保津川下りの船頭さん

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この木なんの木、気になる木・・・‘サイカチの木’

2009-04-18 20:43:48 | 亀岡・保津川を歩く
保津川下り乗船場の上流・舟つなぎ場近くに‘サイカチ’の木があります。

このサイカチの木は雄・雌種の2本立っており、天正年間、当時の城主・明智光秀
が丹波亀山城築城の際に、保津川の氾濫で、堤防が崩れるのを防ぐ目的で
植栽されたもので、樹齢400年以上といわれれる巨木です。
聞くところによると、京都府内でもこの保津川の堤にしかない
珍しい木だそうで、府の準絶滅危惧種に指定されています。

サイカチの木は‘不老の木’と呼ばれ、樹齢を重ねるごとに根が地中深く伸び、
支根が網の様に広がり土砂をしっかり抱き込むことから、大洪水の際も堤の
決壊を防いできたといわれています。

光秀はこのサイカチの特性を知り、亀山城の最北側にあたる保津川の決壊防止
を図る目的で堤一帯にサイカチの木を植えたそうです。
今ではこの場所に2本を残すのみとなりましたが、幹にある裂けた大きな穴が
400年年以上も度重なる凄まじい大洪水に耐えてきた姿を物語っています。
その生命力に自然に生きるものの逞しさを感じます。

サイカチは木なのにマメ科の落葉樹で、幹には20~30cmの大きく鋭いトゲが
あり突進してきた洪水を緩める作用があったといわれるが、本当はどうやら
草食動物から幹を守るためのものらしいです。江戸時代には各地のお城の城内に
植栽され、忍者など隠密者の進入を防ぐ役目もしたそうです。

また、サイカチの果実といわれる莢(サヤ)は20~30cmはあり、
くねくねと捻じ曲がった形をしています。
でもこのサヤや中の種子をぬるま湯に浸し揉み込むと泡立ち、石鹸水が作れる
ことから、藩政時代は唯一洗剤としてと重宝されたようです。
当時は油ものを食べる習慣がなかったので食器洗いや着物の洗濯水、髪の毛や
体を洗う石鹸、馬を洗う石鹸まで幅広く使用されていた生活に欠かせない
重要な木でもあったようです。
今でも改良次第では‘エコ’な洗剤として可能性がありそうな話ですね。

横に伸びる枝は八方に広がり、枝に生える新葉は食用にもなり、天明の飢饉の
時は村人たちの命をつないだという史実が亀岡にも残っています。
掘り起こせばいろんなドラマがありそうな‘サイカチ’の木。

年間30万人が訪れる観光地・保津川下りの乗船場から僅かの所にあるにも
かかわらず、建物の影に隠れ訪れる人もなく、寂しく立ち並ぶ‘サイカチ’
の木ですが、保津川の歴史をひも解く時に忘れてはいけない貴重な
「保津川のシンボルツリー」といえると思います。

サイカチという名は「災難に勝つ」や「再び勝つ」など幸先のよい木
という意味で名づけられたといわれています。