急激な円高の原因
8月2日の期限が迫る米債務上限引き上げ問題で2党間の交渉は難航、デフォルト(債務不履行)回避が実現できるのかどうか危なくなってきた。妥協を許さずデフォルトにもっていき、オバマ再選を阻もうと公然と話す共和党支持者もいる一方、一般市民は連邦議会議員の事務所前で集会を開き回避を訴えている。ネット上では「F*** YOU WASHINGTON」というツイートが広がるなど、ワシントンの成り行きを見守る市民の間で怒り・焦燥感が高まっている。
民主・共和両党の争いに慣れている米市民も、今回の財政危機は他人事ではすまされない。特に25日の演説の中で、オバマ大統領の「もし交渉決裂でデフォルトに陥れば、政府はすべての支払いをする十分な金がなくなる。その支払いの中には毎月の社会保障給付金、退役軍人給付金、何千もの企業との契約も含まれる」という言葉は、社会保障にたよる高齢者の危機感を増幅させた。
障害者を含めた社会保障受給者数は、政府データによると、2010年末で5400万人をこえる。その内高齢者は約4400万人。4分の3の受給者がこの社会保障のみにたよって生活している。平均受給額は月に約1000ドル。もし給付が止まれば、預金のない多くはたちまち生活に困る。
同演説の中で、オバマ大統領はデフォルト回避に向けて「地元の連邦議会議員に働きかけよう」と呼びかけた。それに答えるように、26日リベラル系団体ムーブ・オンが呼びかけ、全米800以上の共和党議員の事務所前で集会が開かれた。また、連邦議会の交換台は解決を求める市民からの電話でパンク状態となった。
一方、ニューヨーク在住のブロッガーのジェフ・ジャービスさんはツイーターで「F***you Washington(米政府のろくでなし)」とツイートした。「我々の国で、我々の経済で、我々の金だ。ふざけんのもい加減にしろ」「ツイッターで合唱しよう。くそったれ、米政府」。
ツイッターでは、いわゆる「Fワード」と呼ばれる4文字はふさわしくないとされている。しかし、ジャービスさんはあえてこの「Fワード」を使いリツイートするように呼びかけた。短時間で、ジャービスさんのメッセージはツイッターで飛び交い、7万以上のツイートに「F*** YOU WASHINGTON」の文句が入れられたという。
最近のピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、全体として68%の国民が2党が妥協しデフォルト回避を望んでいるという。しかし共和党内では妥協を望むのは53%。その内、草の根運動「ティーパーティー(茶会)」派は42%、共和党他派の66%と大きな隔たりがある。
この調査結果が示すように、一部保守派は妥協は許さない、デフォルトもかまわないと考えているようである。それどころか、オバマ氏を引きずり出すいい機会と考えているようだ。それを示唆したのは実業家で「不動産王」と呼ばれるドナルド・トランプ氏。オバマ大統領の出生証明書偽物説を出し、オバマ氏を激しく批判、茶会運動から支持を集めてきた。2012年の大統領選出馬をほのめかしていたが、5月に不出馬を表明したいきさつがある。
25日、トランプ氏はフォックス・ニュースのインタビューで、「共和党は妥協に応じないで、デフォルトになるようにすればいい。そうすれば、共和党は欲しかったものが手に入る。オバマは再選されないし、オバマの医療保険制度もなくなる」と語った。「国民は、今回の責任はより共和党にあると思っているようだ」というニュースキャスターの指摘に、次のように話している。「最初にデフォルトを出した大統領として、歴史に残るのはオバマだ。共和党の議員の名前など誰も覚えていないだろう」。
トランプ氏は「デフォルトに陥ることで、米国の格付けがトリプルAから下がろうが、社会保障費で暮らしている高齢者の生活を脅かそうが、貧しい者が医療を受けられなくてもかまわない、そんなこと自分の知ったことか」と言っている風に聞こえる。オバマ再選を阻むためには、国民の生活を脅かすことなど何でもないと思っているようだ。
妥協を許さない態度には、よく「my way or the highway」という表現が使われる。「自分はいつも正しい。同意しない者は去るべき」という態度だ。25日ウイリアム・デーリー大統領首席補佐官はこの表現をもじり、共和党員は債務上限での交渉に至って「their way or the highway」の態度のようだと指摘している。これはベイナー下院議長が2度も削減交渉の席を立ったことも含んでいる。
しかし市民の側からすれば、財政危機に関してはこの「my way or the highway」の態度は、2党双方に言えそうである。25日のオバマ大統領・ベイナー下院議長の演説では、相手に責任を押し付けているように感じられた。双方とも、相手が歩み寄ろうとしないのが問題と主張している。
米メデイアは、ホワイトハウスは最悪のシナリオを想定して、デフォルトに陥った場合、今プールされている資金から何を優先的に支払うのかを考慮しているという。社会保障費、高齢者対象の医療保険、公務員の給料、軍人の給料、FBIなどなど。
もしデフォルトになれば、国民がそのつけを払うのか。わずかな年金だけで暮らしている高齢者、身体障害者、退役軍人が払うのか。
大統領は25日の演説で「我々は、国民をワシントンでの政治戦の巻き添え被害者にさせることはできない」と話した。大統領の言葉を受ければ、もし失敗すれば、政治ショーでの無能な立て役者たちにつけは行くべきだろう。事態回避に失敗した大統領、ベイナー下院議長、すべての与野党議員たちに。
オバマ大統領が「大統領の給料返上。すべての連邦・州議員も後にならってほしい」と言わなければ国民は納得しないだろう。
8月2日の期限が迫る米債務上限引き上げ問題で2党間の交渉は難航、デフォルト(債務不履行)回避が実現できるのかどうか危なくなってきた。妥協を許さずデフォルトにもっていき、オバマ再選を阻もうと公然と話す共和党支持者もいる一方、一般市民は連邦議会議員の事務所前で集会を開き回避を訴えている。ネット上では「F*** YOU WASHINGTON」というツイートが広がるなど、ワシントンの成り行きを見守る市民の間で怒り・焦燥感が高まっている。
民主・共和両党の争いに慣れている米市民も、今回の財政危機は他人事ではすまされない。特に25日の演説の中で、オバマ大統領の「もし交渉決裂でデフォルトに陥れば、政府はすべての支払いをする十分な金がなくなる。その支払いの中には毎月の社会保障給付金、退役軍人給付金、何千もの企業との契約も含まれる」という言葉は、社会保障にたよる高齢者の危機感を増幅させた。
障害者を含めた社会保障受給者数は、政府データによると、2010年末で5400万人をこえる。その内高齢者は約4400万人。4分の3の受給者がこの社会保障のみにたよって生活している。平均受給額は月に約1000ドル。もし給付が止まれば、預金のない多くはたちまち生活に困る。
同演説の中で、オバマ大統領はデフォルト回避に向けて「地元の連邦議会議員に働きかけよう」と呼びかけた。それに答えるように、26日リベラル系団体ムーブ・オンが呼びかけ、全米800以上の共和党議員の事務所前で集会が開かれた。また、連邦議会の交換台は解決を求める市民からの電話でパンク状態となった。
一方、ニューヨーク在住のブロッガーのジェフ・ジャービスさんはツイーターで「F***you Washington(米政府のろくでなし)」とツイートした。「我々の国で、我々の経済で、我々の金だ。ふざけんのもい加減にしろ」「ツイッターで合唱しよう。くそったれ、米政府」。
ツイッターでは、いわゆる「Fワード」と呼ばれる4文字はふさわしくないとされている。しかし、ジャービスさんはあえてこの「Fワード」を使いリツイートするように呼びかけた。短時間で、ジャービスさんのメッセージはツイッターで飛び交い、7万以上のツイートに「F*** YOU WASHINGTON」の文句が入れられたという。
最近のピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、全体として68%の国民が2党が妥協しデフォルト回避を望んでいるという。しかし共和党内では妥協を望むのは53%。その内、草の根運動「ティーパーティー(茶会)」派は42%、共和党他派の66%と大きな隔たりがある。
この調査結果が示すように、一部保守派は妥協は許さない、デフォルトもかまわないと考えているようである。それどころか、オバマ氏を引きずり出すいい機会と考えているようだ。それを示唆したのは実業家で「不動産王」と呼ばれるドナルド・トランプ氏。オバマ大統領の出生証明書偽物説を出し、オバマ氏を激しく批判、茶会運動から支持を集めてきた。2012年の大統領選出馬をほのめかしていたが、5月に不出馬を表明したいきさつがある。
25日、トランプ氏はフォックス・ニュースのインタビューで、「共和党は妥協に応じないで、デフォルトになるようにすればいい。そうすれば、共和党は欲しかったものが手に入る。オバマは再選されないし、オバマの医療保険制度もなくなる」と語った。「国民は、今回の責任はより共和党にあると思っているようだ」というニュースキャスターの指摘に、次のように話している。「最初にデフォルトを出した大統領として、歴史に残るのはオバマだ。共和党の議員の名前など誰も覚えていないだろう」。
トランプ氏は「デフォルトに陥ることで、米国の格付けがトリプルAから下がろうが、社会保障費で暮らしている高齢者の生活を脅かそうが、貧しい者が医療を受けられなくてもかまわない、そんなこと自分の知ったことか」と言っている風に聞こえる。オバマ再選を阻むためには、国民の生活を脅かすことなど何でもないと思っているようだ。
妥協を許さない態度には、よく「my way or the highway」という表現が使われる。「自分はいつも正しい。同意しない者は去るべき」という態度だ。25日ウイリアム・デーリー大統領首席補佐官はこの表現をもじり、共和党員は債務上限での交渉に至って「their way or the highway」の態度のようだと指摘している。これはベイナー下院議長が2度も削減交渉の席を立ったことも含んでいる。
しかし市民の側からすれば、財政危機に関してはこの「my way or the highway」の態度は、2党双方に言えそうである。25日のオバマ大統領・ベイナー下院議長の演説では、相手に責任を押し付けているように感じられた。双方とも、相手が歩み寄ろうとしないのが問題と主張している。
米メデイアは、ホワイトハウスは最悪のシナリオを想定して、デフォルトに陥った場合、今プールされている資金から何を優先的に支払うのかを考慮しているという。社会保障費、高齢者対象の医療保険、公務員の給料、軍人の給料、FBIなどなど。
もしデフォルトになれば、国民がそのつけを払うのか。わずかな年金だけで暮らしている高齢者、身体障害者、退役軍人が払うのか。
大統領は25日の演説で「我々は、国民をワシントンでの政治戦の巻き添え被害者にさせることはできない」と話した。大統領の言葉を受ければ、もし失敗すれば、政治ショーでの無能な立て役者たちにつけは行くべきだろう。事態回避に失敗した大統領、ベイナー下院議長、すべての与野党議員たちに。
オバマ大統領が「大統領の給料返上。すべての連邦・州議員も後にならってほしい」と言わなければ国民は納得しないだろう。