Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「航路」

2014-05-01 09:37:16 | Book
コニー・ウィリス著「航路」を読了。長かった…、上下巻で約1300ページ。
この本の翻訳者でもあり書評家の大森望氏が10年に一度の傑作と絶賛していたので、読んでみようと思いました。
たくさんの賞を受賞しているコニー・ウィリスですが、私ははじめて読みました。SF作家ですが、「航路」は現代の病院を舞台にした、コメディタッチのお話。でもテーマは臨死体験なので、死と隣り合わせの深刻なものなんだけれども、エンターテインメントのセンスが強く、ぐいぐいと読まされてしまいます。
登場人物がとても明確にわかりやすいキャラクター設定で、楽しめます。
主人公は、臨死体験を科学的に解明したいと思っている認知心理学者のジョアンナ。友達はERに勤めるヴィエルくらいしかいず、いつも病院内を駆けずり回っています。
臨死の実験の治験者であるミスター・ウォジャコフスキーは、元海軍経験者で、第二次世界大戦中にミッドウェー海戦などを経験したといい、その頃の話になるとしゃべりだしたらとまらない…、というかどんな話でもすぐにその頃の経験話に繋げて語りだしてしまう人物。その語りの中に、ヨークタウンとか翔鶴とか出てきて、この前に読んだ「永遠の0」と重なる部分を発見して、ひとりでおっと思いました。
他には、心臓病患者の女の子メイジー。災害の本が大好き。重要な役割を果たすキャラクターです。
それに、ジョアンナの高校時代の英語の先生など。
飽きずにどんどん読ませる作者のストーリーテリングの力強さはすばらしいです。またいろいろな情報の多さ、いくつもの筋が最期にどんどんつながっていく感じはすごかったです。
でも、なんか物足りなさがあって、またこの作家の本を読みたいかというと、それほどでもないんです。
どうしてかなあと考えると、ジョアンナにあまり共感できなかったこと。本の中でいろんなことがうまくいかず、そのためにすごく長くなっていて、フラストレーションがたまったからかなと思います。
このような物語の構造もすべて計算されたメタファーなんだろうけど、いまひとつ高揚感が自分の中で出なかったです。
以前に読んだNOVAも期待外れだったし、私にはSF系は合わないのかも。
体調は良好です。