このところ、イスラエルとハマスの戦闘そして停戦に世界の関心が移り、シリアの内戦についての報道が激減している。しかし、シリア情勢に大きな変化は見られず、これからは本格的な冬になることもあり難民の健康が危惧されるところである。いつになっても中東には平和が訪れない。そんなところで、たまたま書棚を整理していたら、1988年11月から1989年2月まで、西武美術館で開かれた「海のシルクロード・・・古代シリア文明展」の公式カタログが出てきた。227ページの大部であり、出展された277の展示物について詳細な説明がなされている。さすがは日本の印刷技術だけあって、今でもカラー印刷は鮮やか。
カタログには当時のシリア大統領ハフェズ・アサド(バッシャール・アル・アサド現大統領の父)からのメッセージも紹介されている。当時は多分医学生だったと思われるバッシャールは、その後英国の病院で研修しているが、その時は今のような冷酷な独裁者と呼ばれることを予想もしていなかっただろう。いまだベルリンの壁も崩壊していない当時からみれば、24年後の世界など、想像もできない。シリアはシルクロードの要衝として、また、ローマ時代の遺跡の数多く残る興味深い地域として当時の日本に迎えられたのだと思う。一冊のカタログから過ぎ去った時間を思い起こさせられた。