ、貴方が間違えたんじゃ、ないんだから。それにしても、休日に店長から電話があると、どきってするよね」
はい、確かに、かなり どきっとしました!
最近、恋だの、ロマンスだのとは縁がない私達グロッサリーの女性陣。
(ほんとにあったら、困るわね、旦那様にとっては、犯罪行為になるからね)
たまには、店長から休日に電話を受けて、思いっきり どきっ とするのもいいかも・・・?