昨日反政府軍がダマスカス近郊の空軍基地を制圧したことによりシリア情勢が新しい段階に入りつつある。問題はこれから一気に反政府軍によるシリア全土の掌握そしてアサド大統領の放逐とはいかないことだ。まず、弱体化したとはいえ、アサド大統領率いる政府軍は兵員数でも火器の量でも反政府軍に勝っているし、まだ使用していない兵器、たとえば化学兵器や長距離砲などがあり、簡単には軍事的決着がつかないと思われるためだ。
さらに、先般、ドーハで反政府政治勢力の大同団結が発表されたが、まだ、アサド放逐後、誰がそれを率いるのか固まっていないし、前線で実際に戦闘している反政府軍からの支援の確約も取り付けていない。反政府勢力は軍事面に加えて政治面でも脆弱であり、政府軍の反攻の可能性も否定できない。そして反政府勢力にとって最も懸念すべきは、今回のような軍事的勝利が報道されることにより、米国をはじめとする国外からの支援が弱まるのではないか、ということだ。もし、反政府勢力のなかで内紛が発生したりすると(もともと、反政府軍も必ずしも統一されたものではなく、いくつかの軍事的勢力が緩やかな連携を保っている面もある)、一層、国外からの支援に水を差すことになる。
したがって今回の空軍基地制圧に過大な期待をすることは危険だろう。