夕方5時。
日付けが明日までの豆腐に割引シールを貼っていると、岸辺さんが手伝いにきてくれた。
ほんの数メーター先では、店長がマイクを持ち、豆腐の店頭販売をしている。
初めて この豆腐の名を聞いた時、私は危うく ズッコケそうになった。
「風に吹かれて豆腐屋ジョニー、男前豆腐の販売を致しております」
初めてこの豆腐の店頭販売があった日、私は御菓子の荷出しをしていたのだが、 店長の声が店内に響きわたると、お客さんのクスクス笑う声とコメントが聞こえてきた。
「風に吹かれて豆腐屋ジョニーだってよ!!」
この豆腐に命名した方って、どんな人なんだろう?
一度、聞いたら忘れられない商品名である。
さて・・・。 私と岸辺さんは、店長の店内放送を聞きながら、好き勝ってなコメントをした。 (豆腐の値引きも同時進行で!)
「豆腐屋ジョニーですって! ジョニーだなんて、豆腐屋のイメージじゃないですね。外人の名前だもん。豆腐屋なら、太郎か次郎じゃなきゃ・・・。そこが、ウケるんでしょうけど」
と、私。
「そうねえ、ジュリーか、サザンを連れてこなきゃね!」
と、岸辺さん。
ジュリーかサザン
なるほど。
彼らなら、確かに横文字が似合う。
岸辺さん、さすがである。
「テレビでも放映され、今、話題の男前豆腐。今回、御試食を御用意致しました!」
「店長、頑張ってるね!」
岸辺さん、店長の熱心な呼び込みに感心しきり。
「この豆腐を食べたら店長のように、男前になります!って言わなきゃ。店長が言えば、説得力がありますもん」
と、私。
ちなみに、店長は、ホークスの斉藤和己投手にイメージが似ている。
背が高く、スラリとしていて、なんと言っても、高校球児ですから。(「ニューヘアスタイル」参照のこと)
値引きが終わり、バックへ引き上げると、 その後すぐに、店長もバックへ戻ってきた。
「岸辺さん、鈴木さん、試食をどうそ!」
私達は、「風に吹かれて~豆腐屋ジョニー、男前豆腐」(ホントに長~い商品名だこと!)を初めて試食した。
ツルンとした食感で、何もつけなくても美味しい!
「豆腐というよりは、プリンみたいですね!」
と、私は感想を述べた。
「うん、美味しいですよ、店長。これから どの豆腐が美味しいかと聞かれたら、これをお勧めしよう!」
と、岸辺さん。
「この豆腐を食べたら、店長のように男前になりますって店内放送で言わなきゃねって、さっき岸辺さんと話してたんですよ」
と、私が言うと、
「えっ!?何?」
と、岸辺さんが素早く反応した。
店長は、
「またまた、そんな・・・」
と、照れた様子。
そんな店長を見ながら岸辺さんは言った。
「やっぱり、自分で言うのは照れるよ!」
う~ん。そうですね。では、こうしましょう。
次回は、店長の隣で岸辺さんを助手にして、マイクで叫んでもらう。
「こちらに おられる お方を何方と心得る! 男前豆腐を食され、その名の通り、男前になられた店長であられるぞよ」
・・・とまあ、こういう感じでは、いかがでしょうか
店長・・・いや、お殿様!
岸辺さん、宜しくお頼み申し上げまする。 完