Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本『遠い朝の本たち』

2011-09-06 07:56:55 | Book
須賀敦子著『遠い朝の本たち』を読了。
須賀敦子さんの本は、『コルシア書店の仲間たち』や『ミラノ 霧の風景』などエッセイをずっと読んできて、その静かな強さと身体に沁みこむような文章に魅了されてきました。
イタリアというと陽気で軽薄なイメージがありますが、須賀さんの本を読むと、芯の強さと個人の思考の深さを感じます。
須賀さんが、1998年に亡くなったとき、ああもうこの独特なイタリア関連のエッセイを読むことができなくなるのかと、とても残念に思いました。享年69歳。まだまだ活躍できる歳だったのに…。
同じような残念な気持ちは、米原万里さんが56歳で亡くなったときも強く感じました。ロシアや東ヨーロッパに造詣が深く、彼女にしか書けないものがありました。
『遠い朝の本たち』はイタリアものというよりは、著者が子どもの頃の体験、そして人生について、本をヒントにして綴ったものです。語られる本は、私は世代が違うために知っているものはあまりありませんでしたが、自分の子どもの頃の読書の体験を思い出し、新鮮な気持ちになりました。
この本は、亡くなる前の時期に書かれたエッセイを集めたものです。もう新しいエッセイを読むことができないかと思うと、悲しいです。
テレビやメディアや人の噂話では、ふわふわした人間や調子の良い人間がもてはやされることが多いですが、須賀さんの本を読んでいると、ただただ真面目で真摯な文学少女が自分が大切だと思うことを大切にして生きていくことの凛とした美しさを感じることができます。
体調は良好。