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磁石・鉄鋼などの磁性材料の原子が直接見る電子顕微鏡を開発

2019-06-14 | 科学・技術
 東京大学 大学院工学系研究科附属総合研究機構柴田直哉機構長と日本電子株式会社の共同開発チームは、新構造のレンズを組み込んだ画期的な電子顕微鏡を開発した。これまで磁場のない条件では不可能だった原子の直接観察を世界で初めて実現し、さらに磁気特性を持つ機能性材料(磁性材料)の詳細な原子の観察に成功した。
 光学顕微鏡は光を用い、光学ガラスをレンズとして使って物体の拡大像を得るが、電子顕微鏡では強力な磁場をレンズに用いる。磁場中に電子を入射するとローレンツ力という力を受けて電子は曲がるが、この現象を試料の近くでレンズのように作用させることで像を拡大している。この強い磁場を使った対物レンズの性能が、電子顕微鏡の性能、すなわち分解能を決定する。
 共同開発チームは、試料室を磁場フリー(磁場のない)環境に保つことができる全く新しい対物レンズを試作し、そのレンズを搭載した電子顕微鏡を開発した。この対物レンズは、あたかも通常の対物レンズを上下に2つ組み合わせて1つのレンズとして用いるかのような構造をしており、試料はこの上下レンズの間に挿入して観察する。この際、上下のレンズ磁場を逆向きに発生させることによって、試料上で磁場同士がちょうど打ち消し合ってほぼゼロになるように調整する。その結果、試料が設置されるレンズ内部の磁場強度を0.2ミリテスラ以下に抑えることに成功した。これは通常の対物レンズ内部の磁場の1万分の1以下に相当し、磁性材料の観察に影響を及ぼさない磁場フリーな環境といえる。
 さらに、開発した新しい対物レンズと最新の収差補正装置(DELTA型コレクター)を組み合わせることで、原子分解能磁場フリー電子顕微鏡(MARSマース:Magnetic-field-free Atomic Resolution STEM)を開発した。この装置の性能評価を行うために、窒化ガリウム(GaN)単結晶を観察するとGa-Ga原子間の距離はわずか92ピコメートルしか離れていないが、その2つの原子が明瞭に分離して観察できていることが分かった。この結果より、少なくとも92ピコメートルの空間分解能が達成されていると判断できる。
 次に、典型的な軟磁性材料である電磁鋼板の原子観察を行った。電磁鋼板は変圧器やモーターの鉄芯として広く用いられている材料で、ミクロな組織の制御がその性能向上に極めて重要である。しかし、軟磁性材料は強磁場中に入れると容易に磁化され変形してしまうため、電子顕微鏡による原子レベルの組織観察は極めて困難であった。新しく開発した電子顕微鏡で観察したところ、電磁鋼板でも磁性のない材料と同じぐらい容易にその原子構造を観察できた。
 原子観察が最も困難な材料の1つである電磁鋼板で原子観察に成功したことは、あらゆる磁性材料の原子観察が可能になったことを意味しており、88年以上続く電子顕微鏡開発において磁場フリー環境における原子分解能観察を初めて実現した画期的な成果である。
 ◆用語解説
 〇電子顕微鏡
 電子線を試料に入射し、試料により透過散乱された電子線を磁場レンズにより拡大して、試料中の構造を直接観察する装置。現在、原子の直接観察も可能。電子顕微鏡は、光学顕微鏡の線源(可視光)による原理的分解能(およそ1マイクロメートル)の限界を、電子の波としての性質を利用して突破した観察装置であり、量子力学の恩恵を最も直接的な形で応用展開した観察技術である。
 〇磁場
 磁界ともいい、磁気的な作用を及ぼす空間やその空間の性質を指す。
 〇対物レンズ
 試料を出射した電子で結像するための初段のレンズ。最も重要なレンズであり、対物レンズの性能が最終的な像の質(分解能、コントラストなど)を決める。
 〇電磁鋼板
 電気エネルギーと磁気エネルギーの変換に優れた鋼板。発電所の発電機や変圧器、家電・IT機器に内蔵されるモーターなどに利用される。一方向に優れた磁気特性を発揮するよう加工時に結晶軸の方向を精密に制御して製造する方向性電磁鋼板などがあり、機能材料の代表格である。
 〇ポールピース
 電磁石が発生する磁束をヨーク(磁石が持つ吸着力を増幅する軟鉄)を通して狭い空間に誘導し、試料室に強い磁場を発生させるために使われる磁極のこと。
 〇光軸や非点
 良質な電子顕微鏡像を得るために必要なレンズ調整。光軸調整では、対物レンズの中心と電子線の入射方向を一致させることで良質な像が得られる。非点はレンズの直交する軸の焦点距離が違う現象であり、補正レンズを使って補正する。
 〇収差補正装置
 複数の磁場レンズの組み合わせにより、対物レンズの収差を補正し、理想的なレンズに近づける装置。電子顕微鏡では、四極子レンズ、六極子レンズ、八極子レンズなどの非回転対称な特殊なレンズを組み合わせて作製する。

 今日のお天気は晴れ。夕方から雨の予報。畑作業は、玉ねぎの収穫。2個毎に括って、干す。
 マンションの玄関前の小さな庭で、”キリンソウ(麒麟草)”の花が咲いている。黄色の花だ。多年草なので、何時も同じ場所で咲く。
 太い根茎から肉質の円柱形の茎が出て、茎の先端に平らな集散花序が付き、小さな花が沢山咲く。満開の頃は黄色い花を敷き詰めた様子となる。葉は多肉質でサボテン似の外観で、互生し等卵形または長楕円形でふちには鈍鋸歯がある。
 名(キリンソウ)の由来には諸説あり、想像上の動物である麒麟の胸が黄色であることから・・の説、黄色い花が輪になって咲く・・の説などがある。
 キリンソウ(麒麟草、黄輪草)
 別名:セダム(Sedum)
 学名:Sedum aizoon var. floribundum
 ベンケイソウ科キリンソウ属
 耐寒性多年草の多肉植物
 原産地は日本
 開花時期は5月~7月
 草丈は30cm~50cm
 茎頂に沢山の5mm程の鮮黄色の小花を付ける
 花は黄色い五弁花


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