Yamamoto Yuki "Invsiblevisible".
だいぶ前に見たのに、気がついたらあと数日…。
JR札幌駅の中にあるショーウインドーのようなボックスは、これまで國松明日香さんや伊藤隆介さんといった作家たちが発表に用いてきたが、若手・公募に開放することになり、山本雄基さんがその第1弾である。
山本雄基さんは1971年生まれ。
道教大在学中および大学院に在籍しているころから、活溌に制作・発表を続けている。
あるいは、昨年の道展で、ちくわが首つり自殺を図っているという妙な図柄の絵を出品していたので、ご記憶の方もあろう。
今回の「みえないみえる」では、彼が最も多く発表してきた、さまざまな色の大小の水玉模様が重なり合うという作品が1点だけ、ウインドーの中央に据え付けられている。
(冒頭画像は部分の拡大)
一目見た印象は
「ポップ」
だけれど、これまでの流れからいってこの作品は
「新しい奥行き感の創出」
というコンテクストで読み解きたいと考える。
20世紀前半、従来の透視図法による空間表現が否定され、絵画はひたすら平面的であることを目指すようになった。しかし、三次元空間を再現するようなやり方とは別の奥行き感の表現は可能ではあるまいか-。
前進色の水玉と後退色の水玉が複雑に重なり合い層をなすこの絵。どの色が上の層をなしているのかを解き明かそうとすると、見る人はめまいのような感覚にとらわれるにちがいない。それは、作品の写真をいくら見つめていても、わからない感覚である。
とはいえ、この場所に置かれることによって、作品はふたたび「ポップ」の輝きを帯び始める。
いや、それは、ウォーホルのような消費社会の反映ないしイコンとしてのポップアートではなく、オランダからニューヨークに移住して「ブロードウエイ・ブギ・ウギ」を制作した「モンドリアン的なポップ」であろう。
抽象画家の創始者のひとりであるモンドリアンの関心は、大西洋を越えてもなお色と線にある。にもかかわらず、その幾何学的な図像が、現実のニューヨークとみごとにシンクロしているというわけだ。
であれば、山本雄基の図像も、純粋な絵画であると同時に、大都市・札幌のきらびやかな現実とシンクロしているといえまいか。
どの角度からのぞいてみても、手前のガラス窓にはいろいろな電灯やあかりが反射して、作品の全面をきれいに見渡せる位置は存在しない。山本雄基の作品は、イルミネーションの洪水という明るすぎる環境の中でかえって「みえる?みえない?」という問いを通り過ぎる人々に投げかけていく逆説的な存在たりえているのではないだろうか。
2009年5月1日(金)-7月29日(水)8:00-22:00、無休
JRタワーARTBOX(JR札幌駅東口コンコース)
□http://www.geocities.jp/yamamotopaintings/
■SAG INTRODUCTION(2008年12月)
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■ART! MEET! MART!(2007年)
■山本雄基絵画展(2006年)
■第3回STEP(2006年)
■グループ プラスワン展(2006年)
■北海道教育大学札幌校美術科 七月展(2006年)
■油展 北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース油彩研究室展(2005年)
■カルチャーナイトフィーバー(2003年7月25日の項。画像なし)
■油展(2002年12月18日の項。画像なし)
だいぶ前に見たのに、気がついたらあと数日…。
JR札幌駅の中にあるショーウインドーのようなボックスは、これまで國松明日香さんや伊藤隆介さんといった作家たちが発表に用いてきたが、若手・公募に開放することになり、山本雄基さんがその第1弾である。
山本雄基さんは1971年生まれ。
道教大在学中および大学院に在籍しているころから、活溌に制作・発表を続けている。
あるいは、昨年の道展で、ちくわが首つり自殺を図っているという妙な図柄の絵を出品していたので、ご記憶の方もあろう。
今回の「みえないみえる」では、彼が最も多く発表してきた、さまざまな色の大小の水玉模様が重なり合うという作品が1点だけ、ウインドーの中央に据え付けられている。
(冒頭画像は部分の拡大)
一目見た印象は
「ポップ」
だけれど、これまでの流れからいってこの作品は
「新しい奥行き感の創出」
というコンテクストで読み解きたいと考える。
20世紀前半、従来の透視図法による空間表現が否定され、絵画はひたすら平面的であることを目指すようになった。しかし、三次元空間を再現するようなやり方とは別の奥行き感の表現は可能ではあるまいか-。
前進色の水玉と後退色の水玉が複雑に重なり合い層をなすこの絵。どの色が上の層をなしているのかを解き明かそうとすると、見る人はめまいのような感覚にとらわれるにちがいない。それは、作品の写真をいくら見つめていても、わからない感覚である。
とはいえ、この場所に置かれることによって、作品はふたたび「ポップ」の輝きを帯び始める。
いや、それは、ウォーホルのような消費社会の反映ないしイコンとしてのポップアートではなく、オランダからニューヨークに移住して「ブロードウエイ・ブギ・ウギ」を制作した「モンドリアン的なポップ」であろう。
抽象画家の創始者のひとりであるモンドリアンの関心は、大西洋を越えてもなお色と線にある。にもかかわらず、その幾何学的な図像が、現実のニューヨークとみごとにシンクロしているというわけだ。
であれば、山本雄基の図像も、純粋な絵画であると同時に、大都市・札幌のきらびやかな現実とシンクロしているといえまいか。
どの角度からのぞいてみても、手前のガラス窓にはいろいろな電灯やあかりが反射して、作品の全面をきれいに見渡せる位置は存在しない。山本雄基の作品は、イルミネーションの洪水という明るすぎる環境の中でかえって「みえる?みえない?」という問いを通り過ぎる人々に投げかけていく逆説的な存在たりえているのではないだろうか。
2009年5月1日(金)-7月29日(水)8:00-22:00、無休
JRタワーARTBOX(JR札幌駅東口コンコース)
□http://www.geocities.jp/yamamotopaintings/
■SAG INTRODUCTION(2008年12月)
■On the wall/Off the wall 山本雄基、西田卓司、川上りえ(2008年9月)
■ART! MEET! MART!(2007年)
■山本雄基絵画展(2006年)
■第3回STEP(2006年)
■グループ プラスワン展(2006年)
■北海道教育大学札幌校美術科 七月展(2006年)
■油展 北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース油彩研究室展(2005年)
■カルチャーナイトフィーバー(2003年7月25日の項。画像なし)
■油展(2002年12月18日の項。画像なし)