Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「困っているひと」

2014-05-15 13:09:06 | Book
大野更紗著「困っているひと」を読了。
20代半ばで難病の皮膚筋炎と筋膜炎脂肪織炎症候群になった著者が発病と入院生活、退院について書いたエッセイ。
ユーモラスな語り口で、どんどん読めてしまい、エッセイとして面白かったです。まあ面白かったという表現はいまひとつ適切ではないですね。病気で身体がこわばって思うように動かせず、原因究明のために痛みを伴う検査をいくつも受け、おしりにできた大きな潰瘍の話とか、何か月も入院しなくてはならに状況など、たいへんだったんだなあと思いました。
でもこの著者、難病にかかった「困っているひと」というのを全面に押し出した「困ったひと」という印象も受けました。
入院しているので、買い物などいろいろなことを友人知人に頼みまくり、医師には疑問や不安をえんえんとぶつけ、医師は毎晩2時間くらい話し相手になっているというようなことが書かれています。
こんなことしていたら、忙しい医師の時間を他の患者から奪っていることになるし、エッセイ内でも友人たちは最後のほうでは疲れ果てて彼女のためには何もかもはできないと言い出します。
作者は田舎の優等生であった子供時代について書いていますが、おそらく自分自身にポジティブ感があって、他の人は自分のために何でもやってくれて当然、医師は自分を助けてくれて当然という気持ちがあったのではないかなと思います。そういう人がこういう病気にかかって、その敗北感は相当なものだったのでしょう。死にたいなどという気持ちについても最初のほうはときどきでてきます。
こういうつらい時期を切り抜けて、現在はひとり暮らしをして、エッセイやインタビュー記事などで社会参加をされていて、よかったと思います。
世の中には、難病、病気に倒れたといっても、ひとり暮らしがかなわないような病や身体状況の人が大勢います。
まだ若いし、これからも、病人の視線から社会制度の改善などについてどんどん発言していってほしいと思います。
ところどころ大げさな表現があり、また個々で辻褄が合わないことも。死にそうにつらい身体でリュック一つで東南アジアから飛行機で帰ってきたはずが駅でスーツケースをコインロッカーに入れるシーンがあったり、入院していてひとりでは何もできないようでありながら本当にやりたいことはやっている部分など、少し違和感を感じました。
体調は良好です。