北海道美術ネット別館

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■第54回新道展 (9月6日まで)

2009年09月05日 22時45分27秒 | 展覧会の紹介-団体公募展
 道展、全道展とならんで、道内の美術史の柱をかたちづくってきた団体公募展である「新道展」がひらかれている。
 ことしの図録で、元「北海タイムス」の美術記者であった五十嵐恒さんが述べておられるように、新道展もすこしずつではあるが変わってきている。やんちゃさや迫力のかわりに、洗練された作品が会場を支配するようになったという印象がある。
 これを、活気が失われたとみるか、落ち着きが出てきたとみるかは、おそらく人それぞれだと思う。
 ただ、ここ数年の、会員・会友への大量昇格によって、会員・会友の陳列数が一般のそれを上回る事態となっている。会の新陳代謝という側面を考えた場合、もうすこし新人に入ってきてほしいというのが本音ではないかと思われる。

 いずれにしても、とりわけベテラン勢は、例年の画風を踏襲している人が多い。
 その中では、鈴木秀明「レクイエム」(函館)が、180×360センチという大作で、圧巻。廃墟、朽ちる像といったモティーフは、これまでを引き継ぎながらも、馬の石像が画面を駆け回り、いつになく動感に満ちている。

 抽象では、藤野千鶴子(札幌)、今荘義男(岩見沢市栗沢町)の両ベテランが手堅さを見せている。
 福島靖代(札幌)は幻想的な光景を描きだし、丸山恵敬(同)は派手な色彩の中に静かな抒情をたたえている。
 風景画は、以前よりも減ったが、中谷勝善(札幌)、中村哲泰(恵庭)、香取正人(札幌)、山本家弘(日高管内新ひだか町)といった面々は、ベテランらしい味わいを感じさせる。西澤宏生(札幌)は、グループ「環」展の発表作だと思うが、駒ケ岳がまるでサント・ヴィクトワールのように、大気のふるえを伝えている。

 一方で、これまでの画風から転換を図った例もある。
 永井唄子(北斗)は、モノトーンの裸婦というイメージがあるが、今回はおびただしい紙片を貼ることでカラフルな画風へと一変した。技法におぼれず華やかな画面を展開している。
 杉本昌晴(札幌)は毎年のようにモティーフを変える人だが、ことしはバラの花をクローズアップし、手前に立つ女と横たわる女を配置。なぞめいた作品となっている。色彩は統一感が取れており、さすが。
 細い線を積み上げることで精緻な抽象画を制作してきた後藤和司(札幌)は、時計などを組み込んだ心象風景に転じている。
 大塚富雄「変異」(函館)は、魚や象と廃墟のような建物とを平面的に処理し、昨年の「愚」よりもさらに踏み込んだ、寓意的な世界を表現しており、目を引いた。

 このほか、今多博勝(「多」は、異体字。苫小牧)の絵に初めて着目した。
 有刺鉄線のある木の柵の向こうで、たくさんの人物が大きく口を開けているモノトーンの絵で、背景には黒い爆撃機のような影が飛んでいる。なんだか、1960年代の左派が描いた反戦を訴える告発調の絵のようにも見えるが、かえって現代では新鮮だ。

この項続く
 

2009年8月26日(水)-9月6日(日)10:00-17:30(最終日-16:30)、月曜休み
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)

第53回 ■続き
07年
06年
50周年記念展 ■50周年記念展・つづき(05年)

03年
02年
01年


参考:「全道展」と「道展」ってちがうの? という人のためのテキスト



・地下鉄東西線「バスセンター前」10番出口から徒歩3分、同「菊水」駅1番出口から徒歩8分
・ジェイアール北海道バス、中央バス、夕鉄バス「サッポロファクトリー前」から徒歩7分(ファクトリー線は徒歩9分)
・中央バス「豊平橋」から徒歩11分


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