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「急いで金持ちになろうとしてはいけない」伝説の投資家バフェットが繰り返しそう説くワケ

2022年02月09日 06時59分09秒 | 株式

投資で成功するには、どうすればいいのか。10兆円の資産を築いた投資家ウォーレン・バフェット氏は「短期間に急いで金持ちになろうとしてはいけない。それよりも金持ちであり続けることのほうが重要だ」という。そんなバフェット氏の卓越した投資哲学とは――。

※本稿は、桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

急いで金持ちになろうとするなかれ

投資を行う以上、リスクと無縁ではいられません。しかし、そんな世界で既に80年近くも投資を行いながら、バフェットは毎年、着実に成果を上げています。

バフェットの投資原則は「損をしない」ことであり、「この原則を決して忘れない」ことです。そのうえで、短期間で急いで金持ちになろうとするのではなく、「ゲット・リッチ、ステイ・リッチ(豊かになり、その後も長期間豊かであり続けること)」(『ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀』)を信条としています。

ソロモン・ブラザーズ時代、その後問題を引き起こすチーム「アーブ・ボーイズ(裁定取引組)」をつくり、やがて暫定会長となったバフェットによって引導を渡されたジョン・メリウェザーが1994年、ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)を立ち上げました。資本の25倍のレバレッジを使って取引を重ねることで利益を生み、損失は最大でも資産の20%というのがメリウェザーの計画でした。

説明を受けたバフェットとチャーリー・マンガーは「頭のいい連中だ」と感じましたが、複雑すぎることと、レバレッジに疑いを抱き、参加を躊躇(ちゅうちょ)しました。しかし、ソロモンで素晴らしい実績を上げていたメリウェザーを信頼して12億5000万ドルもの資産が集まり、史上最大のヘッジファンドが誕生しました。

3年で投資家の金は4倍に増え、すべては順調に見えましたが、98年にロシアが対外債務の支払い停止を宣言したことで世界中の金融市場がガタガタになり、LTCMもほんの数日で資本の半分を失ってしまいました。

「最後にゼロをかければゼロ」

慌てたLTCMのエリック・ローゼンフェルドがバフェットに助けを求めましたが、既に手遅れでした。バフェットはIQ160を超える十数人がいて、みんなの経験年数を足せば250年にもなる彼らが巨額のレバレッジを使っていたことに驚きました。バフェットはこういいました。

「本当に頭のいい人たちが、これまでに何人も痛い目に遭いながら学んできたことがあります。それは、目を見張るような数字がずらりと並んでいても、最後にゼロをかければゼロになってしまうということです」(『バフェットの投資原則』)

投資の世界には、絶頂期と破産を繰り返したジェシー・リバモアのように「最後にゼロをかければゼロになる」を地で行く運命をたどった人もたくさんいますが、バフェットがそうならなかったのはリスクとの上手な付き合い方を熟知し、リスクを最小にしながら成果を上げ続けてきたからなのです。

リスクと上手に付き合うための「安全域」という考え

バフェットは「バリュー投資の父」と呼ばれる恩師、ベンジャミン・グレアムの書いた本を何度も読み、ほとんど暗記をしていたほどの熱心な読者でした。しかし、実際の投資においてはグレアムのやり方すべてをそのまま無批判に実行したわけではなく、自分の頭で考えて守るべきものとそうでないものを取捨選択しているのも、注目すべき点です。

例えば、リスクを軽減するためとはいえ、行き過ぎた分散投資については非常に早い時期から意味のないものとして無視しています。一方、(1)株券ではなく事業を買う、(2)価格と価値の差を見極める、(3)安全域を持つ――といった考え方は忠実に実行しています。

リスクと上手に付き合ううえで欠かせないのが「安全域」の考え方です。安全域というのは、「現在の株価と企業の本質的価値との差額の領域」のことです。

安全域の考案者はグレアムです。グレアムは、短期的な株価は一種の人気投票のようなものであり、必ずしも正確な価値を反映するとはいえず、ゆえに短期的な株価は読むことはできないものの、長期的には株価は本来の価値と等しくなっていくという考えの下、割安株に資金を投入するバリュー投資という方法を実践していました。これが「安全域」の考え方です。

企業価値を算出できる分野に投資

バフェットはこの「安全域」を常に意識しながら投資をしています。株価というのは、先ほども述べたように常に適正な価格になっているとは限りません。企業が持つ価値以上に過大評価されることもあれば、企業価値は高いにもかかわらず、さまざまな要因から驚くほど株価が低迷することもあります。

結果、その企業の株価が低迷し、企業価値と株価が大きく乖離(かいり)したときがバフェットにとっては投資の最大のチャンスであり、その段階で投資を行えば投資の持つリスクを低く抑えることができるのです。

バフェットは安全域の良い例として先述したようにワシントン・ポストを挙げています。1973年当時、ワシントン・ポストの価格(時価総額)は8000万ドル、それに対して価値(純資産)は4億ドルを超えていました。バフェットはこう考えました。「価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの」(『バフェットの投資原則』)

企業価値を算出するための方法は、①コストアプローチ(企業が持つ資産に基づいた算出方法)、②インカムアプローチ(キャッシュフローに基づいた算出方法)——といった手法がありますが、いずれにしても自分が投資しようとする企業について、その企業価値をおおざっぱにでもつかむことが安全域を知るためのポイントとなります。

バフェットが「能力の輪」を重視するのは、こうした企業価値について自分がきちんと算出できる分野であることが大切と考えているからです。

1060万ドルの投資が1億4000万ドルに

このとき、バフェットはワシントン・ポストのすべてを買いこそしなかったものの、8000万ドルを支払えば、4億ドルもの価値を手に入れられるわけですから、これほどリスクのない買い物はありませんでした。

結果、このときにバフェットが支払った1060万ドルがどうなったでしょうか。

10年余りたった1984年、その価値は1億4000万ドル(『バフェットの投資原則』)に達したとして、バフェットはワシントン・ポストの社主キャサリン・グレアムにお礼の手紙を出しています。

参考までに、同様の投資を他の新聞社に行ったと仮定すると、ダウ・ジョーンズなら5000万ドル、ニューヨーク・タイムズなら6000万ドル、タイムズ・ミラーなら4000万ドルになったといいますから、支払う価格は同じでも、その企業が持つ価値によって10年余りでこれほどの差が生じることになるのです。

企業の「価格」より「価値」に注目せよ

バフェットはこう述べています。「価値が8300万ドルの事業を8000万ドルで買おうとしてはいけません。大きな余裕をみることが肝要なのです。3万ポンドの負荷に耐えると業者が主張する橋が建造されたとしても、その橋を走行するであろうトラックはせいぜい1万ポンドです。これと同じ原則が投資にも当てはまるのです」(ベンジャミン・グレアムの著書『賢明なる投資家』に補遺として収録された、「グレアム・ドッド村のスーパー投資家たち」より)

投資の世界で多くの人が気にするのは株価、つまり「価格」の変動です。一方で、個々の企業の持つ「価値」について正確につかもうとする人はあまりいません。

「バリュー投資はいまだかつて流行を見せたことがない」(上記補遺より)はバフェットの説ですが、バフェット自身は「価格」ではなく「価値」に注目することで莫大な富を手にすることができたのです。

バフェットにもあった失敗体験

投資におけるリスクを抑えるためには「価格と価値の差」を冷静に見極めることが重要であり、「十分な安全域」を確保しなさいというのがバフェットの考え方です。では、企業の価値よりも価格が低ければそれでいいのかというと、もちろんそうではありません。

バフェットは「世界一の投資家」という評価を得ていますが、先述したように常に成功し続けたわけではありません。中でもバークシャー・ハザウェイの経営権の取得は、バフェットの失敗の歴史の中でも上位に来る失敗といえます。

1960年代初めのバフェットは、まだグレアムの「シケモク買い」「バーゲン株買い」主義に強くとらわれており、そこで出会った繊維会社バークシャー・ハザウェイを見て、利益が出ない倒産しそうな会社ではあるものの、企業価値よりも株価がはるかに安いため、「安いし、心底欲しい」と思ったといいます。

安くても「湿ったシケモク」は買うな

1965年、バフェットは「ひと吸い分だけ残っているかもしれない」と信じて同社の経営権を取得したものの、実際には同社には「一服できる分は残っていなかった」のです。バフェットは何とか立て直そうと努力を続けますが、1985年についに繊維部門を閉鎖、400人の工員を解雇、機械設備一式を16万ドル余りで売却することになりました。

バフェットはこう振り返りました。「バークシャー・ハザウェイの名前を耳にしなかったら、いまごろ私はもっと裕福だっただろうね」(『スノーボール(上)』)

それ以前、バフェットはバークシャー・ハザウェイの買収について「値段は投資において決断を左右する重要な要素です。バークシャー・ハザウェイは適切な値段で買えました」(『スノーボール(上)』)と強気の姿勢を貫いていましたが、たった一服さえできない「湿ったシケモク」に多くの資金を回してしまったことは、大いにこたえたのでしょう。

事業の優位性を最重視する方針に

この20年にわたる苦い経験を経てバフェットは、経営状態は良くないが、資産に比べて株価が極端に安い企業に投資する「シケモク買い」から、株価は資産の数倍になるもののカリフォルニアではかなう相手がいないシーズ・キャンディーズのような強いブランド力を持つ企業を買収することのメリットを強く認識するようになりました。

「まずまずの企業を素晴らしい価格で買うよりも、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことの方が、はるかに良いのです」(『バフェットからの手紙』)

困難なビジネスを立て直すのは難しいものです。そんな難業に挑戦するよりも、「まずまずの価格で買える、優れた経営者がいる、優れた事業」に投資しようというわけです。

特に大切なのは、事業が優れていることです。事業に優位性がなければ、たとえ優れた経営者をもってしても成功するのは簡単ではありません。優れた経営者と優れた事業の両方がそろえばベストですが、もしどちらか一方ならバフェットは優れた事業の方を選びます。

なぜコカ・コーラ株が「理想の投資対象」なのか

バフェットの理想とする企業の一つがコカ・コーラです。こう評価しています。「これからあなたは一度だけ取引をして、その後10年間投資の世界から離れるとします。(中略)向こう10年間は投資対象を変更できません。さて、どんなものに投資しようと考えるでしょうか。(中略)私にはコカ・コーラしか思い浮かびません」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)

コカ・コーラは国際市場で成長を続け、かつリーダーの地位を維持する力もあります。今後も消費量の増加が期待できます。この地位を揺るがすなんてとてもできないとバフェットは考え、同社に積極的な投資を行ってきました。

バフェットはかつて「コカ・コーラはハムサンドイッチにも経営できる」〔著者注:コカ・コーラはハムサンドイッチが最高経営責任者(CEO)になっても儲かる、といった意味〕といったことがありますが、それはバフェットにとってまさに好ましい企業であることを意味します。なぜなら企業はいつも完璧とは限らないからです。

事実、バフェットが「株を買うなら、どんな愚か者にも経営を任せられる優れた会社の株を買いたいと思うでしょう。なぜならいつかは愚かな経営者が現れるからです」(『バフェットの株主総会』)といった通り、コカ・コーラにも愚かな経営者が現れました。

急死したロベルト・ゴイズエタの後を受けてCEOとなったダグラス・アイベスター時代、ヨーロッパで子どもの健康被害が報じられましたが、アイベスターは適切な対応ができませんでした。続くダグラス・ダフトも問題がありました。

代わって就任したネビル・イズデルの下でようやく同社は復活を遂げ、バフェットは「前にはよく、ハムサンドイッチでもコカ・コーラは経営できると、ビル・ゲイツにいったものだ」(『スノーボール(下)』)と振り返りました。バフェットは徹底して「優れた事業」を求めるのです。

---------- 桑原 晃弥(くわばら・てるや) 経済・経営ジャーナリスト 1956年、広島県生まれ。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開する。主な著書に『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)、『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)などがある。 ----------

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「10年待てないなら株を買ってはいけない」10兆円投資家バフェットがそう語ったワケ

2021年12月20日 07時07分39秒 | 株式

多くの株式投資家は「安いときに買い、高いとき売る」という行動を繰り返している。だが10兆円の資産を築いた投資家ウォーレン・バフェット氏は、株を売らず、長期保有することで知られている。彼が「10年待てないなら株を買ってはいけない」と主張する理由とは――。

※本稿は、桑原晃弥『ウォーレン・バフェットの「仕事と人生を豊かにする8つの哲学」 資産10兆円の投資家は世界をどう見ているのか』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

株式の所有期間は「永遠でも良い」

株式の所有期間は「永遠でも良い」というのがバフェットの考え方です。

バフェットの師であるベンジャミン・グレアムは「投資家は、1年程度ならば何とも思わずに持ってしまう」といっているように、株式の長期所有を推奨していました。もう1人の師匠ともいえるフィリップ・フィッシャーも、株を売る理由は、1)購入時の判断ミス、2)成功企業が失敗を経て投資価値を失う、3)もっと有望な成長株に乗り換える、の三つしかなく、本物の成長企業には「売り時など存在しない」と言い切っていました。

そしてバフェットは、2人の師以上に長期保有を理想としています。そう考えるようになった原因となる体験が二つあります。

一つは11歳で初めて株式を購入した時の体験です。1942年、小さなビジネスを続けることで120ドルを貯め込んだバフェットは、姉のドリスを誘ってシティーズ・サービスの優先株式(Preferred stock)を3株ずつ購入します。株価は38ドル25セント、3株で114ドル75セントです。

当時のバフェットは株のことも会社のこともよく知りませんでしたが、父ハワードが推奨する株というのが購入の理由でした。株価が下がった時、ドリスから連日責め立てられたバフェットは、株価が40ドルに回復した際に売り、2人合わせて5ドルの利益を手にしますが、のちに同社株は202ドルまで高騰しました。

バフェットはこの経験から、1)買った時の株価ばかりに拘泥してはいけない、2)よく考えないで慌てて小さな利益を得ようとしてはいけない――という教訓を得ています。

証券会社と投資家の利益相反というジレンマ

もう一つの体験は、大学を卒業した後、父親の証券会社でブローカーとして働いていた時のものです。バフェット自身は当時夢中になっていた保険会社ガイコのような株を長く持ち続ける方がいいと理解していましたが、それでは顧客が売買を繰り返すことで得られる手数料が入ってきません。

証券会社と顧客の利益相反というジレンマに悩んだバフェットは、のちにバフェットと顧客が運命共同体となるパートナーシップを運営するようになりますが、この時の経験を経て、バフェットは「ずっと持っているのがいい」ことを確信するようになりました。

株式投資は短期ではなく長期でものを見るというのが、バフェットの変わらぬ考え方なのです。

日々の株価の動きを全く気にしない

株の売買を行う人にとって、日々の株価の動きほど気になるものはありません。1日どころか、1時間単位、1分、1秒単位で株価の動きを追い「いつ売るか」「いつ買うか」を瞬時に判断することこそ株式投資で成功する唯一の方法であると思い込んでいる人もいるのではないでしょうか。たしかにこうしたやり方で大金を手にする人がいるのも事実です。

あるいは、そこまでではなくても、自分の所有する株の株価がどうなったかは、売る・売らないは別にして大いに気になるところです。株価が上がれば嬉しいし、下がれば自分のお金が目減りしていくようでやきもきします。そしていつ売ればいくら儲かるか、損失はいくらになるかという計算に余念がありません。これが一般的な株式投資のイメージですが、バフェットのやり方はこうした日々の株価を気にするやり方とは対極にあります。

毎日、何千と目にする株価の動きに関心を払わないどころか、こんなこともいっています。「株価の変動に着目して値幅取りをするつもりはありません。仮に、株式を購入した翌日に市場が閉鎖され、その後五年間取引が行われないという事態になっても、私はいっこうにかまいません」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)

株価の日々の上下を気にしないどころか、株の売買ができなくなってもかまわないというのがバフェットの考え方です。

短期ではなく「圧倒的長期」でものを見る

なぜ、そんなことができるのでしょうか?

理由は、1)短期ではなく長期でものを見ていることと、2)株券ではなく事業そのものに投資する、という方針を貫いているからです。

2011年夏、バフェットはアメリカの大手銀行バンク・オブ・アメリカの優先株に50億ドルを投資したものの、株価はその後も下がり続けました。そこで、「(株価が下がり続けている会社に投資したことを)後悔していませんか」と尋ねる『日経ヴェリタス』の記者にこう答えました。「長期の視点で投資しているのです。今日や明日、来月に株価が上がろうが下がろうが、私にはどうでもいいのです。バンク・オブ・アメリカが5年後、10年後にどうなるかが大切なのです」

バフェットによると、同社には解決すべき問題がいくつもあるものの、それは数カ月で解決できるようなものではなく、解決に5~10年はかかるといいます。そのためにCEOは素晴らしい仕事をしているし、問題があったとしても同社のアメリカ最大規模の預金量や事業基盤は魅力的でとても良好なのだから、目先のことに一喜一憂する必要はないというのが当時のバフェットの言い分でした。

バフェットの言葉通り、バークシャー・ハザウェイが公開している「上場株の保有上位15銘柄(2020年12月末時点)」の第2位には、今もバンク・オブ・アメリカが載っています。そして今、その保有額は実に313億ドルに達しています。

成長し続けられる企業にだけ投資する

バフェットにとって投資するに値する企業というのは、成長し続ける企業です。

そしてこの成長は「ほんの束の間の成長」ではなく、可能な限り長く続くものであることが肝心なのです。

企業は、たとえ売上が下がっていても、または伸び悩んでいる状況でも、一度限りの好決算を出すことができます。大胆なリストラを行うとか、持っている資産を売却するといった方法を使えば、株価を一時的に押し上げるくらいの利益を出すことはできます。

あるいは、ブームといっていいほどの「追い風」に乗って、売上や利益を大きく伸ばす企業もあります。たとえば、ゲーム業界のように大ヒット製品が出ることで、売上を大きく伸ばしたものの、ブームが去った途端に低迷したり、メーカーであれば大量の在庫を抱えて経営が危機に陥ったりするというのもよくあることです。

長い目で企業の実力を見る

企業が成長し続けるには、幸運だけでは無理で、優れた経営力や卓越した研究開発力といった多くの要素が欠かせません。それらがあって初めて企業は成長し続けることができるわけですが、こうした企業でさえ毎年、増収増益を続けることができるとは限りません。

時には次なる成長に向けて痛みを伴う改革を必要とすることもあれば、今回の新型コロナ禍のように企業の力だけでは対応しきれない逆境に襲われることもあります。

だからこそ、企業の成長は、1年単位で見るのではなく、より長い目で見ることが必要なのです。バフェットにとって投資すべき企業とは、パッと咲いて、パッと散る企業ではありません。長いスパンで見た時にしっかりと成長し続けるだけの力を持った企業であれば、その間に株価が上がろうが下がろうがそんなことはどうでもいいというのがバフェットの考え方なのです。

最初に惚れ込んだのは通販型の自動車保険会社

バークシャー・ハザウェイはいくつもの企業を傘下に抱えていますが、たくさんの企業群の中でバフェットが最初に投資したのが、米国第2位の自動車保険会社ガイコ(1936年創設、1996年に傘下に入る)です。

バフェットがガイコのことを初めて知ったのはコロンビア大学大学院時代のことです。きっかけは、グレアムの会社グレアム‐ニューマン・コーポレーションが同社株の大半を所有していたことでしたが、その半分以上を手放したことを知ったバフェットは「ガイコとはどういう会社だろう?」と興味を持ち、ニューヨークからワシントンD.C.まで始発列車に乗って同社を訪問しています。

そこで財務担当副社長のロリマー・デービッドソンを質問攻めにしたバフェットは、同社が当時としては革命的ともいえた「代理店を使わず、通信販売することで、自動車保険をより安く販売」していることを知り、そのビジネスが「ぜったいに成功間違いなし」と確信、周囲の反対を押し切って自分のポートフォリオの4分の3を売り払い、その代金でガイコを350株購入しています。

当時のバフェットのガイコへの入れ込みようは凄まじいもので、証券会社のブローカーとして顧客に株式を頻繁に売買させることで手数料を稼がなければならないにもかかわらず、ガイコの株を勧めて、「20年ずっと持っているのが一番いい」「失業保険の代わりにこの株を買っておくことをお勧めしますよ」というほど力を入れています。

永久に持つことさえいとわない

その後、バフェットとガイコの縁は一時的に切れますが、1975年に再びガイコに注目したバフェットは、経営危機に陥ったガイコの株を再度取得、その再建にも尽力することで、やがてバークシャー・ハザウェイの傘下に迎え入れました。初めて同社株に投資したのが1951年ですから、実に70年来の付き合いということになります。

自分がほれ込んだ企業であれば、これほど長く所有するのがバフェットのやり方です。

こうした長期保有はウォール街の住人にはなかなか受け入れがたいことですが、先述したようにバフェットはグレアムのいう1年程度どころか、永久に持つことさえいとわないという考え方をしていて、こんなことをいっています。「私たちは、企業を買うのが好きです。売るのは好きじゃありません。傘下に収めた企業との関係が一生続くことを希望しています」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』ジャネット・ロウ、ダイヤモンド社。絶版)

近年の「SPACブーム」には厳しい視線

傘下に入っている企業はもちろん、アップルのように傘下に入っていない企業も含め、バフェットが投資する企業は強い競争力を持つ優れた企業であり、その経営者も優れた人材であるというのが大前提です。

そんな優れた企業がそこそこの価格で買えるなど、そうあることではありません。だとすれば、そういう企業に出会えたなら、できるだけ長く、可能なら永久に保有し続けたいと、バフェットは考えているのです。

もし目先の利益だけを追う投機家なら、もちろんそんな必要はありません。株価が上がったり下がったりしたその瞬間を見逃すことなくぱっと買って、利益が出たらぱっと売ってしまえば、それで目的を果たしたことになります。

ましてや、最近アメリカで急増し注目されているSPAC(特別買収目的会社)の、所有や経営ではなく買収そのものを目的とし、2年で買収先が見つからなければさっさと解散するというやり方は、バフェットが最も忌み嫌うものです。報酬だけを目的とするSPACブームを「killer(破壊的影響をもたらすもの)」と表現しています。

“10年持つ気がなければ株など買うな”

もし本物の投資家でありたいのなら、次のような心構えが必要だといっています。「喜んで10年間株を持ち続ける気持ちがないのなら、たった10分でも株を持とうなどと考えるべきですらないのです」(『バフェットからの手紙』ローレンス・A・カニンガム著、増沢浩一、藤原康史、井田京子訳、パンローリング)

たとえ長く保有するつもりで投資をしたとしても、日々の株価の変動や、市場全体の動き、もっと実入りのよさそうな株の出現など投資家の気持ちを揺るがす出来事も少なくありません。株価が大きく下げれば、先々への不安から売りたくなるのも仕方のないことですし、自分が持っていない株の値段が上がれば、「こっちを売って、あっちに乗り換えた方がいいのでは」という「グッドアイデア」が閃ひらめきます。

投資の世界ではこうした株価の変動はもちろんのこと、新たな魅力的な株の出現もあります。つい売りたいとか、買い換えたいという誘惑に駆られることも少なくありませんが、そんな誘惑に駆られてあっちへふらふら、こっちへふらふらしていると、バフェットになることはできません。

本物の投資家になるためには、株を持ち続ける強さ、誘惑に打ち勝つ努力も必要であり、バフェットのような固い信念の持ち主こそが、真の成功者になることができるのです。投資に限らず、すぐに揺れ動くような信念は信念とは呼べないのです。

---------- 桑原 晃弥

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東洋経済オンライン 「1人当たり売上高どんどん増加」50社ランキング 『四季報プロ500』掲載の注目テーマを深掘り

2021年12月18日 07時43分41秒 | 株式

従業員1人当たりの売上高が伸びている会社は生産性が向上していると評価できる。従業員の1人当たり売上高が毎期上昇している銘柄をピックアップした(写真:Fast&Slow/PIXTA)

 12月30日の大納会まで、2021年の株式市場は残すところ2週間弱となった。9月14日に31年ぶり高値となる3万0795円まで上昇した日経平均株価だが、その後は上値が重い展開が続き、11月末には南アフリカで発生した新型コロナウイルスの新たな変異株への警戒感から2万7000円台まで調整した。

 マーケットはその後やや落ち着きを取り戻しているものの、アメリカでのインフレ懸念の高まりによる利上げ前倒し観測、中国の景気減速や恒大集団の債務不履行問題、半導体不足や資源価格高騰など、外部環境は不透明な状態が続いている。

31年ぶりの高値更新に高まる期待

 しかし、このような状況下でも日本企業の業績は着実に前進中だ。『会社四季報』2022年1集(新春号)の今2021年度(2021年12月期~2022年3月期が対象)の業績予想を集計したところ、前期比の経常増益率は32.1%となった。来2022年度(2022年12月期~2023年3月期が対象)は同7.6%と、連続で経常増益となる見通しだ。

 アメリカ株に比べて日本株のPER(株価収益率)水準は低く、見直しの余地も十分にある。3万円台を再び回復、31年ぶり高値の更新へ向け、2022年の相場に対する期待は高まっている。

 投資情報誌『会社四季報プロ500』では、約3800社ある上場企業から業績見通しや株価の状況、テーマ性などを考慮して選別した注目の500銘柄を掲載。四季報記者の独自業績予想や株価チャート、予想株価トレンドをはじめ、ビジュアルデータが豊富で、株式投資の初心者にもわかりやすく、ベテラン投資家は効率的な銘柄選びが可能だ。

 12月15日に発売となった最新の2022年新春号では、連続最高益やV字回復などの「好業績」銘柄や、年間の配当利回りが3%超の「高配当」銘柄に加えて、「経済再開」が追い風となる銘柄、メタバースやNFTといった市場を賑わす「新技術」の関連銘柄など、要チェックのテーマ・銘柄が目白押し。

 今回は「プロ500新春号」で取り上げた「生産性向上」のテーマの中から、5期前から直近本決算の実績まで、従業員の1人当たり売上高が毎期上昇している銘柄をピックアップ。あらたに全上場企業を対象として集計し、5期前と比較した直近決算期実績の増加額の大きさで上位50社のランキングを作成した。

 一時的な要因による押し上げではなく、毎期着実に1人当たり売上高が上昇している企業は、生産性向上の取り組みが一定の成果を上げているといえる。岸田政権も日本経済の重要課題に掲げる、生産性向上で実績をあげている企業の顔ぶれを見ていこう。

1人当たり3.6億円増の再エネ電力小売り企業

 トップは電力小売り事業を展開するイーレックス。全国に約1000社の販売代理店網を持ち、オフィスビルや工場、病院など向けに販売電力量を拡大させている。国内で5カ所のバイオマス発電所を運営するなど、再生可能エネルギーによる電力の拡販に力を入れている。

 直近決算期末となる2021年3月末時点の連結従業員数は213名で、1人当たり売上高は6.6億円。5期前となる2017年3月末時点の104名から従業員数が109名増加すると同時に、1人当たり売上高は3.6億円増加している。

 2位の任天堂は直近決算期となる2021年3月期に新型コロナ感染拡大による巣ごもりの影響でゲーム機「Nintendo Switch」が絶好調。「あつまれ どうぶつの森」などソフトのヒットも重なり、5期前と比べて1人当たり売上高は1.7億円増となった。2017年3月に発売となった「Nintendo Switch」の業績貢献が拡大していることが、1人当たりの生産性向上につながっている。

 冷凍品などの食材を販売する「業務スーパー」をFC展開する神戸物産は、1人当たり売上高が1.3億円増となり、4位にランクイン。新規出店ペースが堅調なことに加えて、テレビなどのメディアやSNSなどでの露出増で来店客が増える好循環が起きている。生産性の向上とともに、株価も5年間で約10倍となっており、株式市場でも高い注目を集めている。

 1人当たり売上高が7200万円増となり8位に入ったレーザーテックは、半導体の微細化に欠かせない最先端の露光技術である、EUV(極端紫外線)向け半導体マスク欠陥検査装置の需要増で業績が急拡大。2017年6月末時点の連結従業員数は288名で、2021年6月末時点では529名と1.8倍に増加。人員の拡充と1人当たり売上高の増加を両立している。

 レーザーテックの株価は5年間で30倍超に急上昇。ここ数年間での出世銘柄の筆頭格だ。

 世界的なハンバーガーチェーンの日本法人、日本マクドナルドホールディングスは1人当たり売上高が5期前比で3700万円上昇し、19位にランクイン。2020年12月期は新型コロナ影響で客数が減少する一方、持ち帰りやまとめ買いで客単価が急伸。デリバリー需要増も押し上げ要因となった。

 ただ、コロナ以前も業績は着実に成長しており、異物混入問題などで赤字に苦しんだ2015年度を底に売り上げ、営業利益は毎期増加傾向。その一方で、連結従業員数は2016年12月末の2239名から2020年12月末2083名と減少している。 

22期ぶりに最高純益を更新する企業も

 22位の伯東は半導体や機器の専門商社。2017年3月期末時点の連結従業員数は1294名。直近決算期末の2021年3月時点では同1238名とやや減少しているものの、売上高は1275億円から1654億円と3割増。PC、5G関連需要や新たな取引開始もあった車載向け半導体などが1人当たり売上高増に寄与している。

 勢いは足元でも継続しており、今2022年3月期は期中に通期計画を上方修正。22期振りに最高純益を更新する見通しだ。

 従業員1人当たりの生産性向上は、各企業の成長のカギを握る重要な指標の一つ。全社の売上高、利益の推移に加えて、1人当たり売上高の推移にも目を向けると、意外な有望企業が見つかることもある。ランキングの上位企業が今後の生産性向上を継続していくことができるのか、引き続き注目してみてもいいだろう。

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バフェットから全ての投資家へのアドバイス、究極の投資先は「自分」

2017年09月25日 09時33分29秒 | 株式
自分が本当に興味を持てるもの、つまり「投資」に7~8歳のころに出会うことができた私(ウォーレン・バフェット)は、幸運だった──。
地元であるネブラスカ州オマハの公立図書館に置いてあった投資関連の本は、11歳になるころまでに読破した。中には繰り返し読んだ本もあった。また、父がたまたま投資業務に携わっていたことから、土曜日に父と外で昼食を取るときや、ほかにも機会があるときにはいつでも、父の職場から読みたい本を借りることができた。
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個人投資家が夢見る「億り人」 投資スタンスやトレードの傾向を分析してわかった3つのこと。

2017年07月15日 09時22分35秒 | 株式
個人投資家なら誰もが夢見る「億り人」。彼らはいかにして億を超える資産を築き上げてきたのでしょうか。
今号では、「億り人」の投資スタンスやトレードの傾向を分析してみたいと思います。

© マネーの達人 提供

1. 安易に「億り人」の投資手法を真似てはいけない
投資で1億円以上の資産を築き上げた個人投資家の中には、デイトレードをしている人も多いと言えます。実際に、SNSで日々のトレード状況を拡散している有名投資家も多数いらっしゃいます。

結論から言うと、
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