児童心理 平成25年10月号掲載
「ポジティブ思考とは何か」
●ポジティブ心理学余話
余話から始めるのをお許しいただきたい。
心理学は、対象領域も、研究手法も、さらに心を研究する観点も実に多岐にわたっている。それは心がとらえどころのないほど多岐にわたっているのであるから、当然ではあるが、それにしてもの感はある。心理学者は、ごみ箱あさりばかりしているとのお叱りもある。
21世紀になりその多岐さにさらに一つ加わったのが、ポジティブ心理学である。1998年のアメリカ心理学会での会長・M.セリグマンの演説がその端緒を開いたのは、よく知られている。その演説ではないが、YouTube でセリングマンの自身の名演説を無料でしかも字幕付きでみることができる。(http://www.youtube.com/watch?v=PDIPdI_OEEk)。そして、たちどころに、「ポジティブ心理学とは、ポジティブに考え(思考)、気持ちを元気にして(感情)、明るく振舞う(行動)にはどうすればよいか」を研究開発する領域であることがわかる。
どうあれこれひっくりかえしてみても、ただこれだけである。なーんだ、というのが、流行好きですぐに飛びつく悪い癖のある(いや「好奇心旺盛な」と言い換えるのが大事、とポジティブ心理学は教えてくれるのだが(笑い))自分の6年前のポジティブ心理学との遭遇時のいつわらざる感想であった。
しかし、その頃、「健康・スポーツ心理学科」の立ち上げをする役割を担うこところだった。その授業科目に「ポジティブ心理学」を入れて演習を担当することになり、にわか勉強をすることになった。これがおもしろかった。授業のほうの受けは今一つだったが、おもしろついでに、「ポジティブマインド;スポーツと健康、積極的な生き方の心理学」(新曜社)なる本の監修までしてしまった。さらに、ポジティブマインド作りに役立つキーワードを幅広く80個くらい収集してそれについて解説する連載もあちこちの雑誌、動画での講義や自分のブログでやり始めてしまった(ブログでの連載は現在でも続いている。http://blog.goo.ne.jp/hkaiho)。ただ恥ずかしいので言いたくないのだが、これらの中には、いわゆる研究論文は含まれていないことは白状しておく。
いずれにしても、このポジティブ心理学のおもしろさがどこからくるのかを振りかえってみた。
一つは、話のわかりやすさである。
研究で取り上げられる構成概念のほとんどが日常用語であるし、研究の仕方ももっぱら調査法でーー後述するように、もっともその規模は驚くほど大規模で長期にわたるものが多いがーー、自分が長年フィールドとして研究してきた認知心理学、認知科学の複雑怪奇なコンセプトワークや精緻な実験の話と比べれば、とてもわかりやすくて、したがって、理解しやすい。3日で専門家になれた感じである。(笑い)
もう一つは、勉強を続け、原稿を書いたりすることが、自らの心のポジティブな変容につながったことである。
たとえば、演習や高校生対象の出前授業にポジティブ心理学の話をする定番の一つに「“ほンわかあ”40回運動」がある。“「ほ」める。「わ」らう、「か」んしゃする、「あ」いさつする”を一日40回しようというもの。
それぞれ多彩なポジティブ心理学の知見があるので、それらをまじえ実演しながらの授業になる。好評だった(と思う)が、1件だけ、生意気な高校生から「こんなことわかりきってるじゃん」とあったのにはぎゃふんだった。
いずれにしても、「ほンわかあ」40回運動を話しているうちに、自然とみずからがそれを実践することになった。そして、心がポジティブになっていく自分が気づかされた。
これまでほぼ半世紀にわたり心理学の勉強、さらに研究をしてきて、こんな経験は実ははじめてであった。ポジティブ心理学万歳という気分である。(笑い)
余話はこれくらいにして本題に入る。
「ポジティブ思考とは何か」
●ポジティブ心理学余話
余話から始めるのをお許しいただきたい。
心理学は、対象領域も、研究手法も、さらに心を研究する観点も実に多岐にわたっている。それは心がとらえどころのないほど多岐にわたっているのであるから、当然ではあるが、それにしてもの感はある。心理学者は、ごみ箱あさりばかりしているとのお叱りもある。
21世紀になりその多岐さにさらに一つ加わったのが、ポジティブ心理学である。1998年のアメリカ心理学会での会長・M.セリグマンの演説がその端緒を開いたのは、よく知られている。その演説ではないが、YouTube でセリングマンの自身の名演説を無料でしかも字幕付きでみることができる。(http://www.youtube.com/watch?v=PDIPdI_OEEk)。そして、たちどころに、「ポジティブ心理学とは、ポジティブに考え(思考)、気持ちを元気にして(感情)、明るく振舞う(行動)にはどうすればよいか」を研究開発する領域であることがわかる。
どうあれこれひっくりかえしてみても、ただこれだけである。なーんだ、というのが、流行好きですぐに飛びつく悪い癖のある(いや「好奇心旺盛な」と言い換えるのが大事、とポジティブ心理学は教えてくれるのだが(笑い))自分の6年前のポジティブ心理学との遭遇時のいつわらざる感想であった。
しかし、その頃、「健康・スポーツ心理学科」の立ち上げをする役割を担うこところだった。その授業科目に「ポジティブ心理学」を入れて演習を担当することになり、にわか勉強をすることになった。これがおもしろかった。授業のほうの受けは今一つだったが、おもしろついでに、「ポジティブマインド;スポーツと健康、積極的な生き方の心理学」(新曜社)なる本の監修までしてしまった。さらに、ポジティブマインド作りに役立つキーワードを幅広く80個くらい収集してそれについて解説する連載もあちこちの雑誌、動画での講義や自分のブログでやり始めてしまった(ブログでの連載は現在でも続いている。http://blog.goo.ne.jp/hkaiho)。ただ恥ずかしいので言いたくないのだが、これらの中には、いわゆる研究論文は含まれていないことは白状しておく。
いずれにしても、このポジティブ心理学のおもしろさがどこからくるのかを振りかえってみた。
一つは、話のわかりやすさである。
研究で取り上げられる構成概念のほとんどが日常用語であるし、研究の仕方ももっぱら調査法でーー後述するように、もっともその規模は驚くほど大規模で長期にわたるものが多いがーー、自分が長年フィールドとして研究してきた認知心理学、認知科学の複雑怪奇なコンセプトワークや精緻な実験の話と比べれば、とてもわかりやすくて、したがって、理解しやすい。3日で専門家になれた感じである。(笑い)
もう一つは、勉強を続け、原稿を書いたりすることが、自らの心のポジティブな変容につながったことである。
たとえば、演習や高校生対象の出前授業にポジティブ心理学の話をする定番の一つに「“ほンわかあ”40回運動」がある。“「ほ」める。「わ」らう、「か」んしゃする、「あ」いさつする”を一日40回しようというもの。
それぞれ多彩なポジティブ心理学の知見があるので、それらをまじえ実演しながらの授業になる。好評だった(と思う)が、1件だけ、生意気な高校生から「こんなことわかりきってるじゃん」とあったのにはぎゃふんだった。
いずれにしても、「ほンわかあ」40回運動を話しているうちに、自然とみずからがそれを実践することになった。そして、心がポジティブになっていく自分が気づかされた。
これまでほぼ半世紀にわたり心理学の勉強、さらに研究をしてきて、こんな経験は実ははじめてであった。ポジティブ心理学万歳という気分である。(笑い)
余話はこれくらいにして本題に入る。