(承前)
さて、テンエイさんは、下のリンク先以外にも、パリや東京での個展、釧路での「ヴァガボンド」展など、精力的に活動している。
ことしは、これまで鯉江良二ら道外の気鋭の作家を招いて毎年開いてきた「交差する視点とかたち」が釧路芸術館などでも開催される予定で、旺盛な制作意欲はとどまるところを知らない。
冒頭の大作は
「ネエ ダンナサン あるいは飛べない面長始祖鳥」
を裏側から見たもの。
今展覧会の直前に完成した、できたてほやほやの新作である。
阿部典英さんはこの作品を作りながら、米谷雄平、砂澤ビッキ、菅原弘記、丹野信吾…のことを思ったという。
いずれも、北海道の美術の最前線をいっしょになって切り開いてきた盟友であり、いずれも鬼籍に入った作家たちでもある。
テンエイさんなりの祈りであり、鎮魂のかたちなんだろうと思う。
もうひとつ、私事にわたって恐縮だが、書いておきたいことがある。
阿部典英さんは、札幌東高校を卒業して、ゴム会社に就職した。
当時の大学進学率は昨今よりもはるかに低かったから、一般論としては、高卒で就職というのは、ごくふつうのことである。
ただ、これは、裏返していえば、美術に関してはまったくの独学であったということだ。
この事実は、筆者を非常に元気づけた。
そして、励まされるのは、筆者だけではないと思う。
阿部典英さんと同列に並べること自体おこがましいことかもしれないが、筆者も美術についてはまったくの独学であり、しろうとである。
筆者の無知蒙昧さにあきれた体験をお持ちの方も多いだろう。
見ることについて、とくに格段の才能があるわけでもない。
専門的教育を受けていないということが、大きなコンプレックスとして、いままでじぶんを苦しめてきた。
しかし、今回の展覧会を見て、やる気があって、一生懸命、かつ楽しんで取り組めば、なんとかなるのかもしれないと思えてきた。
あるいは、なんとかならないのかもしれないが、卑屈になることなく、地道に続けていこうと思った。
いちばん大事なのは、専門的教育を受けたかどうか、ではなく、持続する志なのだろう。
2012年4月7日(土)~5月6日(日)午前9:30~午後5:00(入場~4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D)
一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分
ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています
★オープニング・トーク
4月7日(土)9:30~(約40分)
トーク/阿部典英
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)
★トーク&ジョーク・ショー「走るブリキ男と工作少年、大いに語る」
4月14日(土)午後2~4時
トーク/秋山祐徳太子(美術家)、阿部典英
会場/講堂(240席・先着順) 参加無料
★ワークショップ(募集制)「自由に、グランブルー!~深海を想像して描く~」
4月28日(土)午後1:30~4:30
講師/阿部典英
会場/特別展示室と当館造形室(観覧券が必要です)
展覧会を作家や学芸員と一緒に観覧した後、海の底のようすや生き物を自由に想像して全員で描くワークショップ。大人も子どもも参加できます。定員50人。4月10日(火)募集開始。
★ギャラリー・ツアー(作品解説)
4月7日(土)、5月5日(土)、各日午後3:00~(約40分)
解説/当館学芸員
会場・特別展示室 (観覧券が必要です)
★ギャラリー・トーク
4月21日(土)午後3:00~(約40分)
トーク/当館学芸員
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)
関連記事
阿部典英さん、北見に登場!
■ハルカヤマ藝術要塞(2011年。執筆中)
■ 「札幌作家グループ展」阿部典英+柿崎熙+下沢敏也 帯広コンテンポラリーアート-真正閣の100日(2011)
【告知】阿部典英展 「ネエ、ダンナサン…」(2011)
【告知】第7回 2011新春特別企画展 阿部典英展 TEN-EI ABE EXHIBITION(2011年1~3月)
■北海道立体表現展(2010年、執筆中)
■交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年)
■阿部典英 Ten-ei Abe Exhibition(2009年)
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年)
■SAPPORO ART PLANETS展 (2009年5月)
■見えるもの⇔見えないもの-イマジネーションのちから- (2009年1-3月)
■交差する視点とかたち vol.2 (2008年7月)
■交差する視点とかたち 川上力三・阿部典英・下沢敏也(07年7月)
■SCAN DO SCAN(07年10-12月)
■企画展「07→08」(画像なし)
■WAVE NOW 06(阿部さんが参加)
■北海道立体表現展(06年、画像なし)
冬の定山渓(「ミスカッパ」の画像あり)
■阿部典英個展(2002年)
■北方圏美術展(2002年、阿部さんが参加)
※この項終わり
さて、テンエイさんは、下のリンク先以外にも、パリや東京での個展、釧路での「ヴァガボンド」展など、精力的に活動している。
ことしは、これまで鯉江良二ら道外の気鋭の作家を招いて毎年開いてきた「交差する視点とかたち」が釧路芸術館などでも開催される予定で、旺盛な制作意欲はとどまるところを知らない。
冒頭の大作は
「ネエ ダンナサン あるいは飛べない面長始祖鳥」
を裏側から見たもの。
今展覧会の直前に完成した、できたてほやほやの新作である。
阿部典英さんはこの作品を作りながら、米谷雄平、砂澤ビッキ、菅原弘記、丹野信吾…のことを思ったという。
いずれも、北海道の美術の最前線をいっしょになって切り開いてきた盟友であり、いずれも鬼籍に入った作家たちでもある。
テンエイさんなりの祈りであり、鎮魂のかたちなんだろうと思う。
もうひとつ、私事にわたって恐縮だが、書いておきたいことがある。
阿部典英さんは、札幌東高校を卒業して、ゴム会社に就職した。
当時の大学進学率は昨今よりもはるかに低かったから、一般論としては、高卒で就職というのは、ごくふつうのことである。
ただ、これは、裏返していえば、美術に関してはまったくの独学であったということだ。
この事実は、筆者を非常に元気づけた。
そして、励まされるのは、筆者だけではないと思う。
阿部典英さんと同列に並べること自体おこがましいことかもしれないが、筆者も美術についてはまったくの独学であり、しろうとである。
筆者の無知蒙昧さにあきれた体験をお持ちの方も多いだろう。
見ることについて、とくに格段の才能があるわけでもない。
専門的教育を受けていないということが、大きなコンプレックスとして、いままでじぶんを苦しめてきた。
しかし、今回の展覧会を見て、やる気があって、一生懸命、かつ楽しんで取り組めば、なんとかなるのかもしれないと思えてきた。
あるいは、なんとかならないのかもしれないが、卑屈になることなく、地道に続けていこうと思った。
いちばん大事なのは、専門的教育を受けたかどうか、ではなく、持続する志なのだろう。
2012年4月7日(土)~5月6日(日)午前9:30~午後5:00(入場~4:30)、月曜休み(ただし4月30日は開館し、翌5月1日休み)
道立近代美術館(札幌市中央区北1西17 地図D)
一般1000円(790円)、高大生600円(480円)、小中生300円(200円)
※かっこ内はリピーター割引、前売りなど
・中央バス、ジェイアール北海道バス「道立近代美術館」から約160メートル、徒歩2分
(手稲、小樽方面行きは、北大経由以外は、すべてのバスがとまります。本数も地下鉄より多く、とくに札幌駅方面からは、この方法がおすすめ)
・地下鉄東西線「西18丁目」から約380メートル、徒歩5分
・市電「西15丁目」から約700メートル、徒歩9分
ほかに、ジェイアール北海道バスが「ぶらりさっぽろ観光バス」を運行しています
★オープニング・トーク
4月7日(土)9:30~(約40分)
トーク/阿部典英
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)
★トーク&ジョーク・ショー「走るブリキ男と工作少年、大いに語る」
4月14日(土)午後2~4時
トーク/秋山祐徳太子(美術家)、阿部典英
会場/講堂(240席・先着順) 参加無料
★ワークショップ(募集制)「自由に、グランブルー!~深海を想像して描く~」
4月28日(土)午後1:30~4:30
講師/阿部典英
会場/特別展示室と当館造形室(観覧券が必要です)
展覧会を作家や学芸員と一緒に観覧した後、海の底のようすや生き物を自由に想像して全員で描くワークショップ。大人も子どもも参加できます。定員50人。4月10日(火)募集開始。
★ギャラリー・ツアー(作品解説)
4月7日(土)、5月5日(土)、各日午後3:00~(約40分)
解説/当館学芸員
会場・特別展示室 (観覧券が必要です)
★ギャラリー・トーク
4月21日(土)午後3:00~(約40分)
トーク/当館学芸員
会場/特別展示室 (観覧券が必要です)
関連記事
阿部典英さん、北見に登場!
■ハルカヤマ藝術要塞(2011年。執筆中)
■ 「札幌作家グループ展」阿部典英+柿崎熙+下沢敏也 帯広コンテンポラリーアート-真正閣の100日(2011)
【告知】阿部典英展 「ネエ、ダンナサン…」(2011)
【告知】第7回 2011新春特別企画展 阿部典英展 TEN-EI ABE EXHIBITION(2011年1~3月)
■北海道立体表現展(2010年、執筆中)
■交差する視点とかたち vol.3 阿部典英 加藤委 川上りえ 下沢敏也(2009年)
■阿部典英 Ten-ei Abe Exhibition(2009年)
■さいとうgallery企画 第15回夏まつり「星・star」展 (2009年)
■SAPPORO ART PLANETS展 (2009年5月)
■見えるもの⇔見えないもの-イマジネーションのちから- (2009年1-3月)
■交差する視点とかたち vol.2 (2008年7月)
■交差する視点とかたち 川上力三・阿部典英・下沢敏也(07年7月)
■SCAN DO SCAN(07年10-12月)
■企画展「07→08」(画像なし)
■WAVE NOW 06(阿部さんが参加)
■北海道立体表現展(06年、画像なし)
冬の定山渓(「ミスカッパ」の画像あり)
■阿部典英個展(2002年)
■北方圏美術展(2002年、阿部さんが参加)
※この項終わり
私も先日見に行きました。
長い作家人生の中でいいことばかりでは
ないはずなのに、作品はあたたかくあかるい雰囲気がありほっとする。何だか癒されました。優しさは強さなんだなと感じました。と言うと何だか失礼な気がして…
ないはずなのに
そうですね。
でも、典英さんはすごく楽しそうに作品を作っているのが、見てる側にも伝わってくるんですよね~。
「阿部典英のすべて」展は、何度か足を運びたい、展示内容でした。
撮影が可能なのも良かったです。こちらのブログからも、より作品の面白味を楽しむことができました。
絵画の楽しみや理解を深めることができ、いつもブログを楽しみに拝読しております。
また時々いらしてくださいね。