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「うつ」は“脳の炎症”が原因だった!? 最新科学が明かした驚きの事実

2022年11月26日 07時53分25秒 | 健康

「運動」の驚くべき”癒し効果”にスポットを当てた研究が、今、世界的に注目を集めている。運動すると……「ストレスから守られる」「抗うつ薬に匹敵する”うつ改善効果”が得られる」「レジリエンス因子が増え、不安に強くなる」「遺伝と同レベルの認知症リスクを解消できる」「子どもの勉強への集中力が高まる、成績が上がる」など、その驚きの研究結果をまとめたのが”運動×神経科学”の第一人者であるジェニファー・ハイズ博士だ。彼女の研究は、ニューヨーク・タイムズ、BBC、CNN、ハフポストなど、多数の国際的メディアに取り上げられて話題を呼んでいる。その内容を一般向けにわかりやすくまとめた初の著書の邦訳版『うつは運動で消える 神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』が発売された。今回は、本書の内容の一部を特別に公開する。

 

多くの人に「抗うつ薬」が効かない理由

 抗うつ薬は、セロトニン不足にしか効果がありません。時代遅れの医療では、セロトニン不足がすべての気分障害の原因だと考えています。これは真実ではないのに、現時点では、それを証明するための追加検査は行われません。

 多くの人に抗うつ薬が効かないのは、気分の落ち込みの原因がセロトニン不足ではないからです。

 セロトニン不足でなければ、何が原因なのでしょう? 意外なことに、炎症である可能性が高いのです。

 

うつの原因は”脳の炎症”だった

 炎症とは感染から体を守るための現象です。体のあらゆる部位が炎症を起こす可能性があり、でさえもそうなのです。

 そして、脳が炎症を起こすと疾病行動が起こり、私たちは疲労感、反社会性、憂うつを感じるのです。ずっと家にいる。ベッドで一人で寝ている。Netflixを夢中で見ている。身に覚えはありませんか? 

 感染症状が治まり、回復すれば、また元通りの幸せな社会生活に戻ります。しかし、その疾病行動が感染症状が治まった後もずっと続くケースもあります。

 するとどうなるでしょう。びくびくして疲弊し、反社会的で、落ち込んだ状態が数週間、あるいは数ヶ月も続くのです。

(本原稿は、ジェニファー・ハイズ著、鹿田昌美訳『うつは運動で消える ~神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』の内容を抜粋・編集したものです)

ジェニファー・ハイズ

世界トップのキネシオロジー(運動科学)学科を擁するカナダ・マクマスター大学のニューロフィットラボのディレクターであり、運動と神経科学研究の第一人者。主に、身体運動がメンタルヘルスや認知能力にもたらす影響について研究し、受賞多数。その研究は、ニューヨーク・タイムズでの特集をはじめ、CNN、NBC、BBC、ハフポスト、CBSなど、国際的メディアの注目を集めている。初の著書の邦訳版『うつは運動で消える』が2022年9月7日に発売。

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金持ちになりたいなら、住んだらいい都道府県はどこ?

2022年11月26日 07時47分04秒 | お役立ち情報

貧乏を抜け出すには「住む場所」が大切?

ハーバード大学の研究によると、貧乏を抜け出すには「住む場所」が大切だということが分かりました。

ぼくらは普段、住む場所のことを考えません。よほど引っ越しを考えている人でもない限り、「東京都に住もうかなぁ?」とか、「いやいや、それとも神奈川かなぁ?」とか、そんなことを、毎日毎日考えている人は、なかなかいないでしょう。

ですが、もしあなたが本気で「お金持ちになりたい!」と考えているのであれば、住む場所については、真剣に考えるべきでしょう。このとき、最も確実にお金持ちになりたいのであれば、「収入が高い都道府県」かつ「物価が安い都道府県」に住むのが最善です。

結論から言いましょう。現時点で、日本で最もコスパの高い都道府県は「愛知県」かもしれません。なぜ、そう思ったのか? これから、詳しくご説明しましょう。

 

 

日本で、収入の高い都道府県TOP10

まずは、日本で収入の高い都道府県を調べました。厚生労働省の調査によると、日本で収入の高い都道府県は、以下の通りでした。

平均年収ランキング[万円/年]
平均年収ランキング[万円/年]© All About, Inc.

このグラフを見る限り、東京や神奈川、大阪、愛知など、都市部の年収が高いですね。想像通りといえば想像通りの結果です。データとしてみても、「仕事探しのために、都市へ移住する」というのは、効果的な方法だといえるでしょう。

 

 

日本で物価の安い都道府県TOP10

次に、日本で物価の安い都道府県から調べました。総務省の調査によると、日本で物価の安い都道府県は、以下の通りでした。

消費者物価地域差指数(総合)
消費者物価地域差指数(総合)© All About, Inc.

このグラフを見ると、今度は都市部以外の地域で物価が安いことが分かります。最も物価が安いのは宮崎県で、次いで群馬県、鹿児島県となっています。これらの物価が安い地域に住むことで、出費を抑えることができるでしょう。

 

 

まとめ

「収入が高い都道府県」と「物価が安い都道府県」の両方がそろいました。2つのランキング上位にランクインした都道府県は、愛知県だけでした。少なくとも現時点では、愛知県に住むことで、お金を貯めやすいといえるでしょう。

あなたが本当に「お金」を手に入れたいのであれば、住む場所は収入に多大な影響を与えます。「お金がないと不幸になる」なんて論文もあるくらいです。だから、幸せな暮らしを求めている人は、一度真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

文:中原 良太(個人投資家・トレーダー)

18歳に株を始め、25歳でYahoo!株価予想達人で「ベストパフォーマー賞」を受賞。主に株式投資とマネー(お金)についての情報をSNSやYouTube、メルマガなどで発信。IQ上位2%のMENSA会員。

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「ねんきん定期便」を見ればわかる…厚労省がひた隠しにする厚生年金"支払い損"のカラクリ

2022年11月18日 08時15分02秒 | 年金対策

ねんきん定期便の「これまでの保険料納付額」には、個人負担分のみが記載されている。会社負担分の記載がないのはなぜか。新著『バカと無知』が話題の作家・橘玲さんは「それは、厚生年金が支払い損であることがバレてしまうからだ。この会社負担分がどこに回されるかというと、国民年金(基礎年金)の赤字の補塡だ」という──。

2065年には現役世代1.3人で高齢者1人を支える…

岸田政権で検討されている相次ぐ負担増への反発から、SNSでは《#自民党に殺される》がトレンド入りしたという。そこでいま、年金制度になにが起きているのかをまとめてみよう。

話の前提として、人類史上未曾有(みぞう)の超高齢社会になった日本では、制度を支える現役世代の数がますます減り、「受益者」である高齢者の人数が増えていく。

「現役世代(20~64歳)何人で高齢者(65歳以上)を支えるか」では、1950年には12.1人で1人の高齢者の負担を肩代わりしていたのに、2015年は2.3人で1人、2065年には1.3人で1人へと状況は急速に悪化していく(「令和2年版高齢社会白書」)。

戦争や内乱、疫病の蔓延(まんえん)がないかぎり人口動態はほぼ変わらないので、これは予測ではなく「確実にやってくる未来」だ。

コロナ禍で「ごまかせなくなった」

社会保険制度を破綻させず、「サスティナブル(持続可能)」なものにするためには、原理的に2つの方法しかない。「収入を増やす」と「支出を減らす」だ。

政府・厚労省はこれまでいろいろとごまかしながら、少しずつこれを進めてきたが、コロナ禍以降、ほころびを取り繕えなくなり、いまやなりふり構わなくなってきた。

それが、《#自民党に殺される》という反発の背景にあることをまずは確認しておこう。

サラリーマンは年金の奴隷

サラリーマンが加入する厚生年金は、とんでもない「ウソ」によって成り立っている。といってもこれは「陰謀論」の類いではなく、年1回送られてくる「ねんきん定期便」を見れば誰でもわかる。

そこには、「これまでの保険料納付額」と「これまでの加入実績に応じた年金額」の欄があり、それを比較すると、納付総額を大きく超える年金が受け取れるように思える。だがこれは、あなたが国に収めた年金保険料のうち、個人負担分しか記載されていないからだ。

社会保険料の半額は、会社が肩代わりして支払っている。本来であれば、個人負担分と会社負担分を加えた倍の額が、社会保険料の納付総額として記載されるべきだ。

サラリーマンの年金保険料は半分「詐取」される

ではなぜ、そうしないのか。いうまでもなく、厚生年金が支払い損であることがバレてしまうからだ。

これを簡単にいうと、サラリーマンが収めた年金保険料のうち、およそ半分が国によって「詐取」されている。そのお金がどこに回されるかというと、国民年金(基礎年金)の赤字の補塡(ほてん)だ。

こうした仕組みがわかると、厚労省がなぜ厚生年金の適用拡大に必死になっているか理解できる。

これは一般に、「パートなど短時間労働者が国民年金よりも多い年金を受け取れるようになる」と説明されるが、それにともなって保険料の会社負担が増えることはなぜかほとんど言及されない。

経営側からすれば、社会保険料は人件費の一部だ。パートが厚生年金に加入すると、会社負担が増えた分だけ人件費予算は減る。この単純な理屈によって、厚生年金の適用拡大は、その会社の(パートではない者を含む)社員全員の賃金を抑制する大きな要因になるだろう。

会社負担が増え、全員の給料は下がる

国からすれば、厚生年金は会社が保険料を取り立ててくれるおいしい制度だ。それに加えて、消費税の増税は政治的にきわめて困難だが、社会保険料の料率は国会での審議を経ずに厚労省の一存で決めることができる。

こうして社会保険料の負担が年々重くなり、会社が賃上げしても社員の手取りは逆に減っていく事態になった。

とはいえ、社会保険料の料率をいくらでも上げられるわけではない。そこで目をつけたのが、厚生年金をパートにまで拡大して保険料収入を増やすことだ。

ほとんどのサラリーマンは、厚生年金の適用拡大をひとごと(あるいはよいこと)のように思っているだろうが、それは現役世代を犠牲にして、会社の利益を高齢者の年金に「流用」する巧妙な仕掛けだ。

これによってさらに会社負担が増え、全員の給料が下がる(上がりにくくなる)ことをちゃんと説明しなければ、公正な報道とはいえないだろう。

サラリーマンと自営業者は「基礎年金でつながっている」

一般には、サラリーマンが「厚生年金」に、自営業者などが「国民年金」に加入すると思われているが、これは正確ではない。厚生年金には「基礎年金」部分があり、これが国民年金に該当するからだ。

厚生年金の基礎年金(いわゆる「1階」)は、国民年金と分離されているわけではなく、ひとつの器(同じ資金プール)に入れられている。

その結果、国民年金が赤字になると、自動的に、その分が基礎年金から補塡される。

厚生年金の会社負担分が国民年金に流用されてもなんの問題にもならないのは、この手品のような仕組みがあるからだ。

しかしそれでも、厚生年金の報酬比例部分に手をつけることは許されないとされてきた。基礎年金(1階)と報酬比例部分(2階)は分離されており、報酬に応じて増額された年金を受け取ることはサラリーマンの権利だからだ。

ついに報酬比例部分まで「盗まれる」…

ところが日経新聞(9月28日付)に「国民年金『5万円台』維持へ 抑制策停止、厚生年金で穴埋め」という記事が出たことで、この前提が揺らいだ。

厚労省は、(報酬に比例して)多額の年金保険料を収めてきた一部の高年金受給者の年金を減らし、それを基礎年金に充当することで、「大半の世帯で給付水準が上がる」と説明している。だがいったん報酬比例部分に手をつければ、それはとめどもなく拡大していくのではないか。

このようにしてサラリーマンは、厚生年金の会社負担分のうち基礎年金を「詐取」されるだけでなく、報酬比例部分まで「盗まれる」ことになる。

ここまで制度が歪(いびつ)になると、もはや正当化は難しい。いまさら積み立て方式に変えられないとすれば、消費税を大幅に引き上げて社会保険の経費に充てるか、雇用形態にかかわらず所得に応じて徴収する「保険税」を新設すべきではないだろうか。

「保険料支払い期間64歳まで」の衝撃

厚生年金の適用拡大や、報酬比例部分の取り崩し以上に大きな衝撃を与えたのは、国民年金の保険料支払い期間を5年間延長し、64歳までの45年間にするという報道だ。これによって保険料収入が増えるので、将来受け取る年金の水準が下がるのを防ぐ狙いがあるとされる。

しかし、ここには大きな問題がある。保険料負担が増える一方で、受給額が減っていくと、どこかの時点で収支が逆転して、「国民年金に加入すると損する」ことになってしまうのだ。

そこで、簡単な計算をしてみよう。

現在、国民年金の保険料は月額1万6590円(年額19万9080円)で、20歳から59歳までの40年間満額を収めた場合、65歳から終身で月額6万4816円(年額77万7792円)の年金を受け取ることができる。2021年の簡易生命表では、65歳時点の平均余命は男で19.85年(84歳)、女で24.73年(89歳)となっている。

この条件が今後も変わらないとするならば、20歳の国民年金加入者は、これから40年で796万3200円を納め、平均的には、男で1553万9171円、女で1923万4796円を受け取ることが期待できる。これを積み立て型投資商品と見なし、運用利回りをEXCELのIRR(内部収益率)関数で計算すると、男が年率2.16%、女が年率2.67%になる。

ついに維持困難に…

年金受給額は、インフレ率に応じて増えていくように設計されている。物価の上昇を完全にヘッジできるとするならば、国民年金は男で2%、女で2.5%のプレミアムを加えた(国家が支払いを保証した)無リスクのインフレ連動債ということになる。

このように、国民年金はけっして損な投資商品ではない。というよりも、この条件であれば、加入しないことで大きな損失を被ることになる。

少子高齢化にもかかわらず好条件が維持できたのは、年金制度に多額の税が投入されていることと、サラリーマンが納めた保険料が大規模に「流用」されているからだ。しかしいま、長期にわたってこれを維持することが困難になってきた。

マクロ経済スライドの減額で生活保護増大可能性も

国民年金の受給額は、人口動態に合わせて、2004年に導入されたマクロ経済スライドによって少しずつ減額されていく。

当初、これはインフレ率がプラスのときにしか適用されない(デフレでマクロ経済スライドを実施すると名目での受け取り額が減って政治問題になる)とされたが、もはやそんな悠長なことはいっていられなくなって、2015年からは問答無用で年金が減額されることになった。

2019年に行われた財政検証では、これによって約30年後に厚生年金の水準が約2割、国民年金は約3割減るとされた。だがその後、コロナ禍で少子化がさらに加速したことで、年金水準の維持はさらにきびしくなった。

年金受給額が現在の7割(月額4万5371円)に減額されたケースで試算すると、平均余命までの受給総額は男で1135万1874円(年利回り1.03%)、女で1346万4357円(年利回り1.60%)まで下がる。

だがそれよりも問題なのは、毎月の受け取り額が現在より2万円ちかく減ることで、これでは生活できないひとたちが続出し、大挙して生活保護に移行しかねない(そうなれば当然、生活保護制度は破綻するだろう)。

「45年間で約900万円納付、年金1100万円受給」に魅力はあるか

64歳までの納付期間延長はこうした事態を避けるためで、仮に受給額2割減に抑えられたとすると、保険料の支払い総額が895万8600円と12.5%増えるかわりに、毎月の受け取り額は月額5万1853円で、なんとか5万円台を維持できる。ただし、積立額(負担)が増えたことで、運用利回りは男で年0.98%、女で年1.52%まで下がる。

だが、これで社会保障制度が安定する保証はない。

そこで、あり得る可能性のうち(たぶん)最悪のケースとして、保険料納付期間を64歳まで延長しても年金受給額が現在より3割減るとすると、資産運用の利回りは男で年0.57%、女で年1.15%になる。

男の場合、45年間で約900万円の保険料を納め、年金として1100万円あまりを受け取ることになるが、20歳の若者がこの計算を見せられて、年金制度に魅力を感じるだろうか。

69歳まで保険料を納める「残酷な未来」

なお、現行制度のまま年金の受給開始年齢を引き上げていくことも考えられるが、同じように試算すると、68歳の支給開始での年利回りは男で1.71%、女で2.18%、70歳の支給開始では男で1.33%、女で1.85%に下がる。

現実的なのは、「厚生年金の適用拡大」「厚生年金の報酬比例部分の取り崩し」「保険料納付期間の延長」「年金の受給開始年齢の引き上げ」「マクロ経済スライドによる受給額減額」のすべての組み合わせになるだろう。

いずれは、20歳から69歳まで50年間保険料を納め、70歳から減額された年金を受給する「1億生涯現役社会」が到来すると予想しておこう。

---------- 橘 玲(たちばな・あきら) 作家 2002年、小説『マネーロンダリング』でデビュー。2005年発表の『永遠の旅行者』が山本周五郎賞の候補に。他に『お金持ちになる黄金の羽根の拾い方』『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』などベストセラー多数。 ----------

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政府の物価高対策で年金増額が抑制?消費者物価指数の「ウソ」が起こす大問題

2022年11月17日 06時30分32秒 | 行政

ガソリン・電気・ガス補助金で

消費者物価指数が実態より過小になる

 政府は10月28日、「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定した。

 ガソリン・電気・ガスの価格統制が行なわれ、これによって、「消費者物価(総合)上昇率を1.2ポイント程度抑制する」としている。

 政府の説明では、これが望ましいことであるように書いてある。

 しかしこれは、消費者物価の真の姿を見えなくするという意味で大問題だ。

 例えば、消費者物価上昇率が本当は2.2%なのに、統計では1%となる。つまり消費者物価統計が「ウソ」をつくことになる。

 だから、経済の実態を表すには、「消費者物価上昇率は、物価対策効果を除けば何%」と付け加えることが本来なら必要なはずだ。例えば、「統計上は1%だが、実態は2.2%」と示す必要がある。

 消費者物価指数は、さまざまな政策を行う際の判断基準や経済の実態を示す指標として用いられている。

 それがこのような状態になってしまうと、大きな支障が起きる。

年金の物価スライドには

どの上昇率を使うのか?

 例えば、公的年金の物価スライドだ。上の例の場合(注1)、スライド率は1%なのか、それとも2.2%なのか?

 どちらかによって、年金受給者の生活は大きな影響を受ける。

 また、公的年金には、物価や賃金の変動に応じたスライドのほかに、現役人口の減少や平均余命の伸びで年金支給額を調整する「マクロ経済スライド」という仕組みがある。

 これが発動されるか否かは、消費者物価上昇率が1.9%程度を越えるかどうかによって決まる。(公的年金全体の被保険者の減少率と平均余命の伸びを勘案した率は年によって違うが、ほぼ1.9%程度になる。他方、年金の名目額は減少させないとの制約が加えられている。したがって、マクロ経済スライドは原則的には消費者物価上昇率が1.9%程度を超えないと発動されない)

 この決定にも、上記の物価抑制策は大きな影響を与えることになる。

 実質賃金の伸び率も大きく変わる。

 いま、名目賃金の上昇率が2.0%であるものとしよう。上記の例の場合、実質賃金の上昇率は、本当はマイナス0.2(=2.0‐2.2)%なのだが、政府の公式統計では、1.0(=2.0‐1.0)%ということになる。

 この二つ数値ではかなり印象が違う。どちらを用いるかで、政策のあり方は大きく異なるものになるだろう。

(注1)政府が約束している物価対策は、来年9月までのものだが、さらに延長される可能性がある。そこで、話を簡単にするため、ここでは、年間を通じて消費者物価の伸び率が1.2%ポイント抑えられるものとした。

年金受給世帯から訴訟が起きる?

自動車持たなくてもスライド率引き下げ?

 年金の物価スライドに関しては、「政府の物価抑制策で家計は恩恵を受けるのだから、1.2%ポイント引き下げられた政府の公式統計を物価スライドに用いることが正しい」との反論があるかもしれない。

 政府の資料でも、「今回の措置で、標準的な世帯で1~9月で総額4万5000円の負担軽減が生じる」としている(注2)。

 しかし、これは単純な平均計算だ。すべての家計が実際にこれだけの恩恵を受けるわけではない。

 年金受給世帯は自動車を持っていない場合も多いだろう。そうした世帯は、ガソリン補助によって何の恩恵も受けない。

 電気やガスの使用量も標準世帯より少ない場合が多いだろう。

 そうであれば、「年金の物価スライドには、政府の公式統計である1.0%でなく、実態である2.2%を用いるべきだ」という議論が成り立ちうる。

 年金額がどうなるかは、年金受給世帯にとって大問題だ。だから、これを巡って、訴訟が起きるかもしれない。

 最低限、「年金スライドに用いるべき消費者物価上昇率は何であるべきか」についての掘り下げた議論は不可欠だろう。

 一般に、統計の偽造は大問題だ。

 2018年末には厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正が発覚した。最近では、国土交通省の「建設工事受注動態統計」の不正が問題とされた。

 これらは確かに問題だ。統計の数字をねじ曲げてしまえば、経済の本当の姿が分からなくなり、適切な対応が取れなくなるからだ。ただし、これらの統計偽造は、国民生活に直接の影響を与えることはなかった。

 しかし、消費者物価統計がねじ曲げられてしまうことは、これらとはまるでスケールが違う。国民生活に直接の影響がある。

(注2)標準世帯とは、夫婦と子供2人の4人で構成される世帯のうち,有業者が世帯主1人だけの世帯。

食料品の価格高騰は放置?

不公平な物価対策

 今回の物価対策にはほかにも問題がある。

 なぜ、ガソリンと電気とガスだけが対象になるのか?食料品価格の高騰も著しいが、これを放置してもよいのか?

 ガソリンを消費しない家計はあるが、食料品を購入しない世帯はない。

 食料品を置き去りにしてガソリン価格を抑えるのは、順序が逆ではないか?

 何台も車を持っている家庭はガソリン価格統制で大きな利益を得る。また、企業の車であっても利益を得られる。

 電気・ガスはどの家計でも消費しているが、業務用でも補助の利益を受けることになる。また、都市ガスは対象とするが、プロパンガスなどのLPガスは直接支援の対象にはしない。

 さらに、物価高騰に苦しんでいるのは、家計だけではない。事業者も原価の高騰に苦しんでいる。とりわけ零細企業がそうだ。原価上昇を売上げ価格に転嫁することができないからだ。

 製造業でこの現象は顕著に見られる。畜産農家の経営も、飼料の高騰に圧迫されている。

 こうした状況があるのに、なぜ、ガソリン、電気、ガス代だけが補助の対象となるのは不公平だ。

本当に必要なのは原因に対処すること

統制は体温計を操作するのと同じ

 総合経済対策の基本的な問題は、原因に対処しようとせずに、結果を隠すことだけに専念していることだ。

 物価上昇の原因の半分程度は円安なので、まず円安を止めるべきだ。そのために、日本銀行が長期金利の統制をやめて市場の実勢に任せるべきだ。

 物価対策はただで行えるのではない。

 国民の負担になる。しかも、防衛費と同じ程度の大きさだ。物価上がる状況を自ら作り出して対策でそれを取り繕うという巨大なマッチ・ポンプと言わざるを得ない。

 政府は、価格統制を来年の9月まで行うとしている。しかし、そこで止められるかどうか分からない。円安が続いて、いつになっても止められない危険がある。

 物価や金利という基本的な経済指標を統制するので、日本経済が抱えている本当の問題が見えなくなる。

 これは、病気になって体温が上がり、血圧が上がっているのに、体温計や血圧計を操作して、正しい表示がなされないようにしていることに喩えることができる。

 こんなことをしたら、病気は悪くなるばかりだ。

 病気になったときに必要なのは、体温計や血圧計の表示を操作することでなく、治療することである。

 今回も、全く同じだ。

 物価高騰は、病気のようなものである。本当に必要なのは、物価高騰の原因に対処することだ。そのためには、金融政策を転換して円安を止めるべきだ。

 それをせずに物価を抑制しようとするのは、体温計や血圧計の表示を操作するのと、全く同じである。

 それによって、人々は物価高騰を意識しなくなる。そして円安はますます進む。

石油ショックへの対応は正しかった

落ちてしまった経済政策の質

 1973年の石油ショックの際、政府は予算編成途中の11月に、「総需要抑制策」を採り、大型公共事業を凍結・縮小した。

 74年には公定歩合の引き上げが行われ、企業の設備投資を抑制する政策がとられた。

 そして、省エネが行なわれた。役所のビルの照明が薄暗くなり、エレベータの運行制限が行なわれたことをよく覚えている。

 では、このとき、物価抑制策はとられたか?

 ちり紙、トイレットペーパー、家庭用灯油、家庭用液化石油ガスには基準価格を設定した。しかし、財政支援は行なわなかった。

 これが正しい政策だ。

 日本の経済政策の質がなんと落ちてしまったことか。恐ろしいとしか言いようがない。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)

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日本には「クソどうでもいい仕事」が多すぎる…もうすぐ韓国にも抜かれる日本のヤバい現実

2022年11月13日 09時10分44秒 | 教育

バラエティ番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの生物学者、池田清彦氏の新刊『バカにつける薬はない』が角川新書から刊行された。

綺麗ごとばかり並びたてる「愚か者」を軽快にぶった切っていく本書から、教育現場にはびこるブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)に関する一節を紹介する。

© 現代ビジネス

嘘八百の美辞麗句

「政府は学習履歴などの個人の教育データについて、2025年頃までにデジタル化して一元化する仕組みを構築することになりました」というニュースを聞いて呆れてしまった。

「こうした教育データを学校や教育機関が共有して、教育の向上につなげたい」「子供たちの個性を伸ばすことができるよう、教育の現場でデジタル化の環境を整備し、具体的な政策として進めていきたい」ということらしいが、よくもまあ、嘘八百の美辞麗句を並べるよね。

Photo by iStock© 現代ビジネス Photo by iStock

そのうち、課外活動や塾や学校外の活動もデジタル化するつもりらしい。デジタル化すると言ってもオリジナルなデータを集めるのは現場の先生なので、今でさえ忙しい教育現場は、さらに忙しくなり、教育そのものにかける時間はさらに少なくなり、教育は悲惨なことになりそうだ。

現在でも、学校の先生の仕事の大半は教育の向上には全く役に立たない無駄仕事で、デジタル化はこれに拍車をかけるだろう。はっきり言って、志のある若者は政府に管理された学校の先生にはならない方がいいと思うよ。

「2030年頃までには、本人が閲覧できるようにして、生涯学習などに役立てたい」と、とてもいいことのように言っているけれども、余計なお世話だ。大体自分の過去の学習履歴などを参照して、将来の学習に役立てようなどという国民はまずいないだろう。こういう無駄なことに、エネルギーと金を使うので、日本はどんどんドツボにはまっていくのである。

私が現役の高校教諭だった頃も、指導要録というのがあって(今もあるけど)、成績や出欠、その他の素行などの「指導に関する記録」を記載して、5年間(「学籍に関する記録」は20年間)保管しておく決まりがあった。私は担任をしていたので、指導要録を書かされたが、成績と出欠だけ記載して、素行や行動の記録はすべて、特記事項なしというハンコを押して済ませていた。

入学、卒業、退学、転入、転学等の、学籍に関する記録は、本人が証書類を紛失した際に、卒業や在籍を証明する証拠となるため、20年間保管することに意味はあるが、指導に関する記録などは、書いて金庫に保管してから5年間、閲覧する人はほぼ皆無なので、事細かに記載しても時間の無駄なのだ。

だからこういうことにエネルギーと時間をかけるのは無駄仕事の最たるもので、児童生徒と遊んでいる方が余程有意義なのである。

個人の過去の学習履歴をデジタル化しても、本人はまず見ない。そもそも見るメリットがない。データが教育産業に流れて、金もうけの道具に使われるのが関の山だ。実はそのためにやっているのかもしれない。

適当な名目を付けて、税金を使って、私企業の利益に奉仕するといういつものパターンになるのは火を見るより明らかだろう。そのうち個人情報が漏れて、○○さんの中学時代はお勉強もできなくて欠席が多く素行も悪かったなどという情報が、いつの間にか第三者に渡るといったことも起こりそうだ。

Photo by iStock© 現代ビジネス Photo by iStock

おそらく政府の狙いは、児童生徒の政治的傾向をデジタル化して、政府の政策に反抗的な国民のリストを作って、国民を政権の管理下に置きたいということなのだろう。とりあえずお友達企業をもうけさせて、あわよくば、独裁政権の礎を築きたいということ以外に、こんなアホなことをする理由が思いつかない。

進士正憲さんという方がツイッター(Twitter)で述べていたように、国会議員の活動実績、国会・委員会の出席状況、発言履歴、歳費、交通費の収支明細を一元管理して、公表して、国民が必要に応じて閲覧できるようなデジタル化なら大いに意義があると思うけどね。

国民を統制することには熱心だが、自分たちはやりたい放題で、税金の使い道や、怠慢の記録は絶対に公表しないというのは、独裁への道だ。だんだん、現政権を支持する人々が嫌う、中国や北朝鮮の政権のやり方に近づいている。これらの人々が中国や北朝鮮が嫌いなのは、近親憎悪なのかもしれない。

スポーツが好きな人は勝手にやればよい

少し前に、スポーツ庁が、中学生の16%がスポーツ嫌いという調査結果を受けて、これを半減させたいという計画を掲げているという話を聞いた時も、アホかいなと思ったけれども、スポーツ庁とかデジタル庁とかは、本当にブルシット・ジョブで成り立っているような官庁で、国民一般はこんな官庁がなくても一向に困らず、税金の無駄遣いだ。

速やかに解体すれば、日本の凋落の速度は、多少は緩和されるだろう。

ブルシット・ジョブとは2018年出版のデヴィッド・グレーバーの著書の題名で、仕事をしている本人でさえ、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえあると認識しているが、組織の維持、あるいは自身の雇用を守るために、意味があるかのようにふるまわざるを得ない仕事を指す。

例えば、スポーツが好きな人は勝手にやればよくて、それに政府が介入する必要はない。スポーツ嫌いな中学生が16%から8%に減ったからといって経済が潤うわけでもない。スポーツで国威を発揚させて、国力の向上に役立てたいということかもしれないが、はっきり言ってこれは妄想だな。

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冷戦の頃、旧ソ連や東ヨーロッパでは、国を挙げてオリンピックに勝つべくステートアマを養成したが、これらの社会主義国はほとんど崩壊してしまった。国威発揚は、国力の向上という観点からは、何の役にも立たなかったブルシット・ジョブだったのだ。独裁者の自己満足みたいなものだな。

プロのスポーツは金もうけのための手段だから、それを規制する必要も補助する必要もない。アマチュアのスポーツは趣味なのだから、好きにやらせておけばいいので、税金を使って振興するのは、スポーツは素晴らしいというイデオロギーのなせる業だ。

私は、自分ではスポーツはやらないし、ほとんど見ない。スポーツ振興に私の納めた税金を使わないでくれと言いたい。そういう人も多いだろう。

私は、時々釣りをするが、例えば調査の結果、釣り嫌いの中学生が50%いるとして、これを25%に下げるために、文科省と農林水産省が協力して釣り振興のために税金を使うと決めたら、おかしいと思う人が沢山いるだろう。スポーツも釣りも、個人の趣味なのだから、スポーツだけを優遇するのは間違っている。

スポーツも釣りも多少は経済振興に貢献するとは思うけれど、スポーツや釣りが盛んになったので、経済が発展したのではなく、経済が発展したので、スポーツや釣りをする余裕ができたのである。現代社会においては、経済を発展させ、国力を伸ばしたのは紛れもなく科学技術で、国は科学技術力を高めるために何をすべきかを第一義に考えるべきなのだ。

学習履歴をデジタル化するというのは、それ自体がブルシット・ジョブの最たるものだが、児童生徒を管理して、同調圧力に従わない個性的で我が強い人間を排除して、先生や上司の言うことを良く聞いて、ブルシット・ジョブもいとわない国民を作りたいという政権の意図が見え隠れする。

先生の仕事は大半がブルシット・ジョブ

日本は、高度成長期にみんなで一律の仕事をして、安価な製品を大量生産するというやり方で、経済成長を成し遂げた。

日本経済が絶頂だった1989年の株価時価総額の世界1位はNTTである。以下、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行が第5位までで、次にやっとIBMが入っている。トヨタ自動車は11位で、50位までに日本企業が32社入っている。それが、2022年のトップ5は、アップル、マイクロソフト、サウジアラムコ、アルファベット(グーグル)、アマゾンで次がテスラ。50位以内の日本企業はトヨタ自動車がかろうじて31位に入っているのみである。いかに日本の経済力が落ちたかがよく分かる。

ちなみに、台湾セミコンダクターは10位、韓国のサムスン電子は15位である。多くの日本人は日本の科学技術力は、台湾や韓国より上だと思っているようだが、これを見ると、少なくとも半導体や電子機器では太刀打ちできなくなっているのは瞭然だ。

台湾セミコンダクターの時価総額はトヨタ自動車の2.1倍、サムスン電子の時価総額は1.6倍である。1990年に一人当たりの名目GDPが世界8位だった日本は、2021年には28位に落ちた。韓国は30位、台湾は32位で、近い将来日本は追い抜かれるだろう。

経済が停滞した原因は、日本がかつての成功体験を忘れられずに、イノベーションを起こす人材を優遇せずに、安売り競争を続けたためだ。その間、世界はITに代表される新しい技術を開発して、価格が高くとも性能が飛躍的に良い製品開発にまい進していたのである。アメリカは1990年代になってから新興のIT産業が伸びて、あっという間に日本を抜き去ってしまった。

日本には、アップルやマイクロソフトの創業者であるスティーヴ・ジョブズやビル・ゲイツのような人材が出なかったのだ。この二人は、同調圧力が強く、変わり者を冷遇する日本の教育システムでは育たなかっただろう。

何度も言うように、日本の学校や官庁や会社は、ブルシット・ジョブが多すぎて、新しいアイデアを考える暇がない。先生の仕事は大半がブルシット・ジョブ。児童生徒も与えられた課題をそつなくこなすことが過大に評価されて、自ら新しいアイデアを考えることは嫌われる。イノベーションを起こす可能性のある人材を潰すことに精を出しているとしか思われない。

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そこを反転させて、先生には自主研修の時間を大幅に与え、児童生徒には学習の自由を大幅に認める教育制度に変えなければ、日本の科学技術は発展せず、どんどん後進国へ滑り落ちていくのは自明だ。ああそれなのに、学習履歴のデジタル化などといった時代錯誤な政策を打ち出すとは、日本の崩壊もいよいよ秒読みに入ったのかもしれない。

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