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家賃が払えない!保証会社の督促員が見た「滞納の現場」ミイラ化した遺体を発見したことも/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」

2023年09月18日 10時28分40秒 | 日本の衰退
 

 

最近、コロナ後に仕事が戻らないなどの理由で、家賃の支払いが厳しくなっている方もいらっしゃるようです。家賃を滞納するとどうなるのか、立ち退きの現場に立ち会ってきた森本治子さんにお話を伺いました。

佐賀県出身。これまでホテルスタッフや弁護士事務所の事務など、さまざまな仕事を経験してきた森本さんは、2018年から2022年まで、家賃保証会社で督促の業務を担当しました。家賃滞納が発生したと電話で報告を受けると、その家に出向き、住人の安否確認や生活保護申請の手伝いをすることもあるそうです。

――督促するのは、大変なお仕事だと思います。これまでも、立ち退きに至るまでのさまざまなケースを見てこられたのでしょうか?

「はい。高齢者の一人暮らしや風俗に勤務する女性が年齢を重ねて収入が下がってしまったケース、上場企業に勤務しているのに滞納された方などがいらっしゃいました。

すでに賃借人が亡くなっているケースもあり、その場合、不思議と電話をかけた途端に嫌な予感がして、実際に訪問すると孤独死をしているなど、いろいろな経験をしました。

これまでさまざまなケースを担当し、浪費などで家賃が払えなくなる家には、共通点があることを発見しました。

・玄関に居住している人数以上の靴が散乱している

・玄関先が整理整頓されていない

・ペットを飼っている

以上の3点です」

――物を減らして、玄関を片づけないといけませんね。これまで森本さんが立ち会ったなかで、印象に残っている現場を教えていただけますか?

●元公務員40代の独身男性の場合

「ご本人と連絡がつかない状況で家賃滞納が続き、警察立ち会いのもと安否確認を実施しました。ところが、警察が玄関を開けたらご本人が出てきて、『オレは無敵の人間だ。払うお金はないから、どうにでもしろ!』と叫ばれたのです。滞納理由は派遣切りにあって、次の仕事が決まらないというものでした」

●土建業で働く日雇い男性の場合

「『まったく部屋に帰ってないのでは』と連絡があったので、出入りを確認するため、ドアの蝶つがいにテープを張りました。1週間後に再び行ってみると、テープが外れていなかったので、警察官立ち会いのもと玄関を開けると、腰の高さまでゴミで埋まっていて、奥に入れない状況でした。

警察官がゴミをどけながら進むと、業界用語で “爆弾” と呼ばれる、ペットボトルや紙パックに排泄物をため込んたものが、壁ぞいに並んでいました。これは燃えるゴミでは処分できないので、後に請求する残置物撤去費用や原状回復費用が高くなります。ご注意ください。このケースも、派遣切りにあい、収入が途絶えたため家賃の滞納につながったそうです」

●ゴミ屋敷に住む24歳女性の場合

「家賃を6カ月滞納している若い女性と連絡が取れないため、田舎から出てきていただいたお父さま立ち会いのもと、管理会社と一緒に部屋に入りました。

部屋のなかは、ゴミと段ボール箱とフィギュアの山でした。入口にカビだらけの真っ黒なせんべい布団がありましたが、本人がどこにも見つかりません。

トイレには使用済みの生理用品が積み重なった状態で、お父さまも絶句されていました。お父さまが居場所に心当たりがあると言うので、バイト先と思われるカフェに行ってみました。そこで働いている彼女を発見して話をしたところ、『実家に帰りたい』と泣き出してしまいました。

 

このときは、滞納ぶんをお父さまが支払って、実家に帰るという話でまとまったのですが、彼女はその後も半年間この生活を続けていたため、再度、管理会社とともに訪問し、面談しました。

お父さまが電話越しに『すぐ実家に戻るように』と説得しても、彼女はうなずくだけで動きません、そこでお父さまと話をして彼女に『もうここには住めない』と伝え、『貴重品や要るものをまとめて出て行くように』と伝えました。

しかし、彼女は田舎に帰る切符も買えなかったのです。手元に5000円くらいしかないと言うので、品川駅まで一緒に行って切符の手配をして、新幹線に乗せました」

●年金暮らしの88歳のおじいさん

「部屋のオーナーから『本人と連絡がつかない。年齢も年齢なので、倒れていないか心配だ』という連絡をうけて、現地に向かいました。

インターホンを押すと、なかからやせ細ったおじいさんが出てきました。救急車を呼ぶことを嫌がったので、市の福祉課から保健師さんを派遣してもらいました。

玄関はゴミがあふれ、部屋の様子が確認できないので、外から駐車場側の部屋の雨戸を開けると、その部屋も天井までゴミ袋が積み上がっていました。アリの巣の観察キットのような、ゴキブリの巣もできていました。

年金はちゃんと出ているのに、なぜ滞納したのか話を聞くと、働いて生活したいとポスティングのアルバイトをしたものの、移動でバスに乗るため、交通費がかさんで赤字になっていたのです。

収支がマイナスなので、その仕事をやめて年金だけで生活しませんか、と言っても、おじいさんにとっての生き甲斐だったらしく、首を縦に振りません。

結局、この方は体調を崩して1人で生活することが困難になり、施設に入ることになりました」

●54歳の元風俗嬢

「最初のうちは、訪問しても門前払いを受けました。『追い出しに来たんでしょう?』と言われたので、『いいえ、話を伺いに来ました』と答えるうち、次第に状況を話してくれるようになりました。

風俗嬢という職業柄、年齢を重ねて仕事が減ってしまい、メンタルを病んでしまっていました。生活保護を申請してくださいとアドバイスしたのですが、1人で役所に行ったら、話も聞いてもらえず、相談すらできなかったそうです。

日を改めて、彼女に付き添って役所に行き、『以前、弁護士事務所にいました』と言ったら、申請が通りました。

そのときに思ったのは、生活保護は、本当に必要な人のところに届いていないのではないかということです。

日本人は、生活保護を受けるのは恥ずかしいと考える方も多く、また、親族に迷惑をかけられないと、なかなか申請に行けない方もいます。うまく自身の状況を説明できず、受け付けてもらえないケースもあるようです。

逆に、外国人のなかには、ブランドバックを持ちながら受給する人もいますし、役所で騒いで生活保護をもらおうとする人もいるようです。そういうときは警察に通報するなど、役所は毅然と対処するべきだと思います」

――怖い話もあるそうですね。

「はい。あるとき、賃借人が死亡していると連絡を受けて、現場に行きました。通行人が、窓から人の手が出ているのを不審に思い、第一発見者になったケースです。賃借人はタバコを吸いながら亡くなっていたようです。

管理会社の方と一緒に物件の確認をしていると、玄関横の風呂場でおじいさんが湯船につかっているような姿が見えたので、『この部屋、前にも誰か亡くなっていませんか?』と聞いたところ、『これで3人めです』という答えが返ってきました。

また、連絡が取れない賃借人のケースで、警察官立ち会いのもと、玄関を開けたとき、なかから『オウ!』という声が聞こえました。ところが、『◯◯さん、いらっしゃるなら出てきてください。連絡が取れないので、警察と一緒に安否確認に来ました』と言っても、反応はありません。そこで、チェーンを壊して入ると、ミイラ化したご遺体が発見されました。現場にいた全員が声を聞いていて、不思議だと感じました」

いろいろな現場に立ち会う大変なお仕事ですね。本当に必要な方が生活保護を受けられる状況になればと思います。

■家賃が払えなくなったとき、気をつけるべき3カ条

(1)保証会社からの連絡を無視しない

(2)親族か保証会社に相談する

(3)バレる嘘はつかない

追い出されると思ってケンカを売ったら損します。相談して味方になってもらいましょう。家賃の支払いを後回しにしたら、生活する場がなくなる可能性があります。

保証会社は追い出すために存在するのではなく、弱者救済をする立ち位置にあります。家賃の支払いに窮することがあったら、早めに保証会社に相談してください。

取材協力/カラオケ館上野本店

日下千帆

1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も


経産省が出てきた時点でアウト…日立の元技術者が「日本の半導体の凋落原因」として国会で陳述したこと【2023上半期BEST5】

2023年08月18日 08時29分40秒 | 日本の衰退
※写真はイメージです
※写真はイメージです© PRESIDENT Online

2023年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。国際・政治経済部門の第3位は――。(初公開日:2023年5月15日)なぜ日本の半導体産業は凋落してしまったのか。半導体産業コンサルタントの湯之上隆さんは「『技術で勝って、ビジネスで負けた』と理解されることがあるが、それは間違っている。端的に技術で敗北したのだ」という――。

※本稿は、湯之上隆『半導体有事』(文春新書)の一部を再編集したものです。

日本の半導体メモリは韓国企業に駆逐された

2021年6月1日午前9時、筆者は、衆議院の分館4階第18委員室の参考人席に着席していた。衆議院の「科学技術・イノベーション推進特別委員会」から、半導体の専門家として参考人招致を受け、「日本半導体産業の過去を振り返り、分析、反省し、その上で将来どうしたらいいか?」について、意見陳述を行うよう要請されたからだ。

 

筆者は20分強の意見陳述で、主として次の3点を論じた。

①日本のDRAM産業は、安く大量生産する韓国の破壊的技術に駆逐された

②日本半導体産業の政策については、経済産業省、産業革新機構、日本政策投資銀行が出てきた時点でアウトとなった

③日本は、競争力の高い製造装置や材料を、より強くする政策を掲げるべきである

以下では、これらの要点について説明する。この意見陳述は、衆議院が作成した動画をYouTubeにアップしている。

筆者は、意見陳述のタイトルを、『日本半導体産業をどうするべきか? ――希望は製造装置(と部品)&材料――』として、自己紹介から話を始めた(図表1)。

筆者は、日本がDRAMで約80%の世界シェアを独占していた頃の1987年に、日立製作所に入社して半導体技術者となった。その後、DRAMのシェアの低下とともに技術者人生を送ってしまい、日本がDRAMから撤退すると同時に、早期退職勧告を受けて、本当に辞めざるを得ない事態に至った。

しかし、転職先探しに時間がかかってしまい、辞表を出しに行ったときには早期退職制度が終わって1週間ほど経っていた頃で、部長から「撤回はなしだよ」と辞表をもぎ取られ、自己都合退職となってしまい、早期退職金3000万円はもらえず、退職金はたったの100万円になった。

1980年には世界シェアの80%を独占したが…

日立を辞めた後、紆余(うよ)曲折の末、辿り着いたところは、経営学研究センターが新設された同志社大学だった。今でいうところの特任教授(当時は専任フェローと呼んだ)のポストに就き、約5年間の任期で、「なぜ、日本のDRAM産業が凋落したのか?」を研究した。その分析結果を要約すると、次のようになる。

日本が強かった1980年代半ば頃、そのDRAMはメインフレーム(汎用(はんよう)の大型コンピュータ)用に使われていた。その時、メインフレームメーカーは、「壊れないDRAM」として25年の長期保証を要求した。驚くことに、日本のDRAMメーカー各社は、本当に25年壊れない超高品質DRAMをつくってしまったのである。それで、世界を席巻し、1980年の中期には世界シェアの80%を独占した。これは、技術の勝利だった。

ところが、1990年代にコンピュータ業界にパラダイムシフトが起き、メインフレームの時代は終焉(しゅうえん)を迎え、パーソナル・コンピュータ(PC)の時代がやってきた。そのPCの出荷額の増大とともに、韓国のサムスンがDRAMのシェアで急成長してきた。

この時、サムスンは、「PC用に25年保証は必要ない。5年も持てばいい。それよりも、PC用DRAMは安価でなければならない。その上、PCの出荷台数が桁違いに多いから、そのDRAMは安価に大量生産しなければならない」という方針でDRAMを製造し、日本を抜き去ってシェア1位に躍り出た。

ビジネスだけでなく、技術面でも負けてしまった

この時、筆者は日立の半導体工場でDRAMの生産技術に関わっていたが、筆者も、日立も、日本の他のDRAMメーカーも、誰もがPCの出荷額が増大していること、サムスンのDRAMのシェアが急成長していることを知っていた。

しかし、そうであるにもかかわらず、相変わらず日本のDRAMメーカーは25年壊れない超高品質をつくり続けてしまっていた。その結果、サムスンの安く大量生産する破壊的技術に駆逐されたのである。

日本のDRAM敗戦について、「技術で勝って、ビジネスで負けた」という人がいるが、それは間違っている。日本は、韓国に、技術でもビジネスでも負けたのである。もっと言うと、技術で負けた要因が大きい。

それは、日本が撤退する直前の64メガDRAMのマスク枚数を見てみれば、一目瞭然である。おおむね微細加工の回数を表しているマスク枚数を比較すると、日立29枚、東芝28枚、NEC26枚だったのに対して、韓国勢は20枚くらい、米マイクロンに至っては約半分の15枚でPC用DRAMをつくってしまった。

当然マスク枚数が多いほど、工程数も多くなり、高額な微細加工装置の台数も多くなる。それ故、製造装置の原価がかさみ利益が出ない。その結果、日本のDRAMメーカー各社は大赤字を計上し、撤退に追い込まれていったのである。これは、明らかに、技術の敗北である。

 

意味なく「超高品質」を目指してしまった

日本の半導体産業は、1980年代に、メインフレーム用に超高品質DRAMを製造して世界シェアの80%を独占した。この時、DRAMメーカー各社の開発センターや工場に、極限技術を追求し、極限品質をつくる技術文化が定着した。1980年代には、それが正義だったため、日本は世界を制覇できたわけだ。

ところが、1990年代になると、コンピュータ業界が、メインフレームからPCへパラダイムシフトした。DRAMの競争力は、「超高品質」から「安価」であることに変わった。しかし、ここで日本は、DRAMのつくり方を変えることができなかった。結果として、過剰技術で過剰品質をつくることになり、大赤字を計上し、撤退するに至った(図表2)。

さらに、1社残った日立とNECの合弁会社のエルピーダは、この高品質病がもっとひどくなり(2005年頃には、マスク枚数は50枚を超えていた)、2012年にあっけなく倒産してしまった。

一方、サムスンはPC用に、適正品質のDRAMを安価に大量生産することに成功し、シェア1位となった。これは、ハーバード・ビジネススクール教授だったクリステンセンが言うところの「イノベーションのジレンマ」の典型例である。超高品質で世界一になった日本が、そこから自らを変えることができなかったため、それより信頼性が劣るサムスンのDRAMに駆逐されていったからだ。

なぜ日本の半導体産業は凋落したのか

問題は、日本がDRAMから撤退し、大規模なロジック半導体(SOC)へ舵を切っても、この高品質病は治らず、より悪化し、重篤化していったことにある(図表3)。DRAMを含む日本のすべての半導体のシェアは、1980年代半ばに約50%でピークアウトして、凋落の一途を辿った。

そのシェアの低下を食い止めようと、主として経産省が主導し、国家プロジェクト、コンソーシアム(共同企業体)、エルピーダやルネサスなどの合弁会社を設立したが、全て失敗した。何一つ、シェアの低下を食い止めることはできなかった。

それはなぜか? その主たる原因は、診断が間違っていたことにある。人は、「咳が出る、熱がある、身体がだるい」という症状が出たら、病院に行って医師の診察を受ける。昨今なら、コロナなのか、インフルエンザか、単なる風邪か、という診断を受け、それをもとに処方箋を出してもらう。

日本の半導体産業も、各社のトップ、産業界、経産省、政府などが、病気の診断を行い、それに基づいて処方箋を作成し、実際に処方した。しかし、全て失敗した。その理由は、診断が間違っていたからである。そのため、その処方箋も的を射ていなかったわけだ。

「過剰技術・過剰品質」にこだわり過ぎてしまった

日本の病気の本質は「過剰技術で過剰品質をつくってしまう」ことにあった。しかも、時代が変わっているにもかかわらず、過去の成功体験を引きずり、「今でも自分たちの技術が世界一」と己惚(うぬぼ)れていた。

誰もこの病気に気がつかなかったばかりか、より過剰技術で過剰品質をつくることに、各社、産業界、経産省、政府が注力した。その結果、病気は治らずより悪化し、エルピーダなど死者もでた。そして、SOCビジネスも壊滅的になってしまった。

日本の半導体産業は挽回不能である。特に、TSMCが世界を席巻しているロジック半導体については、日本のメーカーは2010年頃の40nmあたりで止まり、脱落してしまった。いったん、微細化競争から脱落すると、インテルの例でわかるように、先頭に追い付くのはほとんど不可能である。

したがって、日本がいまさら、最先端の7~5nmを製造することなど(まして2nmなど)、逆立ちしたって無理である。ここに税金を注ぎ込むのは無駄である。歴史的に見ても、経産省、産業革新機構、政策銀行が乗り出してきた時点でアウトなのだ。

半導体材料や製造装置には希望がある

では、日本に希望の光はないのかというと、まだ、ある。それは次の3点である。

①ウエハ、レジスト、スラリ(研磨剤)、薬液など、半導体材料は、日本が相当に強力である

②前工程で十数種類ある製造装置のうち、5~7種類において、日本がトップシェアである

③欧米製の製造装置であっても、数千~十万点の部品のうち、6~8割が日本製である

つまり、半導体デバイスそのものには期待できないが、各種の半導体材料、前工程の5~7種類の製造装置、そして、装置が欧米製であっても各装置を構成する数千点の部品の内の6~8割が日本製であり、ここに日本は高い競争力を持っている。

アジアを俯瞰(ふかん)すると、明確な役割分担が見えてくる(図表4)。

「強いものをより強くすること」が重要

サムスンとSKハイニックスを擁する韓国は、メモリ大国となった。台湾には言うまでもなくTSMCがある。ファウンドリーで世界シェア1位、微細化でもぶっちぎりのトップを独走する、世界の半導体のインフラだ。中国には、ホンハイの大工場群があり、世界の半導体の35%以上を吸収し、各種電子機器を組み立てる世界の工場となった。

これに対して、日本は、韓国にも、台湾にも、そして欧米にも、半導体製造装置(およびその部品)と半導体材料を供給している。装置、部品、材料、その中の一つでも供給が止まれば、韓国も、台湾も、欧米も、半導体を製造できない。そのような重要な役割を日本は担っている。

世界中のファブレスが殺到するTSMCが注目されている。しかし、そのTSMCといえども、日本製の装置(とその部品)や材料なくして、最先端プロセスで半導体を製造することはできない。その装置の半分弱が日本製であり(部品レベルでは6~8割が日本製)、材料の7~8割が日本製なのだ。

したがって「強いものをより強くすること」を第1の政策に掲げるべきである。これが、日本半導体産業に対する筆者の提言である。

意見陳述は政策にまったく生かされなかった

意見陳述の時間は15分だったが、筆者は5分以上超過してしまった。しかし、筆者の意見陳述を止めるものは誰もいなかった。衆議院議員からは、大ブーイングが来ることを覚悟していた。これまでの政府および経産省の政策を全否定したからである。

ところが、意外なことに拍手喝采を受けてしまった。そのため、意見陳述の後に、不思議な気持ちになるとともに、もしかしたら、筆者の主張が議員の胸に届いたのかもしれないという実感も湧いた。

しかし、残念なことに、筆者のこの意見陳述が、その後の半導体政策に生かされることは、全くなかったのである。それどころか、日本半導体産業は問題だらけで、無謀かつ無意味な方向へと突き進み始めていった。

---------- 湯之上 隆(ゆのがみ・たかし) 半導体産業コンサルタント、ジャーナリスト 1961年生まれ。静岡県出身。1987年に京大原子核工学修士課程を卒業後、日立製作所、エルピーダメモリ、半導体先端テクノロジーズにて16年半、半導体の微細加工技術開発に従事。日立を退職後、長岡技術科学大学客員教授を兼任しながら同志社大学の専任フェローとして、日本半導体産業が凋落した原因について研究した。現在は、微細加工研究所の所長として、コンサルタントおよび新聞・雑誌記事の執筆を行っている。工学博士。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『電機半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北』『半導体有事』(ともに文春新書)がある。 ----------


森永卓郎氏 財務省は“カルト教団”痛烈批判「貯金してるのに増税させてと、わけの分からない理論を」

2023年07月11日 06時51分03秒 | 日本の衰退

 独協大教授で経済アナリストの森永卓郎氏(65)が10日、TOKYO MX「バラいろダンディ」(月~金曜後9・00)に生出演し、税収増と増税のからくりを解説した。

 昨年度の税収は71兆1374億円で、3年連続で過去最高額を更新。ところが、政府は減税はおろか、退職金の課税強化などを念頭に掲げており、今後も大増税の波はとどまりそうもない。

 税収増の理由について、森永氏は「円安による物価高」を挙げた。「物価が高くなれば、消費が増えますから、自動的に消費税が増えるという構造。最近、大手企業を中心にコスト増の分を値上げするだけじゃなく、もうけを増やすために値上げするというのが広がっている。もうけが増えると、法人税は増える。物価が上がると賃金が上がりますよね。賃金が上がった分だけ累進課税になっているから、もっと所得税が増える。基幹税がみんな増えているという構造」と解説した。

 森永氏は、国民負担率の現状にも言及した。「私が社会に出た1980年は30%だったんですけど、昨年度48%。3割課税が5割課税に上がっている」。現状の税収はまさに、江戸時代の年貢率“五公五民”状態だが、今後の増税は続く見通しといい、「かつての政権はそこで減税をしてきたんですけど、岸田さん、まったく減税する気ない」と言い切った。

 

 また、財務省による細かな増税も地味に国民生活を圧迫していることも理由という。「財務省は行政機関だと思われてるけど、実はカルト教団なんです。“財務真理教”って。ここの最大の教義は、“税率は上げ続けるものだ”と」と、強烈な言い回しをまじえながら解説。「100%まで国民負担率が行ったら止まるだろうなと思ったんですけど、そんなことはないんです。カルト教団、考えてみて下さい。預貯金解約させて、家まで売り飛ばして、献金しなさいって言うじゃないですか?それと同じことを財務省はやってる」と過激に言い放った。

 森永氏の指摘に、科学者の苫米地英人氏は、「100%を超えるというのはその通りで、(森永氏の話は)一般会計の話じゃないですか?特別会計もあるわけで、300%だってありえるわけですから」とおおむね同意した。

 森永氏は、財務省が発表している政府の貸借対照表を示した。これによると、1661兆円の負債とは対照的に、資産も1121兆円とあり、森永氏は「1600兆円の借金がありますよと言いながら、こっそり1100兆円も預金している状況。借金だらけとは言えない。540兆円というのが本当の(借金の)額」とからくりを指摘した。

 さらに、返済や利払いの必要がない日銀保有の国債などを換算すると、日本の借金は差し引きでわずか8兆円という。数字は2020年度のものだが、ここ数年の記録的税収もあり、「現時点で言うとプラスになっている」と森永氏。「貯金してるのに“借金で首が回らないので増税させて下さい”と、わけの分からない理論を言っている。それをみんなだまされちゃっている」と、森永節は止まらなかった。


この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…

2023年04月17日 06時39分25秒 | 日本の衰退

少子高齢化で労働者が不足する。何年も前から言われてきたことだが、外国人と高齢者の雇用でなんとかしのいできた。しかし、円安で外国人が帰国し、高齢者の退職も相次ぐ。危機感は現実となる。

前編記事『これから「大工」が消滅する…後継者不足で「消える仕事」続出の恐ろしい現実』で紹介した大工やドライバー以外にも、意外な職業が消滅の危機にある。

災害復旧もままならない

ただでさえ減った日本人労働者が生活費を求めて海外へ出稼ぎに行く。そんな時代が目の前に迫っているのだ。

「もっとも人手不足が心配されているのは、自衛隊と警察です。自衛官のセクハラ行為が問題になったり、警察官の不祥事も多発したりしています。こうした『人材の劣化』は、なり手が急減しているから起きている。これは深刻な問題です。岸田首相も防衛費の倍増を宣言しました。しかし、いくら予算を増やしたところで、安全保障も治安も人手不足で維持できなくなっていく」(エコノミストの田代秀敏氏)

 
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…© 現代ビジネス

人手不足はインフラの維持にも深刻な影響を与えている。近年、日本では台風や豪雨など、大規模な自然災害が頻発するようになっているが、その復旧が思うように進まない。

「'19年には房総半島を台風15号が直撃し、大規模な停電が発生しましたが、完全復旧に19日間も要したことは記憶に新しいでしょう。その根本的な原因は、電気工事士の人手不足でした。また、土木作業員やとび職も足りず、道路工事や橋梁の補修などが進まなくなっています」(田代氏)

 

教育制度の危機

教育や福祉といった国の根幹に関わる分野にも人手不足は容赦なく襲いかかる。

 
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…© 現代ビジネス

「とくに公立の小中学校の教員は、部活動や研修会といった雑務の多さや、モンスターペアレントなどへの対応で、疲弊しきっています。休みの日も、いつ保護者からスマホに電話がかかってくるか不安で仕方ないという人も多い。

そんな実態を知り、教師になりたい若者がますます減っています。すでに公立学校は存続の危機に直面している」(千葉県在住の元公立中学教師)

 

利用者が選ばれる時代

さらに老後の暮らしの支えとなるはずの介護施設でも人材不足が著しい。

「介護士もこれまではフィリピンやベトナムなど外国人材に頼ってきましたが、円安でこれから人が減っていくのは避けられません。おカネのある人は、自費で十分なサービスが受けられるでしょうが、そうでない多くの方は介護保険の範囲内で最低限必要なサービスを受けるしかありません。

今後は介護士がいなくなり、最低限のサービスのレベルが下がっていくでしょう。たとえば、大便をしても決められた時間にしかおむつを取り替えてもらえないとか、入浴の回数が減ったり、食事の内容が貧しくなったりするという方向に進んでいくのは目に見えています」(三重県にある介護施設のケアマネジャー)

 
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…© 現代ビジネス

団塊の世代が80代を迎える'30年頃から、介護需要は一気に増え始める。一方で、介護職員は不足している。そのときどうなるのか。淑徳大学総合福祉学部教授の結城康博氏がこう見通す。

「最近ではITの活用や介護ロボットを導入する施設も増えていますが、これは介護職員の負担を減らすだけで、人材不足を解消するまでのインパクトはありません。

このままだと、'30年には利用者が事業者に選ばれる側になります。施設に入所したければ本人と家族が面接を受ける。そして施設に迷惑をかけないと見込まれた人だけが入所できる。面倒だと思われたら、施設にすら入れてもらえないという時代がやってくるのです」

 

接客業の自動化が進む

近年、これまで人間が担ってきた仕事がどんどん機械に置き換わっている。スーパーやコンビニではセルフレジで会計を済ませる機会が多くなり、飲食店ではロボットが配膳することもザラだ。

 
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…© 現代ビジネス

「今後は日本人が旅先で泊まる宿舎も同様になっていくでしょう。観光地の多い地方でも働き手は高齢化しており、現役世代の多くは都市部の勤め人になっている。そこにインバウンド需要もあって、観光業界の人手不足は非常に深刻です。

これまで旅館では仲居さんがお膳の上げ下げをしてくれていましたが、配膳ロボットが運んでくるようになるならまだマシなほうで、自分たちで調理場まで取りに行くセルフサービスになっていく。旅行もずいぶん味気ないものになりそうです。

もちろん、人間による手厚いサービスは一部残りますが、それはカネ持ちがべらぼうな料金を払って受けられるもの。二極化がますます加速することは避けられません」(百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏)

 

食糧生産問題はとうとう佳境に

かねてから懸念されていた日本の「食」の危機も始まっている。

たとえば牛乳だ。茨城県の酪農家(50代)が苦境を訴える。

「うちは親父の代からの家族経営で、いまはベトナム人研修生を雇っているのですが、経営的には厳しい。理由は輸入飼料がありえないほど値上がりしてしまったこと。餌代や燃料費、電気・水道代が上がっているのに、生乳の販売価格が抑えられているので、やればやるだけ赤字が膨らんでいきます。明るい展望など持てるはずがありませんし、子供に継がせることなんて考えられません。私の代で廃業です」

 
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…© 現代ビジネス

今後、牛乳を生産する業者は大手に集約され、消費者も質の高い牛乳を飲むには高いカネを支払うしかなくなる。懐に余裕のある人間しか安心・安全なものを口にできない時代がすぐ近くまできている。

 

ピンチをチャンスに

ありとあらゆる業界で人手不足が深刻になり、なり手のいない職業が消滅していく。打開策はないのか。

 
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…
この先「消える仕事」42種を全公開…安心かと思いきや、実はヤバい「意外な職業」 日本が立ち行かなくなる…© 現代ビジネス

経済アナリストの森永康平氏が言う。

「これまで口先だけで一向に進んでこなかったデジタルトランスフォーメーション(DX)に本腰を入れて取り組むしかありません。

大工の不足については3Dプリンターによる建築の実用化を進める。物流危機も、自動運転の実用化やAIとロボットによる配送効率の向上を一刻も早く進めて解決するしかないでしょう。

人手不足は全世界的な問題です。日本が先んじて解決できるなら、その手法を世界に売り込むこともできます」

ピンチをチャンスに変えることができるか。残された時間は少ない。

「週刊現代」2023年4月15・22日号より


「過去最高」日本人の「海外永住者」、増え続ける人材の「海外流出」...増えない賃金、円安、キャリアアップへの限界

2023年03月28日 07時26分45秒 | 日本の衰退

日本を出て、海外で仕事をしたり、生活したりする人が増えている。

「過去最高」日本人の「海外永住者」、増え続ける人材の「海外流出」...増えない賃金、円安、キャリアアップへの限界
「過去最高」日本人の「海外永住者」、増え続ける人材の「海外流出」...増えない賃金、円安、キャリアアップへの限界© J-CASTニュース

外務省が発表した「海外在留邦人数調査統計」によれば、2022年10月1日現在の推計で、日本人の海外の「永住者」は前年比3.6%増の55万7034人と、過去最高を更新した。

為替市場で円安傾向にあることに加え、この約30年で平均賃金がほとんど増えない日本より、米国やオーストラリアといった海外で働いた方が高い収入を得られることなどが背景にあるようだ。

日本の平均賃金424万円、米国より300万円も安く

外務省の調査統計によれば、永住者以外の「長期滞在者」は同6.9%減の75万1481人で、3年連続で前年を下回った。新型コロナウイルス禍の影響で留学生や企業の駐在員などが減ったためとみられる。

その一方で、永住者はコロナ禍と関係なく増え続けており、2003年以降、連続して前年を上回っている。22年の永住者は10年前の12年(41万1859人)と比較した場合、約15万人も増えている。

外務省の調査は年齢などの詳しい内訳を公表していないが、最近では若者が海外で職を求める「出稼ぎ」などが強まっているとされる。

その大きな要因は賃金だ。

経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査によれば、日本の平均賃金は約424万円だ。在留邦人が最も多い米国は約763万円で、日本を300万円以上も上回っている。米国だけでなく、日本人に人気のオーストラリアや英国をはじめ、いまや韓国の平均賃金も日本より高い。

日本ではバブル期以降、平均賃金はほぼ変わっていないのに対し、米国では1990年比1.5倍に伸びるなど、主要国のほとんどは年々上昇しており、日本との格差が開いてしまった。

こうしたなかで、「ワーキングホリデー制度などを使って海外に出向き、そのまま定着してしまう若者も増えている」(海外移住などに詳しい研究者)と言われている。

特に、2022年から急速に円安が進んだことで、海外で得る賃金はいっそう割高になり、日本人の海外行きを後押ししているとされる。

 

男性優遇の日本の職場、若い女性が嫌う?

だが、若者にとっては、賃金の高さだけが理由ではないという見方もある。

外務省調査の永住者の男女別を見ると、男性より女性の方が高く、22年のデータでは女性は全体の6割強にのぼる。長期滞在者で見れば男性の方が多く、永住者の女性比率の多さが目立っている。現地の男性と結婚して住み着く人が多いとも言われるが、他にも理由はありそうだ。

「特に若い女性たちは、男性が優遇される傾向が強い日本の職場ではキャリアアップに限界を感じるという声もある」(同)との指摘もある。

海外を目指す人が増えている現象からは、日本の賃金だけでなく、職場環境の改善などさまざまな課題が浮かび上がる。(ジャーナリスト 済田経夫)