自伝的記憶(autobiographical memory>
自伝的記憶とは、それまでの生涯を振り返って個人が再現するエピソードのことをさします。それは個人的な体験に基づく記憶であり、例えば、子どもの頃震災に罹災した、今朝何を食べたか、夏休みに旅行してどこに行ったか、などです。自伝的記憶の機能としては、自己機能、社会機能、指示機能の3つの機能が挙げられます。自己機能は人間に自己の一貫性を与えます。この機能により人は「現在まで成長質し続ける自分」を認識することができます。社会機能は、会話に自分の体験を盛り込むことで人を楽しませたり、何かを教えたりできる機能です。また、集団で同じ記憶を共有することでメンバーの親密度を高めたり、集団の動機付けが高まる効果も報告されています。指示機能は自分の態度や価値観や動機付けを再確認するための機能です。たとえば、過去の失敗から教訓を得て将来に生かす、ある経験がきっかけで将来なる職業を選択する、などです。(SH)
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・今まで生きてきた中で1番心に残っている経験は何ですか
・子どものときの思い出を教えてください。
あなたはこのような質問に答えることができますか?そのときに必要となってくるのが「自伝的記憶」です。
記憶にはいくつかの種類がありますが、このように過去から現在までの生涯を振り返って思い出される、自分自身に関する情報や出来事の記憶のことを自伝的記憶、または自分史ともいいます。これらの記憶は意図的・無意図的に関わりなく、何度となく思い起こされます。
自伝的記憶は自分とは関係ない社会的な出来事の記憶と比べると個人的な意味や強い感情を含んでいて、アイデンティティ(個性)と密接に関係しています。時間は過去から未来へと一方向に流れているけど、その時間の流れの中で私たちの心の中に生み出される過去の記憶、現在の認識、将来に関する展望は互いに影響しあっています。過去の記憶は現在の認識や将来の展望に影響を与え、現在の認識は過去の記憶、将来の展望に影響を与え、同じように将来の展望は現在の認識と過去の記憶に影響を与えているのです。(KM)