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溶剤を用いずに剥がせる塗料材の開発、ジェルネイルなどへの応用に期待

2019-11-02 | 科学・技術
 産業技術総合研究所機能化学研究部門スマート材料グループ山本貴広主任研究員は、株式会社TATと共同で、溶剤を用いずに剥がせる塗料材の作製技術を開発した(10月28日発表)。
 ポイント
 〇塗料材に液晶成分を混合することで、光で密着性を制御できる技術を開発
 〇近紫外光を当てると液晶成分の構造が変化して塗料材の密着性が大きく低下
 〇溶剤を用いずに剥がせるペンキやコーティング剤のほか、ジェルネイルなどへの応用に期待
 開発の社会的背景
 ジェルネイルは、爪を美しく装飾するだけでなく、労働生産性やQOLを向上する効果が期待されており、老若男女を問わず多くの人々に親しまれている。また近年では、スポーツ選手の爪を保護することによりパフォーマンス向上に繋げる試み(アスリートネイル)も行われるなど、ジェルネイルの利用と効果は、今後ますます拡大すると予測される。ジェルネイルは、液状の光重合性組成物を爪に塗布し、光照射により重合・硬化させて塗膜を形成して、爪に強固に密着させる。そのため、2~3週間は装飾された状態を維持できるが、剥がす際には、有機溶剤を大量に使用する必要があり、ジェルネイル利用者とネイリストの健康と安全に対する影響が懸念されていた。そのため有機溶剤を極力使用せずにジェルネイルを除去できる技術の開発が望まれており、これまでに酸性水溶液やアルカリ性水溶液などを用いる方法が提案されているが、現在のところ実用には至っていない。
 研究の内容
 従来の樹脂と液晶の混合物は柔らかく、ジェルネイルに用いるには硬さが足りなかった(硬さの指標である貯蔵弾性率が、約104 Pa)。そこで今回、光重合性組成物を含む樹脂原料を用いて、光による重合・硬化(光硬化)の際に架橋構造を導入することで、硬さの向上を試みた。樹脂原料と液晶の混合物を可視光(波長 = 405 nm、照射時間 = 3分)の照射で光硬化すると貯蔵弾性率は、これまでの千倍(107 Pa)程度まで向上させることができた。
 次に、混合物の無色化に取り組んだ。従来の樹脂と液晶の混合物は、液晶成分としてアゾベンゼン系化合物を含有しているため橙色に着色していた。ジェルネイルに応用する場合、別途さまざまな色に着色できるように、無色透明であることが望まれる。そこで、アゾベンゼン系とは異なる化合物を用いた新しい液晶成分を開発し、材料の無色化を進めた。
 光学特性と熱物性を指標に、数十種類の液晶成分を検討した結果、無色透明の混合物を得ることに成功した。この混合物に近紫外光(波長 = 365 nm、照射時間 = 10分)を照射すると、液晶成分の凝集構造が変化し、樹脂と相分離して白濁化することを確認した。この状態になると、基材(アルミ)に対する混合物の密着性が、照射前の10分の1まで低下した。なお、密着性は、混合物の弾性率測定の際に、混合物に加えるずり応力を大きくしていき、均一混合の混合物がアルミ製測定治具から外れるときのずり応力から推算した密着性を100とした相対値で評価した。
 今回の技術により、溶剤を用いずにジェルネイルを簡便に剥がせる新しいプロセスが想定される。まず、今回開発した混合物を基材とするジェルを爪に塗布する。そして、現在の施術と同様に可視光(波長 = 405 nm)を照射して光硬化させる。ジェルネイルを剥がす際は、近紫外光(波長 = 365 nm)を照射して相分離を誘起し、ジェルネイルと爪の密着性を低下させて剥がす。なお、これらの可視光と近紫外光は、既にジェルネイルの施術で広く使用されており、既存のライトを使用できる。今後、今回の技術の進展によって、溶剤を全く使用しない施術が可能となり、ジェルネイル利用者とネイリストの健康と安全の向上が大きく期待できる。
 今後の予定
 今後は、材料メーカーとの連携を進め、数年以内の実用化を目指す。
 ◆用語の説明
 〇アクリル樹脂、ウレタン樹脂
 アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体をアクリル樹脂と呼び、ウレタン結合をもつ重合体を総称してウレタン樹脂と呼ぶ。アクリル樹脂は透明性に優れ、ウレタン樹脂は耐摩耗性に優れており、さまざまなプラスチック製品の原料として使用されるほか、接着剤や塗料の成分としても使用される。
 〇液晶
 液晶は、狭義には、細長い棒、あるいは平たい円板のような形を持った分子が、重心の秩序性は無く、配向に秩序性を持って凝集することにより発現する状態であり、屈折率などの物性に異方性が生じる。また広義には、液晶状態を示す化合物を指す。これまで、薄型のテレビやディスプレイの表示材料として利用されてきたが、近年、液晶の特性を活かした新しい産業応用を目指した研究が進められている。
 〇相分離
 2種以上の物質の相溶性(分離せずに混ざり合う性質のこと)が温度や圧力などによって低下し、各成分が均一に混合している1相の相溶状態から、各成分に分離する現象。
 〇QOL
 Quality of Lifeの頭文字を取った言葉。生活の質と訳され、肉体的、精神的、社会的、経済的、全てを含めた生活の質を意味する。医療や介護、教育などさまざまな分野で注目・活用され、どれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているかということを尺度として捉える概念。
 〇アスリートネイル
 一般社団法人アスリートネイル協会( https://www.athlete-nail.com/)が推進する、アスリートのけが予防や競技力向上を目的として行う、爪をケア・メンテナンスする施術。
 〇光重合性組成物
 光の照射によって重合反応(高分子化)が進行する低分子化合物を含む組成物。
 〇貯蔵弾性率
 物質の粘弾性を記述する物理量の1つで、外力とひずみによって、物質に生じたエネルギーのうち物体の内部に保存(貯蔵)される成分であり、硬さの1つの指標となる。
 〇アゾベンゼン系化合物
 光異性化反応を起こす代表的な化合物。2つの窒素原子間の二重結合に対して、2つのベンゼン環が結合した構造を含む化合物。

 今日も晴れ。雲が少なく、風も弱い。天候が穏やかだと朝の散歩は快適だ。
 近所のお家の軒下に”ツワブキ”が植えられており、花が咲いている。数少ない秋~冬にかけて花を咲かせる草花に、”ツワブキ”がある。キク科の花なので、菊様の黄色い一重の頭花である。葉は大きくて形はフキ(蕗)に似ており、葉色はとても艶々(つやつや)している。名(ツワブキ)の由来は、このツヤ(艶)のあるフキ(蕗)の様な葉からツヤバブキ(艶葉蕗)→ツヤブキ→ツワブキとなった。葉に厚みがあるので「厚葉蕗」→ツワブキとなった説もある。最古の園芸書「花壇綱目」(水野元勝の著書、1681年刊)に庭植えが載っている。
 葉が大きくて艶があり、観葉植物となっている。が、”ツワブキ”の花も良い。葉には、斑(黄斑)が入っているものや、白斑葉、縮葉などもある。
 因みに、葉や根茎に強い抗菌作用がある成分(ヘキセナール)を含んでいるので、湿疹・切り傷・火傷などに効果がある(葉を火で炙り、刻んで用いる)と言う。他に、早春の若葉はお浸しで美味しい、とか。
 ツワブキ(石蕗、艶蕗)
 学名:Farfugium japonicum
 キク科ツワブキ属
 常緑多年草(宿根草)
 開花時期は10月~12月
  (初冬の季語になってる)
 花は菊様で、花色は鮮やかな黄色
 花が終わるとタンポポに似た種ができる