創作日記&作品集

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「謝肉祭(Carnaval)」・村上春樹著(2019年文學界12月号)

2020-01-13 15:59:57 | 読書
「彼女は、これまで僕が知り合った中でもっとも醜い女性だった-というのは……」で始まる冒頭は、ショッキングである。
「差別」という言葉がすぐに浮かぶ。
しかし、それはより深いところに読者を誘うための作者の手管である。
それ以外の言葉がなかったのかもしれない。
もともと人間の美醜とは何だろう。
F*で語られる女性は語り手の「僕」にとって「性」を越えたところに存在している。
醜いことが、「彼女独自のダイナミズムを立ち上がらせるのだ」と「僕」は語る。
シューマンの「謝肉祭」で意見の一致した二人は、性も美醜も離れたところでお互いを理解する。
シューマンの「謝肉祭」を聴き、語ることでより深くシューマンの世界に降りていく。
仮面舞踏会の世界へ。
勿論私は、音楽に無知である。
だが、何かしら分かる世界である。
もう今では、新作を心待ちにするのは、村上春樹だけになってしまった。
昔は、三島由紀夫や安部公房、つげ義春をはじめ沢山いたのに。