画家の魅力はそれぞれだと思うけれど
「ほかの誰にも似ていない絵」
「個性的な絵」
という点では、櫻井マチ子さん(札幌)の右に出る人はいないだろう。道内はもちろん全国的にみても、不思議であることが誰の目にもこれほど明らかな絵を描き続けている人はめったにいない。
その上、一目見ただけで、彼女の絵であることがわかるということでも、異例の存在だといえる。
もちろん、単に風変わりだということではない。計算されつくした構図と、細心の注意をはらわれた着彩が、作品の印象を鮮明なものにしている。
札幌時計台ギャラリーが年内いっぱいで閉まるため、全7室に旧作、新作を陳列した。これほどの規模の個展はおそらく、今後はないだろう。
下のフロア、A室の前には「シンプル・イズ・ベスト」という100号の2枚組み。モノトーンが、他の作品と異なるが、今回の展示作では最も古いものらしい。
次は「千年王国 千年愛」の№1~3。F120号3マイからなる大作だ。
A室には「天国の向こう(アニマの再来)」や「古式うるわし」、3連画のような「老聖人 そうあなたはかく語りき」なども展示されている。
冒頭画像は、B室。
ここに新作の「Boys,be ambitious」5点、「蜜華より(誰もねてはならぬ」などが展示されている。
C室は「ベルーナの不条理」シリーズを8点。
F20号の4点は「きのこ村のできごと」と題されている。
上のフロアは旧作が並ぶ。上下階とも、時代順ではない。
D室は「色即是空」シリーズが中心。
E・F室は「爬虫類館」と題されている。「お姫様はワ・タ・シ」「Very Very」など極彩色が特徴の、2000年前後の作品群だ。
最後のG室は2013年の個展で発表した、タロットカードを思わせる連作「adult baby」が並んでいた。
櫻井さんの絵については、シンメトリカルでスタティックな構図に着目する人もいれば、エロティックな要素をかぎ取る人もいる。曲線と直線の組みあわせの巧みさや、ピンクや水色といった輝かしい色を生っぽくなく配置した技巧の高さも、指摘しておくべきだろう。
エロティシズム的な要素については明示されているわけではない。それについて言及すればするほど、鑑賞する人の品性が試されているような感じすらある。その一方で、祭壇のような構図や、仏教画に登場する象といったモティーフなどから、宗教的な雰囲気をそこに読み取ることも可能だろう。櫻井さんの絵は、聖と俗が、不自然さなく共存している世界だともいうことができそうだ。
影響を受けた画家は? と尋ねたら、即座に「ピカソとダリ」という答えがかえってきた。
ピカソは、画集をめくると、やる気がわきおこってくるのだそうだ。
ダリはシュルレアリスム絵画の最高峰だが、彼の高い写実力と櫻井さんの画風は重ならない。左右に2人の人物(? や動物)を並列する構図が多いのは、「最後の晩鐘」シリーズと共通はしているが…。
とにかく、高雅なエロティシズムと宗教的な雰囲気、あでやかな色彩と迷宮のような構図など、さまざまな要素が詰まった櫻井さんの不思議ワールドが、一人でも多くの人に知られてほしいと、あらためて思う。
2016年5月16日(月)~21日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
過去記事へのリンク
■13→14展 (2013)
■櫻井マチ子展 (2013)
■櫻井マチ子展 (2010)
■櫻井マチ子個展(2008年)
■櫻井マチ子展(2007年)
■スネークアート展(2007年、画像なし)
■櫻井マチ子展(2007年)
櫻井マチ子展(2006年)
櫻井マチ子「妄想空間」絵画展(2004年)
櫻井マチ子「100枚展」(2003年、画像なし)
櫻井マチ子個展(2002年)
櫻井マチ子個展「Pretty Eros」(2002年)
櫻井マチ子個展(2001年)
山岸誠二と櫻井マチ子の場合(2001年、画像なし)
「ほかの誰にも似ていない絵」
「個性的な絵」
という点では、櫻井マチ子さん(札幌)の右に出る人はいないだろう。道内はもちろん全国的にみても、不思議であることが誰の目にもこれほど明らかな絵を描き続けている人はめったにいない。
その上、一目見ただけで、彼女の絵であることがわかるということでも、異例の存在だといえる。
もちろん、単に風変わりだということではない。計算されつくした構図と、細心の注意をはらわれた着彩が、作品の印象を鮮明なものにしている。
札幌時計台ギャラリーが年内いっぱいで閉まるため、全7室に旧作、新作を陳列した。これほどの規模の個展はおそらく、今後はないだろう。
下のフロア、A室の前には「シンプル・イズ・ベスト」という100号の2枚組み。モノトーンが、他の作品と異なるが、今回の展示作では最も古いものらしい。
次は「千年王国 千年愛」の№1~3。F120号3マイからなる大作だ。
A室には「天国の向こう(アニマの再来)」や「古式うるわし」、3連画のような「老聖人 そうあなたはかく語りき」なども展示されている。
冒頭画像は、B室。
ここに新作の「Boys,be ambitious」5点、「蜜華より(誰もねてはならぬ」などが展示されている。
C室は「ベルーナの不条理」シリーズを8点。
F20号の4点は「きのこ村のできごと」と題されている。
上のフロアは旧作が並ぶ。上下階とも、時代順ではない。
D室は「色即是空」シリーズが中心。
E・F室は「爬虫類館」と題されている。「お姫様はワ・タ・シ」「Very Very」など極彩色が特徴の、2000年前後の作品群だ。
最後のG室は2013年の個展で発表した、タロットカードを思わせる連作「adult baby」が並んでいた。
櫻井さんの絵については、シンメトリカルでスタティックな構図に着目する人もいれば、エロティックな要素をかぎ取る人もいる。曲線と直線の組みあわせの巧みさや、ピンクや水色といった輝かしい色を生っぽくなく配置した技巧の高さも、指摘しておくべきだろう。
エロティシズム的な要素については明示されているわけではない。それについて言及すればするほど、鑑賞する人の品性が試されているような感じすらある。その一方で、祭壇のような構図や、仏教画に登場する象といったモティーフなどから、宗教的な雰囲気をそこに読み取ることも可能だろう。櫻井さんの絵は、聖と俗が、不自然さなく共存している世界だともいうことができそうだ。
影響を受けた画家は? と尋ねたら、即座に「ピカソとダリ」という答えがかえってきた。
ピカソは、画集をめくると、やる気がわきおこってくるのだそうだ。
ダリはシュルレアリスム絵画の最高峰だが、彼の高い写実力と櫻井さんの画風は重ならない。左右に2人の人物(? や動物)を並列する構図が多いのは、「最後の晩鐘」シリーズと共通はしているが…。
とにかく、高雅なエロティシズムと宗教的な雰囲気、あでやかな色彩と迷宮のような構図など、さまざまな要素が詰まった櫻井さんの不思議ワールドが、一人でも多くの人に知られてほしいと、あらためて思う。
2016年5月16日(月)~21日(土)午前10時~午後6時(最終日~午後5時)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
過去記事へのリンク
■13→14展 (2013)
■櫻井マチ子展 (2013)
■櫻井マチ子展 (2010)
■櫻井マチ子個展(2008年)
■櫻井マチ子展(2007年)
■スネークアート展(2007年、画像なし)
■櫻井マチ子展(2007年)
櫻井マチ子展(2006年)
櫻井マチ子「妄想空間」絵画展(2004年)
櫻井マチ子「100枚展」(2003年、画像なし)
櫻井マチ子個展(2002年)
櫻井マチ子個展「Pretty Eros」(2002年)
櫻井マチ子個展(2001年)
山岸誠二と櫻井マチ子の場合(2001年、画像なし)