北星学園大写真部のOB加藤大輔さんと、学生武田圭祐さんによる2人展。
ふたりとも、これまでは「加藤D輔」「武田K祐」名義で写真を発表してきており、古い過去を捨ててあたらしい出発を果たそうという決意めいたものを感じさせます。
加藤さんは、会場入り口に貼った紙で、つぎのように書いています。
そして「ありがとう」と大書しています。
すべて焼き捨てた、というのは、「ずいぶん思い切ったなあ」とショックでしたけど、加藤さんらしいな、とも思います。
しかし、展示されている写真を見ると、モノクロ一辺倒だったのが、モノクロ5点、カラー32点という構成比になったという変化はありましたが、作風にそれほど劇的な変化は感じませんでした。
空の光を鈍く反射する水田。
喫茶店の中。
手の下に置かれたうちわ。
ステンドグラスのあかりや花瓶がわりの洋酒のビンが並んで、外には大きな葉が茂った窓辺。
雪原。
コスモスが揺れる庭。
電柱が伸びる一本道。
デッキチェアが岸に置かれた湖。
部屋に干された何枚ものタオル。
赤みがかった光につつまれるダム湖…。
いずれも、なんのへんてつもない風景なのに、切なさと、なつかしさとを感じるという点では、以前とおなじです。
なぜだろう、と思います。
いちばん好きな写真は、正面にあった2枚。
新緑を、スローシャッターで写した1枚と、明るく開けた林の中で白い服を着た女性が平らな岩の上に、こちらに背中を向けてすわっている1枚です。
そういえば、今回の加藤さんの写真には、こちらに顔を向けた人物はひとりも登場しません。
そのことが、加藤さんの写真ぜんたいに、或る種のさびしさを漂わせているという面は、あるんじゃないかと思います。
でも、この女性は、世界を(あるいは、撮影者や、見る人を)拒絶しているのでも、世界から拒まれているのでもなく、一定の距離感を持って、その世界の中にちゃんと存在している。そのたたずまいに、つよく魅かれるのだと、思います。
筆者が、ちょっと語りすぎちゃいましたね(苦笑)。
その2枚の左側にあるモノクロ写真にも注目しました。
3枚はライブ演奏の写真です。
ライブコンサートの写真というのは、原田直樹さんのようなプロはともかく、たいていの人は、誰が撮ってもおんなじような写真になります。しかし、加藤さんの写真は、演奏者の手元を拡大し、スローシャッターを切っているので、演奏者が誰かということよりも、手の動き自体が強調された、個性的な写真になっています。
さすがだなあ。
さて、武田さんは、千景さんという若い女性を1年間にわたって追いつづけた写真です。およそ80点、全点がカラー。
さいきん、よく「目ぢから」ということがいわれますが、千景さんも、大きな目がとても多くのことを物語っているような、そんな魅力的な表情をしています。
石山緑地や夜の芸術の森、彼女の自室、彼氏と一緒の時間、母親や姉とのツーショットなど、さまざまなシチュエーションがありますが、とっても素直に、若い女性の表情がとらえられています。この素直さって、武田さんの美質ですね、きっと。
写真を撮る若い人は大勢いますが、こういうふうにきっちりとテーマを設定して取り組んでいる人はとても少ないです。その意味でも、武田さんのヤル気には、敬服したいです。
原田玄輝、竹渕智生、emy、斉藤市輔、宮本朋美、福光友美の6氏が友情出品しています。
とっても良い写真展でした。どうもありがとう。
1月23日(火)-28日(日)10:00-19:00(初日13:00-、最終日-17:00)
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G)
□武田さんのサイト
ふたりとも、これまでは「加藤D輔」「武田K祐」名義で写真を発表してきており、古い過去を捨ててあたらしい出発を果たそうという決意めいたものを感じさせます。
加藤さんは、会場入り口に貼った紙で、つぎのように書いています。
今は22歳の頃のような写真への固執はありません。写真を追求しようなんて出来ません。
僕は生きることに固執して生きることを追求します。これだけで精一杯。
生きること「人生」が写真であれば最高だな、なんて思います。自分の人生を記録するだけ。
22歳以前の作品はネガからプリントまで全て焼き捨ててしまいました。
そして「ありがとう」と大書しています。
すべて焼き捨てた、というのは、「ずいぶん思い切ったなあ」とショックでしたけど、加藤さんらしいな、とも思います。
しかし、展示されている写真を見ると、モノクロ一辺倒だったのが、モノクロ5点、カラー32点という構成比になったという変化はありましたが、作風にそれほど劇的な変化は感じませんでした。
空の光を鈍く反射する水田。
喫茶店の中。
手の下に置かれたうちわ。
ステンドグラスのあかりや花瓶がわりの洋酒のビンが並んで、外には大きな葉が茂った窓辺。
雪原。
コスモスが揺れる庭。
電柱が伸びる一本道。
デッキチェアが岸に置かれた湖。
部屋に干された何枚ものタオル。
赤みがかった光につつまれるダム湖…。
いずれも、なんのへんてつもない風景なのに、切なさと、なつかしさとを感じるという点では、以前とおなじです。
なぜだろう、と思います。
いちばん好きな写真は、正面にあった2枚。
新緑を、スローシャッターで写した1枚と、明るく開けた林の中で白い服を着た女性が平らな岩の上に、こちらに背中を向けてすわっている1枚です。
そういえば、今回の加藤さんの写真には、こちらに顔を向けた人物はひとりも登場しません。
そのことが、加藤さんの写真ぜんたいに、或る種のさびしさを漂わせているという面は、あるんじゃないかと思います。
でも、この女性は、世界を(あるいは、撮影者や、見る人を)拒絶しているのでも、世界から拒まれているのでもなく、一定の距離感を持って、その世界の中にちゃんと存在している。そのたたずまいに、つよく魅かれるのだと、思います。
筆者が、ちょっと語りすぎちゃいましたね(苦笑)。
その2枚の左側にあるモノクロ写真にも注目しました。
3枚はライブ演奏の写真です。
ライブコンサートの写真というのは、原田直樹さんのようなプロはともかく、たいていの人は、誰が撮ってもおんなじような写真になります。しかし、加藤さんの写真は、演奏者の手元を拡大し、スローシャッターを切っているので、演奏者が誰かということよりも、手の動き自体が強調された、個性的な写真になっています。
さすがだなあ。
さて、武田さんは、千景さんという若い女性を1年間にわたって追いつづけた写真です。およそ80点、全点がカラー。
さいきん、よく「目ぢから」ということがいわれますが、千景さんも、大きな目がとても多くのことを物語っているような、そんな魅力的な表情をしています。
石山緑地や夜の芸術の森、彼女の自室、彼氏と一緒の時間、母親や姉とのツーショットなど、さまざまなシチュエーションがありますが、とっても素直に、若い女性の表情がとらえられています。この素直さって、武田さんの美質ですね、きっと。
写真を撮る若い人は大勢いますが、こういうふうにきっちりとテーマを設定して取り組んでいる人はとても少ないです。その意味でも、武田さんのヤル気には、敬服したいです。
原田玄輝、竹渕智生、emy、斉藤市輔、宮本朋美、福光友美の6氏が友情出品しています。
とっても良い写真展でした。どうもありがとう。
1月23日(火)-28日(日)10:00-19:00(初日13:00-、最終日-17:00)
札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G)
□武田さんのサイト
旭川に引っ込んでたので、どうなってたか、ちょっと心配でしたけど、写真の腕は落ちてないですねー。
また、どこかでお会いできたらいいですね。
書いていただいてありがたく思っています。
仕事の都合で会場にはほとんどいれなく多くの皆さんとすれ違いだったのが残念です。
どうもありがとうございました!