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新分子分光法の開発に成功、波形制御で分子の同定を高速・簡便化

2018-11-12 | 科学・技術
 分子を計測する手法で、光を用いた方法は、対象物を壊すことなく元の状態を保ったまま計測できるという優れた特性を持っている。この特性を活かし、身の回りの物質、例えば大気中の環境ガスの計測や、生物の細胞や組織の計測などに利用されている。
 分子を構成する複数の原子は、外部からエネルギーを与えられると各々固有の周期で振動する性質を持っている。この振動のエネルギーと同じエネルギーを持つ光を分子に当てると、分子は光を吸収して振動し始めるため、この光の吸収を計測することで分子を同定することができる。この手法は一般に分子分光と呼ばれ、その中で最も広く利用されているのがフーリエ変換分光法である。約50年前に発明されたこの分光法は、現在においてもなお化学分析の標準法として利用されている。さまざまな周期で振動する分子振動を1回で同時計測できるため、あらゆる分子の同定が可能であるが、計測速度が遅いため、1秒間に10回程度の計測が限界だった。この問題に対して、近年、極めて緻密に制御された最先端レーザーを用いて同等の計測を高速化する手法(デュアルコム分光)の研究が盛んに行われ、光計測科学の一大トピックとなっている。しかし、この手法には複雑な実験装置が必要であるため、実用的な計測機器には向かない。
 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻の井手口拓郎講師・橋本和樹大学院生らの研究グループは、最先端の光技術の知見を基にこれまでのフーリエ変換分光法を見直し、その計測装置に高速に角度変化する鏡を利用した波形制御技術を導入する工夫を施し、従来手法を約1,000倍高速化できることを見いだし、1秒間に1万回以上の計測をすることに成功した。
 従来のフーリエ変換分光法の計測速度を律速していたのは、マイケルソン干渉計の一軸方向に動く鏡の動作速度である。この鏡の持つ機能を光の波形制御技術で代替することができる点に着目し、波形制御機構を持つマイケルソン干渉計を導入した。高速に角度変化する鏡を波形制御機構に組み込むことで、従来型に対して1,000倍の高速性能を実現するに至った。波形制御で光の干渉波形を最適化することにより、データサンプリングの周波数で決まる最高速度の計測を実現したことがこの技術のポイントである。これにより、デュアルコム分光法と同等の機能を実現した。また、本手法は光源に高い時間コヒーレンスを要求しないため、デュアルコム分光法のようにコヒーレントなレーザー光源を用いる必要がない。そのため、太陽光やLEDなどの身近な光(インコヒーレント光)による高速計測が可能であることもこの手法の利点となる。
 今後、短時間のうちに複雑な化学反応を経る燃焼過程の解析や、リアルタイムの環境モニタリング、食品、生物試料の分析などに利用されることが期待される。
 ◆コヒーレント光、インコヒーレント光
 空間的あるいは時間的に光の波の位相が揃っている場合、その光をコヒーレント光と呼び、具体的にはレーザー光が挙げられる。本技術では、時間に関するコヒーレンスを対象としている。一方、太陽光やランプ、LEDなどの光は位相が揃っておらず、インコヒーレント光と呼ばれる。
 ◆フーリエ変換分光法
 光の干渉を利用した分光法。はじめに、入力光を2つに分割・再結合して出力するマイケルソン干渉計に広いスペクトルを持つ光(一般には白色光)を入力し、出力光を光検出器に導入する。次に、干渉計で分割された光の相互遅延量を変えながら光の強度を計測することで、白色光の自己相関干渉波形を得る。最後に、得られた波形をフーリエ変換することで入力光のスペクトルを得る手法。
 ◆デュアルコム分光
 光周波数コム(2005年ノーベル物理学賞の対象技術)と呼ばれる極限制御された広帯域レーザーを2台用いることで実現するフーリエ変換分光。繰り返し周波数のわずかに異なるパルスレーザー2台から出射されるビームを空間的に重ね合わせて光検出器で干渉光の強度を計測する。パルス間の相互遅延量が自動的に増加(または減少)するため、高速なフーリエ変換分光が可能である。
 ◆マイケルソン干渉計
 半透過鏡に入射し、空間的に2つに分けられた光をそれぞれ鏡で跳ね返し、同じ半透過鏡でそれらの光を再度重ね合わせ、光検出器でその干渉強度を計測する干渉計。フーリエ変換分光法の基幹部であるのみならず、重力波検出器(2017年ノーベル物理学賞の対象)などにも利用されている。
 ◆光の波形制御技術
 広帯域光を空間的にスペクトル分解し、空間分解された光スペクトルの位相を変化させることで、光の波形を任意に変化させる技術。

 今日の天気は曇り。お日様が出ていない。
 垣根の”ベニシタン”、赤い実が熟している。”ベニシタン”はバラ科コトネアスター属(Cotoneaster)植物で、良く普及しているのは”ベニシタン”である。このため、”ベニシタン”の別名として”コトネアスター”と呼ぶことがある。
 ”ベニシタン”の花は淡紅色の5弁花で、全開しない(つぼみがち)花である。果実は球形の鮮明な光沢ある赤色になる。花の色が赤みを帯びた白色もあり、”シロシタン”と呼ばれ、枝変わり品種と言われる。
 ベニシタン(紅紫壇)
 バラ科シャリントウ属 (コトネアスター属)
 中国原産、昭和初期に渡来
 常緑小低木、常緑であるが関東以北では紅葉・落葉する
 枝が横に良く伸び、枝垂れてくる
 開花時期は5月~6月
 花は葉の脇に咲く、花径は数mm、5弁花で花色は淡紅色
 秋に球形の小果(径数mm)が光沢ある鮮紅色に熟して鈴なりにつく


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