ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2012.10.9 文庫から映画へ「ツナグ」・・・劇中詩に感動

2012-10-09 20:51:24 | 映画
 辻村深月さんの「ツナグ」(新潮文庫)を読んだ。
 裏表紙には「一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知できなかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員・・・ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いを抱えた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。」とある。
 そう、これはアイドルの心得、長男の心得、親友の心得、待ち人の心得、使者の心得の5章からなる400頁を超える小説だ。
 あっという間に惹きこまれて読み終わり、「あなたがもう一度、会いたい人は誰ですか?」のキャッチコピーで映画化されると知り、どんなふうに映像化されるのだろう、と楽しみにしていた。

 そして映画を観た。
 映画は監督自らが初めて脚本も務めたという。原作の4つの心得の中から「伝えられなかった-母への後悔」、「裏切られた-親友への殺意」、「信じ続けた-婚約者への愛」の3人の依頼者からのエピソードが映像化されていた。
 原作者の辻村さんがインタビューで「微妙なニュアンスも全部丁寧に拾って頂いたことに驚き、感激しました。」と言っておられるように、とても良く再構成されていた、と思った。

 映画館での2時間強の間、何より心に残ったのが、原作や脚本にはなく、打ち合わせの段階で主人公の祖母役の女優さんが提案して取り入れられたという詩だった。
 以下、紹介させて頂く。

 劇中詩「最上のわざ」(一部抜粋)
 ヘルマン・ホイヴェルス神父の友人作<ヘルマン・ホイヴェルス著「人生の秋に」(春秋社刊)所収>

 この世の最上のわざは何?
 楽しい心で年をとり
 働きたいけれども休み
 喋りたいけれども黙り
 失望しそうな時に希望し
 従順に平静に己の十字架をになう
 若者が元気一杯で神の道を歩むのを見ても妬まず
 人の為に働くよりも
 謙虚に人の世話になり
 弱って、も早 人の為に役立たずとも
 親切で柔和であること-。
 老いの重荷は神の賜物
 古びた心に、これで最後の磨きをかける
 まことのふる里に行くために-。

 そう、失望しそうなときに希望を捨てず、従順に平静に己の十字架を担い、謙虚に人の世話になり、弱って、もはや人の為に役立たずとも、親切で柔和であれたら・・・どんなに人生は素晴らしいだろう。
 そんな人生が素晴らしいなどということは、健康であった時には決して考えもしなかったことだ。だからこそ、こうした謙虚な気持ちになれたことは、病気になったからこそなのだと頭を垂れる思いである。

 今日はほぼ2週間ぶりにフルタイムで働いた。金曜日に半日だけでも出勤して最低限処理していたので、随分ダメージが少なかったと思う。いつも通りに会議もこなして、定時に失礼した。それでも疲れ方はいつも以上。帰宅して、なんとか夕飯の支度はしたもののすぐ横になってしまう。明日の出張も気を付けて行かなければ。
コメント (2)
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