保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

保津川下りの仕事に誇りを!感動の投稿。

2007-06-05 01:40:04 | 船頭の目・・・雑感・雑記
少し前の話になるが、今年4月の朝日新聞に
ある読者の投稿が載っていた。
その文の内容に、私は強い感動と
我が仕事への誇りを覚えたのだ。

その投稿文には「保津川下り」という題名がつけてあり、
保津川下りをされたある女性の体験談が書かれてあった。

その女性は2003年のゴールデンウィークに家族5人で
保津川に来られた。その中に中学3年生になる娘さんの
姿もあった。
その娘さんは何らかの事情で不登校となり、そんな娘さんの
「気分転換」も兼ねた家族旅行だった。旅行の提案は夫だった。

5月の眩しい日差しの中、船は険しい山々が切り立ち、激しい
流れが岩を噛む保津峡へと入っていった。

少女は一番前の席を勧められた。櫂を引く船頭と対面になる席だ。

向かいで櫂を引く船頭は何気に少女に声を掛けた。
「何をする事が好きや~」と。
少女はその問いに「本を読む事」と答えたという。
するとこの船頭、なにを思ったかこの様な言葉返した。

「学校で勉強するだけが全てではない!人間は一生勉強が必要」と。

その少女は今年の春、自らの体験を土台に、不登校の子供たちを
サポートする仕事に就く為、大学に進学したとあった。
当時、不登校をしていた少女が、この船頭の言葉をどの様に
受け取ったかは、母親が書いた最後の文中を読めば容易に察する事ができる。

「これからの大学4年間、あの船頭さんから教えられた様な
人生の道しるべとなる言葉に出会った時は、しっかり心に
刻んでいって欲しいと願っている」と締めくくってあった。

この投稿文を読み終えた時、私の心に激しい感動が
込み上げ、しばらく言葉を失った。
たった2時間弱だ!
私達の仕事は殆どが初対面の人と、僅か2時間弱という
短い時間を共有するだけの出会い。
その僅かな邂逅が、その人の人生を変える様な出会となるなんて!
強い感動とともに、私たちが発する言葉の大切さを痛感する。

保津川の雄大な自然は、人の心を和ませ、癒してくれる。
そんな自然な中で生きる船頭が放った、たった一言が
不登校の少女の心にすんなり納まり頑な心の扉を開かせた!
この時の少女の気持ち、私にもよくわかるのだ。何故なら
私自身が船頭になった時、先輩から放たれた言葉だったからだ。
今ではその言葉の意味がよく理解できるようになった。

保津川下りという船の狭い空間の中。たった2時間の船旅。
おそらく初対面で、2時間後には二度と会わないであろう人達
との出会いを、私達船頭は年中繰り返す。
そして保津川に遊びに来られる人達はみな、日常、自分の人生と
戦い、多くのこと、ものを背負いながら、この保津川にひと時の
非日常の癒しを求めてやって来られるのだろう。

時には気持ちを和ませたり、時には心を癒したり、また
ちょっぴり幸せな気分になってもらうことが出来る仕事
が船頭だ。まさに手渡しのサービス。

この投稿文を何度も読み返し、私は仕事への誇りとともに人の
人生観も変えることがあると知り、あらためてこの仕事の
責任と自覚を強く感じるのだ。

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6 コメント

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Unknown (大吉)
2007-06-05 22:17:15
その船頭さんの言葉は、その娘さんにとって、
今、必要な時の必要な言葉だったのですね!!
ステキな出会いだったのですね!!

一生勉強かと思うと、私はゾ~~~っとしてしまいますが、私も怠けてられません
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師匠の言葉 (はっちん)
2007-06-05 23:14:14
大吉さんへ。

私も船に入れたもらった時、師匠から
「船頭はこれで完璧ということはない!生涯が勉強だ!」
と言われました。

このフレーズ、私が「人生の楽園」という番組に
出演した時も話されていました。
でも。いかりや長介さんが気に入られたらしく
番組を締めくくる言葉に選ばれました。

心に沁みる言葉は、案外、簡単な
言葉なのかも知れないですね。
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感動ありがとう! (オン)
2007-06-06 11:39:07
わたしは、文章を読んだり書いたり、ましてや話したりするのは苦手です。
しかしお客さんとの会話の大切さに、「目からうろこ」になりました。
これからは、気をつけて会話するようにします。
いつもみんなの人生が変わらないと思いますが、一言で「傷ついたり」「笑ったり」「悲しんだり」「感動したり」
\(~o~)/言葉はすごい!!!
ありがとう「はっちんさん」
「感動した!」小泉純一郎?ふふふ
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いい話やなぁ・・・ (ノリオ)
2007-06-06 16:35:10
以前ブログで書かれた修学旅行生のいじめの話と同じくらい感動しました。
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言葉 (はっちん)
2007-06-11 22:23:27
私達の一言が人の人生を左右することが
あるなんて、本当に驚きました。

モノ書きも船頭も、意外に‘言葉’という
共通点があるのでしょうか?

言葉を大事に話したいと思います。
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私も (はっちん)
2007-06-11 22:25:04
ノリオさんへ。

私もこの記事を読んで感動しました。
そして嬉しくなりました。

船頭家業にますます惚れ込める感じです。
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