台湾メディアの中時新聞網はこのほど、中国政府が新型コロナウイルス感染症対策として実施していた海外渡航の厳しい制限を撤廃したことで、中国の富裕層の海外移住が急増しているとして、移住先やその理由を紹介する記事を発表した。人気の移住先の一つはシンガポールという。
記事によると、中国人富裕層が特に多く移住しているのはシンガポールという。南アメリカに拠点を置き世界のトップクラス富裕層とその消費パターンを研究するニュー・ワールド・ウェルスによると、2022年には約1万800人の中国人富裕層が中国を離れ、多くの部分がシンガポールに殺到した。シンガポールでは高級住宅価格の高騰や高級自動車の販売増、ゴルフクラブの外国人会員の会費の大幅上昇が発生したという。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国政府が自由な出入国を再開したことで、中国人富裕層が家族ぐるみで海外に移転する現象が発生した。シンガポール政府は新規居住者の国籍データを公表していないが、富裕層移民についてのコンサルタントは、シンガポール定住を求める人の中で中国人は大きな割合を占めており、その割合は上昇しつつあると説明したという。
シンガポールの不動産調査会社であるオレンジティー・アンド・タイによると、22年にはシンガポールの住宅価格が8.6%上昇した。同社が22年10月に発表したリポートは、外国人がシンガポールのマンションを購入した事例では、中国人によるものが最も多いと指摘した。
セントーサゴルフクラブの外国人会員の年間会費は、新型コロナ感染症発生前は約25万シンガポールドル(約2500万円。23年3月5日現在の為替レートによる。日本円換算は以下同じ)だったが、現在までに84万シンガポールドル(約8500万円)にはね上がった。シンガポール政府の統計よると、高級車の登録台数も大幅に増加した。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国人富裕層がシンガポール移住に魅力を感じる理由として、アジアの金融センターであること、税率が比較的低いこと、中国や香港に比較的近いこと、中国語と英語が普及していること、質の高い教育が存在すること、資産管理業務に力を入れる金融業者が存在することを挙げた。
コンサルタント会社のヘンリー・アンド・パートナーズによると、中国が感染症対策を緩和した後の1月初旬には、シンガポールへの移民についての問い合わせが急増した。同社プライベート顧客部のドミニク・ボレク主任は、シンガポールだけでなくポルトガルやギリシャも中国人富裕層の人気が高い移住先と説明した。
AFP通信によると、シンガポールでは、中国人富裕層の派手な「カネづかい」に人々が驚いているという。ある移民コンサルティング会社の社長は顧客にパーティーに招待されたところ、中国人が会場で日本の「山崎55年ウイスキー」を開封したという。記事は、中国人が開封した「山崎55年ウイスキー」は、1本の価格が80万ドル(約1億円)前後と紹介した。(翻訳・編集/如月隼人)