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10年後を予測!これから伸びる業界、沈む業界

2019年08月30日 07時29分58秒 | お役立ち情報
■あなたの仕事・業界は大丈夫なのか?

少子高齢化、AIの発達により、日本社会は大きな転換点を迎えている。このまま働いていて、自分の会社・仕事は大丈夫なのかと不安に思う方もいるだろう。経済アナリストの中原圭介氏とITアナリストの長谷佳明氏に業界予測をしてもらった。

■これからの仕事はどうなるのか

スキルを複数組み合わせて、付加価値を高めよう

技術の進歩が著しい時代においては、1つのスキルだけで最前線で働き続けるのは難しい。色々なスキルを身につけて、状況に合わせて職を変えていく働き方が一般的になるだろう。以前は1つのスキルを身につけるのに10年以上かかったが、今はAIと組み合わせれば3年ほどで取得できる。スキルの組み合わせで自分自身の付加価値を高めていくことが大切だ。(中原氏)

これまではコンピュータで代替することが難しく、比較的高収入を得られていたホワイトカラーの業務が、AIやロボットで代替可能になっていく。ただし、すべての業務がAIに置き換わるのではなく、人とAIがそれぞれ得意な領域を担当しながら、生産性や品質を高める方向に向かっていくだろう。また、技術的には代替可能でも、企業の規模によっては、AI導入のための投資が可能な企業とそこまでの余裕がない企業があるため、業務がAIに完全に置き換わると一概には言えないところもある。(長谷氏)

■自動車・製造

電気自動車の普及・ロボットの自律化で人員削減の厳しい時代へ

製造業が目指す究極の姿は、自動化の先にある「無人化」である。つまり、製造業のような比較的賃金水準の高い職業ほど、雇用が失われていくことになる。比較的安定していた自動車業界も例外ではなく、部品が従来の3分の1で済む電気自動車が普及すれば、部品メーカーは今ほどいらなくなる。シェアリングの流れも相まって、20年後には国内販売台数が2割減ると予想されている。自動車を含めた製造業には厳しい時代が訪れる。(中原氏)

製造ラインのロボットは、決められた作業を高速反復する「自動化」から、20年後には、状況に応じて作業できる「自律化」に到達すると予想される。つまり、我々が想像する“ロボット” に限りなく近づいていく。これは、従来の技術や設備が負の遺産になるくらいのインパクトをもたらすだろう。自動車に関しては、自動運転レベル4(高速道路など限定された領域での自動運転)が実現されたときが、自動運転車の普及の転換点になる。(長谷氏)

■農林水産

大規模農場でも農作物管理が容易になり、農業がビジネスパーソンの仕事になる?

日本の農業が生き残るためには、規制緩和が大きな課題となっている。個々の農家が細々とやっていても海外には勝てない。企業が株式の半分以上を持てるよう規制緩和を進めていくべき。大企業が農地を集約して大規模化できれば、AIによる自動化で海外に負けない競争力を持つことができるし、ビジネスパーソンとして農業に従事する人を雇うことができる。規制緩和が進めば、農業はむしろこれから伸びしろがある分野だ。(中原氏)

AIとロボットを組み合わせることで、例えば畑にドローンを飛ばして作物の育成状況を画像認識で確認したり、肥料や水の量の調整にAI技術を活用したりすることが一般的になる。つまり、個人農家による人の手を介した細やかな農業が、大規模農場でも同じように実現されていくと考えられる。また、AIの活用により、これまで高齢農家の経験に頼っていた農業技術の取得や進化のスピードも格段に早まるだろう。(長谷氏)

■金融

審査業務もAIが判断。顧客データを持つ異業種がライバルに

銀行では、事務作業の自動化や、窓口やコールセンターでのAI活用などで人員削減がさらに進んでいく。また、アマゾンや楽天など膨大なデータを保有する企業が、データを活用した信用調査をベースに融資事業を始めており、これら異業種との競争も激しくなっていく。こうした中、競争力に乏しい地方銀行は、今の3分の1程度に減るという予測もある。製造業と同様、ここでも賃金水準が高い人たちが削減されていくだろう。(中原氏)

審査業務においては、従来はベテラン行員が持つ経験から判断していたが、今後はAIがデータにより審査して、人は結果をチェックするだけでよくなるので、人員は限りなくゼロに近づいていく。また、すでに中国で始まっている信用スコア(個人の日々のふるまいや公開プロフィールなどから信用度を数値化)の活用が日本でも広がっていけば、データを持つ企業が金融では有利になる。競争は異業種にも広がり、大手銀行といえども盤石ではない。(長谷氏)

■IT

システム構築さえもAIが代替。エンジニアが淘汰される時代へ

「データが金脈」というけれど、今後様々な企業がデータを持つようになれば、同じ土俵で戦わなければならなくなる。データで儲けるビジネスモデルの優位性は、10年も続かないのではないか。また、ソフトバンクをはじめIT大手の投資銀行化も進んでいる。今のアメリカの若い起業家は、IT大手に買収されることを目標にしているというが、それでは先が見えてしまって、イノベーションは育たないのではないか。IT大手はあまりにも肥大しすぎた。今後、IT大手を分割すべきという議論が出てくるかもしれない。(中原氏)

ユーザーに対して音声認識や画像認識を使ったサービスを提供するだけでなく、情報システムの構築においても、画面デザインやテストなどの作業をAIが代替する時代が近い将来には訪れる。そうなれば、高度なAI技術を持つIT企業だけが生き残り、労働集約的な人月単位のITビジネスは立ち行かなくなる。付加価値の低いエンジニアは淘汰される可能性がある。(長谷氏)

■運輸

遠隔操作の「無人タクシー」が主流に。宅配は一部作業を残して自動化

タクシーは、自動運転や遠隔操作による「無人タクシー」の時代に向かうだろう。自動運転か、遠隔操作か、併用型になるかは、これから技術や法律がどうなるかによっても変わってくる。遠隔操作の場合、タクシー運転手はオフィス勤務が基本になる。自動運転になれば雇用が減らせるため、経営者は自動運転を目指したいはずだ。タクシーの自動運転を実現するには、規制緩和が不可欠。また、自動運転に必要なデータで先行しているグーグルにどう追いつくかもカギとなる。(中原氏)

宅配業は、高速道路上の自動運転が法整備も含めて可能になれば、ドライバーは今ほどいらなくなる。10年のスパンでみればドライバー不足は解消されていく。一方、荷物を顧客に届けるラストワンマイルについては、完全自動化は難しいと考える。倉庫内も自動化が進み、出荷作業の人員はかなり減ってきている。ただし、棚から荷物を取り出す作業については、荷物の重さや堅さのような特性を判断しながらつかむ高度なロボットハンドの実現が難しいため、人手に頼っているのが現状。だが、それも10年以内には自動化されるだろう。(長谷氏)

■建設業

作業効率化が大幅に進む。今後は空き家活用がカギに

土木分野は、IOT(モノのインターネット)化による大幅な効率化がカギとなる。すでに大手ゼネコンでは、パソコンからの遠隔操作で建機を動かす実証実験を行なっている。将来は、人の手を介してしかできない一部の仕事しか残らなくなるだろう。住宅建設は人口が減れば尻すぼみになり、代わりに増えていくのが空き家である。増えていく空き家をリノベーションしてどう活用していくのかが今後の大きなテーマになる。(中原氏)

これまで高度な情報システムの活用が遅れていた業界だが、近年は現場の測量技術が発達し、作業の効率化が進んでいる。この分野で先行するのがコマツだ。従来はアナログによる測量が行なわれていたが、今ではドローンを使った高度なデジタル測量が可能になった。例えば、画像認識技術を使って土砂の量を測り、運搬に必要なトラックの台数を推測することもできる。高齢化により懸念されている人手不足も、現場の無駄がなくなれば、いずれ解消されていく。(長谷氏)

■商社

「オルタナティブデータ」がカギ。データ活用で、目利き力に差が出る

商社は、もはや商社というより、投資銀行と化している。海外の鉱山や石油資源、食糧などの利権を買い漁り、そこから利益を得るというビジネスモデルだ。つまり、ライバルはメガバンクである。それぞれの分野でメガバンクと争っていくことになる。(中原氏)

商社の投資ビジネスで重要なのは目利きであり、他社よりも優位性のある情報を収集できるかどうかが勝敗を分ける。そこで今、注目されているのが「オルタナティブデータ」だ。これまで取引の指標として活用されてこなかったデータのことで、SNS上の投稿や衛星写真などが含まれる。これらのデータをAI技術で解析することで、経済状況など、様々なことが把握できるようになった。例えば、スーパーマーケットの駐車場の衛星写真を撮影し、駐車されているクルマの台数の変化から、その店の売り上げ状況の変化を知ることもできる。今後は、従来型の情報に加え、オルタナティブデータをいかに投資ビジネスに活用できるかが重要になってくる。(長谷氏)

■教育

通信型、個人最適化が進む。しかし、教師の存在はなくならない

教育は効率化の余地が大きい分野。学習塾については、東進ハイスクールが行なっているような映像配信システムを導入し、コスト競争力を強化する企業が増えていく。学校教育についても、自宅でタブレットを活用した通信教育が可能になれば、通学が不便な地域に住む子供や不登校の子供にも、学習の機会を提供することができる。コストや利便性を考えれば、ITを活用した教育に向かわざるを得ないが、どれだけ規制緩和できるかにもよる。(中原氏)

AIを活用し、個人の能力に合わせて教育カリキュラムを作るアダプティブラーニングが数年前から始まっており、今後もこの分野が大きく進化していくと予想される。とは言っても、教育は単純に個人への最適化がなされればいいというものではなく、精神面のサポートも含めてその人に寄り添っていくことが必要不可欠である。教師のサポート役としてAIは必須になっていくが、教師の存在自体は今後もなくならない。(長谷氏)

■公務員・士業

会計士、税理士、弁理士は厳しい。付加価値をつける工夫が必須

士業といえども、機械化によって業務の大半が代替可能になる流れは避けられない。最も機械化されやすいのは、会計士、税理士、弁理士。今までと同じ仕事のやり方では生き残れないので、顧客満足度が高まるよう付加価値を高めていく必要がある。例えば弁理士なら、特許を使ったビジネスを提案できるようコンサルティングの知識を身につけたり、コンサルティング会社と協業したりすることが求められる。士業の世界でも淘汰が始まる。(中原氏)

定型的な入力作業はRPA(ロボットによる業務自動化)によって自動化され、付加価値の低い仕事は急速に機械に代替されていく。ただし、弁護士の仕事が完全にAIに置き換わることはなく、判例の抽出などでAIが弁護士の仕事をサポートしていく形となる。公務員は、文書仕事の多さから本来の仕事に時間が割けていないのが現状であり、自動化によって作業効率が高まれば、課題解決や政策立案など付加価値の高い仕事にシフトしていけるようになる。(長谷氏)

■医療

医師の仕事の7割は機械化。診断時間の大幅短縮で診断料が下がる

早ければ2020年代後半には、病気の診断や薬の投与、手術など医師の仕事の7割程度をAIやロボットで補完できるようになり、医師はAIの判断を確認するだけでよくなる。まずは都内でAI導入が進むので、供給過剰となった医師が地方へ向かえば、地方の医師不足解消に一役買うことができそうだ。創薬の分野でも、2020年代後半にはAIによる画期的な新薬の誕生が期待できる。開発にかかる費用圧縮と時間短縮が可能になるので、ベンチャー企業の参入も増えていく。(中原氏)

医師の仕事をサポートする形でAIが活用されていく。例えば画像診断では、膨大な数のMRI・CT画像を1枚ずつ見る代わりに、AIにあらかじめ問題箇所を抽出させ、診断の抜け漏れを減らせる。また、AI技術による診断機械の高速化にも注目したい。海外では、スキャンの荒いMRI画像から高精細な画像を生成する技術開発が進められていて、診断時間は約10分の1にまで短縮される可能性がある。そうなれば診断コストも下がり、誰でもMRIを気軽に使えるようになる。(長谷氏)

■マスメディア

テレビ局はもはや不動産業?AI記者に仕事を奪われる恐れも

新聞や雑誌は、市場の縮小に伴い今後も部数が減り続ける。オンラインメディアで補うのは難しいし、ネットには色々な企業が参入しやすいため、薄利多売競争に陥りやすい。コンテンツの付加価値を高めることが打開策になるが、残念ながら、読者の喜ぶような味のある記事を書ける優秀な記者が減ってきている。テレビも近年は付加価値の高いコンテンツが減り、本業の地上波よりも不動産業で稼いでいるのが実情。マスメディアは全体的にシビアな状況になっていくだろう。(中原氏)

すでにAI化が進んでいる分野。特にネット広告は、閲覧する人のプロファイルをもとに広告が最適配信されるなど、ほぼAI化が実現している。コンテンツ作成の領域でも、スポーツ速報や決算速報など定型的な文章はすでにAIが書いている。また、ゼロから文章を作成する場面でも、海外では数年前からAI記者が登場。人が取材して集めた情報をAIが集約したり、決められた取材項目をチャットボットが取材して文章化したりするといった事例が出始めている。(長谷氏)

■食品

海外市場を視野に入れる必要あり。調理ロボよりもAIレシピが先行中

日本はこれから人口減と高齢化で胃袋の数が減っていくので、国内需要の減少を海外でどう補うかが重要な視点になる。安全性の面で信頼されている日本の農産物は、海外での需要が高い。ただし、輸出のための輸送手段や鮮度を保つ技術が発展途上なので、その辺をどうクリアしていくかは課題。また、外需を取り込んで国内の雇用を増やしていくには、企業による大規模な農場運営を可能にする規制緩和も同時に進めていく必要がある。(中原氏)

外食店舗で調理ロボットが活躍するまでには、まだしばらく時間がかかる。倉庫内の自動化の話と同じで、人間の手の動きを再現する技術がネックになっている。一方、献立やレシピの考案においては、人間が思いつかない斬新なアイデアがAIによって生まれている。まずは調理より献立やレシピ考案でのAI活用が進んでいくと考えられる。また、注文を取るなど簡易な接客作業はAIが担うのが一般的になっていくだろう。(長谷氏)

■エネルギー

発展には規制緩和が必要。「分散型電源化」が進む

先進国では原発を増やしにくい状況にあるため、天然ガスなどを使った火力発電と再生可能エネルギーの混合でやっていくしかない。日本では、再生可能エネルギーの固定買取制度の改正により買取価格が大幅に引き下げられたため、普及の伸びが止まる可能性が高い。これからの課題はエネルギーの地産地消だが、そのためには電力事業の規制緩和をどれだけ進められるかがキーポイントだ。大手電力会社の既得権益をなくし、地方の新電力会社が効率的に電力を供給できるシステムにしていく必要がある。(中原氏)

キーワードは「分散型電源」。これは、都市近郊の小型発電所や一般の建物に設置された発電装置や蓄電池などをネットワークで結び、従来の火力発電などと同じ電力効果を生む仕組みのこと。今後、分散電源化を進めていくうえで、AIによるシステム制御機能が不可欠になる。企業側も太陽光発電パネルや蓄電装置を売るだけでなく、システム制御の仕組みにまで踏み込み、価値を生み出していく。そうした動きが広がっていくのではないか。(長谷氏)

■介護

現場作業は劇的に効率化するが地方の小規模事業所は衰退

人手に頼ってきた作業が自動化・機械化され、介護現場の効率化が進む。ただし、投資できる企業だけが生き残り、地方の小さな企業は淘汰されていくだろう。4月から施行された改正入国管理法は、まさにその流れを加速させそうだ。今回、外国人労働者が事業所を選べるようになった。彼らは当然、時給の高い大都市圏の事業所を選ぶだろう。大都市圏の大手事業所は雇用を確保できる一方で、地方の小規模事業所は人手不足が続く。潰れる事業所も出てくるだろう。(中原氏)

見守りセンサーの高度化により、現場作業の効率化が期待されている。最近は、スマートスピーカーなどを使って、遠方で暮らす高齢の家族と会話する機会も増えている。そうした会話の内容から病気の兆候を捉え、要介護者を減らしていくためのAI活用も広がっていくだろう。また、今はまだ大型で脱着しにくい介護アシストスーツも、高齢化社会でニーズがある以上、将来的には服と同じくらいの薄さと軽さになるはず。そうなれば普及が進み、介護現場の助けになる。(長谷氏)

■新しく生まれる職業、マスメディア

データサイエンティストとマッチングサービスが増える?

今後10年で考えれば、データサイエンティストは増えるだろう。需要がひっ迫しているため待遇もいい。ただし、それ以降は供給が満たされてくるので、ずっと成長し続ける職業だとは考えていない。AI活用に出遅れた企業が淘汰され、AIを使いこなす企業だけが生き残ると、次の次元で新たな競争が始まる。その競争に勝つための新たな職業が生まれるだろう。(中原氏)

最近新たに生まれた業種にマッチングサービスがある。持つ人と持たない人のアンバランスを調整する仕組みは、AIと相性がいいので、マッチング系のビジネスは今後も生まれるだろう。ただし、基本的には、既存の業界が別の形に発展していく姿が主流だと考えている。例えば、建設業がAIを活用した新たな建設業に脱皮していくイメージだ。単なる効率化ではなく、別のサービスと組み合わせたり、サービスを高度化させたりして、新しい形にビジネスを発展させていく企業が10年先にも生き残る企業だろう。(長谷氏)

中原圭介(なかはら・けいすけ)

経済アナリスト

1970年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。経営・金融のコンサルタント会社、アセットベストパートナーズ㈱の経営アドバイザー。企業・金融機関への提言、執筆・セミナーで経営教育・経済教育の普及に従事。幅広い視点から経済や消費の動向を分析し、その予測の正確さには定評がある。『中原圭介の経済はこう動く 2016年版』(東洋経済新報社)など著書多数。

長谷佳明(ながや・よしあき)

野村総合研究所 上級研究員/ITアナリスト

同志社大学大学院修士課程修了後、外資系ソフトウェア企業のコンサルタントを経て、2014年に㈱野村総合研究所入社。現在は、ITアナリストとして、先進的なIT技術や萌芽事例の調査、コンサルティングを中心に活躍している。古明地正俊氏との共著に『AI(人工知能)まるわかり』(日経文庫)がある。(『THE21オンライン』2019年07月22日 公開)
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