Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本『チェルノブイリ報告』

2011-09-20 09:59:41 | Book
広河隆一著『チェルノブイリ報告』を読了。日本から友達が送ってくれた本です。
1991年に発行された岩波新書で、2011年6月で9刷。1986年におこったチェルノブイリの事故後、現地へ出かけて取材した内容をまとめた本です。一度きりではなくて、89年、90年、91年と複数回現地取材をおこなっており、事故後の政府の対応、住民の健康状態などについて、年の経過とともにどうなっていったのかがよくわかります。これは、福島原発の事故後、日本で起こりうることとして、読むことができます。
3月11日のあの事故以来、私たちが情報不足で右往左往し、政府発表のメディア情報しか手に入れることができず、不安な毎日を送りました。世界ではすでにこのチェルノブイリの事故の経験があるのですから、原発がいつの間にか日本全土にこんなに多くある事態になっていた私たちは、チェルノブイリについてもっと詳しく知っておくべきでした。この本を読めば、事故後どんなことが起こりうるか、どんなことに注意すべきかがよくわかります。
ほんとうならば、事故前に、少なくとも事故直後に読むべきでした。でも、今から読んでも、有用な情報はたくさんあります。この本には、事故の3年後、4年後の様子が書かれているのですから。
私はオランダに住んでいますから、直接今回の放射能の被害を受けるわけではありません。しかし、チェルノブイリの事故で、オーストリアのザルツブルグ近郊の干草やトルコの紅茶までかなりの放射能汚染が検出されたことなどを知ると、風向きや雨で長距離でも被害があることに不安を感じます。ドイツやイタリアは脱原発を決議して進めていますが、オランダでは原発が動いており、またフランスには数多くあります。オランダは九州くらいの大きさなので、どこかで大きな事故が起これば、影響をうけることは間違いなしです。
外から日本を見ていると、今年の日本はほんとうに悪いニュースばかりです。地震、原発事故、円高、台風…。なでしこのワールドカップサッカー優勝が唯一のうれしいニュースだったような。
首相もころころ変わって、日本の政治家は何やってるのかという感じで、オランダでもこのことを聞かれるとうまく答えられません。オランダの現首相ルッテは、44歳。5年前にVVD党の党首になった時は、ういういしくて、ちょっと自信家の若い政治家と思いましたが、首相になって、いろいろ批判はありますが、若いことに甘えず、任をしっかりとやっていると思います。メディアが政治家にインタビューするシーンなどもよくテレビで放映されますが、政治家は自分の言葉でちゃんと答えているように見えます。時には、政治家とインタビュアーの応酬はかなり熱くなることもありますが、お互いそれを楽しんでいるようにも見えます。おそらく、議論の文化があるからなのでしょう。
私は、かなり日本は良い、特別な国という洗脳を受けて育ったしまったようで、日本の政治や社会を深く信じていました。政府や公の機関が国民に対して悪いことをするはずはないと。そして、政治家や公務員は、他国のように賄賂まみれではなくて、クリーンで国民のためを思ってくれていると。でもこの考えはかなりナイーブだったようです。でも、きっと私のように育ってきた多くの人も、今、政治家や公務員になっているはずで、純粋に良い国を作ろうと思っている人もかなりの数いるはずです。ただ、私は働いていたときのことを考えると、組織によって違うのですが、ある組織では、かなり働きにくかった…。正論が言えず、上司の機嫌をとらなくては、陰で小さなことでいやがらせをされるというような、閉塞的な環境がありました。このような環境では、良い仕事はできないです。小さな礼儀などで、「けしからん」とか「不適切」とか糾弾するのは、日本の礼儀を重んじる文化からくるのでしょうが、礼儀は周縁的なことで、目的となるものについての議論がなされるべきなのだと思います。話を大きくすれば、ある国とある国の大臣が何かの問題について話し合う場合に、握手のしかたがなっとらんとか、言葉の使い方がどうのとかを話題にしていては埒があかないのです。目的となる問題について話あい、答えを出すことが重要なのです。
何か話がそれちゃいました。
ただただ、日本から良いニュースが多く聞こえる日々になることを心から望んでいます。
写真は、オランダのユリです。今が季節です。
体調は良好。