札幌の中心街にあって親しまれている「さいとうギャラリー」は、毎年夏と、暮れから正月にかけての2回、道内作家による小品展を企画しています。
このうち、夏の展覧会は毎回テーマを決めています。
今回は「星」。なかなか作家にとっては取り組みやすかったテーマではないかと、会場で感じました。
ロマン的な心情を込めやすい題材ですし、点を散らしさえすれば星らしく見えるのもその理由かもしれません。
ただし、ひとひねりした作品が意外と少なく、星条旗やサッポロビールを取り上げて作品は、あるかなーと思ったけど、出品されていませんでした。
會田千夏「よるくん2009.7.12」
深い群青色はめずらしい。右下に三日月を配して、空と地面の関係を顛倒させることで、ふしぎな世界を現出させています。
前川アキ「12」
水色の地面は通常の作品と同じですが、空にレモンイエローのダイヤ型の星が光っています。
林由希菜「ほしに帰る」
若手の銅版画家。クジラの上に家がたちならび、街灯がそれを照らしています。周囲にも町があり、キノコをはやしたレイヨウがたたずむなど、林さんならではの幻想的な世界です。
中島義博「魚座」
今回、星占いや12星座を取り上げた作品は案外少なかったです。中島さんの、デフォルメの効いた染色作品は、2匹の魚が赤いひもで結びつけられているという風変わりな図柄ですが、これは元々の魚座の図像です。
折登朱実「天の川」
林亨「眼を閉じて」
林田理榮子「ハンガリー人形」
金子辰哉「この星に生きるために…」
内藤克人「星」
赤石準一「星影 II」
加藤宏子「continuum」
和紙を使った壁掛け型立体で、今展覧会では大きめ。渦巻き状の星雲のようにも見えます。題は「連続体」の意。
府川誠「星座る」
昔ながらの笊(ざる)を用い、内側を青く塗って星をちりばめたユニークな壁掛け型立体。いつものメルヘン調版画とは違いますが、見ていて童心に帰れそうなのは、府川さんならでは。
澁谷美求「短冊」
富田知子「夜になれば….」
半月のかたちの紙がコラージュされた、富田さんにはめずらしい作品。
新出リエ子「継」
白鳥洋一「星のおーじさま」
武石英孝「夕暮れ」
写実的な風景画で、縦に細長い画面。水田地帯の踏切の上空に一番星が輝いています。
櫻井マチ子「あ~ら ごめんなさい」
地下鉄の風でスカートがめくれあがるマリリン・モンローのあまりにも有名な写真を、顔の部分を貼り替えて作ったパロディー作品。モノクロ写真のまわりに、星のかたちがちりばめられています。
渡邊慶子「Gray Pearl」
生命のエネルギーを感じさせる図柄。バラの花であることが、いつにも増してはっきりとしています。
鳴海伸一「星は何でも知っている」
満天の星空の下に一軒家と針葉樹。抽象度の高い作品を得意とするこの版画家としてはめずらしくメルヘン的でしずかな1点。
友野直実「かがやき」
金子直人「なるのだ!」
「一徹」という文字が浮き出た金属板。もちろん、題名の前には「おまえは巨人の星に」という言葉が省略されているのでしょう。思わず「とうちゃん!」と心の中で叫んでしまう、ユーモラスな1点。
永井美智子「Milky Way」
佐久間敏夫「天に星地に花人に愛」
タンポポ1輪を描いたささやかな日本画。つぼみは、確かに星に似ています。
高橋智子「夏の夜」
中野邦昭「コスモス(星を抱く花)」
こちらも日本画で、おしべやめしべのある花の中心部に星のかたちがあるように見えます。
下沢敏也「RE-BIRTH」
上野仁奥「舞ふ ひかり」
パリの街角や静物をこなれたタッチで描くベテランですが、なんと抽象画を出品。黄色の太い線や飛沫が、ごつい感じの画面をつくっています。
林弘堯「もうひとつの自然」
なにかを覆い、包んでいながら、その中身が見えそうで見えないのが林さん流。北見在住で、道展にも前衛的な作品を出品しているベテランです。
藤野千鶴子「宙-09 #18」
ふだんとまったくおなじ絵を描いていても「星」というテーマにあうのが藤野さんです。
江川博「またたき」
香西富士夫「会話=星」
田村佳津子「ほし ほし ほし」
吉田茂「Synchronicity series「昴」」
米澤榮吉「渓谷」
野崎嘉男「お星さまが降ってきた」
北山寛一「星ふるまち」
今荘義男「古里」
毛内康二「三次元多様空間」
三島英嗣「COSMOS」
矢崎勝美「COSMOS」
シルクスクリーンをベースにしたモノタイプ版画。星雲を思わせる白い線や模様が明滅しているのはいつも通りだが、白っぽい緑の色斑が中央近くに浮かんでいて、めだつ。
荒井善則「Soft Landing to Season」
高橋英生「森の中の星たち」
こちらの「星」は、白い野菊。
高橋靖子「むし・虫」
刺繍と古切手による平面作品。
渡会純价「星のひと」
自画像。Memoire MONDE of JUNSUKE WATARAI-と画中に文字がある。
八木保次「星座」
阿部典英「今も昔も変わらぬ星」
ふたつの箱からなる作品。目を引くのが左側の箱で、外側は「昭和十六年九月十七日」の「北海タイムス」で覆われ、内側に貼られた紙には「トラコーマ 東島牧村」とある。思う存分自然にふれ合い、美術作家・阿部典英の出発点となった島牧(後志管内)での疎開体験が、その箱に集約されていることは、鳥の羽や貝殻、枝でこしらえたトンボのおもちゃが組み入れられていることからも推察できる。コーネルとはまったくべつの手法でなつかしさを表現した佳作。
岸本裕躬「地球」
北浦晃「五稜郭新緑」
北浦さんは、「女」がテーマだったときに「雌阿寒岳」の絵を出してきた実績(?)があり、今回も期待にたがわぬ作品。函館の名所、五稜郭は、たしかに星のかたちをしています。五稜郭を、全景ではなく一部だけ描いているのがユニーク。桜の花の色が良いアクセントになっています。
三浦恭三「ブラックスター」
楢原武正「大地ノ開墾2009-7」
末永正子「星にTsu・Na・Gu」
中橋るみ子「ベニス星夜」
村本千洲子「悠久の旅」
村本さんはいつもこの展覧会には、こまごまと描き込んだ絵を出してくるので楽しい。今回は、宇宙空間をゆくボートにユリの花を持った女性が乗り込み、月や地球、土星のたたよう空間を進んでいくという、ロマンあふれるSF的なシーンを描いています。
宮本市子「星と星が出会ってしまった」
工藤悦子「夜舞」
中田やよひ「星待つ花(待宵山翁)」
川本ヤスヒロ「星くん」
柿崎熙「親密な森」
泉修次「星の罐詰」
泉さんの作品も毎回たのしみのひとつ。今回は、ギリシャ神話の「パンドラの箱」ならぬ「パンドラの缶詰」を三つ並べています。左から「夢100%」「愛100%」「?100%」とラベルに印字され、いずれにも「絶対に開けないで下さい。」と印刷されているのですが、いちばん右側の缶はすでにあけられています。いろいろな想像をかきたててくれるユーモラスな作品。ちなみに「パンドラの箱」は最初は「パンドラの壺」らしかった歴史的経緯については、パノフスキー夫妻の労作が邦訳されています。
早川尚「暁星」
佐藤潤子「風の星」
阿部美智子「star fish」
ダム・ダン・ライ「いきるもの 15b」
加賀谷健至「時の刻みかた~森人の詞より~」
阿地信美智「王子さまの星」
山内敦子「星辰」
波田浩司「羽の舞う日」
佐々木けいし「暉「き」」
藤本和彦「すぐ そこの 在る ほし」
結果的に林弘堯さんの作品に似てしまいましたが、樹脂に覆われているのは干し草でしょうか? だとしたら、だじゃれをこめた題ということになるけれど…。藤本さんの作品は根底に「ちょっと待って、もう一度考え直してみようよ」という心優しいメッセージが込められているように思えるので、見るのが好きなんです。
2009年7月14日(火)-19日(日)10:30-18:30(最終日-17:00)
さいとうギャラリー(中央区南1西3 ラ・ガレリア5階 地図B)
■第14回「eco」展(2008年)
■第13回「風」パートII
■第12回「風」
■祭り・FEST展 パートII(2003年)
■2002夏祭り「祭り・FEST」展
このうち、夏の展覧会は毎回テーマを決めています。
今回は「星」。なかなか作家にとっては取り組みやすかったテーマではないかと、会場で感じました。
ロマン的な心情を込めやすい題材ですし、点を散らしさえすれば星らしく見えるのもその理由かもしれません。
ただし、ひとひねりした作品が意外と少なく、星条旗やサッポロビールを取り上げて作品は、あるかなーと思ったけど、出品されていませんでした。
會田千夏「よるくん2009.7.12」
深い群青色はめずらしい。右下に三日月を配して、空と地面の関係を顛倒させることで、ふしぎな世界を現出させています。
前川アキ「12」
水色の地面は通常の作品と同じですが、空にレモンイエローのダイヤ型の星が光っています。
林由希菜「ほしに帰る」
若手の銅版画家。クジラの上に家がたちならび、街灯がそれを照らしています。周囲にも町があり、キノコをはやしたレイヨウがたたずむなど、林さんならではの幻想的な世界です。
中島義博「魚座」
今回、星占いや12星座を取り上げた作品は案外少なかったです。中島さんの、デフォルメの効いた染色作品は、2匹の魚が赤いひもで結びつけられているという風変わりな図柄ですが、これは元々の魚座の図像です。
折登朱実「天の川」
林亨「眼を閉じて」
林田理榮子「ハンガリー人形」
金子辰哉「この星に生きるために…」
内藤克人「星」
赤石準一「星影 II」
加藤宏子「continuum」
和紙を使った壁掛け型立体で、今展覧会では大きめ。渦巻き状の星雲のようにも見えます。題は「連続体」の意。
府川誠「星座る」
昔ながらの笊(ざる)を用い、内側を青く塗って星をちりばめたユニークな壁掛け型立体。いつものメルヘン調版画とは違いますが、見ていて童心に帰れそうなのは、府川さんならでは。
澁谷美求「短冊」
富田知子「夜になれば….」
半月のかたちの紙がコラージュされた、富田さんにはめずらしい作品。
新出リエ子「継」
白鳥洋一「星のおーじさま」
武石英孝「夕暮れ」
写実的な風景画で、縦に細長い画面。水田地帯の踏切の上空に一番星が輝いています。
櫻井マチ子「あ~ら ごめんなさい」
地下鉄の風でスカートがめくれあがるマリリン・モンローのあまりにも有名な写真を、顔の部分を貼り替えて作ったパロディー作品。モノクロ写真のまわりに、星のかたちがちりばめられています。
渡邊慶子「Gray Pearl」
生命のエネルギーを感じさせる図柄。バラの花であることが、いつにも増してはっきりとしています。
鳴海伸一「星は何でも知っている」
満天の星空の下に一軒家と針葉樹。抽象度の高い作品を得意とするこの版画家としてはめずらしくメルヘン的でしずかな1点。
友野直実「かがやき」
金子直人「なるのだ!」
「一徹」という文字が浮き出た金属板。もちろん、題名の前には「おまえは巨人の星に」という言葉が省略されているのでしょう。思わず「とうちゃん!」と心の中で叫んでしまう、ユーモラスな1点。
永井美智子「Milky Way」
佐久間敏夫「天に星地に花人に愛」
タンポポ1輪を描いたささやかな日本画。つぼみは、確かに星に似ています。
高橋智子「夏の夜」
中野邦昭「コスモス(星を抱く花)」
こちらも日本画で、おしべやめしべのある花の中心部に星のかたちがあるように見えます。
下沢敏也「RE-BIRTH」
上野仁奥「舞ふ ひかり」
パリの街角や静物をこなれたタッチで描くベテランですが、なんと抽象画を出品。黄色の太い線や飛沫が、ごつい感じの画面をつくっています。
林弘堯「もうひとつの自然」
なにかを覆い、包んでいながら、その中身が見えそうで見えないのが林さん流。北見在住で、道展にも前衛的な作品を出品しているベテランです。
藤野千鶴子「宙-09 #18」
ふだんとまったくおなじ絵を描いていても「星」というテーマにあうのが藤野さんです。
江川博「またたき」
香西富士夫「会話=星」
田村佳津子「ほし ほし ほし」
吉田茂「Synchronicity series「昴」」
米澤榮吉「渓谷」
野崎嘉男「お星さまが降ってきた」
北山寛一「星ふるまち」
今荘義男「古里」
毛内康二「三次元多様空間」
三島英嗣「COSMOS」
矢崎勝美「COSMOS」
シルクスクリーンをベースにしたモノタイプ版画。星雲を思わせる白い線や模様が明滅しているのはいつも通りだが、白っぽい緑の色斑が中央近くに浮かんでいて、めだつ。
荒井善則「Soft Landing to Season」
高橋英生「森の中の星たち」
こちらの「星」は、白い野菊。
高橋靖子「むし・虫」
刺繍と古切手による平面作品。
渡会純价「星のひと」
自画像。Memoire MONDE of JUNSUKE WATARAI-と画中に文字がある。
八木保次「星座」
阿部典英「今も昔も変わらぬ星」
ふたつの箱からなる作品。目を引くのが左側の箱で、外側は「昭和十六年九月十七日」の「北海タイムス」で覆われ、内側に貼られた紙には「トラコーマ 東島牧村」とある。思う存分自然にふれ合い、美術作家・阿部典英の出発点となった島牧(後志管内)での疎開体験が、その箱に集約されていることは、鳥の羽や貝殻、枝でこしらえたトンボのおもちゃが組み入れられていることからも推察できる。コーネルとはまったくべつの手法でなつかしさを表現した佳作。
岸本裕躬「地球」
北浦晃「五稜郭新緑」
北浦さんは、「女」がテーマだったときに「雌阿寒岳」の絵を出してきた実績(?)があり、今回も期待にたがわぬ作品。函館の名所、五稜郭は、たしかに星のかたちをしています。五稜郭を、全景ではなく一部だけ描いているのがユニーク。桜の花の色が良いアクセントになっています。
三浦恭三「ブラックスター」
楢原武正「大地ノ開墾2009-7」
末永正子「星にTsu・Na・Gu」
中橋るみ子「ベニス星夜」
村本千洲子「悠久の旅」
村本さんはいつもこの展覧会には、こまごまと描き込んだ絵を出してくるので楽しい。今回は、宇宙空間をゆくボートにユリの花を持った女性が乗り込み、月や地球、土星のたたよう空間を進んでいくという、ロマンあふれるSF的なシーンを描いています。
宮本市子「星と星が出会ってしまった」
工藤悦子「夜舞」
中田やよひ「星待つ花(待宵山翁)」
川本ヤスヒロ「星くん」
柿崎熙「親密な森」
泉修次「星の罐詰」
泉さんの作品も毎回たのしみのひとつ。今回は、ギリシャ神話の「パンドラの箱」ならぬ「パンドラの缶詰」を三つ並べています。左から「夢100%」「愛100%」「?100%」とラベルに印字され、いずれにも「絶対に開けないで下さい。」と印刷されているのですが、いちばん右側の缶はすでにあけられています。いろいろな想像をかきたててくれるユーモラスな作品。ちなみに「パンドラの箱」は最初は「パンドラの壺」らしかった歴史的経緯については、パノフスキー夫妻の労作が邦訳されています。
早川尚「暁星」
佐藤潤子「風の星」
阿部美智子「star fish」
ダム・ダン・ライ「いきるもの 15b」
加賀谷健至「時の刻みかた~森人の詞より~」
阿地信美智「王子さまの星」
山内敦子「星辰」
波田浩司「羽の舞う日」
佐々木けいし「暉「き」」
藤本和彦「すぐ そこの 在る ほし」
結果的に林弘堯さんの作品に似てしまいましたが、樹脂に覆われているのは干し草でしょうか? だとしたら、だじゃれをこめた題ということになるけれど…。藤本さんの作品は根底に「ちょっと待って、もう一度考え直してみようよ」という心優しいメッセージが込められているように思えるので、見るのが好きなんです。
2009年7月14日(火)-19日(日)10:30-18:30(最終日-17:00)
さいとうギャラリー(中央区南1西3 ラ・ガレリア5階 地図B)
■第14回「eco」展(2008年)
■第13回「風」パートII
■第12回「風」
■祭り・FEST展 パートII(2003年)
■2002夏祭り「祭り・FEST」展
歯がゆい思いばかりですが、これだけは毎回
観にいってます。
小気味良い作品が今回も揃って、楽しい一時
でした。今回は泉さんの作品で遊べなかった
のがちょっと残念!!
なんか、他人の同窓会に参加しているような
面白さがあります。
コメントを返していると、とつぜんInternet explorerが終了してしまいました。
それはさておき、この年2回の展覧会は、楽しいですよね。なかなか購入はできませんが。
泉さんはまた、暮れ・正月におみくじを出してくれるのではないでしょうか。