ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.10.6 再発してもこれまで通り生きるために~イデアフォー通信第92号より~その3

2014-10-06 21:19:34 | イデアフォー
 引き続き、イデアフォー通信第92号より、3回目。今日の転載記事は、就業トピックについての後半である。

※   ※   ※(転載開始)

(3)私にとっての就業継続メリット
 これは病気になってからに限ったことではありませんが、家庭以外にも自分の机がある(自分の居場所がある)ことの幸せを有難く思っています。○○さんの奥さん、○○君のお母さんではなく、一人の社会人として○○さんと呼んでもらえる自分の存在(アイデンティティ)の大切さを強く感じます。がん患者であっても、そうした社会でのあり方を諦めて、早々に隠居する必要は全くないと思います。自分が、家族はもとより社会に必要とされている存在であるということ、社会と繋がっているという幸せを実感できることは、私にとって代え難いものです。
 そして、治療や体調の不良で落ち込んだ時にも、仕事があれば家で引き籠ってネットサーフィンをしつつ不安になっていくという、負のスパイラルに陥ることがありません。仕事は、前向きに治療を続けていくうえでの気分転換に寄与することが大きいわけです。
 仕事に出るとなれば、身だしなみにも気を抜けないでしょう。
 命が助かればいいじゃないか、外見は多少悪くなっても我慢しろ、という時代は終わりました。明るいがん患者であり続けるために、外見はとても大事なことだと考えます。いくつになっても女性ですから、お洒落することで気持ちも明るく前向きになります。脱毛(髪の毛だけでなく眉毛やまつ毛も全て欠損することにより、容貌は哀しいほど変わります。)や爪の落下、浮腫み等による容姿の衰えは、ある程度覚悟しているとはいえ、想像以上に落ち込むものです。けれど、仕事に出るとなれば、きちんと鏡を見て、その姿を受け容れ、いかに今までに近づけるかという努力もしなければなりません。
 私自身はもともとズボラなので、家にいたらかなりだらしなく、身なりも構わずに過ごしそうだという懸念があります。そうなってしまえば、気持ちもテンションも下がるのが目に見えています。この状況はエンドレスの治療を続けていく上で決してプラスではないと感じます。 

(4)就業継続のためのポイント
 治療を続けながら就業継続することのポイントとして私が思うことは、職場の理解、制度、そして家族や友人たちに支えられている事に対していつも感謝の気持ちを忘れないということです。出来ればその都度その都度、声に出して「ありがとう」を言って過ごしたいと思っています。
 再発後の治療が目指すところは、完治ではありません。延命治療といってしまうと、ちょっと言葉が強すぎるように思いますが、要は少しでも長く今の生活(QOL)を継続出来るようにすることです。
 そのため、私は常に自分の軟弱な体と相談しながら、副作用の為に入院を余儀なくされるようなキツい治療を延々と続けることなく、だましだまし、よく言えばメリハリを付けながらやってきています。なぜならば、出来るだけ長く今まで通り働き続けることが、今の私にとって一番の目標だからです。治療の副作用の為に、入院したり、寝込んだりすることが多ければ、それはQOLを保っている治療とはいえません。
 このことについては、6年半余のお付き合いになる今の主治医が理解してくださっていることにとても感謝しています。これまで数種類の抗がん剤治療を経験してきましたが、私の身体にとっては全てにおいて規定量だと多すぎるようです。ありとあらゆる副作用が出現し、1クール目で体が悲鳴をあげてすぐに緊急入院になってしまいます。これまでの経験では、規定量の8割以下で充分効き目があり、今内服中のタイケルブはゼローダとの併用もなく単剤4割で奏功している模様です。そうはいうものの、やはり実際試してみなければどのくらいの副作用が出るものかわからないですから、初回は規定量から始めるしかないのですが・・・。
 こうした状況で、細く長くしぶとく(これが私の人生~仕事も趣味も含め~においてのモットーです。)治療を続けていくために、そして、気持ちを前向きにキープするために、私にとって仕事は不可欠な存在です。もちろん綺麗事ではなく、高額な治療費が、生きている限りエンドレスにかかるのです。霞を食べて生きていけるわけではありません。経済面でも仕事は不可欠だと思っています。新薬は多額の開発費がかかっているため、どれも目が飛び出るほど高額です。が、せっかく効くとわかっている薬が使える環境になった時、金の切れ目が治療の切れ目、ひいては命の切れ目になるのではあまりに悔しいではありませんか。

(5)再発後の過ごし方
 残念ながら、今もなお“再発した=即・死が待っている”というのが社会の一般的な認識のようですが、それは全くの誤解です。冷静に考えて頂ければ、今日普通に仕事をしていた人が、再発が判明した翌日から治療以外何も出来なくなる、死の床に就く、などということはあまりに荒唐無稽な話です。実際には年単位、長丁場の治療が待っているのです。
 そして、今やかつてのように入院治療をすることは殆どなく、外来通院治療をしながら仕事継続が十分可能な時代になっています。初発で職を辞し、治療専念という方はそう多くはいらっしゃらないでしょうが、再発したからといって退職することなど、今や全くの早計だと思います。一旦辞めてしまうと、よほどの資格や特技等がない限り、これまで以上、はおろかこれまでと同等の条件で再就職することは厳しいと思います。ですから、どうかしぶとくしがみついて、利用出来る制度は全て利用してでも、治療を続けて頂きたいと思います。
 繰り返しますが、次々に新しい薬が使えるようになっているのです。完治が難しいとはいえ、まだまだ手を替え品を替え、大切に薬を使っていけば長期間凌げるわけです。ですから、希望は決して捨てないでいたいと思います。
 もちろん無理は禁物ですから、残業は極力避け限られた勤務時間の中で集中して仕事を片付けることが大切です。そうすれば、家事も趣味も十分に行えると思います。

 現に私は、再発してからの方が、日々の時間を大切に有意義に使えているのではないかと自負しています。私なりに今、与えられた時間を穏やかに丁寧に送れるよう努力しているつもりです。身体と相談しながらやりたいことは後回しにしない、逢いたい人には少し無理をしても逢っておく、全てにおいて後悔しないように努めて過ごしています。

(6)日常生活について
 私の、仕事、読書、映画、ヨガ、合唱時々家事(笑)に勤しむ欲張りな毎日は、私が入会している患者会(あけぼの会)のHPに連載していた“再発患者の治療日記”から端を発したブログ「ロッキングチェアに揺られて」(http://blog.goo.ne.jp/in-a-rockingchair)において、ほぼ毎日、発信を続けています。この10月で開設から5年を迎え、記事の数は1,500を超えています。
 もしご興味がありましたら、是非一度ご訪問ください。
 再発患者がいきなり死の床につき、これまでのような普通の生活を送ることは出来なくなる、病人生活を送らざるを得なくなるということが全くの誤解であるということがお分かり頂けるのではないかと思います。
 一人でも多くの再発患者の方が、踏みとどまって就労を続けて頂きたいと思います。再発治療中であっても条件さえ整えば、十分普通に働くことが出来るのだ、ということを一人でも多くの方に分かって頂けるよう、社会の意識改革の一助になるよう、これからも細く長くしぶとく働き続けていきたいと思います。

(転載終了)※   ※   ※

(次回に続きます。)

 今日は台風18号が東京を直撃した影響で、出勤時は暴風雨。勤務する大学では結局1日休講になった。夫は早目に家を出たけれど、到着はいつもより1時間遅れ。2時間半以上かかって流石にぐったりだったようだ。私も午前中別々の建物で2つの会議。台風の影響で開始時間が遅れ、事務室を出たり入ったり、コートを脱いだり着たりと落ち着かず、ぐったり。
 が、昼過ぎには朝の荒天はどこへやら、台風一過の青空になり、汗ばむほどになった。朝はお助けマンだったレインコートもレインブーツも雨傘も、帰途にはすっかりお荷物になってしまった。とはいえ、美しい夕焼け空ともうすぐ満月の綺麗なお月様も拝むことが出来た。
 終わりよければ全て良し、の1週間の始まりである。


 
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