病院へ行く途中二つのことがあった。
一つは、行きの乗換駅で待合室から出る時、少女、とても小さかったので小学校低学年だろうが、開けるとゆっくりと閉まる扉を、後から来る僕のため押さえてくれていた。僕はありがとうと云った。
もう一つは、帰りのバス停で突然雨が降ってきた。雨で濡れた椅子を老婆がティシュで吹いて、僕に勧めた。「いいですよ」。僕は云った。老婆は「どうぞ」とまた云った。
バスが来て、行き先の違う僕が先に乗った。僕は小さく頭を下げた。
僕は今「おくのほそ道」を読んでいる。
二つの出来事も「行かふ人」である。
旅で出会う風景、人、そして「枕詞」をよすがとして時を超える古人の姿。
「おくのほそ道」の正体だと思う。
それは最初の数行に書かれている。
一つは、行きの乗換駅で待合室から出る時、少女、とても小さかったので小学校低学年だろうが、開けるとゆっくりと閉まる扉を、後から来る僕のため押さえてくれていた。僕はありがとうと云った。
もう一つは、帰りのバス停で突然雨が降ってきた。雨で濡れた椅子を老婆がティシュで吹いて、僕に勧めた。「いいですよ」。僕は云った。老婆は「どうぞ」とまた云った。
バスが来て、行き先の違う僕が先に乗った。僕は小さく頭を下げた。
僕は今「おくのほそ道」を読んでいる。
二つの出来事も「行かふ人」である。
旅で出会う風景、人、そして「枕詞」をよすがとして時を超える古人の姿。
「おくのほそ道」の正体だと思う。
それは最初の数行に書かれている。