ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2017.2.23 昨日の通院日に読んだ2冊

2017-02-23 21:27:46 | 読書
 昨日は2冊読めた。
 1冊目は又吉直樹さんの「火花」(文春文庫)。
 言わずと知れた第153回芥川賞受賞作。月末からはNHKドラマ放映されるともいう。何より話題作だったし、文庫になったら読もうと思っていた。書店で平積みされているのを見つけ、迷わず手に取った。

 ドラマ化のタイミングでスペシャルカバーがついていた。「狂おしいほど純粋すぎる、この二人。」とある。裏表紙には「売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描き切ったデビュー小説。芥川賞受賞記念先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描き切ったデビュー小説。芥川賞受賞記念エッセイ『芥川龍之介への手紙』を収録。」とある。

 実は私はいまだ又吉さんのお笑いコンビ「ピース又吉」さんとしての姿を見たことがないのだけれど、お笑いという世界が大変な世界であるには間違いないだろう。もちろん、どの世界も大変でないところはないのだろうけれど、「笑い」を職業にすることは極限まで自分を追い込み、身を削ることなのだろう、というのは凡人の私にもなんとなくわかるような気がする。主人公徳永の18歳から28歳の10年間、そして4つ先輩の神谷の同じ10年間。ラストシーンにも圧倒された。
 私にとって土地勘のある懐かしい街も随所に登場するこの原作が、ドラマでどう料理されているのか日曜日からが楽しみである。

 2冊目は瀬尾まいこさんの「春、戻る」(集英社文庫)。
 瀬尾さんの小説は何冊目だろうか。いつもほっこりさせて頂くので、今回も春らしい装丁を見て、思わず手に取った。
 帯には「突然現れた“おにいさん”は年下のひとでした。結婚前夜、心の奥をくすぐるハートフルストーリー」とある。ふむふむ、最初からいったいどういうこと?という出だしである。

 裏表紙には「結婚を控えたさくらの前に、兄を名乗る青年が突然現れた。どう見ても一回りは年下の彼は、さくらのことをよく知っている。どこか憎めない空気を持つその“おにいさん”は、結婚相手が実家で営む和菓子屋にも顔を出し、知らず知らずのうち生活に溶け込んでいく。彼は何者で目的は何なのか。何気ない日常の中からある記憶が呼び起こされてー。今を精一杯生きる全ての人に贈るハートフルストーリー」とある。

 するすると読み終わり、読後感は実にさわやか。書評家の江南亜美子さんが解説を書いておられるが、「登場人物たちの善人さは、非現実的に思われるかもしれない。しかし隠したり忘れたりしたい、しんどい記憶がひとつもない大人などいない(お兄さんだって相当な過去の持ち主だ)以上、そこから解き放たれる希望を見せてくれる本書は、大人の読者にこそ沁み入るはずだ。人生の滋味。瀬尾まいこの作品がひろく支持される理由はおそらくそこにある。」と結ばれている通り、気づけば元気が出る、旅立ちの春に相応しい物語だった。

コメント
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