(承前)
会友から選ばれることの多い協会賞(最高賞)だが、ことしは初出品から3年という関口幸子「遙かな日」(函館)が選出された(同時に会友推挙)。
戸が開け放たれた室内にたたずむ3人の少女、画面を横断して飛ぶ5羽の透明な鳩、重厚な色彩の家具調度など、どちらかというと道展に多い、写実的な筆つかいで複数の要素を組み立てて画面を構成した作品と言える。
相当な筆力の持ち主であることはまちがいないが、筆者は、床が格子模様である上に扉が斜めになっていることから、この絵の透視図法と遠近法が適切かどうかが気になって、どうにも落ち着かなかった。
会員には山形弘枝(函館)ら計6人が昇格した。
受賞者組では、会友市川正勝(苫小牧)の「汐風の中で」が、野の草花を精緻に描くことでかえって幻想性を獲得している。162×260センチの大作。
新会友は関口のほか、朝日弘子(札幌)、岩崎道子(石狩)、大浦義己(日高管内平取町)、小川エリ子(十勝管内中札内村)、鎌田きみ子(苫小牧)、木原文代(札幌)、小杉千賀子(同)、須見直子(同)、田村きん子(登別)、中三保子(恵庭)、水嶋勝美(同)、溝端玲子(札幌)、山本祐梨子(同)、若生美和子(石狩)の計14人にのぼっている。
小川の「秋日A」は、紅葉のカシワ林を独特の色彩感覚で描き、パステル画の腰の弱さを感じさせない。
大浦の「ひまわり(09-I)」は、ややビュッフェの影響もありそうだが、色数をおさえてよくまとまっている。
ただし、この中には、昨年初出品という人もいるようで、会友に推挙するタイミングとしてはかなり早い。
よけいなお世話かもしれないが。
会友の一般出品作では、清野有香「未来」が気に入った。人物の頭部の背景は、一見、高層ビルと立体交叉道路のように見えて、実はただの模様だというのがおもしろい。
一般で賞に漏れた作品のなかでは、日没の景色から得た感動を色の配置の工夫でなんとか再現しようと努力した飯田優子「夕映え」と、靄のなかに浮かぶ人や木、塔などが独特の吉成茂子「朝ぎりの人(2)」。
昨年、筆者はインスタレーション・造形部門の危機から展評を書き起こしたが、ことしは、意外な作者がインスタレーションに転じて、この部門の存続に力を貸した。
それは、一昨年の協会賞を得た新鋭の櫻井亮(会友、夕張)。佳作賞を得た「神苑」は、木製の信号機二基の向こうに賽銭箱などのある小屋のような物が置かれた巨大な立体で、ロビーで堂々たる存在感を示していた。意図は明らかではないが、信仰心を皮肉ったとも、信仰心の不在を批判したものともとれ、おもしろい。
田中まゆみ(札幌)、林教司(岩見沢市栗沢)は例年通りの力作だったが、3階のいちばん奥に鎮座していた村上知亜砂「Gloomy cocoons~陰鬱な繭」(十勝管内)は、黒ずんだ羊毛をちりばめたインスタレーションで、将来性を感じた。
ところで、一般入選者には、すでに個展やグループ展で作品を拝見した人もいるのだが、どうも個展などのときよりもこぎれいに作品をまとめているように感じられるのは、気のせいだろうか。
道展、全道展に比べても、型破りの作品に対して新道展は寛容であったと思うし、そういう作品で押し通せばおもしろいのになあと思うのだが、いかがでしょう。
なお、図録の香取正人事務局長の文章は、なかなか心にしみる。
そうなんだよなあ、小手先の技術じゃなくて、「これを描きたい」という気持ちの強さって、画面に出るんだよなあ。あらためて、表現の原点を考えさせてくれる名文であった。
2009年8月26日(水)-9月6日(日)10:00-17:30(最終日-16:30)、月曜休み
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
会友から選ばれることの多い協会賞(最高賞)だが、ことしは初出品から3年という関口幸子「遙かな日」(函館)が選出された(同時に会友推挙)。
戸が開け放たれた室内にたたずむ3人の少女、画面を横断して飛ぶ5羽の透明な鳩、重厚な色彩の家具調度など、どちらかというと道展に多い、写実的な筆つかいで複数の要素を組み立てて画面を構成した作品と言える。
相当な筆力の持ち主であることはまちがいないが、筆者は、床が格子模様である上に扉が斜めになっていることから、この絵の透視図法と遠近法が適切かどうかが気になって、どうにも落ち着かなかった。
会員には山形弘枝(函館)ら計6人が昇格した。
受賞者組では、会友市川正勝(苫小牧)の「汐風の中で」が、野の草花を精緻に描くことでかえって幻想性を獲得している。162×260センチの大作。
新会友は関口のほか、朝日弘子(札幌)、岩崎道子(石狩)、大浦義己(日高管内平取町)、小川エリ子(十勝管内中札内村)、鎌田きみ子(苫小牧)、木原文代(札幌)、小杉千賀子(同)、須見直子(同)、田村きん子(登別)、中三保子(恵庭)、水嶋勝美(同)、溝端玲子(札幌)、山本祐梨子(同)、若生美和子(石狩)の計14人にのぼっている。
小川の「秋日A」は、紅葉のカシワ林を独特の色彩感覚で描き、パステル画の腰の弱さを感じさせない。
大浦の「ひまわり(09-I)」は、ややビュッフェの影響もありそうだが、色数をおさえてよくまとまっている。
ただし、この中には、昨年初出品という人もいるようで、会友に推挙するタイミングとしてはかなり早い。
よけいなお世話かもしれないが。
会友の一般出品作では、清野有香「未来」が気に入った。人物の頭部の背景は、一見、高層ビルと立体交叉道路のように見えて、実はただの模様だというのがおもしろい。
一般で賞に漏れた作品のなかでは、日没の景色から得た感動を色の配置の工夫でなんとか再現しようと努力した飯田優子「夕映え」と、靄のなかに浮かぶ人や木、塔などが独特の吉成茂子「朝ぎりの人(2)」。
昨年、筆者はインスタレーション・造形部門の危機から展評を書き起こしたが、ことしは、意外な作者がインスタレーションに転じて、この部門の存続に力を貸した。
それは、一昨年の協会賞を得た新鋭の櫻井亮(会友、夕張)。佳作賞を得た「神苑」は、木製の信号機二基の向こうに賽銭箱などのある小屋のような物が置かれた巨大な立体で、ロビーで堂々たる存在感を示していた。意図は明らかではないが、信仰心を皮肉ったとも、信仰心の不在を批判したものともとれ、おもしろい。
田中まゆみ(札幌)、林教司(岩見沢市栗沢)は例年通りの力作だったが、3階のいちばん奥に鎮座していた村上知亜砂「Gloomy cocoons~陰鬱な繭」(十勝管内)は、黒ずんだ羊毛をちりばめたインスタレーションで、将来性を感じた。
ところで、一般入選者には、すでに個展やグループ展で作品を拝見した人もいるのだが、どうも個展などのときよりもこぎれいに作品をまとめているように感じられるのは、気のせいだろうか。
道展、全道展に比べても、型破りの作品に対して新道展は寛容であったと思うし、そういう作品で押し通せばおもしろいのになあと思うのだが、いかがでしょう。
なお、図録の香取正人事務局長の文章は、なかなか心にしみる。
そうなんだよなあ、小手先の技術じゃなくて、「これを描きたい」という気持ちの強さって、画面に出るんだよなあ。あらためて、表現の原点を考えさせてくれる名文であった。
2009年8月26日(水)-9月6日(日)10:00-17:30(最終日-16:30)、月曜休み
札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
作家・美術評論家 根保 孝栄
さきほどの続きになりますが、居島さんは、いったんピアノと人物をメーンにした二科風の画風を解体して、抽象的な画面から自らを再構築して行った努力家です。
近年の作品は拝見していないのですが、気になります。
彼のみならず20世紀の絵画史のメインストリームがそうだったのですが。
色彩の魔術師でしたね。
たぶんミマンさんは、資質はカラリストだったと思います。
しかし、キュビスムや印象派など、構図は徹底的に勉強され、お弟子さんたちにも教えておられました。
ほんとうに勉強家だったと思います。
・独立展会友・全道展会員の中川克子さんは、人物の構成画風ですばらしい活躍ぶりですね。道新苫小牧支社の油絵講座の講師もしてますね。ダンスも一流とか。昔から芸の道には熱心な方で、ソロバン、社交ダンスと一流をマスター。勉強家ですね。
・春陽展会友・新道展会員の居嶋恵美子さんもカラーリストの抽象画家として異才をはなって一流になりましたね。
苫小牧の女性といえば、三浦美恵子さんが札幌で先ごろ個展を開いたばかりです。
http://blog.goo.ne.jp/h-art_2005/e/142ff07288b7a5ad66f9a5fb5d1abd58
「燐寸アート展」や「樽前arty」など、苫小牧でも若い世代が確実に育っているようです。頼もしく思います。