ここ数年、「100g以下の金取引」が注目を集めているのはご存知だろうか。
金は、その美しさから宝飾品として利用されることはもちろん、かつては、通貨として用いられたように、資産としての価値も有している。単に美しいというだけでなく、金属としても非常に優れた性質を持っている。
金の総生産量は、2014年末時点で18万3600トンとされている(トムソン・ロイターGFMS社の統計)。今後採掘される金の量は、「50mプール1杯分」とも言われており、金はそれだけ貴重な資源だ。希少性も相まって資産価値を高める要因になっている。
では、以下では、なぜ「100g以下」の金取引が注目を集めているのかを詳しく見ていこう。
■きっかけは平成23年度の税制改正
元々、金投資はその購入履歴が税務署に捕捉されないというのが魅力の一つだった。金は、体積が小さく高価なため、現金と同様金庫に入れておけば、誰にもその存在を気づかれずに保有することができたからだ。
しかし、平成23年度の税制改正で創設された「金地金等の譲渡の対価の支払調書制度」によってそれが一変した。この制度は、平成24年1月1日以降、金地金・プラチナ地金などの売却額が1日に200万円を超える場合には、販売業者が「支払調書」を税務署に提出しなければならないというもの。この支払調書には、住所、氏名、金のグラム数、売却額、売却日を記載する必要があるため、誰がどれくらい金を売却したのか税務署に筒抜けになってしまうというわけだ。
金を売却した場合の利益は「譲渡所得」となるが、以下の算式のとおり、50万円の基礎控除があるため、10年前くらいにはほとんど課税されることはなかった。
●所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)
(売却代金-(取得価額+売却費用)-50万円)×1/2
●所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)
(売却代金-(取得価額+売却費用)-50万円)
■ここ10年で金価格が4倍に高騰
しかし金価格は、ここ10年で高騰してきた。2004年に1グラムあたり1472円(年平均)だったものが、昨年の2014年には4340円と金の価格が4倍も上昇してきたため、金の売却によって多額の利益を得る人が出てきた。本来であれば、金の売却により50万円以上の利益が出た場合には、確定申告が必要になるのだが、多額の利益を得ておきながら、確定申告をしない人が相次いだことから、税の不公平感が高まっていた。
そこで、所得税法を改正して、売却額が1日に200万円を超える場合には、販売会社から税務署に取引内容を報告させることにしたのである。
こうした動きを受けて、販売店側は、顧客から1キロの金の延べ板を預かって溶かし、100グラムの延べ板10枚に小分けして手数料を得るビジネスを提供するようになった。つまり、1gあたり4000円を超えると、500gで200万円を超えてしまうので、1回の売却額が40万円程度で済む100g単位にし、売却益を非課税枠に収めやすくなるというわけだ。
また、売却益の非課税以外の目的を持つ人もいるようだ。金を小分けにし、子や配偶者に資産を渡す際にかかる相続税や贈与税を節税するというもの。小分けした金のバーを、1人につき年間1~2本ずつ渡していけば、税金がかからずに資産の譲渡ができ、小分け手数料以上の節税効果があるというわけだ。
■100g以下の金取引が絶対安全ではない?
もっとも、100g単位で金の取引をしていれば、税務署に絶対捕捉されないのかといえば、そんなことはない。販売業者に税務署の調査が入れば、小口での金の売買を繰り返している人は把握されてしまうからだ。さらに、将来的に、マイナンバー制度の導入により、金投資も紐づけられるようになれば、逃れることはできなくなるだろう。
また、課税の「95%ルール」に注意したい。購入にあたっては、購入した事実を証明する書類をきちっと保管しておくことが大事である。というのも、譲渡所得の計算は、売却代金から取得価格と売却費用を控除することができるのだが、購入価格を証明できないと、売却価格の95%が利益とみなされてしまうからだ。つまり、金を100万円で売却した場合、95万円が利益とみなされてしまう。
■金投資5つのポイント
以上を踏まえ、金投資を行う際のポイントをまとめると、①支払調書の対象にならないよう細分化して購入することは有効であるが、細分化したことによって、手数料が発生しないか確認すること、②金購入を証明する書類を保存しておくこと、③譲渡所得の構造から、年間利益を50万円未満にできないか検討すること、④所有期間が5年を経過すると税金が安くなるので、5年以上経過しているか確認すること、⑤総合課税なので、できるだけ税率が低い年度に売却すること、などが挙げられる。
金の魅力は何といっても普遍性にある。株や債券は会社の倒産によって紙切れになってしまうし、現金もインフレにより価値がなくなってしまうことがある。それに対して、金は価値の変動はあるものの、現物で持っている限り、一定の資産価値を持ち続ける。さらに、その美しさから、所有している喜びもある。その意味で、ポートフォリオの1つとして組み込むにはとてもよい資産だと言える。(ZUUonline編集部)
金は、その美しさから宝飾品として利用されることはもちろん、かつては、通貨として用いられたように、資産としての価値も有している。単に美しいというだけでなく、金属としても非常に優れた性質を持っている。
金の総生産量は、2014年末時点で18万3600トンとされている(トムソン・ロイターGFMS社の統計)。今後採掘される金の量は、「50mプール1杯分」とも言われており、金はそれだけ貴重な資源だ。希少性も相まって資産価値を高める要因になっている。
では、以下では、なぜ「100g以下」の金取引が注目を集めているのかを詳しく見ていこう。
■きっかけは平成23年度の税制改正
元々、金投資はその購入履歴が税務署に捕捉されないというのが魅力の一つだった。金は、体積が小さく高価なため、現金と同様金庫に入れておけば、誰にもその存在を気づかれずに保有することができたからだ。
しかし、平成23年度の税制改正で創設された「金地金等の譲渡の対価の支払調書制度」によってそれが一変した。この制度は、平成24年1月1日以降、金地金・プラチナ地金などの売却額が1日に200万円を超える場合には、販売業者が「支払調書」を税務署に提出しなければならないというもの。この支払調書には、住所、氏名、金のグラム数、売却額、売却日を記載する必要があるため、誰がどれくらい金を売却したのか税務署に筒抜けになってしまうというわけだ。
金を売却した場合の利益は「譲渡所得」となるが、以下の算式のとおり、50万円の基礎控除があるため、10年前くらいにはほとんど課税されることはなかった。
●所有期間が5年を超える場合(長期譲渡所得)
(売却代金-(取得価額+売却費用)-50万円)×1/2
●所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)
(売却代金-(取得価額+売却費用)-50万円)
■ここ10年で金価格が4倍に高騰
しかし金価格は、ここ10年で高騰してきた。2004年に1グラムあたり1472円(年平均)だったものが、昨年の2014年には4340円と金の価格が4倍も上昇してきたため、金の売却によって多額の利益を得る人が出てきた。本来であれば、金の売却により50万円以上の利益が出た場合には、確定申告が必要になるのだが、多額の利益を得ておきながら、確定申告をしない人が相次いだことから、税の不公平感が高まっていた。
そこで、所得税法を改正して、売却額が1日に200万円を超える場合には、販売会社から税務署に取引内容を報告させることにしたのである。
こうした動きを受けて、販売店側は、顧客から1キロの金の延べ板を預かって溶かし、100グラムの延べ板10枚に小分けして手数料を得るビジネスを提供するようになった。つまり、1gあたり4000円を超えると、500gで200万円を超えてしまうので、1回の売却額が40万円程度で済む100g単位にし、売却益を非課税枠に収めやすくなるというわけだ。
また、売却益の非課税以外の目的を持つ人もいるようだ。金を小分けにし、子や配偶者に資産を渡す際にかかる相続税や贈与税を節税するというもの。小分けした金のバーを、1人につき年間1~2本ずつ渡していけば、税金がかからずに資産の譲渡ができ、小分け手数料以上の節税効果があるというわけだ。
■100g以下の金取引が絶対安全ではない?
もっとも、100g単位で金の取引をしていれば、税務署に絶対捕捉されないのかといえば、そんなことはない。販売業者に税務署の調査が入れば、小口での金の売買を繰り返している人は把握されてしまうからだ。さらに、将来的に、マイナンバー制度の導入により、金投資も紐づけられるようになれば、逃れることはできなくなるだろう。
また、課税の「95%ルール」に注意したい。購入にあたっては、購入した事実を証明する書類をきちっと保管しておくことが大事である。というのも、譲渡所得の計算は、売却代金から取得価格と売却費用を控除することができるのだが、購入価格を証明できないと、売却価格の95%が利益とみなされてしまうからだ。つまり、金を100万円で売却した場合、95万円が利益とみなされてしまう。
■金投資5つのポイント
以上を踏まえ、金投資を行う際のポイントをまとめると、①支払調書の対象にならないよう細分化して購入することは有効であるが、細分化したことによって、手数料が発生しないか確認すること、②金購入を証明する書類を保存しておくこと、③譲渡所得の構造から、年間利益を50万円未満にできないか検討すること、④所有期間が5年を経過すると税金が安くなるので、5年以上経過しているか確認すること、⑤総合課税なので、できるだけ税率が低い年度に売却すること、などが挙げられる。
金の魅力は何といっても普遍性にある。株や債券は会社の倒産によって紙切れになってしまうし、現金もインフレにより価値がなくなってしまうことがある。それに対して、金は価値の変動はあるものの、現物で持っている限り、一定の資産価値を持ち続ける。さらに、その美しさから、所有している喜びもある。その意味で、ポートフォリオの1つとして組み込むにはとてもよい資産だと言える。(ZUUonline編集部)