瀧口修造(1903~79)は、日本のシュルレアリスムの歴史で、伝説的な人物であった。少なくても自分にとっては。
戦前からブルトンやデュシャンと文通し、翻訳書を出し、シュルレアリスム国際運動の日本支部代表のような存在だったのである。
さらに、戦後は新聞や雑誌で展覧会評などを書く評論家としても幅広く活躍し、晩年には独特の絵画小品などの制作に取り組んでいた。さらに、今回の展覧会ではじめて知ったのだが、戦前を中心に詩作品がかなりある。
というわけで、詩(文学)と美術の間を架橋する人物としてこれほどの人物は、そうそう見当たらない。
おなじ建物に入っている小樽の文学館と美術館の同時開催展の対象にふさわしいといえるだろう。
そして、これまで筆者は知らなかったし、一般的にもほとんど知られていないと思うのだが、瀧口修造にとって、小樽、そして北海道は「第二の故郷」とでも言うべき、大切な土地なのであった。
両親を失い、関東大震災で学資も絶えて慶応義塾大をいったん退学した瀧口は20歳のころ、姉を頼って一時、小樽に住んでいたのだ。
瀧口の姉は花園小の前で文房具店を営んでいたという。
今回の展覧会のみどころは、クレーやエルンストなどの実作がたくさん来ていることや、瀧口の詩の自筆原稿などが展示されていること、瀧口がヴェネツィアビエンナーレのために欧洲に長期滞在した際の写真や資料などが並んでいることなど、さまざまあるが、やはり最大にすごいところは、瀧口が空想していたオブジェの店「ローズ・セラヴィ」(命名者はデュシャン)について紹介しつつ、戦前の文房具店をも、一角に再現しているところではないか。
もとより、当時の資料があるわけではないから、文字通りの「再現」ではない。札幌・狸小路にある、これまた奇跡のように役に立たないものばかりが売られている(急いで言いますが、これはほめ言葉です)古道具屋「十一月」の協力を得て、昭和初期にこういう文具店が小樽にあったのではないかと思わせるような店が、文学館の中にできているのだ。ガラス戸をあけて入ることはできないけれど、ガラス越しに、クレヨンや糸、よくわからない紙片などが、古めかしい戸棚に積まれているのが、見える。
晩年のシュルレアリスティック的な夢「ローズ・セラヴィ」が、北国に実在した美しい姉の営んでいた文具店と、ひそかにつながる。
この事態を目の当たりにしたときの感動を、いったいどう表現したらよいだろうか。
しかし、筆者がもっとも驚嘆し、感動したのは、図録の巻頭に掲載された巖谷國士さんの文章だった。
2013年5月18日(土)~6月30日(日)
市立小樽文学館・市立小樽美術館(色内2)
・JR小樽駅から約700メートル、徒歩9分
・中央バス・ジェイアール北海道バスの「高速おたる号」で「市役所通」降車、約690メートル、徒歩9分
一般 1000(800)円、高校生 500(400)円、障がい者・中学生以下 無料
小樽市内の高齢者 500(400)円
( )内は20人以上の団体
7月13日~9月23日 岩手県・萬鉄五郎記念美術館
10月3日~27日 山形県・天童市美術館
11月3日~12月23日 栃木県・足利市立美術館
戦前からブルトンやデュシャンと文通し、翻訳書を出し、シュルレアリスム国際運動の日本支部代表のような存在だったのである。
さらに、戦後は新聞や雑誌で展覧会評などを書く評論家としても幅広く活躍し、晩年には独特の絵画小品などの制作に取り組んでいた。さらに、今回の展覧会ではじめて知ったのだが、戦前を中心に詩作品がかなりある。
というわけで、詩(文学)と美術の間を架橋する人物としてこれほどの人物は、そうそう見当たらない。
おなじ建物に入っている小樽の文学館と美術館の同時開催展の対象にふさわしいといえるだろう。
そして、これまで筆者は知らなかったし、一般的にもほとんど知られていないと思うのだが、瀧口修造にとって、小樽、そして北海道は「第二の故郷」とでも言うべき、大切な土地なのであった。
両親を失い、関東大震災で学資も絶えて慶応義塾大をいったん退学した瀧口は20歳のころ、姉を頼って一時、小樽に住んでいたのだ。
瀧口の姉は花園小の前で文房具店を営んでいたという。
今回の展覧会のみどころは、クレーやエルンストなどの実作がたくさん来ていることや、瀧口の詩の自筆原稿などが展示されていること、瀧口がヴェネツィアビエンナーレのために欧洲に長期滞在した際の写真や資料などが並んでいることなど、さまざまあるが、やはり最大にすごいところは、瀧口が空想していたオブジェの店「ローズ・セラヴィ」(命名者はデュシャン)について紹介しつつ、戦前の文房具店をも、一角に再現しているところではないか。
もとより、当時の資料があるわけではないから、文字通りの「再現」ではない。札幌・狸小路にある、これまた奇跡のように役に立たないものばかりが売られている(急いで言いますが、これはほめ言葉です)古道具屋「十一月」の協力を得て、昭和初期にこういう文具店が小樽にあったのではないかと思わせるような店が、文学館の中にできているのだ。ガラス戸をあけて入ることはできないけれど、ガラス越しに、クレヨンや糸、よくわからない紙片などが、古めかしい戸棚に積まれているのが、見える。
晩年のシュルレアリスティック的な夢「ローズ・セラヴィ」が、北国に実在した美しい姉の営んでいた文具店と、ひそかにつながる。
この事態を目の当たりにしたときの感動を、いったいどう表現したらよいだろうか。
しかし、筆者がもっとも驚嘆し、感動したのは、図録の巻頭に掲載された巖谷國士さんの文章だった。
(この項続く)
2013年5月18日(土)~6月30日(日)
市立小樽文学館・市立小樽美術館(色内2)
・JR小樽駅から約700メートル、徒歩9分
・中央バス・ジェイアール北海道バスの「高速おたる号」で「市役所通」降車、約690メートル、徒歩9分
一般 1000(800)円、高校生 500(400)円、障がい者・中学生以下 無料
小樽市内の高齢者 500(400)円
( )内は20人以上の団体
7月13日~9月23日 岩手県・萬鉄五郎記念美術館
10月3日~27日 山形県・天童市美術館
11月3日~12月23日 栃木県・足利市立美術館