散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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預言者の系譜

2020-02-02 16:52:56 | 日記
2020年2月2日(日)
 C.S.の礼拝では教案誌に沿って今日から預言者シリーズで、イザヤ、エレミヤ、エゼキエル、ダニエルと続く。   
 預言と予言の違いと重なりから説き起こして、「召命」と呼ばれる乱暴なリクルートの形、現実に語られた警世の言葉などを中高生らに伝えながら、あらためて感じるのは「預言者」という存在の不思議である。
 権力に屈せず民衆に阿らず、神から直接託された言葉をひたすら発信し続ける、歩く放送局という役どころだが、どう考えても危険が大きすぎる。畳の上で(?)安らかに死ねた預言者がどれだけあったか、洗礼者ヨハネは投獄された後に首を切られ、イエスその人は十字架で惨死を遂げた。前者は権力者にたてついて圧殺され、後者は宗教上の権威主義とポピュリズム的激情の共通の敵と見なされ血祭りの好餌にあげられたのである。
 それでも(あるいはそれゆえに)預言者の存在はかけがえのないもので、「幻亡き民は滅ぶ」とするなら、「預言者を生まない社会は既に滅んでいる」と言えそうである。預言者の言葉に耳を貸さない社会は、いずれ滅亡と捕囚の憂き目を見るだろうが、預言者という存在をもたない社会はそのことにおいて既に死んでいる、そういった意味である。
 そうは言ったものの、いったい現代社会のどこに預言者がいるのかと自ら首を傾げ、手足のよく伸びた中高生(珍しく今朝は男子が3名混じっている!)の艶々した頬を眺めて思い当たった。
 グレタ・トゥーンベリ(2003-)が "How dare you" を連発しつつ世界のおとなに啖呵を切ったとき、聖書の民の多くはそこに預言者を見たのではないか。苛烈とも言える彼女のスピーチは、感動と賞賛ばかりでなく反発や憎悪も引き起こしたし、無視黙殺のポーズも広く見られたが、それこそ代々の預言者が例外なく経験したことだった。「地球温暖化など存在しない」と力に任せて言いつのるトランプ大王がまた、この構図を完成するために不可欠の存在である。やや遡って、マララ・ユスフザイ(1997-)も同じ系譜に属するだろう。彼女は実際、タリバンに銃撃されて九死に一生を得た。今日、預言者の役割はしばしば少女らに託される、そういう時代なのかもしれない。
 そこであらためて考える。日本の歴史の中で、預言者の役割を果たしてきたのはどのような人々か。彼らの後裔は今もなお生まれつつあるのか、あるとするならどこへ行けば会えるのか?

      

Ω

好きな人に好きな人が

2020-02-02 11:51:00 | 日記
2020年2月2日(日)
 好きな人に好きな人がいたんです ♪
 お~かみさま、こんな私にごほうびちょうだい ♫


 木曜午後の電車内、東北各地の雪景色とあわせて延々繰り返すのを、しばらく見とれた。家人にLINEで送ったりして、かなり面白いと思ったのである。帰宅後にネット検索して驚いたのは評価が二分されていることで、意外に「キライ」の tweet も多いらしい。もちろん人の感じ方はさまざまだから、好き派もいればキライ派もあって不思議はないが、「意味がわからない」という tweet がちらほらあるのは、それこそ意味がよくわからない。フラれてヤケになれば意味のわからないことをするのが人間の自然というもので、それを見て「意味がわからない」と言われても、「そ、そうね」としか答えようがない、フラれたことないのかな・・・
 といったことがポイントではなくて。
 帰宅後に音声付きで聴いてみると、メロディーが単純であるだけに頭の中をぐるぐる巡りそうな粘着感があり、だからこそCMとしては成功なのだろうが、そのことでもない。

 「好きな人に好きな人がいたんです」

 このフレーズが秀逸だというのである。
 生まれついての日本語話者には苦もなく意味が伝わるが、日本語学習中の外国人に見せたらどうだろうか。

 「(私の)好きな人に、(私とは別の)好きな人がいたんです」

 そういう意味と理解するのに、一手間二手間かかるのではないか。仮に自分が外国人として日本語学習中だったとしたら、日本語の厄介を嘆くと同時に、不要なものをすべて削ぎ落としたリズムと表現力に感嘆することだろう。
 「いたんです」という語尾がまた絶妙で、「いました」でもなければ「いるんです」でもない、「いたんです」という言い回しにこもる落魄と慨嘆が相当に雄弁である。恨めしさの混じった小さなため息が聞こえてくるような。
 あたりまえの口語表現の中から、軽妙でリリカルなフレーズを鮮やかにきりとった、その一点でマイ五つ星を進呈。早い話がこれを英訳してみろったって、できるものでありはしない。
https://www.bb-navi.com/cm-douga/CMisibasisizuka.81796.html 

Ω