コンビニオーナーの収入は、どのように計算されるのかご存じだろうか? フランチャイズ契約における計算方法はとにかく複雑で、筆者の知る限り、現役のオーナーでさえきちんと理解している人は少ないように思う。
そこで今回は、コンビニオーナーの収入について、なるべく分かりやすく書いていくことにする。
●オーナーの給料計算はとにかく複雑
例えば、一般的な個人経営の店なら、80円で仕入れたモノを120円で販売し、差額の40円が粗利益、そこから経費などを引いて利益となる。これでもそこそこ複雑な計算ではあるが、コンビニの場合は「ロイヤルティー」というものが発生し、本部とオーナーとで利益を一定の割合で分配することになっている。
ロイヤルティーとは、ライセンスに対して支払う対価や報酬のことで、特許権料のことを指す。また、契約内容によっては、その割合が段階別に変わることもある。コンビニ各社のオーナー募集のサイトを見ると、契約の種類やロイヤルティーについての説明が記載されている(「チャージ」や「フィー」と表記しているところも)。
ただ、新規オーナー向けのページのためか、細かい計算のロジックまでは明記されていない。コンビニをはじめフランチャイズ契約の多くは、基本的な部分は本部が計算し、ひと月分の利益をオーナーの口座に振り込むという形なので、計算方法の複雑さを理解しないまま運営しているオーナーもいる。
セブン-イレブンの「Aタイプ契約」を見ると、セブン-イレブンチャージ(ロイヤルティー)は、「売上総利益に43%の率を乗じた金額」と記載されている。逆の見方をすれば、売上総利益の57%がオーナーの取り分ということになる。ただ、ここで注意すべきは、売上総利益すべてがオーナーのポケットに入るわけではないということ(参照:「セブン-イレブン フランチャイズ(Aタイプ)契約の要点と概説」一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)。
総売上原価=月初商品棚卸高+当月商品仕入高−月末商品棚卸高
純売上原価=総売上原価−棚卸増減原価−不良品原価−仕入値引き高
オーナーの収入を計算するにはまず、上の計算式で「総売上原価」と「純売上原価」を求める。そして、売上高から純売上原価を引き、契約ごとに本部と店が粗利益を分配して、オーナーの取り分が算出されるというわけだ。
「総売上原価」とは、その月に売り上げた商品の原価の合計だ。ただし、月初・月末の商品棚卸高とは計算上の商品在高であり、万引きなどで紛失した商品については棚卸しされるまで考慮されない。そして、この総売上原価には、日々発生する商品の廃棄分が原価として含まれている。以下の図を見てほしい。
以前の記事「コンビニで「食品ロス」が絶対になくならない理由」で、弁当などの商品を販売するうえで、販売率が100%になることはないし、あってはならないとされていると書いた。
本部の言い分としては、商品にある程度の余剰を持たせて機会損失をなくしたい。ただし、発注量はオーナーの技量によるものなので廃棄分は商品原価としては認めないというのだ。フランチャイズ契約がトラブルへと発展する原因は、この計算によることが多い。
ただ、一定条件下ではあるが、コンビニによっては廃棄分の一部を本部が負担するという契約もある。この場合、「純売上原価」をロイヤルティー計算の前にはさんでいる。要するに、本部は損をしない仕組みになっているのだ。
また、商取引上の慣習である「一定量仕入れることによる値引き」もロイヤルティーとして求めてくる。商品原価を取り決める商談は本部が一手に行っているので、その営業力によって商品原価が安くなることで“ごほうび的なインセンティブ”が発生する。当然の取り分と言えるが「売れなかった場合のリスクは店舗が持ち、仕入れでトクした分は分配しろ」というのは、いささか欲張り過ぎではないだろうか。
●オーナーのポケットに入る利益はいくら?
先の計算で終わりではない。具体的なオーナーの給料を求めるには、まだまだ計算が必要になる。本部と粗利益を分配してから、もろもろの経費を引いて月間の収入が決まる。
では、コンビニ運営に掛かる経費には、具体的にはどのようなものがあるのか、詳しく説明しよう。
人件費
経費の中で、最も大きな割合を占めるのが人件費だ。売り上げによって変動するが、おおよその基準として、売上対比で4〜6%くらいだ。
例えば、1日60万円の売り上げだとすると、30日で1800万円の売り上げ。人件費を5%とするなら90万円、4%では72万円となる。
実は、経費には、オーナーが調節できるものとそうでないものがある。この人件費もその1つ。オーナー店長が休まなければ人件費を抑えられて利益は増えるが、体力的にも精神的にも負担は大きくなる。
廃棄ロス
現在、コンビニでは1日当たり平均2万円前後(売価)の廃棄を出している。本部が廃棄ロスの一部を負担するという契約も増えてきているが、ほとんどがオーナー側の負担となる契約だ。廃棄ロスは1カ月で30万〜100万円と店によって幅はあるが、これもまたオーナーが直接操作できる経費だ。
店によっては「いつ来ても、このコンビニは弁当が少ないなあ」と思われるかもしれないが、オーナー自身が生きていくためにはやむをえない経費削減方法とも言える。
電気代
24時間営業のコンビニでは、エアコンや照明はつけっぱなしだ。そのほか、たくさん電気を使う代表的なモノといえば冷凍庫や冷蔵庫。近年の電化製品は性能や節電効果が高くなっていることが多いため、製造年は要チェックだ。
実際に、消費電力を年代別に比較したわけではないが、かつて筆者が経営していた店では古い冷蔵冷凍庫を使用していたせいか、電気代が月間25万〜30万円と高額だった。ところが、同じような規模で営業しているにもかかわらず、月間15万円程度の店舗もあるというから驚いた。その差は10万円以上、見過ごせない数字である。
余談だが、コンビニの多くは10年から15年で大規模改装をするのだが、要冷機を入れ替えるまでには至らない場合もある。オーナーが決められることではないのだが、改装時には要冷機の入れ替えを本部に進言したほうがいいだろう。
この3大経費のほか、電話代や水道代、レジ袋などの包装代、弁当の箸やデザートのスプーンなど、ここでは書き切れないほど細かいところにまで経費が掛かる。これらの経費を全部引いてはじめて、オーナーのポケットに入る金額が分かるのだ。筆者の経験則上では、売り上げ対比で2〜5%といったところだ。
●説明を受けてもリアルに想像できない
コンビニの利益計算シミュレーションは、決して簡単ではない。最も難しいのは、さまざまな要因によって、利益率が変化することだ。
前回、たばこのオマケに関する記事を書いたが、たばこのような利益率の低いものばかり売れる店と、たばこの売り上げ比率の低い店と比べると、店舗の総売上が同じであっても最終利益では大きな差が出る。
また、人件費も店の立地によるところが大きい。都心部では、アルバイトの時給は高くなるし、地方では安く抑えることができる。廃棄ロスについても、競合対策の戦略によっては多くしなければならない場合もあるし、オーナーの発注技術が伴わないこともあるだろう。
計算方法を熟知している筆者でも、すべての条件を当てはめなければ正確な利益予測はできない。コンビニ各社はオーナー希望者向けの説明会を開いているが、説明を受けてもリアルに想像できないというのは問題である。これを受けてか、大手コンビニ3社は体験入店やインターン制度を設けている。
これからオーナーになろうという人は、「独立起業」などというある種の“トランス状態”のまま契約することは避け、すべてを知った上で加盟契約することをオススメしたい。
(川乃もりや)
そこで今回は、コンビニオーナーの収入について、なるべく分かりやすく書いていくことにする。
●オーナーの給料計算はとにかく複雑
例えば、一般的な個人経営の店なら、80円で仕入れたモノを120円で販売し、差額の40円が粗利益、そこから経費などを引いて利益となる。これでもそこそこ複雑な計算ではあるが、コンビニの場合は「ロイヤルティー」というものが発生し、本部とオーナーとで利益を一定の割合で分配することになっている。
ロイヤルティーとは、ライセンスに対して支払う対価や報酬のことで、特許権料のことを指す。また、契約内容によっては、その割合が段階別に変わることもある。コンビニ各社のオーナー募集のサイトを見ると、契約の種類やロイヤルティーについての説明が記載されている(「チャージ」や「フィー」と表記しているところも)。
ただ、新規オーナー向けのページのためか、細かい計算のロジックまでは明記されていない。コンビニをはじめフランチャイズ契約の多くは、基本的な部分は本部が計算し、ひと月分の利益をオーナーの口座に振り込むという形なので、計算方法の複雑さを理解しないまま運営しているオーナーもいる。
セブン-イレブンの「Aタイプ契約」を見ると、セブン-イレブンチャージ(ロイヤルティー)は、「売上総利益に43%の率を乗じた金額」と記載されている。逆の見方をすれば、売上総利益の57%がオーナーの取り分ということになる。ただ、ここで注意すべきは、売上総利益すべてがオーナーのポケットに入るわけではないということ(参照:「セブン-イレブン フランチャイズ(Aタイプ)契約の要点と概説」一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会)。
総売上原価=月初商品棚卸高+当月商品仕入高−月末商品棚卸高
純売上原価=総売上原価−棚卸増減原価−不良品原価−仕入値引き高
オーナーの収入を計算するにはまず、上の計算式で「総売上原価」と「純売上原価」を求める。そして、売上高から純売上原価を引き、契約ごとに本部と店が粗利益を分配して、オーナーの取り分が算出されるというわけだ。
「総売上原価」とは、その月に売り上げた商品の原価の合計だ。ただし、月初・月末の商品棚卸高とは計算上の商品在高であり、万引きなどで紛失した商品については棚卸しされるまで考慮されない。そして、この総売上原価には、日々発生する商品の廃棄分が原価として含まれている。以下の図を見てほしい。
以前の記事「コンビニで「食品ロス」が絶対になくならない理由」で、弁当などの商品を販売するうえで、販売率が100%になることはないし、あってはならないとされていると書いた。
本部の言い分としては、商品にある程度の余剰を持たせて機会損失をなくしたい。ただし、発注量はオーナーの技量によるものなので廃棄分は商品原価としては認めないというのだ。フランチャイズ契約がトラブルへと発展する原因は、この計算によることが多い。
ただ、一定条件下ではあるが、コンビニによっては廃棄分の一部を本部が負担するという契約もある。この場合、「純売上原価」をロイヤルティー計算の前にはさんでいる。要するに、本部は損をしない仕組みになっているのだ。
また、商取引上の慣習である「一定量仕入れることによる値引き」もロイヤルティーとして求めてくる。商品原価を取り決める商談は本部が一手に行っているので、その営業力によって商品原価が安くなることで“ごほうび的なインセンティブ”が発生する。当然の取り分と言えるが「売れなかった場合のリスクは店舗が持ち、仕入れでトクした分は分配しろ」というのは、いささか欲張り過ぎではないだろうか。
●オーナーのポケットに入る利益はいくら?
先の計算で終わりではない。具体的なオーナーの給料を求めるには、まだまだ計算が必要になる。本部と粗利益を分配してから、もろもろの経費を引いて月間の収入が決まる。
では、コンビニ運営に掛かる経費には、具体的にはどのようなものがあるのか、詳しく説明しよう。
人件費
経費の中で、最も大きな割合を占めるのが人件費だ。売り上げによって変動するが、おおよその基準として、売上対比で4〜6%くらいだ。
例えば、1日60万円の売り上げだとすると、30日で1800万円の売り上げ。人件費を5%とするなら90万円、4%では72万円となる。
実は、経費には、オーナーが調節できるものとそうでないものがある。この人件費もその1つ。オーナー店長が休まなければ人件費を抑えられて利益は増えるが、体力的にも精神的にも負担は大きくなる。
廃棄ロス
現在、コンビニでは1日当たり平均2万円前後(売価)の廃棄を出している。本部が廃棄ロスの一部を負担するという契約も増えてきているが、ほとんどがオーナー側の負担となる契約だ。廃棄ロスは1カ月で30万〜100万円と店によって幅はあるが、これもまたオーナーが直接操作できる経費だ。
店によっては「いつ来ても、このコンビニは弁当が少ないなあ」と思われるかもしれないが、オーナー自身が生きていくためにはやむをえない経費削減方法とも言える。
電気代
24時間営業のコンビニでは、エアコンや照明はつけっぱなしだ。そのほか、たくさん電気を使う代表的なモノといえば冷凍庫や冷蔵庫。近年の電化製品は性能や節電効果が高くなっていることが多いため、製造年は要チェックだ。
実際に、消費電力を年代別に比較したわけではないが、かつて筆者が経営していた店では古い冷蔵冷凍庫を使用していたせいか、電気代が月間25万〜30万円と高額だった。ところが、同じような規模で営業しているにもかかわらず、月間15万円程度の店舗もあるというから驚いた。その差は10万円以上、見過ごせない数字である。
余談だが、コンビニの多くは10年から15年で大規模改装をするのだが、要冷機を入れ替えるまでには至らない場合もある。オーナーが決められることではないのだが、改装時には要冷機の入れ替えを本部に進言したほうがいいだろう。
この3大経費のほか、電話代や水道代、レジ袋などの包装代、弁当の箸やデザートのスプーンなど、ここでは書き切れないほど細かいところにまで経費が掛かる。これらの経費を全部引いてはじめて、オーナーのポケットに入る金額が分かるのだ。筆者の経験則上では、売り上げ対比で2〜5%といったところだ。
●説明を受けてもリアルに想像できない
コンビニの利益計算シミュレーションは、決して簡単ではない。最も難しいのは、さまざまな要因によって、利益率が変化することだ。
前回、たばこのオマケに関する記事を書いたが、たばこのような利益率の低いものばかり売れる店と、たばこの売り上げ比率の低い店と比べると、店舗の総売上が同じであっても最終利益では大きな差が出る。
また、人件費も店の立地によるところが大きい。都心部では、アルバイトの時給は高くなるし、地方では安く抑えることができる。廃棄ロスについても、競合対策の戦略によっては多くしなければならない場合もあるし、オーナーの発注技術が伴わないこともあるだろう。
計算方法を熟知している筆者でも、すべての条件を当てはめなければ正確な利益予測はできない。コンビニ各社はオーナー希望者向けの説明会を開いているが、説明を受けてもリアルに想像できないというのは問題である。これを受けてか、大手コンビニ3社は体験入店やインターン制度を設けている。
これからオーナーになろうという人は、「独立起業」などというある種の“トランス状態”のまま契約することは避け、すべてを知った上で加盟契約することをオススメしたい。
(川乃もりや)
「シニアセカンドキャリア」や「女性のキャリア開発」などが取り沙汰され、多くの人々のより長い活躍が望まれている。「世界で最も深刻」だとされる、日本の高齢社会化がさまざまな、課題を突き付けている一方で、政府は、将来に予測される生産年齢人口の減少を踏まえ、政策を打ち出している。
安倍政権は、具体的には、「1億総活躍」を掲げ女性や非正規雇用労働者の環境改善に取り組んでおり、同様に「同一労働同一賃金」も目標の一つだとしている。実際、正規と非正規雇用の賃金や待遇の格差の解消を目指す方針が、安倍総理自身の口からも出てきている。
ただ、正規と非正規雇用の間の、待遇格差の是正は、オモテ面の解決策。その奥には、「働き方改革」「労働市場改革」の課題が隠れている。具体的には、労働市場の流動化だ。現在の硬直的な環境を改善し、より効率化し、生産性を上げる必要が意識されている様子だ。
■女性・非正規雇用労働者の待遇改善に着手
2015年10月安倍政権は、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」を打ち出した。政府は併せて、実現を目的とする「一億総活躍社会」の実現に向けて取り組んでいくことを宣言した。
具体的には、幼児教育の無償化(予算額126億円)、児童扶養手当の機能の充実(同1746億円)、キャリアアップ助成金の拡充(同410億円)、保育人材の確保・育成(同414億円)、ひとり親家庭・多子世帯への支援(同3436億円)など女性や非正規雇用労働者の支援に関する事業を掲げており、比較的に立場の弱い労働者の支援にも取り組み姿勢が滲んでいる。
また先立つ9月には同一労働同一賃金推進法が施行された。2016年3月には厚生労働省が具体的な施策を立案するための「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」を設置。非正規雇用労働者の待遇改善に向け動き出しているのが現状だ。
■正規・非正規の「格差是正」が当面の課題
非正規雇用の待遇改善は確かに、これまでも重要視されてきた。その中心はというと、正規雇用が望ましいことを前提に、非正規雇用労働者の待遇を如何にして、正規雇用にも劣らない水準にまでキャッチアップさせるかという観点の議論が多かった。
厚生労働省が2016年3月に開催した「第1回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」資料によれば、フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準はヨーロッパ諸国が7〜8割程度であるのに対し日本は6割弱となっている。
またフルタイム労働者の中でも正社員と契約社員等の非正規雇用労働者の間には大きな格差がある。正社員は年齢とともに賃金が上昇し、企業規模が大きいほどその傾向が強くなる。一方、契約社員など非正規社員については、企業規模にかかわらず、年齢が上昇しても賃金は、ほぼ横ばいで推移している。従業員1000人以上の企業で50〜54歳の平均時給を比較すると正社員が3189円なのに対し契約社員等は1301円にとどまっている。
現在、非正規雇用で働いている人が安心して結婚・子育てができるようにしたり、子育てと仕事を両立しやすくしたりするために正規・非正規雇用間の待遇格差の是正が求められるという論調だ。その中で、厚生労働省は少子化対策、貧困・格差対策の観点から同一労働同一賃金に対する社会的ニーズの高まりを説いており、政府も製作課題として取り組む姿勢を示してきている。
■正社員とはいえ、いつまでも安泰ではない?
他方で、現実はそれ程、単純ではない。非正規社員の待遇改善が期待される一方で、正社員と非正規社員の利害は必ずしも一致しない。さらに、経営者はもっと異なる思惑を持っているかもしれない。例えば、「一社懸命」の会社に従順なフルタイム労働者を求める傾向が強いと言われることもあり、非正規雇用を「使い易い」と受け止めている可能性もある。
また、すでに正規雇用のポジションを手にしていれば異なる立場だろう。正規雇用者は実質的に、定年まで勤務する権利を得ており、安定した地位を死守しようとする。その結果、非正規雇用労働者が増加するとともに正規・非正規雇用の待遇格差が構造的に定着することとなった。
もちろん今、政府が取り組む通り、非正規社員の待遇改善は重要だが、問題の片面でしかない。隠れた論点があり、それこそが正社員ポジションのあり方についてだ。
具体的には、正社員の解雇ルールの明確化の必要性だ。つまり、会社の業績や社員の勤務評価に応じ賃金カットや、解雇を柔軟に実施できるようにすることも重要になってきており、待遇に格差がつきやすく、固定化し易い非正規社員を単に用いるのではなく、柔軟な人事を実現しようとする取り組みだ。
企業が継続的に成長していれば、正社員を中心に雇用することで、労働者の双方にメリットをもたらすが、安定期にはデメリットも出てきかねない。例えば、業績が低迷し固定費を削減したいものの、転職先が見つからない多くの正規雇用労働者が組織にしがみついてしまうかもしれない。現実に、サイクルに入っている企業もあるかもしれない。
企業統治や内部統制の観点からも、一社専業のフルタイム集団よりもパートタイムの役員、上級社員、スペシャリストを採用することが望ましいという考え方もある。上司の顔色を窺うことよりも職業倫理を優先できる(その結果クビになっても無職に陥る心配のない)社員が一定数在籍していれば、会社の暴走を抑止する上でも効果的だ。労働市場の流動性向上と併せれば、一定の良い影響もあるといえそうだ。
同一賃金同一労働原則の徹底による正規・非正規雇用間の格差是正を図るとともに、正社員の解雇ルールの明確化も実現し、雇用全体の流動性を高めるという処方箋を書く余地もあるのではないだろうか。そんな議論も出てくるかもしれない。(ZUUonline編集部)
安倍政権は、具体的には、「1億総活躍」を掲げ女性や非正規雇用労働者の環境改善に取り組んでおり、同様に「同一労働同一賃金」も目標の一つだとしている。実際、正規と非正規雇用の賃金や待遇の格差の解消を目指す方針が、安倍総理自身の口からも出てきている。
ただ、正規と非正規雇用の間の、待遇格差の是正は、オモテ面の解決策。その奥には、「働き方改革」「労働市場改革」の課題が隠れている。具体的には、労働市場の流動化だ。現在の硬直的な環境を改善し、より効率化し、生産性を上げる必要が意識されている様子だ。
■女性・非正規雇用労働者の待遇改善に着手
2015年10月安倍政権は、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の「新・三本の矢」を打ち出した。政府は併せて、実現を目的とする「一億総活躍社会」の実現に向けて取り組んでいくことを宣言した。
具体的には、幼児教育の無償化(予算額126億円)、児童扶養手当の機能の充実(同1746億円)、キャリアアップ助成金の拡充(同410億円)、保育人材の確保・育成(同414億円)、ひとり親家庭・多子世帯への支援(同3436億円)など女性や非正規雇用労働者の支援に関する事業を掲げており、比較的に立場の弱い労働者の支援にも取り組み姿勢が滲んでいる。
また先立つ9月には同一労働同一賃金推進法が施行された。2016年3月には厚生労働省が具体的な施策を立案するための「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」を設置。非正規雇用労働者の待遇改善に向け動き出しているのが現状だ。
■正規・非正規の「格差是正」が当面の課題
非正規雇用の待遇改善は確かに、これまでも重要視されてきた。その中心はというと、正規雇用が望ましいことを前提に、非正規雇用労働者の待遇を如何にして、正規雇用にも劣らない水準にまでキャッチアップさせるかという観点の議論が多かった。
厚生労働省が2016年3月に開催した「第1回同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」資料によれば、フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準はヨーロッパ諸国が7〜8割程度であるのに対し日本は6割弱となっている。
またフルタイム労働者の中でも正社員と契約社員等の非正規雇用労働者の間には大きな格差がある。正社員は年齢とともに賃金が上昇し、企業規模が大きいほどその傾向が強くなる。一方、契約社員など非正規社員については、企業規模にかかわらず、年齢が上昇しても賃金は、ほぼ横ばいで推移している。従業員1000人以上の企業で50〜54歳の平均時給を比較すると正社員が3189円なのに対し契約社員等は1301円にとどまっている。
現在、非正規雇用で働いている人が安心して結婚・子育てができるようにしたり、子育てと仕事を両立しやすくしたりするために正規・非正規雇用間の待遇格差の是正が求められるという論調だ。その中で、厚生労働省は少子化対策、貧困・格差対策の観点から同一労働同一賃金に対する社会的ニーズの高まりを説いており、政府も製作課題として取り組む姿勢を示してきている。
■正社員とはいえ、いつまでも安泰ではない?
他方で、現実はそれ程、単純ではない。非正規社員の待遇改善が期待される一方で、正社員と非正規社員の利害は必ずしも一致しない。さらに、経営者はもっと異なる思惑を持っているかもしれない。例えば、「一社懸命」の会社に従順なフルタイム労働者を求める傾向が強いと言われることもあり、非正規雇用を「使い易い」と受け止めている可能性もある。
また、すでに正規雇用のポジションを手にしていれば異なる立場だろう。正規雇用者は実質的に、定年まで勤務する権利を得ており、安定した地位を死守しようとする。その結果、非正規雇用労働者が増加するとともに正規・非正規雇用の待遇格差が構造的に定着することとなった。
もちろん今、政府が取り組む通り、非正規社員の待遇改善は重要だが、問題の片面でしかない。隠れた論点があり、それこそが正社員ポジションのあり方についてだ。
具体的には、正社員の解雇ルールの明確化の必要性だ。つまり、会社の業績や社員の勤務評価に応じ賃金カットや、解雇を柔軟に実施できるようにすることも重要になってきており、待遇に格差がつきやすく、固定化し易い非正規社員を単に用いるのではなく、柔軟な人事を実現しようとする取り組みだ。
企業が継続的に成長していれば、正社員を中心に雇用することで、労働者の双方にメリットをもたらすが、安定期にはデメリットも出てきかねない。例えば、業績が低迷し固定費を削減したいものの、転職先が見つからない多くの正規雇用労働者が組織にしがみついてしまうかもしれない。現実に、サイクルに入っている企業もあるかもしれない。
企業統治や内部統制の観点からも、一社専業のフルタイム集団よりもパートタイムの役員、上級社員、スペシャリストを採用することが望ましいという考え方もある。上司の顔色を窺うことよりも職業倫理を優先できる(その結果クビになっても無職に陥る心配のない)社員が一定数在籍していれば、会社の暴走を抑止する上でも効果的だ。労働市場の流動性向上と併せれば、一定の良い影響もあるといえそうだ。
同一賃金同一労働原則の徹底による正規・非正規雇用間の格差是正を図るとともに、正社員の解雇ルールの明確化も実現し、雇用全体の流動性を高めるという処方箋を書く余地もあるのではないだろうか。そんな議論も出てくるかもしれない。(ZUUonline編集部)
40代こそ人生最大の分かれ道だった!定年退職者が最も後悔しているのは40代。その後悔が最も集中しているのは「時間の使い方」。1万人のインタビューを通してわかった、仕事に家庭に多忙を極める40代のための時間の使い方「7つのルール」とは?「空白の10年」を後悔せずに生きるための先人たちの智恵を公開。シリーズ最新作『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』から、一部を抜粋して紹介する。
後悔しない40代の時間術「7つのルール」
第1回でご紹介したように、私はリクルートでの新規開拓営業の時代からこれまで、大企業・中小企業の経営者、管理職、定年退職者など1万人を超える人たちの成功談や失敗談を聞いてきました。
彼らが半生を振り返って最も後悔している年齢が40代であること、そしてその後悔が最も集中しているのが「時間の使い方」だということもご紹介しました。
1万人インタビューから成功者の法則をまとめると、40代で上手に時間を使えた人には、大きく分けて「7つのルール」があります。うまくいっている先輩たちの実践法は実にバラバラですが、考え方のポイントをまとめると、この7つを上手に工夫していることがわかります。では、一つずつ解説介していきましょう。
【ルール1】現実に即した作業時間や、自分の持ち時間を正確に見積もる
時間における問題の多くは、作業にかかる時間を少なく見積もっていたり、自分の持ち時間が限られていることを理解していないのが原因です。人は不思議なくらい、一つの仕事にかかる時間を少なく考える習性があるようです。一説には、実際の作業時間は見積もりの1.5倍かかるとも言われています。
また、毎日の生活の中で自由になる時間はかなり限られていることを知る必要もあります。睡眠時間や食事の時間、会議の時間、突発的に起きる出来事も勘案すれば、24時間を自由に使えると考えることが、いかに妄想に過ぎないかがわかります。
現実的にかかる時間を正確に把握し、やるべきことを上手に振り分けていかない限り、スケジュールの破綻は免れないのです。多くの人は少ない時間に多くのタスクを割り振り、最初から実現不可能なスケジュールに翻弄されているともいえるのです。
ドラッカーが時間を記録せよと主張したように、行動を記録して、自分が想定していた時間と実際にかかった時間の間にどれくらいのずれが生じているのか、そのボトルネックが何かを考えていくことが大切です。
【ルール2】見えない時間を「色分け」して見える化し、きちんと計画を立てる
時間は目に見えないので、捉え方が非常に難しいものです。時間をどうつかまえるかが、時間の使い方がうまい人と下手な人との差になります。
では、上手な人はどうしているかというと、時間を「色分け」して管理しています。全体で見ると捉えどころのない時間を、細かく色分けすることによって、いわば「見える化」しているのです。
ちなみに色分けとは、手帳などで色を書き分けるということではなく、「出社前」「就寝前」「移動のすきま時間」とか、「企画をじっくり考える時間」「報告書をまとめる時間」「のんびり過ごす自分時間」などのように、時間にラベルを貼って区分するという意味です。
色分けしなければ何を優先するかもわからなくなり、目の前にあることだけをやってしまったり、想定外の出来事に常に振り回されるはめになります。放っておけば、40代は他人に時間を奪われることが日常茶飯事でしょう。そうならないためには、時間に色を付けて扱いやすくしながら、きちんと計画を立てることが大切です。
時間の色分け法や計画術、タスクの振り分け方、ずれた予定の調整法など、詳しいやり方は新刊『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』でご紹介していますので、ご一読いただければと思います。
【ルール3】作業時間を区切り、「終わらせ方」を常に意識する
色分けして計画を立てることには、仕事をある程度のかたまりに細分化して、やるべきことを明確にしておく意味もあります。
多くの人は仕事を大きなかたまりで捉えています。しかし、それでは作業時間がまったく読めません。端からやっていくと別のやるべきことが発生し、またそちらに囚われてしまい……と、結局、時間が足りなくなり、中途半端に終わってしまいます。
一日に行う仕事がたった一つだけという人はいないでしょう。多くの人は複雑に絡み合った複数の仕事を同時に抱え、ある程度の期間の中で行っています。タスクの細分化は、一つの作業にどのくらいの時間がかかるかを把握し、実行しやすくするのです。細分化したタスクに計画した時間を振り分けていないと、一つの仕事に必要以上の時間を取られてしまいます。
さらに、細かく分けた仕事を予定通り行うためには、一つ一つの作業に30分とか60分などのデッドラインを設定しておく必要があります。タイマーで作業時間を計るなどして、常にタイムリミットを意識した仕事のやり方を心がけることが求められます。
ただし、これは何でもかんでも仕事を細切れにして、時間に追われながら行うということでは決してありません。仕事には「マルチタスク」で短時間に行うものもあれば、「シングルタスク」でじっくりと時間をかけて行うものもあります。まとまった時間を計画的に確保するためにも、色分けして、タスクの細分化を行い、時間を計りながら行う必要があるのです。
また、立てた予定が狂う原因には、見積もった時間内に終わらないため、もう少しだけやろうとか、区切りが悪いのであとちょっと続けよう、と感じる心理的抵抗があります。完璧主義の人ほど、その傾向があるかもしれません。
そのときに大切なのが、作業の「終わらせ方」です。計画した時間割を狂わせずに、同時に仕事のパフォーマンスも落とさずに進めるためには、「終わらせる時間」を決めて守ることがカギになるのです。
もちろん、単に終わらせるだけでは問題は解決していませんので、再びやるべきタスクを“ならして”計画に落とし込むことが必要です。そのリスケ法やタスクの振り分け方なども、書籍『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』では詳しく解説していきます。
【ルール4】自分にとって本当に重要なことを優先できるように「時間配分」を変える
これまで述べてきたように、40代の時間術において最も重要なのは、他人に振り回されながら自然とでき上がった時間割を、自分の価値観や本当に望む人生に沿った時間割につくり変えることです。
時は金なりと言われますが、時間はお金を超えた究極の「人生資源」だとさえいえます。それも、お金のように増やすことができず、全体でどのくらい持っているのかさえわからない、実にやっかいな資源なのです。もしかしたら明日、その資源が突然枯渇する可能性だってあります。
だからこそ、限りある資源を何にどう配分するかを真剣に考えなくてはいけません。でも、本来ならお金と同じように、ポートフォリオを組んで配分するようなものであるにもかかわらず、やっている人はほとんどいないでしょう。結果、自分にとってはどうでもいいことに、人生で最も貴重な資源を配分しているのです。
そうならないためには、思い切って配分を変え、新しい時間割をつくり出すことです。正解は一つではなく十人十色なので、自分なりの納得解をどう考えるかになります。
このことは、仕事の進め方においても同じことがいえます。忙しい40代にとっては、限られた時間という資源を何にどれだけ配分すれば、よりリターン(成果)を得られるのかを、どの年代よりも考え抜かないといけません。成果につながる要因を見極め、そこに大胆に時間を集中投下するのです。
そのためには、仕事で成果を生み出すための本質がわかっていなければいけません。あらゆることに均一に労力をかけられるほど、40代の時間資源は潤沢にはないのです。
【ルール5】トレードオフの意識を持って「やめる」「捨てる」「数を絞る」
時間は有限ですから、トレードオフの関係にあります。何かを行う時間は、別の何かを行えない時間でもあるのです。したがって、理想の時間割につくり変えていくためには、自分にとって重要なことを決めると同時に、自分にとって重要でないことも決めないといけません。
英語の勉強に時間を割きたいなら、何かをやめる勇気が必要です。そのバランスを取ろうと必死に作業自体の効率化を図っても、決して新たな時間をつくることはできないと、後悔を抱える諸先輩たちは口を揃えています。
やるべきことの数をいたずらに増やさないことが大切なのです。20代や30代の時間術は、「タスクの拡散」が自分の可能性を広げ、前向きな負荷がかかることでストレッチ効果を生み出していましたが、40代の時間術は「タスクの収束」によって、やるべきことの磨き上げをしないといけません。40代は「何に」時間を投資するかという選択自体が、大きな意味を持つのです。
【ルール6】ゴールを明確にした抜本的な「プロセス改善」を行う
仕事の効率化はどの年代でも重要ですが、40代は個別の作業のスピードアップだけでなく、成果につながるプロセス自体を根本的に変える努力が求められます。小さな改善の積み上げだけでは時間割を変えることはできません。そうではなく、最初に目的や到達点を明確にして、今とゴールを一気につなげられるような、達成への道筋を大きく変える工夫をするのです。
詳しくは『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』でご紹介していますが、経営コンサルタントがよく使う仮説思考や仕事のテンプレ化や仕組み化、物の見方を変える意思決定の方法などが、ゴールへとジャンプするプロセス改善の手助けをしてくれるでしょう。
また、30代までは自身の能力だけで対処できますが、40代になると、それだけでは回せないことが増えてきます。他人をマネジメントする比重が増え、上司や部下とのコミュニケーションも一層重要になるからです。
そのためには、「チームを使った問題解決」や「上司・部下を使った生産性アップ」などの、解決策のバージョンアップが必至です。自分一人で仕事を抱え込んでいては、遅かれ早かれパンクしてしまいます。部下に上手に仕事を振り、チームで共有・解決していくスタイルに移行していかなければなりません。
さらに、アウトプットはインプットの精度で決まりますから、誰と付き合うか、どんな情報を得るのかも、30代とは大きく変わってきます。
【ルール7】習慣を手なずけ、パターン化によって生活をシンプルにする
時間の使い方がうまい人は、実は生活がパターン化しています。毎日必ずやることが決まっているほうが、持ち時間を把握しやすいからです。朝は何時に起き、何時に出社し、何時に帰るという行動パターンから、出社したら最初に取りかかること、仕事内容に応じた午前と午後の使い分け、企画書作成時の段取りといった仕事のルール決めまで、やるべきことが明確になっているほど、時間の色分けが上手にでき、実現可能な時間割が組みやすくなるのです。
これは定例会議のスケジューリングと似ています。最初から毎週何曜日の何時に行うという決まりがあると、その時間帯を外した予定が組みやすくなります。これと同じことを自分ルールをつくって継続している人が、成功者にはとても多いのです。パターン化やルール化によって行動をシンプルにしたほうが、突発的なことにも対応できます。生活リズムを整えることが、結果的に大きな効率化になるのです。
この7つが、時間の使い方の上手な諸先輩たちに共通するルールです。細かい実践法にはさまざまな違いがありますが、一万人の後悔から導き出せる時間の使い方には、ある種の法則性があるのです。
みなさんもピンとくるものからで構いませんので、自身のワークスタイルに当てはめて試してみてください。もちろん、一つでも二つでも構いませんし、業務に合わせて改良するのも大歓迎です。ただ、必ず行動に移してください。
私自身も、先人の教えを試しながら自分流に変えていきましたが、実際の行動からしか時間割の最適化はできないと実感しています。それは時間というものが、自分の習慣や行動、そして生き方に密接に関わっているからです。
あなたの人生の主役は、あなたです。あなたが時間の使い方で40代を後悔することがないよう、さらにはもう一歩進めて、「忙殺感」ではなく「幸福感」を味わうために、これから紹介する先達の智慧を最大限に活用してください。
後悔しない40代の時間術「7つのルール」
第1回でご紹介したように、私はリクルートでの新規開拓営業の時代からこれまで、大企業・中小企業の経営者、管理職、定年退職者など1万人を超える人たちの成功談や失敗談を聞いてきました。
彼らが半生を振り返って最も後悔している年齢が40代であること、そしてその後悔が最も集中しているのが「時間の使い方」だということもご紹介しました。
1万人インタビューから成功者の法則をまとめると、40代で上手に時間を使えた人には、大きく分けて「7つのルール」があります。うまくいっている先輩たちの実践法は実にバラバラですが、考え方のポイントをまとめると、この7つを上手に工夫していることがわかります。では、一つずつ解説介していきましょう。
【ルール1】現実に即した作業時間や、自分の持ち時間を正確に見積もる
時間における問題の多くは、作業にかかる時間を少なく見積もっていたり、自分の持ち時間が限られていることを理解していないのが原因です。人は不思議なくらい、一つの仕事にかかる時間を少なく考える習性があるようです。一説には、実際の作業時間は見積もりの1.5倍かかるとも言われています。
また、毎日の生活の中で自由になる時間はかなり限られていることを知る必要もあります。睡眠時間や食事の時間、会議の時間、突発的に起きる出来事も勘案すれば、24時間を自由に使えると考えることが、いかに妄想に過ぎないかがわかります。
現実的にかかる時間を正確に把握し、やるべきことを上手に振り分けていかない限り、スケジュールの破綻は免れないのです。多くの人は少ない時間に多くのタスクを割り振り、最初から実現不可能なスケジュールに翻弄されているともいえるのです。
ドラッカーが時間を記録せよと主張したように、行動を記録して、自分が想定していた時間と実際にかかった時間の間にどれくらいのずれが生じているのか、そのボトルネックが何かを考えていくことが大切です。
【ルール2】見えない時間を「色分け」して見える化し、きちんと計画を立てる
時間は目に見えないので、捉え方が非常に難しいものです。時間をどうつかまえるかが、時間の使い方がうまい人と下手な人との差になります。
では、上手な人はどうしているかというと、時間を「色分け」して管理しています。全体で見ると捉えどころのない時間を、細かく色分けすることによって、いわば「見える化」しているのです。
ちなみに色分けとは、手帳などで色を書き分けるということではなく、「出社前」「就寝前」「移動のすきま時間」とか、「企画をじっくり考える時間」「報告書をまとめる時間」「のんびり過ごす自分時間」などのように、時間にラベルを貼って区分するという意味です。
色分けしなければ何を優先するかもわからなくなり、目の前にあることだけをやってしまったり、想定外の出来事に常に振り回されるはめになります。放っておけば、40代は他人に時間を奪われることが日常茶飯事でしょう。そうならないためには、時間に色を付けて扱いやすくしながら、きちんと計画を立てることが大切です。
時間の色分け法や計画術、タスクの振り分け方、ずれた予定の調整法など、詳しいやり方は新刊『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』でご紹介していますので、ご一読いただければと思います。
【ルール3】作業時間を区切り、「終わらせ方」を常に意識する
色分けして計画を立てることには、仕事をある程度のかたまりに細分化して、やるべきことを明確にしておく意味もあります。
多くの人は仕事を大きなかたまりで捉えています。しかし、それでは作業時間がまったく読めません。端からやっていくと別のやるべきことが発生し、またそちらに囚われてしまい……と、結局、時間が足りなくなり、中途半端に終わってしまいます。
一日に行う仕事がたった一つだけという人はいないでしょう。多くの人は複雑に絡み合った複数の仕事を同時に抱え、ある程度の期間の中で行っています。タスクの細分化は、一つの作業にどのくらいの時間がかかるかを把握し、実行しやすくするのです。細分化したタスクに計画した時間を振り分けていないと、一つの仕事に必要以上の時間を取られてしまいます。
さらに、細かく分けた仕事を予定通り行うためには、一つ一つの作業に30分とか60分などのデッドラインを設定しておく必要があります。タイマーで作業時間を計るなどして、常にタイムリミットを意識した仕事のやり方を心がけることが求められます。
ただし、これは何でもかんでも仕事を細切れにして、時間に追われながら行うということでは決してありません。仕事には「マルチタスク」で短時間に行うものもあれば、「シングルタスク」でじっくりと時間をかけて行うものもあります。まとまった時間を計画的に確保するためにも、色分けして、タスクの細分化を行い、時間を計りながら行う必要があるのです。
また、立てた予定が狂う原因には、見積もった時間内に終わらないため、もう少しだけやろうとか、区切りが悪いのであとちょっと続けよう、と感じる心理的抵抗があります。完璧主義の人ほど、その傾向があるかもしれません。
そのときに大切なのが、作業の「終わらせ方」です。計画した時間割を狂わせずに、同時に仕事のパフォーマンスも落とさずに進めるためには、「終わらせる時間」を決めて守ることがカギになるのです。
もちろん、単に終わらせるだけでは問題は解決していませんので、再びやるべきタスクを“ならして”計画に落とし込むことが必要です。そのリスケ法やタスクの振り分け方なども、書籍『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』では詳しく解説していきます。
【ルール4】自分にとって本当に重要なことを優先できるように「時間配分」を変える
これまで述べてきたように、40代の時間術において最も重要なのは、他人に振り回されながら自然とでき上がった時間割を、自分の価値観や本当に望む人生に沿った時間割につくり変えることです。
時は金なりと言われますが、時間はお金を超えた究極の「人生資源」だとさえいえます。それも、お金のように増やすことができず、全体でどのくらい持っているのかさえわからない、実にやっかいな資源なのです。もしかしたら明日、その資源が突然枯渇する可能性だってあります。
だからこそ、限りある資源を何にどう配分するかを真剣に考えなくてはいけません。でも、本来ならお金と同じように、ポートフォリオを組んで配分するようなものであるにもかかわらず、やっている人はほとんどいないでしょう。結果、自分にとってはどうでもいいことに、人生で最も貴重な資源を配分しているのです。
そうならないためには、思い切って配分を変え、新しい時間割をつくり出すことです。正解は一つではなく十人十色なので、自分なりの納得解をどう考えるかになります。
このことは、仕事の進め方においても同じことがいえます。忙しい40代にとっては、限られた時間という資源を何にどれだけ配分すれば、よりリターン(成果)を得られるのかを、どの年代よりも考え抜かないといけません。成果につながる要因を見極め、そこに大胆に時間を集中投下するのです。
そのためには、仕事で成果を生み出すための本質がわかっていなければいけません。あらゆることに均一に労力をかけられるほど、40代の時間資源は潤沢にはないのです。
【ルール5】トレードオフの意識を持って「やめる」「捨てる」「数を絞る」
時間は有限ですから、トレードオフの関係にあります。何かを行う時間は、別の何かを行えない時間でもあるのです。したがって、理想の時間割につくり変えていくためには、自分にとって重要なことを決めると同時に、自分にとって重要でないことも決めないといけません。
英語の勉強に時間を割きたいなら、何かをやめる勇気が必要です。そのバランスを取ろうと必死に作業自体の効率化を図っても、決して新たな時間をつくることはできないと、後悔を抱える諸先輩たちは口を揃えています。
やるべきことの数をいたずらに増やさないことが大切なのです。20代や30代の時間術は、「タスクの拡散」が自分の可能性を広げ、前向きな負荷がかかることでストレッチ効果を生み出していましたが、40代の時間術は「タスクの収束」によって、やるべきことの磨き上げをしないといけません。40代は「何に」時間を投資するかという選択自体が、大きな意味を持つのです。
【ルール6】ゴールを明確にした抜本的な「プロセス改善」を行う
仕事の効率化はどの年代でも重要ですが、40代は個別の作業のスピードアップだけでなく、成果につながるプロセス自体を根本的に変える努力が求められます。小さな改善の積み上げだけでは時間割を変えることはできません。そうではなく、最初に目的や到達点を明確にして、今とゴールを一気につなげられるような、達成への道筋を大きく変える工夫をするのです。
詳しくは『40代を後悔しない50のリスト【時間編】』でご紹介していますが、経営コンサルタントがよく使う仮説思考や仕事のテンプレ化や仕組み化、物の見方を変える意思決定の方法などが、ゴールへとジャンプするプロセス改善の手助けをしてくれるでしょう。
また、30代までは自身の能力だけで対処できますが、40代になると、それだけでは回せないことが増えてきます。他人をマネジメントする比重が増え、上司や部下とのコミュニケーションも一層重要になるからです。
そのためには、「チームを使った問題解決」や「上司・部下を使った生産性アップ」などの、解決策のバージョンアップが必至です。自分一人で仕事を抱え込んでいては、遅かれ早かれパンクしてしまいます。部下に上手に仕事を振り、チームで共有・解決していくスタイルに移行していかなければなりません。
さらに、アウトプットはインプットの精度で決まりますから、誰と付き合うか、どんな情報を得るのかも、30代とは大きく変わってきます。
【ルール7】習慣を手なずけ、パターン化によって生活をシンプルにする
時間の使い方がうまい人は、実は生活がパターン化しています。毎日必ずやることが決まっているほうが、持ち時間を把握しやすいからです。朝は何時に起き、何時に出社し、何時に帰るという行動パターンから、出社したら最初に取りかかること、仕事内容に応じた午前と午後の使い分け、企画書作成時の段取りといった仕事のルール決めまで、やるべきことが明確になっているほど、時間の色分けが上手にでき、実現可能な時間割が組みやすくなるのです。
これは定例会議のスケジューリングと似ています。最初から毎週何曜日の何時に行うという決まりがあると、その時間帯を外した予定が組みやすくなります。これと同じことを自分ルールをつくって継続している人が、成功者にはとても多いのです。パターン化やルール化によって行動をシンプルにしたほうが、突発的なことにも対応できます。生活リズムを整えることが、結果的に大きな効率化になるのです。
この7つが、時間の使い方の上手な諸先輩たちに共通するルールです。細かい実践法にはさまざまな違いがありますが、一万人の後悔から導き出せる時間の使い方には、ある種の法則性があるのです。
みなさんもピンとくるものからで構いませんので、自身のワークスタイルに当てはめて試してみてください。もちろん、一つでも二つでも構いませんし、業務に合わせて改良するのも大歓迎です。ただ、必ず行動に移してください。
私自身も、先人の教えを試しながら自分流に変えていきましたが、実際の行動からしか時間割の最適化はできないと実感しています。それは時間というものが、自分の習慣や行動、そして生き方に密接に関わっているからです。
あなたの人生の主役は、あなたです。あなたが時間の使い方で40代を後悔することがないよう、さらにはもう一歩進めて、「忙殺感」ではなく「幸福感」を味わうために、これから紹介する先達の智慧を最大限に活用してください。
■支払いの「延滞」を繰り返していると利用履歴に傷がつきます
クレジットカードの代金を指定日(引き落とし日)に払わなくても何とかなると考えている人はまだ多いようです。しかし、これは危ない考え方です。延滞を繰り返していると、クレジットカードの利用履歴が悪くなって、あなたはもうカードの利用ができなくなるかもしれません。
■カード会社の対応は延滞3ヶ月以上で信用情報に登録!
指定日に引き落としができないとカード会社は何をするでしょうか。まず、手紙でその旨を通知します。それでも払わないとなると、コールセンターから電話がかかってきます。それでも無視していると、督促の手紙が来て、カードの利用が停止になったりします。それでも払わないと、全額支払うまで、カード会社から督促が来ます。さらに、延滞状態が3カ月以上続いてしまうと、その情報は個人信用情報センターに事故情報として登録されます。ここに事故として登録された情報は、記録として5年間残ってしまいます。これがいわゆるブラックリストです。
■ブラックリストに載るとカードを作れない、ローンも組めなくなる
個人信用情報センターにブラックリストとして登録されると新しいカードを作ったりローンを組んだりができなくなります。というのも、新しくカードを作ったり、ローンを組もうとするときにはカード会社は、みな個人信用情報センターに照会するからです。そのため、入会審査の段階で、事故の記録があった場合、審査にはまず通りません。
記録が消えるまで5年間、新しいカードを作ることやローンを組むことを我慢しなくてはいけません。
また、個人信用情報センターには、2年間の利用履歴が載っています。これをみて、カード会社は毎月の支払い状況を確認しています。例えば、1カ月以上の延滞の記録が何回もあったり、自己破産の記録があったりすると、その人の信用は大きく失墜してしまいます。入会申し込み書の情報では十分にハードルをクリアした人でも、悪い履歴のせいでカード発行を断られることもあります。更新の場合には、即座に拒否される可能性も出てきます。
■引っ越しをしたら住所変更をして、延滞を防ごう!
入金し忘れて残高が足りないというのが「延滞」の主な原因ですが、意外に知られていないのが引っ越しに伴う払い忘れです。たいていの場合、引っ越しをしたのに電話番号や住所の変更をしていないので、カード会社からの明細書が届かず、結果的に延滞になるケースです。もちろん、長期間経過してしまうと督促に発展してしまう危険性があります。
こうしたトラブルを避けるためにも、引っ越しを決めた時には、まず、手持ちのカードをすべて点検して、必要なカードには変更手続きを、不要なカードは解約しましょう。また、更新の前などに不要になったカードはないか見直しをして、整理をする習慣をつけるのもよいでしょう。
クレジットカードの代金を指定日(引き落とし日)に払わなくても何とかなると考えている人はまだ多いようです。しかし、これは危ない考え方です。延滞を繰り返していると、クレジットカードの利用履歴が悪くなって、あなたはもうカードの利用ができなくなるかもしれません。
■カード会社の対応は延滞3ヶ月以上で信用情報に登録!
指定日に引き落としができないとカード会社は何をするでしょうか。まず、手紙でその旨を通知します。それでも払わないとなると、コールセンターから電話がかかってきます。それでも無視していると、督促の手紙が来て、カードの利用が停止になったりします。それでも払わないと、全額支払うまで、カード会社から督促が来ます。さらに、延滞状態が3カ月以上続いてしまうと、その情報は個人信用情報センターに事故情報として登録されます。ここに事故として登録された情報は、記録として5年間残ってしまいます。これがいわゆるブラックリストです。
■ブラックリストに載るとカードを作れない、ローンも組めなくなる
個人信用情報センターにブラックリストとして登録されると新しいカードを作ったりローンを組んだりができなくなります。というのも、新しくカードを作ったり、ローンを組もうとするときにはカード会社は、みな個人信用情報センターに照会するからです。そのため、入会審査の段階で、事故の記録があった場合、審査にはまず通りません。
記録が消えるまで5年間、新しいカードを作ることやローンを組むことを我慢しなくてはいけません。
また、個人信用情報センターには、2年間の利用履歴が載っています。これをみて、カード会社は毎月の支払い状況を確認しています。例えば、1カ月以上の延滞の記録が何回もあったり、自己破産の記録があったりすると、その人の信用は大きく失墜してしまいます。入会申し込み書の情報では十分にハードルをクリアした人でも、悪い履歴のせいでカード発行を断られることもあります。更新の場合には、即座に拒否される可能性も出てきます。
■引っ越しをしたら住所変更をして、延滞を防ごう!
入金し忘れて残高が足りないというのが「延滞」の主な原因ですが、意外に知られていないのが引っ越しに伴う払い忘れです。たいていの場合、引っ越しをしたのに電話番号や住所の変更をしていないので、カード会社からの明細書が届かず、結果的に延滞になるケースです。もちろん、長期間経過してしまうと督促に発展してしまう危険性があります。
こうしたトラブルを避けるためにも、引っ越しを決めた時には、まず、手持ちのカードをすべて点検して、必要なカードには変更手続きを、不要なカードは解約しましょう。また、更新の前などに不要になったカードはないか見直しをして、整理をする習慣をつけるのもよいでしょう。