ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2014.10.4 再発してもこれまで通り生きるために~イデアフォー通信第92号より~その2

2014-10-04 20:40:20 | イデアフォー
 前回に引き続き、イデアフォー通信第92号からの転載、2回目。常に思っていることであるが、働くことについて、私なりの考えを述べたもの(前半)である。

※   ※   ※(転載開始)

Ⅱ 就業継続と再発治療―私の場合―
(1)私の職歴
 1985年4月、大学卒業後に東京都事務職員として採用されて以来、現在までフルタイム勤務を継続中です。
 今年度末で勤続30年を迎えます。その間、1カ月以上の長期休暇取得は勤続11年目の産休16週間、勤続20年直前の初発時に手術・放射線治療で70日、術後2年弱でノルバデックス副作用による卵巣嚢腫摘出開腹手術で35日間の病気休暇。さらに、再発後タキソテール治療中に6カ月の病気休職、合計4回です。
 休職明けから現在に至るまで、概ね週1回から月1回の通院治療を、1日単位の病気休暇取得により継続しています。治療薬変更時には、体調不良による緊急入院等も何度か経験しましたが、こと休職明けから直近の5年余りに限って言えば、2012年秋、EC初回投与後の好中球減少症により1週間緊急入院した以外は、連続休暇の取得はありません。

(2)私が考える“就業ということ”
 そもそも、私の就労に対する考え方は、公務員を選んだという選択からもお判り頂けるかと思いますが、“細く長く”・“(女性も)働くことは当たり前”です。大学卒業後、男性と同様の条件で定年まで働き続けるつもりで公務員試験を受験しました。そのため、初発後も、さらに再発後も退職しようとは全く思いませんでした。
 おかげさまで病気休暇、病気休職という制度も整っておりましたし、病気を理由として職場から退職について言及されたことはありません。実際には、一度休職してしまうと、休職明け1年以内には同じ病気による病気休暇を取得することが出来ない=完治する病が前提で、精神疾患等による繰り返し休職をさせない制度でしたので、休職明けの1年間は、何があっても有給休暇や休日出勤の代休で凌がざるを得ず、常に休暇の残日数を数えながらヒヤヒヤの綱渡りという苦労があったのは事実です。けれど、“働きたい”という意欲と、実際に職務をこなす能力さえあれば、就業継続は十分可能であるのです。
 もちろん、再発治療には山あり谷ありですから、365日いつも健康な人と同様に、というわけにはいきません。抗がん剤投与後の数日、なんとか出勤はするものの、どうしても具合が悪く無理の出来ない時はあります。が、どういうタイミングでどういう副作用が出るのかが掴めてくれば、自分でコントロールできる出張等は調整する、会議にぶつかりそうな時は治療日を1日前後させる、などして乗り切ることも可能です。
 健康な方であっても、インフルエンザなどで数日休むことはあり得ます。がん治療を始めるまで長く勤めてきたわけですから、それ迄の知識や経験を武器に、職場の理解を得ながら工夫して仕事を続けられるのです。
 最近では、病院でも告知の時に、すぐに仕事を辞めたりしないように、と釘をさすようですが、私が特に強調したいことは、今、就労中の方は初発、再発に限らずどうか簡単に離職しないで、ということです。なぜなら、一旦仕事を辞めてしまうと、この病気を抱えて新しく就職活動をするのはやはりハードルが高いと思うからです。もちろん、中には採用面接時に病気をカミングアウトし、その条件できちんと再就職する方もおられるとはいえ、やはり社会の“がん”という病気に対する意識~死に直結する病、治療による副作用はとても大変、フルタイムでの就業なんぞはもってのほか!?~を思うと、まだまだ少数派ではないかと思います。
 やむなく病気のことを隠したまま就職した場合、治療の折りに休暇を取りづらいということになるでしょう。それでは、自分で自分の首を絞めることになります。
 長期間付き合っていかなければならない病を得たということで、ただでさえダメージを受けているわけです。心も身体も傷つき、経済的にも高額な治療費がかかる中で、社会との接点である職業まで奪われてしまうのでは、まさに踏んだり蹴ったりです。決して何か悪いことをしているわけでもないのに、あたかもこの病気になったのは自分が悪いように病気であることを隠したまま、黙って職場を去っていくしかないとしたら、それは、あまりに悲しすぎます。
 必要以上に職場から身を隠すからこそ、再発=普通の生活は続けられない、死の床についてしまう、という暗いイメージを助長させているのではないでしょうか。実際には長期間これまで通りのごく普通の暮らしを続けながら定期的に治療に通う、ということなのです。もちろん自分ががん患者である、ということを周囲に必要以上に吹聴する必要はないと思います(別に特別扱いをしてもらうためではないのです。逆に特別扱いは不要ですし、逆に徒に特別扱いしてもらうことは嬉しいことではありません。が、良きにつけ悪しきにつけ、何かあった時にがんの治療中である、ということを知っておいてもらうことが必要なのだということです。)が、私は職場の方に病気について訊かれれば正直に答えています。隠す必要は全くないと思っています。何も悪いことをしていないのですから。
 それでも、そう話したことで引かれてしまうという経験があったのも事実です。実際、一緒に仕事をする部下たちには病気のことを話し、体調が悪い日もある、ということを理解しておいてもらいたい、と申し出たところ、上司から部下が動揺するようなことは言わずにいるように、と指示されたこともあります。明日にも死んでしまうわけではないのに・・・。
 けれど、それを嫌がっていたら決して世の中は変わらない。“がん”は自分にも、自分の家族にも全く関係ないことではない、ということを、より多くの方たちに知ってほしいと思うのです。

(転載終了)※   ※   ※

(次回以降に続きます。)
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