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■第56回国際現代書道展 (2025年1月15~19日、札幌)

2025年01月19日 08時55分24秒 | 展覧会の紹介-書
 毎年1月、札幌市民ギャラリー全館を借りて開かれる書展で、道内では、書道道展や毎日書道展北海道展に次ぐ規模といっていいでしょう。今年は「総出品点数1820点」とのことで、さらに「国際部」には台湾など漢字圏を中心に553点の応募があったとそうです。

 道展、毎日展と異なるのは、会員・会友の上に「審査会員」という肩書があること。
 島田一獄さんは「顧問」という肩書で出品していました。
 今年の審査会員はおよそ100人に及んでいます。 

 部門別に並んでいるのは会友と公募で、審査会員や会員は五十音順に陳列されています。
 したがって正確な人数・点数はわからないのですが、道展などにくらべると漢字、それも多字数書が非常に多いという印象を受けます。
 かな、篆刻てんこく・刻字もそれなりに出品されています。また、道展・毎日展にはない部門として写経があります。
 一方で、詩文書(この書道展では読売書法展とおなじく「調和体」と称しています)は少なめで、墨象や前衛書は皆無です。

 審査会員・会員の漢字・かなは、二尺八尺の額装・縦位置の作が大半でした。
 エントランスロビーにあった和田英峰さん「龍遊鳳舞」は、力を入れすぎず抜きすぎずの、なんとも気持ちの良い運筆に感じられます。最初に見たのがこれだったためか、会場では4文字の漢字がどうも目に入ってきます。
 文部科学大臣賞を受けた山田静洸さん「風幽響深」や、主催者側で審査会員に名を連ねる小原道城さん「風鳴地響」など、墨の潤滑、字の肥痩のメリハリなど、バランスの良さが、しろうとの筆者にも伝わってきます。

 かなは、帖の作品がわずかでした。
 漢字の中に交じって発表される展覧会の中で存在感を発揮するには、以前指摘したことがある「かな書のアポリア」がますます大きな課題になってくると思います。すなわち、本来は女性の手紙など小さくアンティームな世界でつづられてきたかな書が、展覧会という場では、ちょっと異なる書法で書かれなくてはならないということです。
 わりとシンプルな解決方法として「文字数を増やす」というのがあると思います。今回は、雄略天皇御製を書いた鈴木紅舟さんをはじめ、和歌を2ないし3首書いた人が目立ちました。
 広部翠月さんは西行の歌を、縦長の紙2枚に書き、片方はまっすぐ、もう一方は少し傾けて貼り付けることで、額装作品でありながら屏風のはりまぜを思わせるような効果をあげていました。
 一方で、中對雪心さんのように、空白をうまく生かすことで和歌1首でも、力を入れすぎず、かといって間延びもしない巧みさを発揮していると思われる人もいました。新古今和歌集に収められた 藤原元真の歌「をみなへし野辺の故郷思ひ出でて宿りし虫の声や悲しき」。

 調和体(詩文書)では、ゲーテの言葉を書き、天地を大胆に開けた笹原麗佐さんや、金子光春の詩とじっくり向き合った疋田瑞栄さんなどが印象に残りました。


 国際部は漢字の多字数書が大半です。なお、すべて軸装です。
 この会場から即断するのもまずいのかもしれませんが、少字数書や墨象といった、漢字本来の意味よりも造形性を重くみる行き方は日本独特のものかもしれないと感じました。
 その半面、カラフルな絵を描いた作が多く、これは絵をよくする小原道城先生もお喜びだろうな~などと思いながら会場を歩いていました。


2025年1月15日(水)~19日(日)午前10時~午後6時(最終日~4時)
札幌市民ギャラリー(札幌市中央区南2東6)

6月4日(水)~8日(日)
白老町中央公民館・町コミュニティセンター(胆振管内白老町本町1)

□国際書道協会 http://shodoh.net/k_1index.html

過去の関連記事へのリンク
第50回記念 国際現代書道展 (2019年)

第48回国際現代書道展 (2017)



・地下鉄東西線「バスセンター前駅」10番出入り口から約200メートル、徒歩3分
※筆者はいつも9番出入り口を利用しています

・ジェイアール北海道バス、中央バス「サッポロファクトリー前」から約520メートル、徒歩7分
・中央バス「豊平橋」から約820メートル、徒歩11分


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