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光をあてるとタンパク質を作り出すことができる人工細胞の作製に成功

2019-05-11 | 科学・技術
 東京工業大学地球生命研究所の車兪澈(くるま ゆうてつ)特任准教授と東京大学大学院新領域創成科学研究科の博士課程大学院生Samuel Berhanu(サミュエル・ベルハヌ)、上田卓也教授は、光をあてるとタンパク質を作り出すことができる人工細胞の作製に成功した。
 人工細胞は、脂質膜の中でDNAからタンパク質を合成する擬似的な細胞である。これは、非生物である物質や遺伝情報から、生命現象が創発する過程を再現できるとして期待されている。しかし、これらの反応は、あらかじめ供給したエネルギー源を消費して反応を行うだけのもので、実際の細胞のようにエネルギー源であるATP自体を生産することはできなかった。
 研究グループは今回、光をあてるとATPを生産する植物の葉緑体のような細胞小器官を人工的に作製し、これを人工細胞に組み入れることで、光エネルギーからタンパク質を合成することに成功した。さらにこの方法を用いて細胞小器官を構成している膜タンパク質を合成できた。より生物に近い、エネルギー的に自立した人工細胞の実現に道が拓けた。
 研究成果
 人間が生活で電気を消費して生きているように、細胞もATPと呼ばれるエネルギー源を消費して生きている。ATPは通常呼吸や光合成により細胞内で生産される。
 車特任准教授らは、光エネルギーを利用してATPを生産する、直径約100~200 nm(nmは、1 mmの100万分の1)の人工細胞小器官を生み出した。
 光照射により生産したATPを遺伝情報伝達分子(mRNA)の材料として、または翻訳のエネルギーとして消費することで、DNAからタンパク質を合成する人工細胞を作製した。これにより、光という物理的なエネルギーを、情報伝達分子や機能性高分子に変換することが人工細胞系で可能になった。さらに反応産物として人工細胞小器官の部品となるタンパク質を合成することで、実際の生物と同じ様に自身のパーツを生み出すことに成功した。
 研究の経緯
 細胞内のATPは主に細胞膜、またはミトコンドリア内膜に存在するATP合成酵素によって合成される。ATP合成酵素が働くためには、あらかじめ膜内外のプロトン濃度勾配を形成する必要があり、これが直接のエネルギーとなる。プロトン濃度勾配は通常、呼吸や光合成による電子伝達系を経て形成される。
 研究グループは、好塩菌から単離したバクテリオロドプシン(bR)が光エネルギーからプロトン濃度勾配を形成することに着目し、bRとATP合成酵素を組み合わせることで、光によってATPを合成する人工細胞小器官を作製した。直径数百nmほどのこの人工細胞小器官を、細胞と同じくらいのサイズの大きな膜小胞(GUV)に閉じ込めて光を当てたところ、実際の細胞内と同じレベルのATPを人工膜の中に合成することができた。
 具体的には、光合成したATPからmRNAを合成し、翻訳と合わせることでGFP(緑色蛍光タンパク質)を合成した。また、アミノ酸をtRNAに結合する際のエネルギーとして、または翻訳の直接的なエネルギー源であるGTP(グアノシン3リン酸)を合成するためのエネルギーとしてATPを消費することでGFPを合成した。生きた細胞の中ではATPを細胞内諸反応のエネルギー源として、あるいはmRNAの基質として消費している。そのため、今回、生きた細胞と同じことを人工細胞系で再現した事になる。
 ◆用語説明
 〇人工細胞
 直径数μmから数十μmマイクロメートルの膜小胞の内部でタンパク質を合成する擬似的な細胞。内部に無細胞系を持つ。
 〇 ATP
 アデノシン3リン酸。アデノシンに3分子のリン酸が結合したエネルギー貯蔵分子。細胞内での様々な反応に消費される。
 〇細胞小器官
 細胞内部にある様々な機能を持つ構造体。ミトコンドリアや、葉緑体などがこれにあたる。
 〇人工細胞小器官
 バクテリオロドプシンとATP合成酵素を直径約100~200nmの脂質膜(リポソーム)に構成した人工的な細胞小器官。光をあてることで、バクテリオロドプシンがリポソーム内に水素イオン(プロトン)を輸送し、これにより形成されたリポソーム内外のプロトン濃度勾配がATP合成酵素を駆動させることでATPを合成する。
 〇mRNA
 伝令RNA。タンパク質を合成するため、DNAの持つ遺伝情報をコピーしたRNA。
 〇ATP合成酵素
 膜を介したプロトン濃度勾配をエネルギーとして、ADPとリン酸からATPを合成する酵素。F型のATP合成酵素は3種類の膜タンパク質と5種類の細胞質タンパク質から構成される。
 〇バクテリオロドプシン(bR)
 高度好塩菌が紫色の細胞膜上に持つ7回膜貫通型の膜タンパク質。光をあてると内部のレチナールが異性化し膜の反対側へプロトン分子をポンプする。
 〇Giant Unilamellar Vesicle (GUV)
 巨大膜小胞。リン脂質から構成されるカプセル状の膜構造。内部中空になっており様々な分子を内包することができる。
 〇無細胞系
 試験管内でDNAの持つ遺伝情報から転写翻訳を経てタンパク質を合成するバイオテクノロジーツール。個々の因子から再構築したものはPURE systemと呼ばれる。
 〇tRNA
 転移RNA。mRNA上の3つ文字記号を解読し、対応するアミノ酸をリボソームに運ぶ73~93塩基のRNA。

 今日も朝から晴れ。暫く雨が降りそうもない。早朝にゴーヤの苗を植えた。暑い日が続くと大きくなる・・!。
 散歩で見つけた、お庭の石の側での”タツナミソウ”の花。花は茎から基部で急に曲がって直立した筒状で、先が丸く膨らみ横向きとなっている。茎に幾つもの花穂を出し、同じ向の花を付ける。この様な花姿が波頭の文様を思わせる。・・この様子が名の由来。
 タツナミソウの仲間には多くの種があり、分類が難しいと言う。学者により見解が異なるので、学名なども違う・・と言われる。
 タツナミソウ(立浪草)
 別名:スクテラリア
 学名:Scutellaria indica
 シソ科タツナミソウ属
 多年草
 原産地は東アジア(北海道を除く日本列島を含む)
 開花時期は4月~6月
 花冠は筒部が長い2~4cmの唇形、基部で急に曲がり直立する
 上唇は兜状に丸く膨らみ、下唇は内側に紫色の斑点があり3裂している
 花色は紫が基本で、青紫・淡紅紫・ピンク、白もある


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