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<「中華の夢」の行方(3)>環境汚染で滅ぶ?―「PM2.5」「がん村」の恐怖、「近海から魚が消えた」

2013年12月31日 08時59分43秒 | 海外情報
「世界最大の公害発生国」である中国が及ぼす地球生態系への影響は想像を絶する。中国では有害化学物質による水質汚染や大気汚染など環境関連事件が多発、深刻な健康被害が続出している。

◆工場からの排水で褐色に濁る

中国・江蘇省のある村は、伝統的な稲作地域として有名で水資源が豊かなことから「水の郷」と呼ばれていた。しかし、今その面影はなかった。2004年頃、このあたりは地方政府によって「ステンレスの街」と定められ、民家だった場所は、ほとんどがステンレス工場へと変わった。工場では金属部品を分解してステンレスを取り出す作業が行われ、無防備にも煙を直接吸い込んでいる。工場からの排水により、川面は褐色に濁り、油のようなものが水面に浮いているのが見える。

ステンレス工場群が建設されてから健康被害を訴える近隣住民が急増。そこで原因と疑われる汚染水を垂れ流す金属工場を相手に地元住民が訴訟を起こした。その結果、工場は賠償金を支払い、住民を3~4キロ離れた別の地域へ移住させた。この村の人口は約3千人。2011年までの2年間、がん患者は80人に達し、「ガンの村」と言われるようになった。ガンの発症率が多い、いわゆる「ガン村」の存在を中国政府は13年に入り、公式に初めて認めた。外国調査機関によると、その数は少なくとも400カ所を超えるという。

 中国の工業生産の急拡大につれて、がん患者数が急増しているのは事実だ。中国でのがんによる死亡者数の統計を見ると、70年代には年間平均で70万人にとどまっていたものが、90年代に年間117万人に急増。2012年には270万人とさらに増え、20年には400万人を超えると予想されている。

中国漁船が東シナ海の尖閣諸島海域で海上保安庁の巡視船に衝突した事件が2010年9月に勃発した。尖閣海域では中国から来た多数の漁船が操業しており、このうち日本の領海で操業していた中国漁船が巡視船に追われ体当たりしたのだ。この船も含めた漁船群は尖閣海域から170キロも離れた福建省福州から長い時間をかけてやってきた。燃料コストと拿捕の危険を冒して尖閣海域に来て操業するのは何故か?

◆近海では魚獲れず尖閣へ―湖・川でも魚が大量死

中国八大漁場の一つに数えられるほど、豊かな漁場に近い江蘇省のある漁港。ここではヒラメやクルマエビなど国内販売用の海産物が水揚げされている。
漁師は早朝6時に出発。3時間かけて目的の漁場へ。到着するとすぐに仕掛け網を海の中に投げ入れる。その長さは、ざっと2000m。網を仕掛けてからおよそ6時間。潮が引いた状態で網の中身を確認すると小さなヒラメが数えるほど。

この道30年という漁師は、「昔は中には3キロくらいの大きなものが沢山獲れた。ヒラメはとても高く売れるので大きな収入が得られたが、最近は全く獲れない」と嘆く。「完全な赤字だ。海が汚染されているためだ。汚染されて魚が近くまで来なくなった。しかもここで獲れた魚はほかの地域に比べて3分の1の値段しかつかない」と嘆く。

「豊かな漁場」はなぜ汚染されたのか? その原因を問うと漁師は港から望める大きな化学工場群を指差した。無数の煙突からは灰色の煙がもくもく出て空を圧倒している。

漁師たちによると6年前、漁場からわずか2キロの距離に100社もの化学工場が操業を始めた。しかも、これら工場のうち9割が廃水を海に直接排水しているといわれ、その汚染された水が海に垂れ流されている。

漁師たちは「化学工場の稼働と時を同じくして漁獲量が激減してしまった」と強く訴え、漁師たちは政府に改善を求め何度も直訴した。しかし地方役人からの返答は 「貧乏で死ぬより豊かになるなら汚染されて死んだ方がましだろ」の一言。地方政府は地方経済の発展を優先し漁師たちの訴えを無視した。ある漁師は「政府は化学工場から税金をもらっているので何も改善しない」「工場のせいでさらに遠くまで漁に出なくては生活できなくなった」と憤っている。

そこで東シナ海や黄海のはるか遠方にまで、漁船が繰り出すことになる。上海では尖閣諸島海域で獲れた魚が人気の的。スーパーなどで売りに出されると市民が殺到。通常の1.5倍もの高い売値にもかかわらずサワラやウマズラハギなどがあっという間に完売する。

中国では淡水魚が主に食べられてきた。漁業関係者によると「中国人の好きな淡水魚が川や湖の水質汚染で食べられなくなったため、海鮮魚が高く売れるようになった」という。中華料理で魚と言えば鯉、ナマズ、ドジョウなど淡水魚だったが、中国の湖・池・川で魚の大量死が発生する事例は後を絶たない。そこで高い金を出してでも魚介類を食べたい富裕層が注目したのが「海鮮」。富裕層は新鮮な海産物を求めるため価格が高騰。漁師たちには一攫千金のチャンスとなる。ところが汚染のため中国近海では魚が取れないのが実情。そこで中国の漁師たちは、より遠くの海にその活路を求めたというわけである。

2013年12月、中国東部を中心に有害物質を含んだ濃霧が発生、上海市では大気中の微小粒子状物質「PM2.5」を含む大気汚染指数が6段階のうち最悪から2番目の「重度汚染」となった。北京でも「PM2.5」が日本の環境基準の13倍にあたる450を超えたほか、周辺の河北省や山西省など各地で、500を超える深刻な汚染が見られた。一部の都市では、高速道路の通行規制や工場の操業の一時停止、それに市内へのトラックの乗り入れ規制などの緊急対策を発動したが、「焼け石に水」の状態だ。中国経済計画当局は、2011年から15年までの第12次5カ年計画の環境浄化目標の半分も達成していないと報告。窒素酸化物の排出量は10年から12年の間に2.8%増加。5カ年計画では15年までに10%に減らすことを目標としているが、早くも達成は困難視されている。民間シンクタンク幹部は「老朽化した製鉄所、火力発電所、セメント工場を廃棄するという過去2年間の全国的なキャンペーンにもかかわらず、工業改革のペースが不十分。このままでは環境汚染によって国は滅びてしまう」と警告している。(Record China主筆・八牧浩行)
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株高41年ぶり、円安34年ぶり… 歴史的値動きの1年

2013年12月31日 08時46分33秒 | 経済
 2013年の金融・証券市場は歴史的な株高・円安となった。日経平均株価は年間で57%上げ、41年ぶりの上昇率を記録。円は対ドルで34年ぶりの下落率になった。世界の投資マネーが新興国から先進国へと向かうなか、大規模な金融緩和などで日本が長引くデフレから脱するとの期待が浮上。内外の投資家が取引を活発に膨らませた。来年もこの流れが続くかどうかは、景気の持続的な拡大がカギを握る。

 年内最後の取引である30日の東京株式市場では日経平均が9日連続で上昇し、終値は1万6291円31銭と約6年2カ月ぶりの高値を付けた。年末にその年の高値を更新したのは2年連続、9日連続での上昇は4年ぶりだ。日経平均の上昇率は9割高だった1972年以来の大きさ。当時は田中角栄氏が首相に就任し「列島改造ブーム」に沸いた時期だった。

 外国為替市場では対ドルの円相場が1年前の86円から年間19円(18%)下落。30日は一時1ドル=105円台半ばと5年ぶりの円安水準を付けた。

 株高・円安が進んだ背景には、黒田東彦日銀総裁が打ち出した大規模な金融緩和や、安倍晋三首相が進める経済政策などの効果で、脱デフレが実現するとの期待がある。

 一部の商品相場は上昇が始まっている。「物価の優等生」といわれた鶏卵価格は8年8カ月ぶりの高値を付けたほか、鋼材をはじめとする産業資材価格も上昇。企業間の取引価格の動向を示す日経商品指数42種は、12月末に5年3カ月ぶりの高水準を付けた。

 こうした流れに円安も加わり「国内主要企業は14年度も2ケタの経常増益」(SMBC日興証券)との見方が多い。日本株売買の6割前後を占める海外投資家は世界の有望市場として日本に注目。今年の海外勢による日本株の買越額は過去最大の15兆円弱にのぼった。野村証券の田村浩道チーフ・ストラテジストは「政権が市場をよく見ているとの信頼が根底にある」と指摘する。海外勢の買いがけん引し、東証1部の年間株式売買代金は昨年の2倍に膨らんだ。
 東証で30日開いた大納会には、現職の首相として初めて安倍晋三首相も出席。「経済はマイナスからプラスに大きく転じた」と指摘、「来年もアベノミクスは買いだ」と強調した。市場では、今後も株高が持続するには「企業業績の回復傾向が崩れず、設備投資が本格化し資金の好循環が強まることが条件」(メリルリンチ日本証券の神山直樹チーフストラテジスト)との声が出ている。

 世界に目を向けても、投資マネーはこの1年間で新興国から先進国へと向かう流れを強めた。

 米国では米連邦準備理事会(FRB)が市場に大量に資金を供給する量的緩和を縮小するという観測が年央から浮上し、新興国から余剰マネーを引き揚げるとの見方が台頭。中国やブラジルなどの株式市場から資金が流出した。一方、景気が回復基調にある米国やドイツでは株価が史上最高値を更新。安全資産とみなされることが多い金からはマネーが流出した。

 米国での緩和縮小は米景気の力強さの裏返しでもあるうえ、米国の金利上昇を通じてドル高・円安を促す。米国で事業を展開する日本企業にとっては輸出面、採算面の両面で追い風となる。そうしたことも、日本株を押し上げた理由の一つになった。

 市場では、14年の世界経済も先進国主導の回復局面が続くとの見方が多く、投資マネーが向かう先について「先進国が優位な状況は変わらない」(みずほ証券)との声がある。半面、新興国経済への懸念はくすぶっており、日本の景気にとってもリスク要因となる。
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ビットコイン、ギークが育てた無国籍通貨

2013年12月30日 08時19分22秒 | ニュース
 今年、にわかに世界で注目を集めた仮想通貨ビットコイン。年初に1ビットコイン(BTC)=13ドルだった相場は、知名度の高まりにつれ11月末に1000ドルを突破した。12月には人民元への影響を警戒した中国の当局が規制に乗り出す事態となり、その「通貨価値」はなお揺れている。しかし、そもそも単なるインターネット上のデータにすぎないものがなぜこれほどの存在感を持つようになったのか。「共同幻想」とも表現される通貨の本質をあぶり出しているかのようなビットコイン。成立の背景を探ってみた。


■ピザ2枚、今や8億円

ビットコインがもたらすのは、革新か混乱か=ロイター

 2010年5月、世界で初めてビットコインで購入された商品は、2枚のピザだったという。代金は1万BTC。「2枚のピザ」の価値はいま、8億円を超えた。

 いわゆるギーク(オタク)の間で主に流通し、マニアックな存在だったビットコインが脚光を浴びたきっかけは、今年3月のキプロスの金融危機だ。同国政府が銀行預金への課税を決めると、ウェブ上の無国籍通貨、ビットコインが資産の逃げ場になった。

 続いて中国が相場を過熱させた。10月、ネット検索大手の百度(バイドゥ)がビットコインを決済通貨として採用したことで需要が急増(のちに受け入れ停止)。ビットコイン専門の取引所「Mt.Gox(マウントゴックス)」での相場は11月末、1BTC=1242ドルまで上昇した。

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が11月、書簡で「(仮想通貨は)長期的に有望」と指摘したことも、権威づけにつながった。ビットコインの相場は、通貨としての権威や信用度を映す面が強い。日銀の黒田東彦総裁も12月20日の会見で「大いに関心を持っている」と発言。世界の主要中銀がその動向に注目する。

 中国はその後、人民元への悪影響を懸念し始めた。中国人民銀行などは5日、「人民元の法定通貨としての地位を損なうのを防ぐ」などとして、金融機関に対しビットコインを使った金融商品や決済サービスの提供を禁止すると通知した。これで相場は急落したが、27日時点では1ビットコイン=800ドル前後で推移し、なお一定の価値を保っている。米欧では店舗や通販サイトの決済手段として利用が広がり、ビットコインを世界に知らしめたキプロスでは、学費をビットコインで受け取る大学まで現れた。
■「ドルとの交換証」が第一歩


 これがよく語られるビットコインの歴史。しかし、これだけではなぜビットコインが通貨として成立したかの説明にはなっていない。

 発行量がプログラムによって限られ、ドルなどの通貨に対して相場があるという点で、ビットコインは金に似ているといわれる。しかし装飾品などとしてそれ自体に価値がある金に対し、ビットコインは単なるデータだ。無価値のものが支払い手段として流通し始めた現実は、「皆が価値があると思うから価値がある」という、循環論的な通貨の本質を体現しているようにもみえる。

 Mt.Goxを運営するTIBANNE(ティバン、東京・渋谷)が立ち上げたサイトによると、ビットコインは09年1月、中本哲史(ナカモト・サトシ)という人物の論文をもとに生まれた。10年2月、最初の小さな取引所ができたことが、ビットコインが通貨として成立するのに重要な役割を果たしたとみられる。

 こう考えるとビットコインの価値をイメージしやすいかもしれない。もともとドルなどの通貨は、それ以前に通貨として使われていた金などの貴金属の交換証として発達した歴史がある。現在、金本位制でないことを無視していえば、金と交換できるからドルに価値がある。取引所ができたことによってビットコインはドルと交換できるようになり、その交換証としての価値を持つようになった――。


■「みんなで作る」に支持


 では、ドルとの交換価値はどうして生まれたのだろう。

 一言でいえば、ギークをひきつける魅力を持っていることが大きい。その魅力は大きく2つ。システムのできのよさと無国籍性だ。

 ビットコインはピア・ツー・ピア(P2P)という通信技術によって、金融機関を介さずわずかな手数料ですばやく決済や送金ができる。ポイントは「相互監視」だ。

 ビットコインの取引情報はすべて公開されている。取引のたびに、偽造や二重支払いといった不正がないことを、他の利用者が検証し承認する。維持・運営を利用者自身が担うことで、システムの運営コストを下げている。コンピューターの処理によって検証作業をした利用者には、新規のビットコインが割り当てられる。この作業は金の採掘になぞらえて「マイニング」と呼ばれ、相互監視のインセンティブになっている。
 権威を嫌うギークたちは、ネット上の百科事典「ウィキペディア」のようにみんなで作っていくものを好む傾向があり、ビットコインの運営スタイルもそれに合致する。

 発行量に上限があるビットコインは、政府の信用力や中央銀行の金融政策による影響を受けない。通貨規制で海外送金が制限されることも、量的緩和で価値が薄まることもない。こうした権威からの自由や無国籍性も、ギークの好みに合う。

 発行ペースは4年ごとに半減していき、希少性を高めて価値の低下を防ぐ。こうしたビットコインの設計は、仮想通貨としてこれまでになく完成度が高いと評価され、ギークの盤石な支持を得た。これがキプロス危機などの出来事を経て、一般にも浸透し始めたというのがビットコインの「真実」といえそうだ。


■コスト競争力が強み


 ビットコインは今後、どう発展していくのだろう。



 来日して10年になるジェームズ・マックワイトさんは、最近改めてビットコインの便利さに気づいたという。「先日、金曜の深夜に友人から『お金を貸してほしい』とメールがあったんです。銀行を使うと、ネットバンキングにログインして、相手の口座の情報を入力する手間があり、そのうえ振り込まれるのは月曜日。手数料もばかになりません。でも、ビットコインなら指定されたアドレスに金額を入力するだけですぐ送れて、手数料もほとんどかかりません。相手が海外にいても同じです」

 東京・六本木のレストラン「ピンク・カウ」は、7月にビットコインによる決済を始めた。オーナーのトレーシー・コンソーリさんは、「クレジットカード決済では5%も手数料を取られますが、ビットコインなら円に替えても1%です」と話す。専用の端末は必要なく、導入コストはゼロ。タブレットに表示されたQRコードをスマートフォン(スマホ)で読み取れば簡単に決済できる。

 企業などが提供する既存の高コストのサービスに対し、低コストのビットコインは競争力を持っている。何万円もする百科事典をウィキペディアが代替したのと同じようなことが、決済の世界でも広がっていくのかもしれない。
■「番人」不在の頼りなさ


 ただ、中央銀行のような管理主体のないビットコインのシステムには危うさもある。

 貨幣論に詳しい早稲田大学の岩村充教授によると「通貨は2つの価値でできている」という。ひとつは「他の人が価値があると思うことへの期待」で、すでに触れた循環論のような話だが、その前にもうひとつ、発行元の財務の健全性が重要とみる。国であれば「将来の徴税力への期待」がそれにあたる。いわば価値の裏付けで、金本位制のもとでの金にあたるものといえるかもしれない。

 取引所でドルとの相場が立つとはいえ、価値の裏付けが盤石とはいえないビットコインはやはり、国の通貨に比べると頼りない存在だ。



画像の拡大
 投機資金も入る現在の相場はきわめて不安定。Mt.Goxでの対ドル相場は、今年1月1日に1BTC=13ドル、11月29日に1242ドル、12月18日には455ドルと極端に上下している。中国での規制が明らかになった今月初めには、2日で一時半値以下に急落するということも起きた。これでは、払う方も受け取る方も安心して使えない。

 管理主体がないので、デマなどに相場が左右される可能性もある。たとえば「システムに重大な欠陥が見つかった」などというデマで相場が混乱しても、それを公式に否定する存在はいない。ネットワーク自体の安全性も問われる。暗号技術が専門の横浜国立大学大学院の松本勉教授は「ネットワークが攻撃を受けてマヒすれば、ビットコインをいくら持っていても使えなくなる」と、対策の必要性を指摘する。

 岩村氏はこう警告する。「現在の熱狂は、限度いっぱいのスピードで自動車が走る高速道路に似ている。誰かがブレーキをほんの少し踏むだけであっという間に大渋滞が起こるように、価値に不安が芽生え始めたら一気にバブルが崩壊する可能性がある」
 匿名性を悪用される懸念もある。公開される取引情報には個人を特定する情報が含まれていないためだ。米国では拳銃や薬物など違法な取引の温床となって摘発された闇サイト「シルクロード」で決済に使われていた。

 また、いくら暗号技術が安全でも、ハッキングによって財布ソフトである「ウォレット」を奪われれば財布を盗まれたのと同じ。海外ではこうした「強盗」の被害が複数報告されているが、大半は足がつかないままだ。

 Mt.Goxは、取引口座の開設時に本人確認ができる書類の提出を求めている。ティバンのマルク・カルプレス社長は「取引情報が公開されている以上、システムに精通した人材が当局にいれば、取引所が持つ情報と照らし合わせて資金の流れを追跡できるはず」と話すが、海外には本人確認なしに口座を作れる取引所もあるとされる。完全に透明とはいえない。


■法整備が追いつかず


 ビットコインの仕組みに法律は追いついていない。ドイツのようにビットコインによる納税や国内での取引を認めている国もあるが、金融商品を禁じた中国のほか、欧州銀行監督局(EBA)も今月13日、利用者保護の枠組みが未整備であるとしてリスクに留意するよう呼び掛ける声明を発表した。

 日本でも同様だ。電子マネーの一種と紹介されることもあるビットコインだが、日銀金融研究所によると(1)発行体がない(2)発行時の払い込みがない(3)特定の資産による裏付けがない――の3点で従来の電子マネーとは大きく違う。このため、前払い式の電子マネーやプリペイドカードを取り扱う資金決済法の対象にならない。

 取引所での両替は2次売買にあたるが、実体を持たないビットコインは金券ショップなどを取り締まる古物営業法の対象からも漏れる。マネーロンダリング(資金洗浄)との関わりでも、疑わしい取引が行われないよう事業者に届け出を求める犯罪収益移転防止法は、取引に使われる通貨を取り締まるものではないため、ビットコイン自体を規制することはできない。ハッキングによる盗難時の取り扱いを含め、既存の通貨の概念に収まらないビットコインに対してどんな法整備が必要なのかは、何か大きな問題が起きて初めて見えてくるというのが現状だ。

 日本銀行券への信頼が厚く、現金決済の割合が高い日本は、ビットコインが普及しづらい環境といえる。ティバンは普及のため、ビットコインに対応したPOS(販売時点情報管理)端末を開発している。スマホを使うより導入コストはかかるが「取引所の口座に入金されるので安全性が高く、決済時点のレートで円に替えて受け取れるので相場の変動の影響を受けない」(カルプレス社長)という。(電子報道部 森下寛繁)
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ビットコイン、ギークが育てた無国籍通貨

2013年12月30日 08時19分22秒 | ニュース
 今年、にわかに世界で注目を集めた仮想通貨ビットコイン。年初に1ビットコイン(BTC)=13ドルだった相場は、知名度の高まりにつれ11月末に1000ドルを突破した。12月には人民元への影響を警戒した中国の当局が規制に乗り出す事態となり、その「通貨価値」はなお揺れている。しかし、そもそも単なるインターネット上のデータにすぎないものがなぜこれほどの存在感を持つようになったのか。「共同幻想」とも表現される通貨の本質をあぶり出しているかのようなビットコイン。成立の背景を探ってみた。


■ピザ2枚、今や8億円

ビットコインがもたらすのは、革新か混乱か=ロイター

 2010年5月、世界で初めてビットコインで購入された商品は、2枚のピザだったという。代金は1万BTC。「2枚のピザ」の価値はいま、8億円を超えた。

 いわゆるギーク(オタク)の間で主に流通し、マニアックな存在だったビットコインが脚光を浴びたきっかけは、今年3月のキプロスの金融危機だ。同国政府が銀行預金への課税を決めると、ウェブ上の無国籍通貨、ビットコインが資産の逃げ場になった。

 続いて中国が相場を過熱させた。10月、ネット検索大手の百度(バイドゥ)がビットコインを決済通貨として採用したことで需要が急増(のちに受け入れ停止)。ビットコイン専門の取引所「Mt.Gox(マウントゴックス)」での相場は11月末、1BTC=1242ドルまで上昇した。

 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が11月、書簡で「(仮想通貨は)長期的に有望」と指摘したことも、権威づけにつながった。ビットコインの相場は、通貨としての権威や信用度を映す面が強い。日銀の黒田東彦総裁も12月20日の会見で「大いに関心を持っている」と発言。世界の主要中銀がその動向に注目する。

 中国はその後、人民元への悪影響を懸念し始めた。中国人民銀行などは5日、「人民元の法定通貨としての地位を損なうのを防ぐ」などとして、金融機関に対しビットコインを使った金融商品や決済サービスの提供を禁止すると通知した。これで相場は急落したが、27日時点では1ビットコイン=800ドル前後で推移し、なお一定の価値を保っている。米欧では店舗や通販サイトの決済手段として利用が広がり、ビットコインを世界に知らしめたキプロスでは、学費をビットコインで受け取る大学まで現れた。
■「ドルとの交換証」が第一歩


 これがよく語られるビットコインの歴史。しかし、これだけではなぜビットコインが通貨として成立したかの説明にはなっていない。

 発行量がプログラムによって限られ、ドルなどの通貨に対して相場があるという点で、ビットコインは金に似ているといわれる。しかし装飾品などとしてそれ自体に価値がある金に対し、ビットコインは単なるデータだ。無価値のものが支払い手段として流通し始めた現実は、「皆が価値があると思うから価値がある」という、循環論的な通貨の本質を体現しているようにもみえる。

 Mt.Goxを運営するTIBANNE(ティバン、東京・渋谷)が立ち上げたサイトによると、ビットコインは09年1月、中本哲史(ナカモト・サトシ)という人物の論文をもとに生まれた。10年2月、最初の小さな取引所ができたことが、ビットコインが通貨として成立するのに重要な役割を果たしたとみられる。

 こう考えるとビットコインの価値をイメージしやすいかもしれない。もともとドルなどの通貨は、それ以前に通貨として使われていた金などの貴金属の交換証として発達した歴史がある。現在、金本位制でないことを無視していえば、金と交換できるからドルに価値がある。取引所ができたことによってビットコインはドルと交換できるようになり、その交換証としての価値を持つようになった――。


■「みんなで作る」に支持


 では、ドルとの交換価値はどうして生まれたのだろう。

 一言でいえば、ギークをひきつける魅力を持っていることが大きい。その魅力は大きく2つ。システムのできのよさと無国籍性だ。

 ビットコインはピア・ツー・ピア(P2P)という通信技術によって、金融機関を介さずわずかな手数料ですばやく決済や送金ができる。ポイントは「相互監視」だ。

 ビットコインの取引情報はすべて公開されている。取引のたびに、偽造や二重支払いといった不正がないことを、他の利用者が検証し承認する。維持・運営を利用者自身が担うことで、システムの運営コストを下げている。コンピューターの処理によって検証作業をした利用者には、新規のビットコインが割り当てられる。この作業は金の採掘になぞらえて「マイニング」と呼ばれ、相互監視のインセンティブになっている。
 権威を嫌うギークたちは、ネット上の百科事典「ウィキペディア」のようにみんなで作っていくものを好む傾向があり、ビットコインの運営スタイルもそれに合致する。

 発行量に上限があるビットコインは、政府の信用力や中央銀行の金融政策による影響を受けない。通貨規制で海外送金が制限されることも、量的緩和で価値が薄まることもない。こうした権威からの自由や無国籍性も、ギークの好みに合う。

 発行ペースは4年ごとに半減していき、希少性を高めて価値の低下を防ぐ。こうしたビットコインの設計は、仮想通貨としてこれまでになく完成度が高いと評価され、ギークの盤石な支持を得た。これがキプロス危機などの出来事を経て、一般にも浸透し始めたというのがビットコインの「真実」といえそうだ。


■コスト競争力が強み


 ビットコインは今後、どう発展していくのだろう。



 来日して10年になるジェームズ・マックワイトさんは、最近改めてビットコインの便利さに気づいたという。「先日、金曜の深夜に友人から『お金を貸してほしい』とメールがあったんです。銀行を使うと、ネットバンキングにログインして、相手の口座の情報を入力する手間があり、そのうえ振り込まれるのは月曜日。手数料もばかになりません。でも、ビットコインなら指定されたアドレスに金額を入力するだけですぐ送れて、手数料もほとんどかかりません。相手が海外にいても同じです」

 東京・六本木のレストラン「ピンク・カウ」は、7月にビットコインによる決済を始めた。オーナーのトレーシー・コンソーリさんは、「クレジットカード決済では5%も手数料を取られますが、ビットコインなら円に替えても1%です」と話す。専用の端末は必要なく、導入コストはゼロ。タブレットに表示されたQRコードをスマートフォン(スマホ)で読み取れば簡単に決済できる。

 企業などが提供する既存の高コストのサービスに対し、低コストのビットコインは競争力を持っている。何万円もする百科事典をウィキペディアが代替したのと同じようなことが、決済の世界でも広がっていくのかもしれない。
■「番人」不在の頼りなさ


 ただ、中央銀行のような管理主体のないビットコインのシステムには危うさもある。

 貨幣論に詳しい早稲田大学の岩村充教授によると「通貨は2つの価値でできている」という。ひとつは「他の人が価値があると思うことへの期待」で、すでに触れた循環論のような話だが、その前にもうひとつ、発行元の財務の健全性が重要とみる。国であれば「将来の徴税力への期待」がそれにあたる。いわば価値の裏付けで、金本位制のもとでの金にあたるものといえるかもしれない。

 取引所でドルとの相場が立つとはいえ、価値の裏付けが盤石とはいえないビットコインはやはり、国の通貨に比べると頼りない存在だ。



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 投機資金も入る現在の相場はきわめて不安定。Mt.Goxでの対ドル相場は、今年1月1日に1BTC=13ドル、11月29日に1242ドル、12月18日には455ドルと極端に上下している。中国での規制が明らかになった今月初めには、2日で一時半値以下に急落するということも起きた。これでは、払う方も受け取る方も安心して使えない。

 管理主体がないので、デマなどに相場が左右される可能性もある。たとえば「システムに重大な欠陥が見つかった」などというデマで相場が混乱しても、それを公式に否定する存在はいない。ネットワーク自体の安全性も問われる。暗号技術が専門の横浜国立大学大学院の松本勉教授は「ネットワークが攻撃を受けてマヒすれば、ビットコインをいくら持っていても使えなくなる」と、対策の必要性を指摘する。

 岩村氏はこう警告する。「現在の熱狂は、限度いっぱいのスピードで自動車が走る高速道路に似ている。誰かがブレーキをほんの少し踏むだけであっという間に大渋滞が起こるように、価値に不安が芽生え始めたら一気にバブルが崩壊する可能性がある」
 匿名性を悪用される懸念もある。公開される取引情報には個人を特定する情報が含まれていないためだ。米国では拳銃や薬物など違法な取引の温床となって摘発された闇サイト「シルクロード」で決済に使われていた。

 また、いくら暗号技術が安全でも、ハッキングによって財布ソフトである「ウォレット」を奪われれば財布を盗まれたのと同じ。海外ではこうした「強盗」の被害が複数報告されているが、大半は足がつかないままだ。

 Mt.Goxは、取引口座の開設時に本人確認ができる書類の提出を求めている。ティバンのマルク・カルプレス社長は「取引情報が公開されている以上、システムに精通した人材が当局にいれば、取引所が持つ情報と照らし合わせて資金の流れを追跡できるはず」と話すが、海外には本人確認なしに口座を作れる取引所もあるとされる。完全に透明とはいえない。


■法整備が追いつかず


 ビットコインの仕組みに法律は追いついていない。ドイツのようにビットコインによる納税や国内での取引を認めている国もあるが、金融商品を禁じた中国のほか、欧州銀行監督局(EBA)も今月13日、利用者保護の枠組みが未整備であるとしてリスクに留意するよう呼び掛ける声明を発表した。

 日本でも同様だ。電子マネーの一種と紹介されることもあるビットコインだが、日銀金融研究所によると(1)発行体がない(2)発行時の払い込みがない(3)特定の資産による裏付けがない――の3点で従来の電子マネーとは大きく違う。このため、前払い式の電子マネーやプリペイドカードを取り扱う資金決済法の対象にならない。

 取引所での両替は2次売買にあたるが、実体を持たないビットコインは金券ショップなどを取り締まる古物営業法の対象からも漏れる。マネーロンダリング(資金洗浄)との関わりでも、疑わしい取引が行われないよう事業者に届け出を求める犯罪収益移転防止法は、取引に使われる通貨を取り締まるものではないため、ビットコイン自体を規制することはできない。ハッキングによる盗難時の取り扱いを含め、既存の通貨の概念に収まらないビットコインに対してどんな法整備が必要なのかは、何か大きな問題が起きて初めて見えてくるというのが現状だ。

 日本銀行券への信頼が厚く、現金決済の割合が高い日本は、ビットコインが普及しづらい環境といえる。ティバンは普及のため、ビットコインに対応したPOS(販売時点情報管理)端末を開発している。スマホを使うより導入コストはかかるが「取引所の口座に入金されるので安全性が高く、決済時点のレートで円に替えて受け取れるので相場の変動の影響を受けない」(カルプレス社長)という。(電子報道部 森下寛繁)
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一人っ子政策、来春から緩和 中国が決定

2013年12月29日 08時09分37秒 | 海外情報
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は28日、人口抑制のため導入していた「一人っ子政策」の緩和を決めた。地方政府が2014年春から順次、どちらか一方が一人っ子の夫婦に第2子出産を認めていく。年間出生数は例年の1割超に当たる200万人ほど増えるとの見方が多く、いびつな人口構成の修正が動き出す。


 全人代常務委は同日、人口行政を直接担う31省・自治区・直轄市が立法措置をとれば、それぞれが一人っ子政策を緩和できると決議。共産党は11月に開いた中央委員会第3回全体会議(3中全会)で緩和の方針を発表していたが、中央政府として正式に決めた。

 これを受け、地方政府は第2子を認める。晩婚化などで少子化が進む北京市政府は直ちに準備に入り、早ければ14年3月1日から新制度を適用。上海市など他の地方政府も相次いで同年中に緩和する見通しだ。

 専門家によると、新制度で第2子を持てるようになる夫婦は全国で1500万~2000万組。このうち第2子を産む意志があるのは約5割とされる。中国の最近の出生数は年間約1600万人だが、今後5年ほどは200万人前後上積みされる可能性がある。

 200万人は日本全体の年間の出生数の約2倍に当たる。すでに産婦人科のベッド不足が指摘されているほか、11月以降はベビー用品を手がける地元企業の株価が上昇している。育児関連ビジネスにはまとまった商機になりそうだ。

 中国は食糧危機を避けるために1979年に一人っ子政策を導入し、「4億人分の人口増を抑制できた」(担当官庁の国家衛生計画生育委員会)。結果として人口構成がゆがみ、国連の推計では65歳以上の比率が35年に19.5%と、現在の日本並みに高齢化する見通しとなっていた。

 12年には、「世界の工場」を支えてきた労働年齢人口(15~59歳)が初めて減少に転じた。ゆがみを解消するため、11年までに全土で夫婦双方が一人っ子なら第2子を認めるまで制限を緩和してきたが、さらに踏み込むことにした。

 ただ、張徳江全人代委員長は28日、「産児制限は我が国の基本的な国策であり、長期にわたって堅持せねばならない」と演説した。現在は約13億5000万人の総人口を33年ごろのピーク時でも15億人程度に抑える方針。第3子を許可しないなど一定の制限は当面は続く見通しだ。

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